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第八章 やるべきこと
第3話 単なる偶然だ
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「ちょっと待ってよ!」
「いいえ、もう待てないの。だってノアがここまで頑張っているんだもの。親として応援したいじゃない。で、レイはどうなの?」
「……」
「あら、まだ決まらないの? なら、レイは「だから、ちょっと待ってよ」……何?」
「だから……」
ブランカに問い詰められ、レイが口籠もるのを見てブランカはレイに対し見切りを付けようとしたが、レイは急に言われたこともあり自分の中で整理が付いてはいないが、このまま黙って指を咥えて見ている場合じゃないとブランカに待ってと頼むが、その先の言葉が思ったように出て来ない。
「レイ、黙って見ているだけなら、あなたはこのまま不参加になるわよ。それがイヤならちゃんと自分の言葉で言いなさい」
「……分かったわ。なら、一つ確認させて欲しいの」
「いいわよ。言ってみなさい」
「うん、分かった。じゃあ、言うね。ソルト、あなたは『俊夫兄ちゃん』なの?」
「え……その呼び方は……」
「やっぱり! 俊夫兄ちゃんなのね……」
「あ!」
レイはソルトの返事を待たずにソファに座っているソルトの胸へと飛び込むと「俊夫兄ちゃん、俊夫兄ちゃん、ゴメンね……ゴメンね」と泣き出した。
ソルトは抱き着いてきたレイにどう対処していいのか分からず、取り敢えずは下手に触って問題になるのは面倒だなと両手を上に上げ万歳したポーズを取っている。だが、それ以上に分からないのが成り行きを黙って見ていたブランカ達だ。
今の状況を説明して欲しいのだが、レイはずっと泣きじゃくっていて、とてもじゃないが話を聞けそうにはない。ならば、ソルトに聞こうと思ったが、ソルト自身が何がどうなっているのか分かっていなさそうなので、先ずはレイが落ち着くのを待つしかないとブランカが判断し『お茶の時間』となった。
「お~い、俺は?」
「しばらくそのままでいなさい」
「え~なんでだよ!」
「さあ?」
「あ……もう、どうすんだよコレ」
ソルトは部屋から出て行くブランカ達にまだ泣きじゃくるレイを差してどうすればいいのかと聞けば、放置でと言われ途方に暮れてしまう。
だが、ソルトも思い当たる節が全くない訳でもない。頭の中でもしかしてと思えるのは、彼女に振られ、会社を辞める切っ掛けになった幼女だ。
ソルトが転職先に選んだのは地元から遠く離れた場所であった為にまさかと考えないようにしていたが、さっきのレイの様子からまず間違いはないだろうと考えている。
「しかしなぁ、地元から数百キロ離れた公園で再会するかね。それも異世界転移のおまけ付きなんて確率的に宝くじに当たるより難しいだろ。それなら、宝くじに当たりたかったよ。ホント……はぁ~」
「……俊夫兄ちゃん?」
ソルトがそんなことを考えているといつの間にか泣き止んだレイがソルトの顔を見上げていた。
「もう、いいのか?」
「うん。俊夫兄ちゃんにずっと謝りたかった……後でお母さんに聞いて、私……悪いことしたんだなって」
「あ~そのことか。まあ、あの時はお前も二,三歳だったんだ。ちゃんと説明出来なかった俺も悪いし、俺の話を聞こうとしなかった彼女達にも原因があるってもんだ。だから、気にするな」
「でも……」
「もう、昔のことだ。それに今の俺は『俊夫兄ちゃん』じゃなくソルトだ」
「あ……うん、分かったよ。ソルト」
「なら、そろそろ上からどいてもらってもいいか」
「あ、ごめんなさい!」
レイはソルトにしがみついていたのを意識すると急に恥ずかしくなり、慌てて離れる。
「ふふふ、でもさ。公園では何も考えずに妙なオジサンの横に座ったと思っていたけど、なんとなく……安心出来る何かを感じていたのかもね。ねえ、これってさ「違うからな」……もう、まだ何も言ってないでしょ!」
「言わなくても分かるさ。いいか、アレは単なる偶然だ。それ以外にはない」
「へぇ。地元から結構離れている公園で会ったのに?」
「ああ、たまたまだ」
「俊夫兄ちゃんが地元を離れてから結構経っているのに?」
「それもたまたまだ」
「私がベンチの隣に座ったのもたまたま?」
「それは……俺が格好良かったからだろ?」
「ぷっそれはないでしょ。だって、あの時の俊夫兄ちゃんは……凄かったね」
「言うなよ」
それからは二人でソルトが地元を離れてから会うまでのことを互いに話し合った。そして、レイが地元を離れたのは両親が離婚し母親の実家に身を寄せていたからだと話す。
「そうか。お前も苦労したんだな」
「ううん。そんなにでもなかったよ。だってさ、お母さんの実家って意外と裕福でさ。お父さんの給料じゃ考えられない生活だったもん」
「……お前、それオヤジさんに会っても言うなよ」
「うん、そうだね。でも、会えるのかな」
「会えるさ。その為にも今、やれることをやろう」
「うん、分かった!」
ソルトは横に座ったレイの頭をポンポンと軽く撫でるとレイは「えへへ、なんだか懐かしい」と顔を綻ばせる。
『私もされたことないのに……』とルーが心からの叫びをソルトに訴える。
「いいえ、もう待てないの。だってノアがここまで頑張っているんだもの。親として応援したいじゃない。で、レイはどうなの?」
「……」
「あら、まだ決まらないの? なら、レイは「だから、ちょっと待ってよ」……何?」
「だから……」
ブランカに問い詰められ、レイが口籠もるのを見てブランカはレイに対し見切りを付けようとしたが、レイは急に言われたこともあり自分の中で整理が付いてはいないが、このまま黙って指を咥えて見ている場合じゃないとブランカに待ってと頼むが、その先の言葉が思ったように出て来ない。
「レイ、黙って見ているだけなら、あなたはこのまま不参加になるわよ。それがイヤならちゃんと自分の言葉で言いなさい」
「……分かったわ。なら、一つ確認させて欲しいの」
「いいわよ。言ってみなさい」
「うん、分かった。じゃあ、言うね。ソルト、あなたは『俊夫兄ちゃん』なの?」
「え……その呼び方は……」
「やっぱり! 俊夫兄ちゃんなのね……」
「あ!」
レイはソルトの返事を待たずにソファに座っているソルトの胸へと飛び込むと「俊夫兄ちゃん、俊夫兄ちゃん、ゴメンね……ゴメンね」と泣き出した。
ソルトは抱き着いてきたレイにどう対処していいのか分からず、取り敢えずは下手に触って問題になるのは面倒だなと両手を上に上げ万歳したポーズを取っている。だが、それ以上に分からないのが成り行きを黙って見ていたブランカ達だ。
今の状況を説明して欲しいのだが、レイはずっと泣きじゃくっていて、とてもじゃないが話を聞けそうにはない。ならば、ソルトに聞こうと思ったが、ソルト自身が何がどうなっているのか分かっていなさそうなので、先ずはレイが落ち着くのを待つしかないとブランカが判断し『お茶の時間』となった。
「お~い、俺は?」
「しばらくそのままでいなさい」
「え~なんでだよ!」
「さあ?」
「あ……もう、どうすんだよコレ」
ソルトは部屋から出て行くブランカ達にまだ泣きじゃくるレイを差してどうすればいいのかと聞けば、放置でと言われ途方に暮れてしまう。
だが、ソルトも思い当たる節が全くない訳でもない。頭の中でもしかしてと思えるのは、彼女に振られ、会社を辞める切っ掛けになった幼女だ。
ソルトが転職先に選んだのは地元から遠く離れた場所であった為にまさかと考えないようにしていたが、さっきのレイの様子からまず間違いはないだろうと考えている。
「しかしなぁ、地元から数百キロ離れた公園で再会するかね。それも異世界転移のおまけ付きなんて確率的に宝くじに当たるより難しいだろ。それなら、宝くじに当たりたかったよ。ホント……はぁ~」
「……俊夫兄ちゃん?」
ソルトがそんなことを考えているといつの間にか泣き止んだレイがソルトの顔を見上げていた。
「もう、いいのか?」
「うん。俊夫兄ちゃんにずっと謝りたかった……後でお母さんに聞いて、私……悪いことしたんだなって」
「あ~そのことか。まあ、あの時はお前も二,三歳だったんだ。ちゃんと説明出来なかった俺も悪いし、俺の話を聞こうとしなかった彼女達にも原因があるってもんだ。だから、気にするな」
「でも……」
「もう、昔のことだ。それに今の俺は『俊夫兄ちゃん』じゃなくソルトだ」
「あ……うん、分かったよ。ソルト」
「なら、そろそろ上からどいてもらってもいいか」
「あ、ごめんなさい!」
レイはソルトにしがみついていたのを意識すると急に恥ずかしくなり、慌てて離れる。
「ふふふ、でもさ。公園では何も考えずに妙なオジサンの横に座ったと思っていたけど、なんとなく……安心出来る何かを感じていたのかもね。ねえ、これってさ「違うからな」……もう、まだ何も言ってないでしょ!」
「言わなくても分かるさ。いいか、アレは単なる偶然だ。それ以外にはない」
「へぇ。地元から結構離れている公園で会ったのに?」
「ああ、たまたまだ」
「俊夫兄ちゃんが地元を離れてから結構経っているのに?」
「それもたまたまだ」
「私がベンチの隣に座ったのもたまたま?」
「それは……俺が格好良かったからだろ?」
「ぷっそれはないでしょ。だって、あの時の俊夫兄ちゃんは……凄かったね」
「言うなよ」
それからは二人でソルトが地元を離れてから会うまでのことを互いに話し合った。そして、レイが地元を離れたのは両親が離婚し母親の実家に身を寄せていたからだと話す。
「そうか。お前も苦労したんだな」
「ううん。そんなにでもなかったよ。だってさ、お母さんの実家って意外と裕福でさ。お父さんの給料じゃ考えられない生活だったもん」
「……お前、それオヤジさんに会っても言うなよ」
「うん、そうだね。でも、会えるのかな」
「会えるさ。その為にも今、やれることをやろう」
「うん、分かった!」
ソルトは横に座ったレイの頭をポンポンと軽く撫でるとレイは「えへへ、なんだか懐かしい」と顔を綻ばせる。
『私もされたことないのに……』とルーが心からの叫びをソルトに訴える。
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