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第七章 王都にて
第9話 アンタもか!
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「え~」
「『え~』ってブランカ」
「だって……せっかく使うチャンスだったのに……ねえ、ソルト!」
「イヤだよ」
「まだ、何も言ってないじゃない!」
「分かるよ。俺にしたいとか言うんでしょ」
「え、どうして分かったの!」
「分かるよ。でも、ダメ」
「どうしてよ。ね、お願い!」
「痛いのはイヤなの!」
「そんなの、天井のシミ数えている間に終わるわよ」
「ナニソレ……とにかくイヤなの。それより、ほら!」
「あ、そうだったわね」
「……」
司祭が話すと言っているのにブランカはそれが面白くないようだった。そしてソルトに対し向き直るが、ソルトはそのブランカの笑顔にイヤな予感がしてスッパリと拒絶する。
そして意を決して話すと言った司祭だったが、二人のやり取りを見ている内に少しだけ後悔する。
「もう、あんたのせいで……」
「す、すまない……」
ブランカは司祭の顔を見て不機嫌そうにそう漏らせば、司祭も思わずブランカに対し謝ってしまう。
「ブランカ、その辺で」
「だって、折角使い方を覚えるチャンスだったのよ。それなのに急に話すっていうから!」
「ひっ……」
ブランカの見幕に怯える司祭だが、ソルトはそんな司祭を見て、本当に正直に話してくれるのだろうかと少しだけ不安になる。
「じゃあ、改めて聞くけど……なんで地脈を暴走させようとしたんだ」
「……」
「話さないの! じゃあ「言う!」……えぇ~」
ソルトが司祭に地脈を暴走させた理由を聞くが、司祭は口籠もってしまう。すると、それを見たブランカはワクワクした顔で司祭に近付くが、司祭はそれを迷惑そうに押し返しながら、言うからとソルトの顔を見る。
「じゃあ、先ずは地脈を暴走させた理由から話してもらおうか」
「それは……」
「「それは?」」
司祭の告白に二人はゴクリと生唾を飲み込む。教会が魔族であるガネーシャを唆して、黒龍であるノアを更に唆して地脈に魔力を流し込み遺跡を活性化させ魔の森に魔力が溢れた結果、魔物が暴走したところまでは抑えている。
では、何故あの街をターゲットにしたのかはまだ分かっていない。ただ単に魔の森の近くだったからなのか、それとも元領主の企みに乗っただけの話なのかだ。
「我らの神が復活するのに地脈が邪魔だった……」
「「邪魔?」」
「ああ、そうだ。我らの神が復活するのに地脈の存在が邪魔なのだ」
「え?」
ソルトもブランカも自分の耳を疑った。それもそうだろう、存在しないはずの神が復活するもしないもないのだから。
「あのさ、あんた達の信じる神様っていないよね。それなのに復活を信じるってどうなの?」
「ふっ……確かに今はいない。だから、復活を願ってだな」
「いや、だからね。そもそもいないハズの神様なのに復活も何もないでしょ」
「いない? ふふふ、何をバカなことを言っているのだ。神はいる! だから、神は我々に力を与えてくれたのだ」
「与えた……って、あんた、まさか!」
「ふふふ、どうした? 君は知っているのだろう。私達があの街の領主に何をしていたのか……」
司祭は笑いながらその姿を変えていく。
「あの街の領主は失敗作でしたが、私は……ワタシは……こんなフウニされて……」
「ヤバい!」
「え、どうするの?」
「逃げちゃう?」
「ソルト、さすがにそれはヤバいでしょ。あいつもあんな風になっちゃっているし……ほら」
「あ~なんとなく既視感だわ」
「私は別にいいんだけど、ソルト的にはこの街で被害が出るのはイヤなんじゃないの」
「……」
ソルトとしては、この街がどうなろうが知ったこっちゃないというのが本音だったが、確かにこのままでは後味が悪すぎるとも感じた。だから……
「しょうがないね」
『ソルトさん、やっちゃいましょ!』
「ルーまで……ハァ~いいさ。乗りかかったどころか目的地間近な船だからね。じゃあ、いっちょやりますか」
ソルトとブランカの目の前には既に人の形を成していないただの肉塊と化した司祭に対し魔法を放つ。
「「氷結」」
ソルトとブランカが放った魔法でかつて司祭だったそれは凍らせられる。
「あら、あっけない」
「領主を失敗作と言った割には変わらない様に見えるんだけど……『ピシッ』……ん?」
氷の中に閉じ込めた元司祭の方から、何かが割れる音がする。ソルト達ももしかしてと耳を澄ませてみるが、特に変わった様子は見られなかったので、気のせいかと思っていたのだが……。
『ピシッピシピシッ』と氷が割れる音が連続して鳴るので気のせいではないと二人も感じる。
「ねえ、ソルト……」
「うん、分かってる。ちょっとヤバいよね」
「ちょっと?」
「ごめん、だいぶヤバいね」
「そうよね。でも、どうする? 燃やしてもいいけど、ここじゃマズいでしょ」
「それなんだけどね、いっそのことさ……」
「ソルト、それナイス!」
「ナイスって……」
ソルトとブランカがそんなやり取りをしている間にもピシッピシピシッと氷が割れる音がして、終いには元司祭を覆っていた氷が完全に破壊され『ぐぉぉぉ~』と人ならぬ雄叫びが発せられる。
「じゃあ、さっきの打ち合わせ通りにいくね」
「分かったわ。じゃあ、私は……」
「今のウチに上空に転移させるから、元の姿に戻るなら、そっちでお願い」
「分かったわよ。じゃあ、お願いね」
「分かった。いくよ」
「うん!」
ブランカはソルトに上空へと転送され、ソルトは執務室の外壁を壊すと、元司祭と一緒に地面へと落下する。
「『え~』ってブランカ」
「だって……せっかく使うチャンスだったのに……ねえ、ソルト!」
「イヤだよ」
「まだ、何も言ってないじゃない!」
「分かるよ。俺にしたいとか言うんでしょ」
「え、どうして分かったの!」
「分かるよ。でも、ダメ」
「どうしてよ。ね、お願い!」
「痛いのはイヤなの!」
「そんなの、天井のシミ数えている間に終わるわよ」
「ナニソレ……とにかくイヤなの。それより、ほら!」
「あ、そうだったわね」
「……」
司祭が話すと言っているのにブランカはそれが面白くないようだった。そしてソルトに対し向き直るが、ソルトはそのブランカの笑顔にイヤな予感がしてスッパリと拒絶する。
そして意を決して話すと言った司祭だったが、二人のやり取りを見ている内に少しだけ後悔する。
「もう、あんたのせいで……」
「す、すまない……」
ブランカは司祭の顔を見て不機嫌そうにそう漏らせば、司祭も思わずブランカに対し謝ってしまう。
「ブランカ、その辺で」
「だって、折角使い方を覚えるチャンスだったのよ。それなのに急に話すっていうから!」
「ひっ……」
ブランカの見幕に怯える司祭だが、ソルトはそんな司祭を見て、本当に正直に話してくれるのだろうかと少しだけ不安になる。
「じゃあ、改めて聞くけど……なんで地脈を暴走させようとしたんだ」
「……」
「話さないの! じゃあ「言う!」……えぇ~」
ソルトが司祭に地脈を暴走させた理由を聞くが、司祭は口籠もってしまう。すると、それを見たブランカはワクワクした顔で司祭に近付くが、司祭はそれを迷惑そうに押し返しながら、言うからとソルトの顔を見る。
「じゃあ、先ずは地脈を暴走させた理由から話してもらおうか」
「それは……」
「「それは?」」
司祭の告白に二人はゴクリと生唾を飲み込む。教会が魔族であるガネーシャを唆して、黒龍であるノアを更に唆して地脈に魔力を流し込み遺跡を活性化させ魔の森に魔力が溢れた結果、魔物が暴走したところまでは抑えている。
では、何故あの街をターゲットにしたのかはまだ分かっていない。ただ単に魔の森の近くだったからなのか、それとも元領主の企みに乗っただけの話なのかだ。
「我らの神が復活するのに地脈が邪魔だった……」
「「邪魔?」」
「ああ、そうだ。我らの神が復活するのに地脈の存在が邪魔なのだ」
「え?」
ソルトもブランカも自分の耳を疑った。それもそうだろう、存在しないはずの神が復活するもしないもないのだから。
「あのさ、あんた達の信じる神様っていないよね。それなのに復活を信じるってどうなの?」
「ふっ……確かに今はいない。だから、復活を願ってだな」
「いや、だからね。そもそもいないハズの神様なのに復活も何もないでしょ」
「いない? ふふふ、何をバカなことを言っているのだ。神はいる! だから、神は我々に力を与えてくれたのだ」
「与えた……って、あんた、まさか!」
「ふふふ、どうした? 君は知っているのだろう。私達があの街の領主に何をしていたのか……」
司祭は笑いながらその姿を変えていく。
「あの街の領主は失敗作でしたが、私は……ワタシは……こんなフウニされて……」
「ヤバい!」
「え、どうするの?」
「逃げちゃう?」
「ソルト、さすがにそれはヤバいでしょ。あいつもあんな風になっちゃっているし……ほら」
「あ~なんとなく既視感だわ」
「私は別にいいんだけど、ソルト的にはこの街で被害が出るのはイヤなんじゃないの」
「……」
ソルトとしては、この街がどうなろうが知ったこっちゃないというのが本音だったが、確かにこのままでは後味が悪すぎるとも感じた。だから……
「しょうがないね」
『ソルトさん、やっちゃいましょ!』
「ルーまで……ハァ~いいさ。乗りかかったどころか目的地間近な船だからね。じゃあ、いっちょやりますか」
ソルトとブランカの目の前には既に人の形を成していないただの肉塊と化した司祭に対し魔法を放つ。
「「氷結」」
ソルトとブランカが放った魔法でかつて司祭だったそれは凍らせられる。
「あら、あっけない」
「領主を失敗作と言った割には変わらない様に見えるんだけど……『ピシッ』……ん?」
氷の中に閉じ込めた元司祭の方から、何かが割れる音がする。ソルト達ももしかしてと耳を澄ませてみるが、特に変わった様子は見られなかったので、気のせいかと思っていたのだが……。
『ピシッピシピシッ』と氷が割れる音が連続して鳴るので気のせいではないと二人も感じる。
「ねえ、ソルト……」
「うん、分かってる。ちょっとヤバいよね」
「ちょっと?」
「ごめん、だいぶヤバいね」
「そうよね。でも、どうする? 燃やしてもいいけど、ここじゃマズいでしょ」
「それなんだけどね、いっそのことさ……」
「ソルト、それナイス!」
「ナイスって……」
ソルトとブランカがそんなやり取りをしている間にもピシッピシピシッと氷が割れる音がして、終いには元司祭を覆っていた氷が完全に破壊され『ぐぉぉぉ~』と人ならぬ雄叫びが発せられる。
「じゃあ、さっきの打ち合わせ通りにいくね」
「分かったわ。じゃあ、私は……」
「今のウチに上空に転移させるから、元の姿に戻るなら、そっちでお願い」
「分かったわよ。じゃあ、お願いね」
「分かった。いくよ」
「うん!」
ブランカはソルトに上空へと転送され、ソルトは執務室の外壁を壊すと、元司祭と一緒に地面へと落下する。
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