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第七章 王都にて
第1話 俺のせいなのかよ
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エンディの街を出てから十二日目、ようやく王都の城壁が見えて来たと丘の上の休憩所で一人感慨にふけるソルトにゴルドが声を掛ける。
「何を浸っているんだ?」
「ゴルドさん、あれが王都なんだよね」
「ああ、そうだ。一週間の予定だったんだがな」
「そうだよね、結構掛かっちゃったよね」
「ソレ、お前が言うか……」
「え? 言うよ。言わせてよ」
「は? そもそもお前が引き込んだようなもんじゃねえか」
「そうなの?」
「そうだよ。誰が見てもそのまんまじゃねえか」
「でも、助かった人も多いよね」
「……まあ、それは否定出来ないな」
「でしょ? なら「だが、やりすぎだ!」……え~そんなこと言っていいの?」
「よくはないな。だが、お前らが連れてきた野盗で詰所の牢屋が一杯なんだぞ。いいか、考えてもみろ! タダでさえ臭い連中がギュウギュウに詰め込まれているんだぞ。周りの連中からも苦情が来ているんだ『なんとかしろ!』ってな。このまんまじゃ愛される衛兵が嫌われてしまうじゃないか!」
「なら、さっさと鉱山送りにでも奴隷商に犯罪奴隷として売るなりしちゃえばいいじゃない」
「ああ、本来なら今頃は売り払われている頃だろうよ」
「じゃあ、なんでしないの?」
「そういう決済を出来る領主様がここにいるからだろ!」
「あ……じゃあ、早く帰らないとダメじゃない」
「そうだな。でもな、ここからが長いんだよ」
「ん? どういうこと?」
ソルトの横に立ち、思いにふけっていたソルトに対し愚痴を零していたゴルドがまだ先は長いぞと言ったことにソルトは不思議に思う。
「あのな、王様に会うって大変なんだぞ」
「そうかも知れないけど会わないことにはどうしようもないんでしょ」
「ああ、そうだ。だがな会うにも手順ってものがあるんだよ」
「なら、さっさと王都に入ってそれをしようよ」
「だから、落ちつけ。いいか、この手順ってのもヒドく面倒なんだよ」
「面倒って?」
「いいか、先ずは王都に着きましたってことを伝えに行くだろ」
「うん、それで?」
「それから、『これこれこういうことでお目通り願います』と伝えるんだよ」
「まあ、用件は伝えないとね」
「それで相手から返事が来るのが早くて二日後、遅くて一週間とかだな」
「え? 返事だけで?」
「そうだ。それから日程の調整とかでさらに一週間くらい掛かる場合もある。それに今回は領主への承認もあるから長くなるかもな」
「え~そうなの。じゃあ、一ヶ月くらい掛かるかもしれないってことなの?」
「まあ、そういうことだ。ハァ~帰るのがイヤになりそうだよ」
「じゃあさ、待っている間に領主代行に一度帰ってもらうのはどうかな」
「帰るって、お前の転移でか?」
「うん、そうだけど……ダメなの?」
「ダメとは言わないがな、領主代行もここでは色々としなきゃいけないことがあるんだよ。だから、難しいと思うがな」
「色々って?」
「そりゃ、社交界に出て『領主になります。よろしく』ってことだよ」
「え~じゃあどうするのさ」
「まあ、今のままだろうな。ハァ~ホントどうすんだよ」
「どうしようか……ハァ~」
「ほら、二人とも休憩は終わり! はい、もう少しなんだから頑張るの」
「「はぁ」」
何故だか張り切っているレイに頑張れと言われたソルトとゴルドは馬車に向かうと「もう一踏ん張りだな」と手綱を握る。
王都の城壁まで辿り着くが、入口は行商で来た者や冒険者らしき格好をした者で行列が出来ていた。それを見てソルトが辟易しているとゴルドはそっちじゃないと別の入口、貴族用の出入り口へと馬車を向かわせる。
「なるほどね。一般と貴族で分けているんだ」
「そういうことだ。いいから、大人しくしていろよ」
「俺に言う?」
「言うよ。というか、お前にしか言わないわ!」
「え~」
「ほら、いいから。すぐに俺達の番だ。いいか、喋らずに大人しくしているんだぞ」
「いいけど、臭くない?」
「ああ、そうだ。忘れていたが、王都の中はもっと臭いぞ」
「え? もう、そういうことは早く言ってよ。『消臭』」
「ん? ソルト、お前今何をしたんだ?」
「何って消臭の結界だよ」
「そんな物があるのか?」
「そうだよ。最初の討伐の時にレイに頼まれてね。な、レイ」
「そう、私も使っているのよ」
「……」
「ゴルドさん?」
「ゴルド?」
「ズルい!」
「「え?」」
「俺にもそれを寄越せ!」
「え? どうしたのさ」
「イヤなんだよ。俺だってこんな臭いのイヤなんだよ! 頼む! 俺にもくれ!」
「あ、でももう順番みたいだよ。ほら、馬車を進めないと」
「あ~もうかよ。クソッ」
王都の出入り口に近付くと王都の中からなんとも言えない異臭が漂ってきたのでソルトは消臭のブレスレットを起動させる。するとゴルドから何をしたのかと問い詰められ、消臭の結界を張ったことを話すとゴルドから自分にも欲しいとねだられるが、直ぐにソルト達の番になったようで渋々ながらゴルドは馬車を進める。
「そんなに臭いのなら事前に言ってくれればいいのに」
「……」
「どうしたの?」
「……すまん……これも洗礼だと思って黙っていたんだ。本当にすまん」
「「え~」」
ゴルドに王都がこんなに臭いのなら事前に教えて欲しかったと言えば、ゴルドはソルト達が異臭に慣れる為の洗礼だと理解不能なことを言い出したのを聞いて、ソルトとレイは呆れてしまう。
「ゴルドさん、そりゃないよ」
「ソルト、あげることないよ」
「そんなぁ~」
「臭いが染みついたら奥さん達にも嫌われるんじゃないの? ご愁傷様~」
「ソルト~」
「ごめん……」
「何を浸っているんだ?」
「ゴルドさん、あれが王都なんだよね」
「ああ、そうだ。一週間の予定だったんだがな」
「そうだよね、結構掛かっちゃったよね」
「ソレ、お前が言うか……」
「え? 言うよ。言わせてよ」
「は? そもそもお前が引き込んだようなもんじゃねえか」
「そうなの?」
「そうだよ。誰が見てもそのまんまじゃねえか」
「でも、助かった人も多いよね」
「……まあ、それは否定出来ないな」
「でしょ? なら「だが、やりすぎだ!」……え~そんなこと言っていいの?」
「よくはないな。だが、お前らが連れてきた野盗で詰所の牢屋が一杯なんだぞ。いいか、考えてもみろ! タダでさえ臭い連中がギュウギュウに詰め込まれているんだぞ。周りの連中からも苦情が来ているんだ『なんとかしろ!』ってな。このまんまじゃ愛される衛兵が嫌われてしまうじゃないか!」
「なら、さっさと鉱山送りにでも奴隷商に犯罪奴隷として売るなりしちゃえばいいじゃない」
「ああ、本来なら今頃は売り払われている頃だろうよ」
「じゃあ、なんでしないの?」
「そういう決済を出来る領主様がここにいるからだろ!」
「あ……じゃあ、早く帰らないとダメじゃない」
「そうだな。でもな、ここからが長いんだよ」
「ん? どういうこと?」
ソルトの横に立ち、思いにふけっていたソルトに対し愚痴を零していたゴルドがまだ先は長いぞと言ったことにソルトは不思議に思う。
「あのな、王様に会うって大変なんだぞ」
「そうかも知れないけど会わないことにはどうしようもないんでしょ」
「ああ、そうだ。だがな会うにも手順ってものがあるんだよ」
「なら、さっさと王都に入ってそれをしようよ」
「だから、落ちつけ。いいか、この手順ってのもヒドく面倒なんだよ」
「面倒って?」
「いいか、先ずは王都に着きましたってことを伝えに行くだろ」
「うん、それで?」
「それから、『これこれこういうことでお目通り願います』と伝えるんだよ」
「まあ、用件は伝えないとね」
「それで相手から返事が来るのが早くて二日後、遅くて一週間とかだな」
「え? 返事だけで?」
「そうだ。それから日程の調整とかでさらに一週間くらい掛かる場合もある。それに今回は領主への承認もあるから長くなるかもな」
「え~そうなの。じゃあ、一ヶ月くらい掛かるかもしれないってことなの?」
「まあ、そういうことだ。ハァ~帰るのがイヤになりそうだよ」
「じゃあさ、待っている間に領主代行に一度帰ってもらうのはどうかな」
「帰るって、お前の転移でか?」
「うん、そうだけど……ダメなの?」
「ダメとは言わないがな、領主代行もここでは色々としなきゃいけないことがあるんだよ。だから、難しいと思うがな」
「色々って?」
「そりゃ、社交界に出て『領主になります。よろしく』ってことだよ」
「え~じゃあどうするのさ」
「まあ、今のままだろうな。ハァ~ホントどうすんだよ」
「どうしようか……ハァ~」
「ほら、二人とも休憩は終わり! はい、もう少しなんだから頑張るの」
「「はぁ」」
何故だか張り切っているレイに頑張れと言われたソルトとゴルドは馬車に向かうと「もう一踏ん張りだな」と手綱を握る。
王都の城壁まで辿り着くが、入口は行商で来た者や冒険者らしき格好をした者で行列が出来ていた。それを見てソルトが辟易しているとゴルドはそっちじゃないと別の入口、貴族用の出入り口へと馬車を向かわせる。
「なるほどね。一般と貴族で分けているんだ」
「そういうことだ。いいから、大人しくしていろよ」
「俺に言う?」
「言うよ。というか、お前にしか言わないわ!」
「え~」
「ほら、いいから。すぐに俺達の番だ。いいか、喋らずに大人しくしているんだぞ」
「いいけど、臭くない?」
「ああ、そうだ。忘れていたが、王都の中はもっと臭いぞ」
「え? もう、そういうことは早く言ってよ。『消臭』」
「ん? ソルト、お前今何をしたんだ?」
「何って消臭の結界だよ」
「そんな物があるのか?」
「そうだよ。最初の討伐の時にレイに頼まれてね。な、レイ」
「そう、私も使っているのよ」
「……」
「ゴルドさん?」
「ゴルド?」
「ズルい!」
「「え?」」
「俺にもそれを寄越せ!」
「え? どうしたのさ」
「イヤなんだよ。俺だってこんな臭いのイヤなんだよ! 頼む! 俺にもくれ!」
「あ、でももう順番みたいだよ。ほら、馬車を進めないと」
「あ~もうかよ。クソッ」
王都の出入り口に近付くと王都の中からなんとも言えない異臭が漂ってきたのでソルトは消臭のブレスレットを起動させる。するとゴルドから何をしたのかと問い詰められ、消臭の結界を張ったことを話すとゴルドから自分にも欲しいとねだられるが、直ぐにソルト達の番になったようで渋々ながらゴルドは馬車を進める。
「そんなに臭いのなら事前に言ってくれればいいのに」
「……」
「どうしたの?」
「……すまん……これも洗礼だと思って黙っていたんだ。本当にすまん」
「「え~」」
ゴルドに王都がこんなに臭いのなら事前に教えて欲しかったと言えば、ゴルドはソルト達が異臭に慣れる為の洗礼だと理解不能なことを言い出したのを聞いて、ソルトとレイは呆れてしまう。
「ゴルドさん、そりゃないよ」
「ソルト、あげることないよ」
「そんなぁ~」
「臭いが染みついたら奥さん達にも嫌われるんじゃないの? ご愁傷様~」
「ソルト~」
「ごめん……」
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