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第六章 いざ、王都へ

第9話 一緒に旅したかったのに

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 仲間や大切な人の仇討ちが出来たことで女性達は晴れ晴れとした顔をしていたが、格好はと言えば返り血のせいで頭から赤く染まっていて猟奇的だ。

「しょうがないわね。ソルト、お願いね」
「ああ、分かった。『クリーン』と一応、『浄化』」
「「「……」」」

 一瞬で綺麗になった自分達の体に驚いた女性達だが、すぐに理解したようでソルトに対しお辞儀を返す。

「じゃあ、そろそろ戻ろうかと思うんだけど、先ずはコイツらだな」
「そうね、気は進まないだろうけど……」
「まあね。でも、放置も出来ないし」

 ぶつくさ言いながらもソルトはグチャグチャになった野盗の死体を無限倉庫に収納する。

「でも、それだけグチャグチャで手配書のヤツかどうか分かるのかしら」
「さあね。ま、顔で分からなくても身体的特徴とかで分かるかもしれないしね」
「それもそうね」
「それで、彼女達はもういいのかな?」
「ああ、そうね。ちょっと聞いてみるね。ねえ……」

 エリスは野盗に殺害された仲間の遺品を集めていた女性達の側まで行くとこれから領主代行のところまで歩きで戻ることを説明する。その後、彼女達がどうしたいのかを確認する。

「帰りたい場所が私達の途中なら、同行は可能だけど?」
「それなら……」

 女性の代表として、チェルシーという三十歳手前くらいの人が一歩前に出て来てエリスに近くの村でいいのでとお願いして来た。

 聞けば、女性達の中には俺達がいた街『エンディ』出身の人はいないらしい。

 まずは依頼主である領主代行にお伺いを立てる必要もあるので、日が暮れない内にと来た道を戻っていく。

「じゃあ、俺はゴルドさんに預けてくるから。領主代行への説明と女性達のフォローはお願いね」
「ねえ、ソルト。そのことなんだけどね」
「ん?」
「あのさ……」

 領主代行のところまで戻って来たので、俺は野盗の生き残りをゴルドさんに引渡しに行くからとエリスに告げるとエリスからは女性達が落ち着くまで屋敷で保護することが出来ないかと話す。

「俺はいいけどさ。彼女達はいいの?」
「それはまだ聞いてないけど……」
「じゃあ、ありがた迷惑になるかもしれないから、ちゃんと確認した方がいいよ」
「そうね。うん、分かったわ。でも、もし彼女達が望んだらお願いしてもいいかな」
「ああ、いいぞ」
「ありがとう」
「エリスが礼を言うのはちょっと違う気がするけど」
「いいの! 細かいこと気にするとハゲるよ」
「ハゲないし!」
「「ぷっ……」」

 エリスが女性達に確認してもらっている間にゴルドさんに念話で追加で三人、ご遺体で八人だと伝えると、短く嘆息してから了解と返事が来た。

「エリス、そっちは?」
「終わったわよ。屋敷に行くことを了承してくれたわ」
「そうか。なら、エリスとシーナ、それにリリスにカスミもお願いしていいかな」
「「え~」」
「ん? どうしたんだ?」
「だって……」
「あ~ソルト、この子達は私と入れ替わりに護衛に付くと思っていたみたいよ」
「そういうことか。なら、シルヴァ「そりゃ約束が違うんじゃないか?」……そうだな」

 ソルトはそういうことならシルヴァ達を戻そうかと言ったところで、強めの殺気が混じった視線がシルヴァの方から向けられていた。

「……そういうことだ。すまない」
「……分かりました」
「ありがとうな」
「でも、どこか一日くらいはいいですよね?」
「……」
「いいですよね!」
「あ、ああ。分かったよ」

 まずは女性達とエリス、シーナ達と一緒に屋敷の庭に転移する。転移した瞬間にソルト達に気付いた子供達が走り寄ってくる。

「「「おかえり~」」」
「ただいま。でも、ちょっと届に来ただけだから、すぐに帰らないとダメなんだ。ゴメンね」
「「「え~」」」
「はいはい、お客様もいるんだから、ほら。ティア達を呼んで来てね」
「「「は~い!」」」

 エリスのお願いに素直に屋敷の中に入り、屋敷を管理している中心的人物であるティアを連れて来た。

「もう、お客様って誰なの? って、ソルトさんにエリスさん……それに……あ~確かにお客様ね。いいわ、任せてください」
「ごめんね、ティア」
「いいの。私達も似たようなものだったしね。じゃあ、先ずは中に入って貰って。お風呂に入って食事をしてからにしましょう。はい、入って入って!」
「えっと……」
「いいから、入って。ほら、あなた達も」
「「「……はい」」」

 皆が屋敷に入って行くのを確かめたエリスはソルトに「じゃあ、頑張ってね」とだけ言って、自分も屋敷の中へと入る。

「後はエリスに任せれば大丈夫っと、俺はゴルドさんのところに行くか。ハァ~気が重いな」

 詰所に行くと「遅い!」とゴルドに言われたソルトは「ゴメンね」と軽く頭を下げる。

「じゃあ、野盗のなれの果てはココに出してくれ」
「いいの?」
「構わん。他に出せるところもないだろう」
「じゃあ、出すよ」
「うわぁ~コレはまた……」

 ゴルドに指示された場所はそれほど広くはない訓練場の一角で、ゴルドの他に手配書を片手に検分に来た衛兵の前で無限倉庫から野盗だった物を並べて出すと衛兵が呟いた。

「じゃあ、生き残りを連れて来るから」
「ああ、頼む。俺は明日の朝に呼びに来てくれ」
「分かったよ」

 その後、領主代行のところに転移したソルトは、生き残り三人に目隠しをしてから、詰所へと転移した。

 いきなり現れたソルトに驚く衛兵もいたがゴルドの「気にするな」の一言で黙ったしまった。

「じゃあ、よろしくね」
「おう」

 ソルトが転移した後、ゴルドは「こんなのが王都に着くまで後何回あるんだろうな」と予言めいたことを呟いてしまう。
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