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第五章 変わりゆく世界、変わらない世界
第7話 フラグは立たせてから折る
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ソルトがギルマスにほぼすべてのことを話してから一週間が過ぎた頃、ギルマスから呼び出されたソルトはシーナと一緒にギルマスの執務室を訪ねる。
「まあ、座ってくれ。今日はシーナが一緒か」
「それで、話って?」
「まあ、そう焦るな。実はな領主からの返事があった。まずは当事者であるソルトにゴルド、それから、シーナにノア、出来ればガネーシャにも会って確認したいと言ってるんだがな」
「……」
「ダメか?」
「先ずは私とゴルド、それにギルマスだけじゃダメですか?」
「どうした? 何がダメなんだ?」
「俺は領主のことをよく知らない。それに、ごめんねシーナ」
ギルマスに聞かれたソルトは、一瞬考えた後に口にする。そして、その内容がシーナにとっていい話じゃないので、シーナに一言謝り、シーナは黙った首を横に振る。そして、ソルトはそれを認めると話しを続ける。
「俺はそんな人の前にシーナとか人族でない種族の女性を連れて行くのは不安でしかない」
「まあ、俺が言うのもなんだが……お前が心配するのも分かる。誰も皆、美形だしな。でも、領主は決して、そんな人じゃないぞ」
「でも、好奇心だけで呼び出すなんて人が俺には信じられない。話だけなら、俺とゴルドさんだけで十分なハズだから」
ソルトの言葉にギルマスが領主はそんな人間じゃないと弁明するが、それでも好奇心だけで呼び出す領主に対する不信感は拭えないとソルトが言うとギルマスは話を続ける。
「それを言われると困るな。確かにお前以外は好奇心からと言われてもしょうがないな。分かった。面会は俺とお前とゴルドで調整しておこう。その方が問題ないだろう」
ギルマスが『問題ない』と言ったのが、どうも気になったソルトはギルマスに確認する。
「ギルマス。今『問題ない』と言ったのは、他に意味があるのか?」
ソルトの言葉にギルマスの顔が曇る。
「ハァ~そういうところに気付くなよ。領主にとっては出来るなら、知られたくはない話しだろうしな」
「知られたくない?」
「ああ、問題は領主じゃなく、領主の息子だ。これがまた、どうして、あんな人格者の領主の息子なのかと不思議に思うほどのクズっぷりでな。今は、領主の家で軟禁中だ」
「なら、尚更ゴルドさん以外のメンバーは連れて行けないね。それにそんな息子を放置している領主も怪しく思えてくるよ」
「まあ、そう言うな。確かに息子はクズだが、長子なんでな。そう簡単に始末することも出来ないって理由だ。その代わりと言ってはなんだが、次男が出来た子でね。領主もなんとか、この次男に引き継げないかと逡巡しているんだよ」
「でも、それとシーナ達を呼ぶのは別ですよね? 何か意図があるような気がするんですけど」
「ふむ。そうだな。分かったよ。領主との面会は俺、ゴルド、ソルトの三人で調整する。それでいいな」
「それで頼むね」
「ああ、なんとかしよう。しかし、嫁さん候補が多いのも考えものだな。俺は一人でよかったよ」
「な、何人もって、俺は誰とも婚約してないからな!」
「え!」
「え? って、シーナ。シーナもそれは知っているだろ?」
「でも、皆は『自分がソルト(さん)の婚約者だ』って言ってますよ? 特にサクラさんとノアさんは一生離れないって言ってますし……」
「それは知っているけど、それと婚約は別でしょ?」
「そうかも知れないですけど、一生連れ添うのなら夫婦も同然なのでは?」
「違うね。それは家族であって、夫婦じゃないよ」
「夫婦も家族も一緒なんじゃないんですか?」
「違うよ。家族の場合は例え好きでも手を出すことはないからね」
「でも、レイさんの話では家族間でも好きならそういうこともあるって教えてくれましたよ?」
「アイツは……だから、それは」
「ソルト、もういい。そう言う話はここじゃなく、家でしてくれ。それじゃ、ソルト。領主との面会が決まったら、改めて知らせる。それまで待っててくれ」
「分かったよ。さあ、シーナ帰ろうか」
「今日のことは言い付けますからね。私は知りませんよ」
「シーナ……」
「ふっ。相変わらず尻には敷かれているみたいだな。まあ、それが上手くいく秘訣なんだろうな」
「ギルマスまで……」
「いいから、お前に出来ることは土産でも買って帰り、ご機嫌をとることだな」
「え~なんで俺が」
「お土産ですか。じゃあ私が選びますね。さあ、行きましょう! ソルトさん」
シーナはソルトの腕を引くとソファから立ち上がり、ギルマスの執務室から出て行く。
そして、そんな二人を見送るとギルマスは一人呟く。
「これがフラグってやつなのかな……すまんな、ソルト」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
ギルマスからの返事をもらった領主は、その返事を握りつぶす。
「ダメだったか。女でも宛がえば大人しくなると思ったんだがな。それも亜人種なら誰も傷つくことなくことが収まると思ったのに。うまく行かないもんだな」
ギルマスが執務室でソファに座り嘆息すると、執務室の扉が乱暴に開かれ、若い男がズカズカと中に入ってくる。
「親父、俺に女を紹介してくれるって話はどうなった? なんか聞いた話じゃとびっきりの別嬪から選び放題だと聞いたんだけどさ?」
「ああ、その話なら、流れた」
「ハァ~嘘だろ? 親父も言ってたじゃないか、単なる冒険者の一人だから領主の言うことなら、聞くはずだって」
「まあな。普通の冒険者ならな。でもな、その冒険者が普通じゃなかった。そういう話だ」
「納得出来ねぇ。紹介してくれないなら、俺の好きにやらせてもらう。いいよな?」
「好きにしろ! でも、一つ言っておくぞ」
「分かってるよ。領主の息子だとバレないようにするし、俺が直接手を出すこともしない。親父は今まで通り、いい領主でいられるようにする。そういうことだろ?」
「分かっているのなら、いい。だが、ギルマスにはどうもお前の本性がバレているような気がする。いいな、気をつけるんだぞ」
「分かったよ。親父」
「お前がダメなら、次は弟に任せることになる。だが、そうなったら、この街はダメになる。分かったな」
「くどいぞ親父。何が一番ダメなのかは分かっているから安心しろって」
「ふん! いいから、さっさと行け」
領主の息子『ギラン』が執務室から出て行くのを領主は黙って見送る。
「まあ、座ってくれ。今日はシーナが一緒か」
「それで、話って?」
「まあ、そう焦るな。実はな領主からの返事があった。まずは当事者であるソルトにゴルド、それから、シーナにノア、出来ればガネーシャにも会って確認したいと言ってるんだがな」
「……」
「ダメか?」
「先ずは私とゴルド、それにギルマスだけじゃダメですか?」
「どうした? 何がダメなんだ?」
「俺は領主のことをよく知らない。それに、ごめんねシーナ」
ギルマスに聞かれたソルトは、一瞬考えた後に口にする。そして、その内容がシーナにとっていい話じゃないので、シーナに一言謝り、シーナは黙った首を横に振る。そして、ソルトはそれを認めると話しを続ける。
「俺はそんな人の前にシーナとか人族でない種族の女性を連れて行くのは不安でしかない」
「まあ、俺が言うのもなんだが……お前が心配するのも分かる。誰も皆、美形だしな。でも、領主は決して、そんな人じゃないぞ」
「でも、好奇心だけで呼び出すなんて人が俺には信じられない。話だけなら、俺とゴルドさんだけで十分なハズだから」
ソルトの言葉にギルマスが領主はそんな人間じゃないと弁明するが、それでも好奇心だけで呼び出す領主に対する不信感は拭えないとソルトが言うとギルマスは話を続ける。
「それを言われると困るな。確かにお前以外は好奇心からと言われてもしょうがないな。分かった。面会は俺とお前とゴルドで調整しておこう。その方が問題ないだろう」
ギルマスが『問題ない』と言ったのが、どうも気になったソルトはギルマスに確認する。
「ギルマス。今『問題ない』と言ったのは、他に意味があるのか?」
ソルトの言葉にギルマスの顔が曇る。
「ハァ~そういうところに気付くなよ。領主にとっては出来るなら、知られたくはない話しだろうしな」
「知られたくない?」
「ああ、問題は領主じゃなく、領主の息子だ。これがまた、どうして、あんな人格者の領主の息子なのかと不思議に思うほどのクズっぷりでな。今は、領主の家で軟禁中だ」
「なら、尚更ゴルドさん以外のメンバーは連れて行けないね。それにそんな息子を放置している領主も怪しく思えてくるよ」
「まあ、そう言うな。確かに息子はクズだが、長子なんでな。そう簡単に始末することも出来ないって理由だ。その代わりと言ってはなんだが、次男が出来た子でね。領主もなんとか、この次男に引き継げないかと逡巡しているんだよ」
「でも、それとシーナ達を呼ぶのは別ですよね? 何か意図があるような気がするんですけど」
「ふむ。そうだな。分かったよ。領主との面会は俺、ゴルド、ソルトの三人で調整する。それでいいな」
「それで頼むね」
「ああ、なんとかしよう。しかし、嫁さん候補が多いのも考えものだな。俺は一人でよかったよ」
「な、何人もって、俺は誰とも婚約してないからな!」
「え!」
「え? って、シーナ。シーナもそれは知っているだろ?」
「でも、皆は『自分がソルト(さん)の婚約者だ』って言ってますよ? 特にサクラさんとノアさんは一生離れないって言ってますし……」
「それは知っているけど、それと婚約は別でしょ?」
「そうかも知れないですけど、一生連れ添うのなら夫婦も同然なのでは?」
「違うね。それは家族であって、夫婦じゃないよ」
「夫婦も家族も一緒なんじゃないんですか?」
「違うよ。家族の場合は例え好きでも手を出すことはないからね」
「でも、レイさんの話では家族間でも好きならそういうこともあるって教えてくれましたよ?」
「アイツは……だから、それは」
「ソルト、もういい。そう言う話はここじゃなく、家でしてくれ。それじゃ、ソルト。領主との面会が決まったら、改めて知らせる。それまで待っててくれ」
「分かったよ。さあ、シーナ帰ろうか」
「今日のことは言い付けますからね。私は知りませんよ」
「シーナ……」
「ふっ。相変わらず尻には敷かれているみたいだな。まあ、それが上手くいく秘訣なんだろうな」
「ギルマスまで……」
「いいから、お前に出来ることは土産でも買って帰り、ご機嫌をとることだな」
「え~なんで俺が」
「お土産ですか。じゃあ私が選びますね。さあ、行きましょう! ソルトさん」
シーナはソルトの腕を引くとソファから立ち上がり、ギルマスの執務室から出て行く。
そして、そんな二人を見送るとギルマスは一人呟く。
「これがフラグってやつなのかな……すまんな、ソルト」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
ギルマスからの返事をもらった領主は、その返事を握りつぶす。
「ダメだったか。女でも宛がえば大人しくなると思ったんだがな。それも亜人種なら誰も傷つくことなくことが収まると思ったのに。うまく行かないもんだな」
ギルマスが執務室でソファに座り嘆息すると、執務室の扉が乱暴に開かれ、若い男がズカズカと中に入ってくる。
「親父、俺に女を紹介してくれるって話はどうなった? なんか聞いた話じゃとびっきりの別嬪から選び放題だと聞いたんだけどさ?」
「ああ、その話なら、流れた」
「ハァ~嘘だろ? 親父も言ってたじゃないか、単なる冒険者の一人だから領主の言うことなら、聞くはずだって」
「まあな。普通の冒険者ならな。でもな、その冒険者が普通じゃなかった。そういう話だ」
「納得出来ねぇ。紹介してくれないなら、俺の好きにやらせてもらう。いいよな?」
「好きにしろ! でも、一つ言っておくぞ」
「分かってるよ。領主の息子だとバレないようにするし、俺が直接手を出すこともしない。親父は今まで通り、いい領主でいられるようにする。そういうことだろ?」
「分かっているのなら、いい。だが、ギルマスにはどうもお前の本性がバレているような気がする。いいな、気をつけるんだぞ」
「分かったよ。親父」
「お前がダメなら、次は弟に任せることになる。だが、そうなったら、この街はダメになる。分かったな」
「くどいぞ親父。何が一番ダメなのかは分かっているから安心しろって」
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