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第四章 見えない敵意

第10話 それはゴニョゴニョです

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「そんなこと言わないでやってあげなさい」
「ブランカ……まあ、そうだよね。一度はやるって言ったんだし。よし、じゃヤルか」
ソルトがガネーシャに向かってニヤリと笑う。
「ヤルって……ちょっと待て! 何をヤルと言うんだ」
「だって、『ヤラないか?』って聞くぐらいだから『ヤル』で合ってるんじゃないの?」
「そうか……って、違う! そうじゃないだろ。確かにそれはそれで合っているのかもしれないが、俺に使う言葉じゃないだろ!」
「もう、うるさいな。じゃあ、え~とブランカが後ろから羽交い締めにして……サクラが両足を動かないように押さえてね。あとは、右手をレイ、左手をカスミで押さえて」
「まあ、何をするのかしら。分かったわ。任せて」
「足か……蹴ったら、倍返しな」
「任せて!」
「大丈夫かよ」
その間にソルトが簡易的な手術台を作り出すが、その手術台の上にはガネーシャの体に合わせて、頭、首、腰、両肘、両手首、両腿、両膝、両足首に拘束具が取り付けられている。
「よし、これでいいかな。じゃ、ガネーシャを寝かせて。固定するのも手伝ってね」
ブランカ達四人が頷き、ガネーシャを手術台に寝かせると、まずは足からと手空きだったリリス達で拘束具を使ってガネーシャの足首、膝、太腿、腰と固定していく。
「何をするつもりだ!」
そう言って暴れ出したガネーシャだったが、腰を拘束具で固定された時点で体が動かせないことが分かり、半ば投げ遣りに「好きにしろ」と言って大人しくなる。
「最初から大人しくてればいいのに」
「うるさい!」
ガネーシャの腕を拘束具で固定しているレイにそんなことを言われ反論するが、既に首もも頭も固定されている為にレイの顔すら見ることが出来ない。
「くっ屈辱だな」
「チッチッチ、違うね。そこは『くっ殺せ!』が正解だよ! アイタッ!」
「バカ言うんじゃないの」
『クッコロ』を言わせようとするレイに対しレイの後ろからエリスがレイの頭を小突く。

「よし、準備出来たな。じゃあ、エリス。すまんが男達を家の中に押し込んでくれ」
「あ、そうよね。じゃシルヴァにゴルド、ショコラにコスモは大人しく家の中で待っててね」
「なんだ俺達はダメか?」
「そうだぜ、別にやましいことをする訳じゃないんだろ?」
「ふむ、確かに興味はあるが……」
「もう、ちゃんとソルト兄さんの言うことを聞かないとでしょ」
ゴルドにコスモ、シルヴァが不満を漏らしたのをショコラが窘めて家の方へと連れて行く。
四人が家の中に入るのを確認してからソルトがブランカに家全体に障壁と防音結界をお願いする。
「出てこないとは思うけど、一応しといた方がいいわね」
ブランカがソルトに言われた通りに四人が入った家に障壁と防音結界を張る。

「ガネーシャ。とりあえず、どうなるか分からないから体を固定させてもらった。ハッキリ言って、俺も初めてだし……お前の体にどう影響するか分からないからな」
「それは分かった。だけど今はお前以外に出来る奴はいない……そうだな」
ソルトがガネーシャに向かって頷く。
「なら、後はお前に任せる。どうせ、俺はお前達の街を魔物に襲わせようとしたからな。好きにするがいい」
「別にそこまではしないけど、面倒くさいなぁ~まあ、いいや。ちょっと体に触るよ」
ガネーシャに断り下腹部の辺りを触診する。
『ルー、補助お願いね』
『分かりました。あ、ソルトさん。その辺りです』
『ここ?』
『はい、その辺りがちょうど……ゴニョゴニョの辺りになります』
「なるほど。じゃレイ、ここからはお前の出番だ」
「え? なんで私が?」
「なんでって、俺に言わせるなよ。ガネーシャの臓器に異常があるから、ここは『聖女』のお前に任せる」
「え~そんなの私だって分からないわよ」
「大丈夫、ちゃんとサポートするから」
「分かったわよ。そのかわりちゃんとサポートしてよね」
レイがそう言ってソルトから治療を引き継ぐ。そしてレイをガネーシャの腰の位置に立たせるとソルトがレイの後ろに回り手を取って患部へと導く。
「患部がこの辺りな。左右ほぼ同位置にあるから。治療してくれ」
「ここなの? そうね確かにここが異常なら、そうなるのかな」
「分かるのか?」
「うん。前にテレビでやってたのを見た」
「治せそうか?」
「ちょっと待って。あ、分かったかも」
「じゃあ、後は任せた」
ソルトがそう言ってレイの手に載せていた自分の手を離すと、手術台からも離れる。
「別に握ったままでもよくない?」
「いや、感触が変わるかもしれないからレイだけでやった方がいいだろ」
「もう、そういうことじゃないんだけどな~」
「いいから、マジメにやってくれ」
「はいはい。分かりましたよ。え~っと、確かテレビでは……うん、やっぱりこの炎症が問題だよね。じゃ、治りますように」
レイが患部に手を当てたままで唱えるとガネーシャの体が光り出す。
ガネーシャも自分の体がいきなり光り出したのに驚くが、今は動かせるのが眼球と指先だけなのでどうしようも出来ない。
そしてそれを見たエリスがソルトに耳打ちする。
「ねえ、あれって大丈夫なの?」
「多分、大丈夫だろ。前にもあんなことあったし」
「そうなんだ」

やがて、光が納まると半ば放心状態のガネーシャとやりきった感じのいい顔をしているレイがそこに立っていた。

「レイ、うまくいったのか?」
「どうなの?」
なかなか話さないレイにソルトとエリスが確認するとレイがソルト達に向かってVサインで答える。

「上手くいったってことか?」
「そうなの?」
「うん、多分成功したよ。さすがにすぐには効果は出ないと思うけど、二、三日もすれば何かしらの兆候は見えると思うよ。後はガネーシャがそれで納得すればいいんだけどね」
そう言って、レイがガネーシャの顔を見る。
「いいか、拘束具を外していくからな。いいか、暴れるなよ」
「暴れない。暴れはしないが、何をした? 体の中心が熱くてしかたがないんだ」
ソルトがレイを見て、ガネーシャに説明するように頼むとレイがガネーシャの手を引いて、空いている家に一緒に入る。
「ねえ、なんでここで説明しないの?」
エリスがソルトに対し説明を求めるが、ソルトとしても内容が内容なだけに説明に窮する。
「レイ~早く帰って来てくれよ~」
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