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第三章 遺跡の役目
第9話 それは秘密にしたかった
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「あ、そうだ。忘れてた」
ソルトはそう言うと、板きれになにやら書き込むと紐を通す。そして、レイの首にその紐を掛ける。
「なに? ソルト、これどういうつもり?」
「どうもこうも、そのままだ。いいか、ちゃんと守れよ」
「え~なんで私ばっかり!」
「なんでじゃないだろ。いいから、ちゃんと反省しろよ」
ソルトがレイに言い聞かせると、屋敷を出る。
「姉さんは、兄さんになにされたの?」
「ショコラ~」
ショコラに慰めて貰おうとしたレイがショコラに飛びかかろうとしたが、ショコラはサッと避ける。
「もう、なんで避けるの!」
「いや、今のはなんとなく避けなきゃいけない気がして……」
「姉ちゃん。そんなことより姉ちゃんのその首から下げているのにはなんて書かれているんだ?」
「ああ、これ。これはね「『餌づけ禁止! 間食を見付けたら取り上げて下さい』って書かれているわ」……エリス。なにもそこまで正確に言わなくてもいいじゃない!」
「なに言ってんの。この子、ショコラでしょ? こんなにぽっちゃりさんになっちゃって……コスモはまあ、問題ないわね」
「もしかして、僕のせいで怒られてるの?」
「ショコラ、あなたは気にすることはないの。悪いのは全部レイなんだから。でも、少しは運動しなさいね」
「「ふふふ……」」
レイを窘めるエリスの横で笑う女性二人にショコラ達が気付く。
「もしかして、姉さん?」
「姉貴なのか?」
頭の上にある犬耳が垂れ痩身で色白の銀髪を腰まで伸ばした女性がこくりと頷く。その横ではガッチリとした褐色で金髪で短髪の女性がニカッと笑う。
「ちょっと失敗したが、とりあえずは成功だと思うぞ。まあ、お前達も似たようなもんだな」
カスミが、頭の上にあるケモ耳と尻尾を触りながら話す。
「こんな中途半端な人化では、お兄様に会わせる顔がありません」
「そうかな。かえってツボだと思うけどね」
「ツボ……ですか?」
「そう、ソルトのツボだと思うよ」
「お兄様の……それは、本当でしょうか?」
リリスがレイにぐっと近寄り顔を近付け、本当だと言ってという風にレイの顔を覗き込む。
「は! そう言えば、お兄様は?」
「ソルトなら、買い物で出掛けているよ」
リリスが、屋敷の玄関目掛けて走ろうとしたところをエリスとレイに抑えられる。
「なにをするんですか! 放して下さい!」
「ショコラも黙って見てないで、手伝いなさいよ!」
「あ、はい」
「なぜですか。放して下さい!」
リリスはレイ達に腕を押さえられ、歩くこともままならない。
「ねえ、ここで待ってればソルトは帰って来るんだから、大人しく待ってなさいよ」
「イヤです! 私は……私の人化した姿を早くお兄様に見せたいだけなんです! 放して下さい!」
「だから、ダメなんだけどね……」
エリスが嘆息し、ティア達に旦那の目を覆って貰う。
今のリリス達の格好は単にシーツを身にまとっただけだ。こんな格好で街中に出したら襲われるのは間違いないだろうというのはティア達でも分かる。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
バイスの所で靴を揃えようと思ったソルトだったが、足のサイズを確認していなかったことに気付き、とりあえず間に合わせで一番大きな革サンダルを購入する。
「そういや、リリス達の靴も用意しないとな。ショコラ館でも出来たんだから、リリスが失敗することはないだろ。でも、どれくらいの大きさか分からないぞ」
う~んと悩んだソルトだが、とりあえず自分のより大きめでいいかと手頃な大きさの革サンダルを合わせて購入する。
「そうだ。リリス達に人化が成功したお祝いでなにか買っていってあげるか」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「ただいま~」
「お兄様!」
屋敷の玄関を開けたソルトに薄着の女性が抱き着いてくる。ソルトは思わず両手を挙げ、自分はなにもしてませんと意思表示をする。
「えっと……誰ですか?」
「お兄様、私です! 分かりませんか?」
「え? 俺に妹はいないけど?」
「そんな……」
ソルトに抱き着いている女性が今にも泣き出しそうな顔で、ソルトの顔を覗き込んでいる。すると、屋敷の奥から笑い声が聞こえてくる。
「もう、レイ! 笑いすぎよ」
「だって……ひぃ……あ、あのソルトがあんなに狼狽えるなんて……ぷっ、ダメ……」
ソルトは抱き着いている女性を剥がすと笑っているレイを睨み付け、どう言うことかと問い詰める。
「ソルト、本当に分からないの?」
「ああ。分からない。俺にはこんな綺麗な知り合いはいない」
「そんな……綺麗だなんて……」
ソルトの言葉を聞いて、女性が頬を赤らめる。そんな女性を見て、ソルトはまた訳が分からなくなる。
「降参だ。エリス、教えてくれ」
「あら、もう降参なの?」
「じゃあ、兄さん。私なら分かるかい?」
「え? 君は? 君も俺を兄と言うのか?」
「本当に分からないんだね」
「ごめんなさい。こんなに綺麗な人なら、会ったことを忘れるなんてことはないんだけど……おかしいな~どこで会ったんだろう?」
「綺麗? 私が?」
「ええ、お綺麗ですよ」
「ふふふ、そうか。私は綺麗なんだね」
ソルトはこの女性がなにを言っているのか分からなくなるが、ふとシーツの裾から見え隠れする尻尾と頭の上のケモ耳を見て、一つの答えに辿り着く。
「違ってたら、ゴメン。もしかして、カスミか?」
女性はニカッと笑う。
「やっと気付いたんだな」
そう言って、カスミがソルトを抱き寄せる。
「あ~ずるい!」
リリスもソルトの後ろから抱き着くが、二人ともソルトより少しだけ大きいものだから、二人に抱き着かれると、ソルトは全身が隠れてしまい両腕だけは自由になっていて、その手で女性二人を剥がそうとするが、どうやっても剥がれない。
「なんだい旦那様はモテモテだね~」
「……サクラ、いるの……なら……助け……」
「お? どうやらヤバそうだね。ほら、もうその辺でいいだろ。勘弁してやりな」
「「ああん……」」
サクラに無理矢理ソルトから引き離され、不満そうなリリスとカスミを見て、ソルトがニカッと笑う。
「二人とも『人化』に成功したんだね」
「はい!」
「ああ、兄さんのお陰だ」
また、ソルトに抱き着こうとするリリスとカスミの襟首をサクラが掴んで引き留めようとしたために二人のシーツが剥ぎ取られ、二人ともあられもない姿のままソルトに抱き着くことになり、ティア達が慌てて旦那の目を塞ぐ。
「なにやってんだか……」
そんなソルト達を見てレイとエリスが嘆息する。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「落ち着いた?」
「「はい……すみませんでした」」
「レイ達も笑ってないで早く止めてくれればいいのにさ」
「「それはごめん」」
「そうだ、忘れない内に」
ソルトが無限倉庫から特大の革サンダルを取りだし、ショコラとコスモに履いてみなと渡す。
「「?」」
「ああ、分からないか。ほら、俺も履いてるだろ。これだよ」
そう言って、ソルト自身が履いている革サンダルを指す。
「いいの?」
「いいぞ。履かないとずっと裸足だからな。ちゃんとしたのは後で一緒に買いに行こう」
「お! いいね……って、なんだよ、姉貴」
嬉しそうに革サンダルを履くショコラ達を見て、カスミが呟く。
「ずるい!」
「そうです! ずるいです!」
「また、ずるいか……ほら、リリス達のもあるから。サイズが分からなかったから適当だけど許してな」
無限倉庫から革サンダルを取りだしたソルトは二人の前に置く。
「履いてもいいんですか?」
「ああ、履いてくれ」
リリスはそうっと革サンダルに足を通し、嬉しそうに何度も足下を眺めている。
カスミは走りづらそうだなと、また違う意見を言っている。
「ちゃんとしたのは、後で買いに行くとしてだ。エリス、リリス達の格好はどうにかできなかったのか?」
「したわよ。私だって、どうにかしようとしたわよ。でも、無理だったのよ!」
「無理?」
エリスの発言にソルトが首を傾げる。
「見たら分かるでしょ! 二人の体を見てみなよ。私もレイも太刀打ち出来ないプロポーションなの! 負けてるのよ! 全部が! 言わせないでよ!」
「え~じゃあ、しばらくはこのままなの? せめて、パンツとか下着だけでも用意しようよ」
「姉さん達、パンツ履いてないんだ?」
「そうなのか? それだと、人の社会じゃ困るって、俺達は言われたぞ」
「そうだよ。だから、俺達は兄さんにパンツを履かせて貰ったんだし。ねえ」
「おう、そうだぞ。二人とも。俺も兄ちゃんにパンツを履かせて貰ったぞ」
「な、なにを言い出すんだ。お前達は!」
ショコラ達にこれ以上変なことを言わないようにと止めようとするが、間に合うはずもなく、リリス達がまた騒ぎ出す。
「ずるいです! 私だって履かせて欲しいです!」
そう言って、リリスが立ち上がると体を隠しているシーツを捲ってソルトに懇願する。
「ぶっ……リリス。いいから、裾を下ろしなさい。レイ、エリス、二人を部屋に連れて言って、サイズを測ってから必要な物を買ってきてくれ。ついでにサクラのもな」
「私のはついでなのか?」
「……分かった。サクラは後で連れて行くから。二人のを早く用意してくれ。頼む!」
「分かったわよ。もう少しソルトの慌てる所を見たかったけど、ティア達にも悪いしね。この辺りでいいか」
「そうね。じゃ、リリス、カスミ、部屋に行くわよ」
「いいです。ここで測って下さい!」
「ああ、私もここでいいぞ」
二人の発言にソルトが嘆息する。
「いいか。二人とも。その……なんだ……女性の裸と言うのは、自分が好きな人にだけ見せる特別なものなんだ。だから、そんなに簡単に見せるとか言うんじゃないよ」
「でも、お兄様なら見てもらっても構わないのですから、ここでもいいじゃないですか?」
「だから、ここには俺以外の男がいるだろ。それに早くしないとワーグの目がティアに潰されてしまうから、分かってくれよ」
リリスがワーグの方を見ると、リリスがワーグの後ろからしっかりと押さえつけていた。
「分かったか? それに女性も自分の裸以外を見て欲しくないと思うからああなるんだよ。分かったなら、部屋に行ってくれ。エリス、頼む」
「ふぅ……リリスもカスミもソルトの言ってることが分かったのなら、部屋に行くわよ」
「「はい……すみませんでした」」
「見た目だけでなく、数字でもハッキリと負けを認めさせられるのか~」
部屋への階段を上がっていくエリス達四人を見ながら、ソルトはどうしてこうなったと頭を抱えるのと同時にまだ反応なしかと項垂れる。
ソルトはそう言うと、板きれになにやら書き込むと紐を通す。そして、レイの首にその紐を掛ける。
「なに? ソルト、これどういうつもり?」
「どうもこうも、そのままだ。いいか、ちゃんと守れよ」
「え~なんで私ばっかり!」
「なんでじゃないだろ。いいから、ちゃんと反省しろよ」
ソルトがレイに言い聞かせると、屋敷を出る。
「姉さんは、兄さんになにされたの?」
「ショコラ~」
ショコラに慰めて貰おうとしたレイがショコラに飛びかかろうとしたが、ショコラはサッと避ける。
「もう、なんで避けるの!」
「いや、今のはなんとなく避けなきゃいけない気がして……」
「姉ちゃん。そんなことより姉ちゃんのその首から下げているのにはなんて書かれているんだ?」
「ああ、これ。これはね「『餌づけ禁止! 間食を見付けたら取り上げて下さい』って書かれているわ」……エリス。なにもそこまで正確に言わなくてもいいじゃない!」
「なに言ってんの。この子、ショコラでしょ? こんなにぽっちゃりさんになっちゃって……コスモはまあ、問題ないわね」
「もしかして、僕のせいで怒られてるの?」
「ショコラ、あなたは気にすることはないの。悪いのは全部レイなんだから。でも、少しは運動しなさいね」
「「ふふふ……」」
レイを窘めるエリスの横で笑う女性二人にショコラ達が気付く。
「もしかして、姉さん?」
「姉貴なのか?」
頭の上にある犬耳が垂れ痩身で色白の銀髪を腰まで伸ばした女性がこくりと頷く。その横ではガッチリとした褐色で金髪で短髪の女性がニカッと笑う。
「ちょっと失敗したが、とりあえずは成功だと思うぞ。まあ、お前達も似たようなもんだな」
カスミが、頭の上にあるケモ耳と尻尾を触りながら話す。
「こんな中途半端な人化では、お兄様に会わせる顔がありません」
「そうかな。かえってツボだと思うけどね」
「ツボ……ですか?」
「そう、ソルトのツボだと思うよ」
「お兄様の……それは、本当でしょうか?」
リリスがレイにぐっと近寄り顔を近付け、本当だと言ってという風にレイの顔を覗き込む。
「は! そう言えば、お兄様は?」
「ソルトなら、買い物で出掛けているよ」
リリスが、屋敷の玄関目掛けて走ろうとしたところをエリスとレイに抑えられる。
「なにをするんですか! 放して下さい!」
「ショコラも黙って見てないで、手伝いなさいよ!」
「あ、はい」
「なぜですか。放して下さい!」
リリスはレイ達に腕を押さえられ、歩くこともままならない。
「ねえ、ここで待ってればソルトは帰って来るんだから、大人しく待ってなさいよ」
「イヤです! 私は……私の人化した姿を早くお兄様に見せたいだけなんです! 放して下さい!」
「だから、ダメなんだけどね……」
エリスが嘆息し、ティア達に旦那の目を覆って貰う。
今のリリス達の格好は単にシーツを身にまとっただけだ。こんな格好で街中に出したら襲われるのは間違いないだろうというのはティア達でも分かる。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
バイスの所で靴を揃えようと思ったソルトだったが、足のサイズを確認していなかったことに気付き、とりあえず間に合わせで一番大きな革サンダルを購入する。
「そういや、リリス達の靴も用意しないとな。ショコラ館でも出来たんだから、リリスが失敗することはないだろ。でも、どれくらいの大きさか分からないぞ」
う~んと悩んだソルトだが、とりあえず自分のより大きめでいいかと手頃な大きさの革サンダルを合わせて購入する。
「そうだ。リリス達に人化が成功したお祝いでなにか買っていってあげるか」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「ただいま~」
「お兄様!」
屋敷の玄関を開けたソルトに薄着の女性が抱き着いてくる。ソルトは思わず両手を挙げ、自分はなにもしてませんと意思表示をする。
「えっと……誰ですか?」
「お兄様、私です! 分かりませんか?」
「え? 俺に妹はいないけど?」
「そんな……」
ソルトに抱き着いている女性が今にも泣き出しそうな顔で、ソルトの顔を覗き込んでいる。すると、屋敷の奥から笑い声が聞こえてくる。
「もう、レイ! 笑いすぎよ」
「だって……ひぃ……あ、あのソルトがあんなに狼狽えるなんて……ぷっ、ダメ……」
ソルトは抱き着いている女性を剥がすと笑っているレイを睨み付け、どう言うことかと問い詰める。
「ソルト、本当に分からないの?」
「ああ。分からない。俺にはこんな綺麗な知り合いはいない」
「そんな……綺麗だなんて……」
ソルトの言葉を聞いて、女性が頬を赤らめる。そんな女性を見て、ソルトはまた訳が分からなくなる。
「降参だ。エリス、教えてくれ」
「あら、もう降参なの?」
「じゃあ、兄さん。私なら分かるかい?」
「え? 君は? 君も俺を兄と言うのか?」
「本当に分からないんだね」
「ごめんなさい。こんなに綺麗な人なら、会ったことを忘れるなんてことはないんだけど……おかしいな~どこで会ったんだろう?」
「綺麗? 私が?」
「ええ、お綺麗ですよ」
「ふふふ、そうか。私は綺麗なんだね」
ソルトはこの女性がなにを言っているのか分からなくなるが、ふとシーツの裾から見え隠れする尻尾と頭の上のケモ耳を見て、一つの答えに辿り着く。
「違ってたら、ゴメン。もしかして、カスミか?」
女性はニカッと笑う。
「やっと気付いたんだな」
そう言って、カスミがソルトを抱き寄せる。
「あ~ずるい!」
リリスもソルトの後ろから抱き着くが、二人ともソルトより少しだけ大きいものだから、二人に抱き着かれると、ソルトは全身が隠れてしまい両腕だけは自由になっていて、その手で女性二人を剥がそうとするが、どうやっても剥がれない。
「なんだい旦那様はモテモテだね~」
「……サクラ、いるの……なら……助け……」
「お? どうやらヤバそうだね。ほら、もうその辺でいいだろ。勘弁してやりな」
「「ああん……」」
サクラに無理矢理ソルトから引き離され、不満そうなリリスとカスミを見て、ソルトがニカッと笑う。
「二人とも『人化』に成功したんだね」
「はい!」
「ああ、兄さんのお陰だ」
また、ソルトに抱き着こうとするリリスとカスミの襟首をサクラが掴んで引き留めようとしたために二人のシーツが剥ぎ取られ、二人ともあられもない姿のままソルトに抱き着くことになり、ティア達が慌てて旦那の目を塞ぐ。
「なにやってんだか……」
そんなソルト達を見てレイとエリスが嘆息する。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「落ち着いた?」
「「はい……すみませんでした」」
「レイ達も笑ってないで早く止めてくれればいいのにさ」
「「それはごめん」」
「そうだ、忘れない内に」
ソルトが無限倉庫から特大の革サンダルを取りだし、ショコラとコスモに履いてみなと渡す。
「「?」」
「ああ、分からないか。ほら、俺も履いてるだろ。これだよ」
そう言って、ソルト自身が履いている革サンダルを指す。
「いいの?」
「いいぞ。履かないとずっと裸足だからな。ちゃんとしたのは後で一緒に買いに行こう」
「お! いいね……って、なんだよ、姉貴」
嬉しそうに革サンダルを履くショコラ達を見て、カスミが呟く。
「ずるい!」
「そうです! ずるいです!」
「また、ずるいか……ほら、リリス達のもあるから。サイズが分からなかったから適当だけど許してな」
無限倉庫から革サンダルを取りだしたソルトは二人の前に置く。
「履いてもいいんですか?」
「ああ、履いてくれ」
リリスはそうっと革サンダルに足を通し、嬉しそうに何度も足下を眺めている。
カスミは走りづらそうだなと、また違う意見を言っている。
「ちゃんとしたのは、後で買いに行くとしてだ。エリス、リリス達の格好はどうにかできなかったのか?」
「したわよ。私だって、どうにかしようとしたわよ。でも、無理だったのよ!」
「無理?」
エリスの発言にソルトが首を傾げる。
「見たら分かるでしょ! 二人の体を見てみなよ。私もレイも太刀打ち出来ないプロポーションなの! 負けてるのよ! 全部が! 言わせないでよ!」
「え~じゃあ、しばらくはこのままなの? せめて、パンツとか下着だけでも用意しようよ」
「姉さん達、パンツ履いてないんだ?」
「そうなのか? それだと、人の社会じゃ困るって、俺達は言われたぞ」
「そうだよ。だから、俺達は兄さんにパンツを履かせて貰ったんだし。ねえ」
「おう、そうだぞ。二人とも。俺も兄ちゃんにパンツを履かせて貰ったぞ」
「な、なにを言い出すんだ。お前達は!」
ショコラ達にこれ以上変なことを言わないようにと止めようとするが、間に合うはずもなく、リリス達がまた騒ぎ出す。
「ずるいです! 私だって履かせて欲しいです!」
そう言って、リリスが立ち上がると体を隠しているシーツを捲ってソルトに懇願する。
「ぶっ……リリス。いいから、裾を下ろしなさい。レイ、エリス、二人を部屋に連れて言って、サイズを測ってから必要な物を買ってきてくれ。ついでにサクラのもな」
「私のはついでなのか?」
「……分かった。サクラは後で連れて行くから。二人のを早く用意してくれ。頼む!」
「分かったわよ。もう少しソルトの慌てる所を見たかったけど、ティア達にも悪いしね。この辺りでいいか」
「そうね。じゃ、リリス、カスミ、部屋に行くわよ」
「いいです。ここで測って下さい!」
「ああ、私もここでいいぞ」
二人の発言にソルトが嘆息する。
「いいか。二人とも。その……なんだ……女性の裸と言うのは、自分が好きな人にだけ見せる特別なものなんだ。だから、そんなに簡単に見せるとか言うんじゃないよ」
「でも、お兄様なら見てもらっても構わないのですから、ここでもいいじゃないですか?」
「だから、ここには俺以外の男がいるだろ。それに早くしないとワーグの目がティアに潰されてしまうから、分かってくれよ」
リリスがワーグの方を見ると、リリスがワーグの後ろからしっかりと押さえつけていた。
「分かったか? それに女性も自分の裸以外を見て欲しくないと思うからああなるんだよ。分かったなら、部屋に行ってくれ。エリス、頼む」
「ふぅ……リリスもカスミもソルトの言ってることが分かったのなら、部屋に行くわよ」
「「はい……すみませんでした」」
「見た目だけでなく、数字でもハッキリと負けを認めさせられるのか~」
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