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序章
第10話 第一村人発見!
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ソルト達が魔の森を抜けしばらく歩き、村の門らしき物を見つけた時には既に陽は落ちていた。
門番らしき男に近付くとソルトは村の中に入れてもらえないかと尋ねる。
その門番は成人男性にしては小さく、子供にしては髭面で老け顔だった。
「なんだ、こんなところにヒトか。珍しいな、どこから来た?」
「私たちは、魔の森から来たのよ。いいから、入れてよ。もう、お腹がぺこぺこなの~」
「なに! 魔の森からだと!」
『ピィ~~~~~』
門番の男が持っていた槍を構え、首から下げていた笛を勢いよく吹く。
「え? なにどうしたの?」
「もう、いいから交渉は俺に任せてくれればいいから。お前はなにも喋らずに大人しくしとけよ」
「分かったわよ」
数分もしない内に門が開かれ、中から武装した集団が現れる。
「なになに、どうしたの?」
「さあな、お前が話をややこしくしたからだろ」
「なにそれ? なんで私のせいなのよ」
「多分、魔の森から来たってのが引っかかったんだろ」
「へ~そんなことで。大したことなかったのにね」
「お前はなにもしてないだろうが!」
「そうだっけ?」
「はぁいいから、もう俺がいいと言うまで喋るなよ。頼むぞ」
「分かったわよ」
「そのセリフ、何度聞いたか」
守備隊の隊長らしき威厳を感じさせる男性が一歩前に出る。
「お前らが魔の森から来たと言うのは本当か?」
「はい、気が付いたら森の中にいました」
「そうか。お前らの国の名は?」
「日本と言います」
「ニホン? 聞いたことはないな。ここから遠いのか?」
「さあ? 私達にもここが大陸のどの辺りなのかも見当がつかないので」
「ふむ、差し詰め転移に失敗したとか、そういう類だろうな。よし、見たところ武器の類も持ってなさそうだし、ヒョロっとしているし問題はないだろう。入っていいぞ」
「ありがとうございます。ついでにお聞きしたいのですが、宿屋はありますか?」
「宿か。一軒だけあるが、我慢出来るか?」
「なにをでしょうか?」
「ナニだよ。若い男女ならやることは種族が違っても変わらんだろ? なあ?」
隊長がニヤけた顔でソルトを見る。
「な、ば「はい、そこで構いません」……」
「黙っていろと言ったよな」
ソルトがレイの口を塞いだまま、耳元で言い聞かせるように話す。
「いいのか?」
「はい、お願いします。あ! ただ、私達はこちらで扱える現金を持っていません。どこか換金出来る場所はありますか?」
「なんだ、文無しか。いや、文無しとは言わないが、ここで使える金がないなら一緒か。よし、今日の分は俺が立て替えとくから金が出来たら返してくれればいい。あと、換金場所だが、今日はもう遅い。明日、俺が案内してやろう」
「ありがとうございます。なにからなにまですみません」
「いいって。俺達のことを見下さないだけでも信用出来るってもんさ」
「見下す? 失礼ですが、種族をお聞きしてもいいですか?」
「ああ、俺達はドワーフだ。見て分からんか? こりゃ、とんでもない所から来たみたいだな」
「はい、まあ」
「よし、宿まで案内してやろう。付いてこい。ほら、お前達も今日は解散だ。お疲れ様!」
「「「「「はい!」」」」」
守備隊の人達が解散し、ソルトとレイは隊長の後を黙って着いていく。
「ところで、お前達の名前だが……」
「あ、そうですね。私はソルトで、こっちがレイと言います」
「そうか、俺は守備隊の隊長をしているゴルドだ。まあ、短い間だが、よろしくな」
「「はい」」
ゴルドと一緒に村の中央通りを歩いていくと、看板にベッドの絵が描かれている建物が目に入る。
「ここが村で唯一の宿で『森の憩い亭』だ。ほら、入りな。女将さんはいるかい?」
ゴルドが受付の女性に声をかける。
ソルトも受付の女性を見るがどう見てもドワーフとは思えないスラッとした長身の美女だった。
「ゴルドさん、お久しぶりです。女将さんなら、もうすぐ見えますよ。今日はどうされました?」
「いやな、さっき村に着いたみたいでな、聞くとまだここで使える金を持っていないと言うんだよ。だから、ちょっと俺へのツケってことで二人を泊めてもらえないかと思ってさ」
「それな「あら、ゴルドがそこまで言うなんて珍しいわね」女将さん」
ゴルドが受付のお姉さんになにやら頼み事をしていると階段の上から、年配の女性が降りてくる。
「ああ、この二人は信用出来ると思ってな」
「へえ、ゴルドがね~いいわよ。ゴルドを信用しましょ」
「ありがとう、女将。おい、泊まれるってよ」
「「ありがとうございます」」
「あら? 本当に珍しいわね。ゴルド、どういうこと?」
「ああ、多分だが、こいつらは俺達ドワーフを見たことがないと思うんだ。俺に種族を聞いてくるくらいだしな」
「へえ、亜人に対する差別とか、そういうのもなさそうね」
「だろ?」
「いいわ。私も気にいっちゃったわ。ねえ、あんた達食事は?」
「まだです」
「なら、先に食事を済ませなさい。お代は気にすることないわよ。ちゃんとゴルドに回すからね」
女将さんがソルト達二人にそういうと軽くウィンクをすると、受付のお姉さんにソルト達二人を食堂へと案内させる。
「ちょっと、女将よ。それはひどいんじゃないか」
「ふふふ、多分だけど、あの二人はちゃんと払うわよ。私の勘だけどね」
「そうか、なら俺の勘も女将の勘と一緒だということだな」
「それはどうかしら?」
「まあいい。明日朝になったら、俺があの二人を案内するから、俺が来るまで足止めしといてくれな」
「いいわよ。ちゃんとお代も持ってきてね」
「ぐっ……分かったよ」
ゴルドが女将に二人のことをよろしく頼むと言い残し宿をあとにする。
「ふふふ、なんだか面白くなりそうね」
門番らしき男に近付くとソルトは村の中に入れてもらえないかと尋ねる。
その門番は成人男性にしては小さく、子供にしては髭面で老け顔だった。
「なんだ、こんなところにヒトか。珍しいな、どこから来た?」
「私たちは、魔の森から来たのよ。いいから、入れてよ。もう、お腹がぺこぺこなの~」
「なに! 魔の森からだと!」
『ピィ~~~~~』
門番の男が持っていた槍を構え、首から下げていた笛を勢いよく吹く。
「え? なにどうしたの?」
「もう、いいから交渉は俺に任せてくれればいいから。お前はなにも喋らずに大人しくしとけよ」
「分かったわよ」
数分もしない内に門が開かれ、中から武装した集団が現れる。
「なになに、どうしたの?」
「さあな、お前が話をややこしくしたからだろ」
「なにそれ? なんで私のせいなのよ」
「多分、魔の森から来たってのが引っかかったんだろ」
「へ~そんなことで。大したことなかったのにね」
「お前はなにもしてないだろうが!」
「そうだっけ?」
「はぁいいから、もう俺がいいと言うまで喋るなよ。頼むぞ」
「分かったわよ」
「そのセリフ、何度聞いたか」
守備隊の隊長らしき威厳を感じさせる男性が一歩前に出る。
「お前らが魔の森から来たと言うのは本当か?」
「はい、気が付いたら森の中にいました」
「そうか。お前らの国の名は?」
「日本と言います」
「ニホン? 聞いたことはないな。ここから遠いのか?」
「さあ? 私達にもここが大陸のどの辺りなのかも見当がつかないので」
「ふむ、差し詰め転移に失敗したとか、そういう類だろうな。よし、見たところ武器の類も持ってなさそうだし、ヒョロっとしているし問題はないだろう。入っていいぞ」
「ありがとうございます。ついでにお聞きしたいのですが、宿屋はありますか?」
「宿か。一軒だけあるが、我慢出来るか?」
「なにをでしょうか?」
「ナニだよ。若い男女ならやることは種族が違っても変わらんだろ? なあ?」
隊長がニヤけた顔でソルトを見る。
「な、ば「はい、そこで構いません」……」
「黙っていろと言ったよな」
ソルトがレイの口を塞いだまま、耳元で言い聞かせるように話す。
「いいのか?」
「はい、お願いします。あ! ただ、私達はこちらで扱える現金を持っていません。どこか換金出来る場所はありますか?」
「なんだ、文無しか。いや、文無しとは言わないが、ここで使える金がないなら一緒か。よし、今日の分は俺が立て替えとくから金が出来たら返してくれればいい。あと、換金場所だが、今日はもう遅い。明日、俺が案内してやろう」
「ありがとうございます。なにからなにまですみません」
「いいって。俺達のことを見下さないだけでも信用出来るってもんさ」
「見下す? 失礼ですが、種族をお聞きしてもいいですか?」
「ああ、俺達はドワーフだ。見て分からんか? こりゃ、とんでもない所から来たみたいだな」
「はい、まあ」
「よし、宿まで案内してやろう。付いてこい。ほら、お前達も今日は解散だ。お疲れ様!」
「「「「「はい!」」」」」
守備隊の人達が解散し、ソルトとレイは隊長の後を黙って着いていく。
「ところで、お前達の名前だが……」
「あ、そうですね。私はソルトで、こっちがレイと言います」
「そうか、俺は守備隊の隊長をしているゴルドだ。まあ、短い間だが、よろしくな」
「「はい」」
ゴルドと一緒に村の中央通りを歩いていくと、看板にベッドの絵が描かれている建物が目に入る。
「ここが村で唯一の宿で『森の憩い亭』だ。ほら、入りな。女将さんはいるかい?」
ゴルドが受付の女性に声をかける。
ソルトも受付の女性を見るがどう見てもドワーフとは思えないスラッとした長身の美女だった。
「ゴルドさん、お久しぶりです。女将さんなら、もうすぐ見えますよ。今日はどうされました?」
「いやな、さっき村に着いたみたいでな、聞くとまだここで使える金を持っていないと言うんだよ。だから、ちょっと俺へのツケってことで二人を泊めてもらえないかと思ってさ」
「それな「あら、ゴルドがそこまで言うなんて珍しいわね」女将さん」
ゴルドが受付のお姉さんになにやら頼み事をしていると階段の上から、年配の女性が降りてくる。
「ああ、この二人は信用出来ると思ってな」
「へえ、ゴルドがね~いいわよ。ゴルドを信用しましょ」
「ありがとう、女将。おい、泊まれるってよ」
「「ありがとうございます」」
「あら? 本当に珍しいわね。ゴルド、どういうこと?」
「ああ、多分だが、こいつらは俺達ドワーフを見たことがないと思うんだ。俺に種族を聞いてくるくらいだしな」
「へえ、亜人に対する差別とか、そういうのもなさそうね」
「だろ?」
「いいわ。私も気にいっちゃったわ。ねえ、あんた達食事は?」
「まだです」
「なら、先に食事を済ませなさい。お代は気にすることないわよ。ちゃんとゴルドに回すからね」
女将さんがソルト達二人にそういうと軽くウィンクをすると、受付のお姉さんにソルト達二人を食堂へと案内させる。
「ちょっと、女将よ。それはひどいんじゃないか」
「ふふふ、多分だけど、あの二人はちゃんと払うわよ。私の勘だけどね」
「そうか、なら俺の勘も女将の勘と一緒だということだな」
「それはどうかしら?」
「まあいい。明日朝になったら、俺があの二人を案内するから、俺が来るまで足止めしといてくれな」
「いいわよ。ちゃんとお代も持ってきてね」
「ぐっ……分かったよ」
ゴルドが女将に二人のことをよろしく頼むと言い残し宿をあとにする。
「ふふふ、なんだか面白くなりそうね」
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