巻き込まれたんだけど、お呼びでない?

ももがぶ

文字の大きさ
上 下
2 / 132
序章

第2話 喚びたかったのは四人

しおりを挟む
ここが地球じゃないなら、それはどこなんだろうと竜也と泰雅が考えていると、部屋の扉が開かれる。
「気がつかれましたか?」
「「あぁ?」」
いきなり現れた高齢の身形のいい男に怪訝な表情になる。

「あ~失礼ですが、こちらの言葉はお分かりでしょうか?」
「ああ、それなら分かるぞ。ってか、爺さんは日本語で話しかけているんだから当たり前だろうが。大丈夫か?」
「泰雅、落ち着け。ここは日本でも、ましてや地球でもないかもしれないと言っただろう。それに後ろに控えている護衛っぽいのもよく見てみろ。銃じゃなく剣を帯刀しているだろ?」
「銃が作れないとか、買えないとかじゃないのか?」
「このバカ。アメリカじゃスーパーでも買えるような物だぞ。いくら貧しい国でも買えない金額じゃないだろ。それにこの爺さんは多分、身分が高いぞ。身に着けている装飾品や衣服も上等な部類だ」
「相変わらず、よく見ていることで」
竜也が泰雅をまずは落ち着かせる。

「よろしいですか? いつまでもこんな狭っ苦しいところでは窮屈でしょう。どうぞこちらへ」
男は禿頭を下げ、竜也達に一緒にくるようにとお願いする。

竜也と泰雅は互いに顔を見合わせ頷く。
「「分かった」」
「では、参りましょう」

竜也達二人が部屋から出ると、扉が閉められる。

ランプで照らされた狭い廊下を歩き階段を登る。
「どうやら、地下室だったようだな」
「だから、カビ臭かったのか」
「今、気にすることはそんなことじゃないだろ」

階段を登り切り、少し歩いたところで前を歩く護衛が扉を開けると、広めの部屋に出る。
そこは、豪華なシャンデリアに照らされ、足元も感触が柔らかい絨毯が敷き詰められている。壁には誰か分からないが肖像画や風景画などが飾られており、壁際には調度品を飾る棚が置かれている。
そして、部屋の中央にはソファとテーブルが用意されていて、そのソファには見るからに偉そうな中年男性が座っていた。
竜也がその中年男性の様相に気づく。明らかに先ほどの禿頭の男よりも豪華な出立ちなのだ。
しかも太り過ぎなのが、一眼で分かる。

「なんだ? このデブは、偉そうに……」
「泰雅!」
「なんだよ、竜也。今から俺はこの……」
竜也が泰雅の口を慌てて塞ぐ。
思うことはあっても、今言うことではない。さっきまでは護衛も二人と少なかったが、今は部屋の中には十人ほど護衛の騎士と思われる者達が配備されている。
泰雅が、いくら空手の有段者であろうと多勢に無勢の上、武器持ちまで相手にするとなれば勝ち目はない。
いいから今は大人しくしてくれと泰雅の耳元で喋り言い聞かせる。

「命拾いしましたね。お友達によ~くいい聞かせておいてくださいね」
「それはどうも」

泰雅が頷いたので、竜也は泰雅を解放する。
「では、落ち着いたようなので、そちらへお座りください。いいですね? くれぐれも妙な真似はしないでくださいね」
「分かったよ」
「分かりました」
竜也と泰雅は太った男の前のソファに座る。
禿頭の男は太っと男の背後へと回る。

「では、ご紹介しますね。こちらはザンネニア王国の国王陛下でマーケイン王であらせられます」
「へ~国王ね」
「泰雅!」
竜也が泰雅の物言いを咎めようとするが、国王が制する。
「よいよい、いきなりこんなところに連れてこられたのじゃ。多少の不敬は構わん。宰相もそのつもりでな」
「はい、分かりました」
国王の言葉に禿頭の男が頭を下げる。どうやら、この男が宰相のようだ。

「では、お言葉に甘えさせてもらいます。私達が呼ばれた経緯をお聞きしても?」
「ああ、そのことじゃな。まあ、聞きたいのは当然じゃな。では、宰相よ。説明を頼むぞ」
「はっ分かりました。では、説明しますので、よくお聞きください。質問は後ほどで」
宰相がそう切り出し話し始める。

宰相が話した内容をまとめると、王国は魔族領からの侵攻に遭っているという。だが、今の残存兵力では魔族に太刀打ち出来ない。
そこで過去の文献を解析していたところに遥かな過去に勇者召喚を行い危機を乗り切ったという伝説が残されていたのを見つける。
すぐに勇者召喚の儀を執り行うべく過去の伝説を文献や伝聞などで残されている資料を掻き集め、なんとか形になったところで勇者召喚を執り行ったところに竜也と泰雅が喚ばれたということらしい。

「だが、文献では勇者、聖者、賢者、戦士の四人を喚ぶことが出来るとされていたのですが、なにが不足していたのか原因は不明ですが、あなた方二人だけが喚ばれたのです」
「俺達だけ?」
「ええ、そうです。もしかしたら周りに誰かいましたか?」
「そうい……イッテ」
「どうしましたか?」
「いえ、なんでも。なあ泰雅」
「なんでもって、お前が……イッテ」
「大丈夫ですか?」
「ええ、お気遣いなく」
泰雅が麗子のことを話そうとしたのに気付いた竜也が宰相に見えない位置で泰雅に肘鉄をしたのだ。
『なにか知ってそうですね……』
宰相はそう思うが、まだこの場では警戒されているようなので、追求はしないでおくことにした。

『まさか、麗子も喚ばれているとかないよな』
竜也がそう願うが、その願いも虚しく麗子とメタボな中年男性は別の場所で目を覚ます。
しおりを挟む
感想 71

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します 小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。 そして、田舎の町から王都へ向かいます 登場人物の名前と色 グラン デディーリエ(義母の名字) 8才 若草色の髪 ブルーグリーンの目 アルフ 実父 アダマス 母 エンジュ ミライト 13才 グランの義理姉 桃色の髪 ブルーの瞳 ユーディア ミライト 17才 グランの義理姉 濃い赤紫の髪 ブルーの瞳 コンティ ミライト 7才 グランの義理の弟 フォンシル コンドーラル ベージュ 11才皇太子 ピーター サイマルト 近衛兵 皇太子付き アダマゼイン 魔王 目が透明 ガーゼル 魔王の側近 女の子 ジャスパー フロー  食堂宿の人 宝石の名前関係をもじってます。 色とかもあわせて。

知らない異世界を生き抜く方法

明日葉
ファンタジー
異世界転生、とか、異世界召喚、とか。そんなジャンルの小説や漫画は好きで読んでいたけれど。よく元ネタになるようなゲームはやったことがない。 なんの情報もない異世界で、当然自分の立ち位置もわからなければ立ち回りもわからない。 そんな状況で生き抜く方法は?

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

不登校が久しぶりに登校したらクラス転移に巻き込まれました。

ちょす氏
ファンタジー
あ~めんどくせぇ〜⋯⋯⋯⋯。 不登校生徒である神門創一17歳。高校生である彼だが、ずっと学校へ行くことは決してなかった。 しかし今日、彼は鞄を肩に引っ掛けて今──長い廊下の一つの扉である教室の扉の前に立っている。 「はぁ⋯⋯ん?」 溜息を吐きながら扉を開けたその先は、何やら黄金色に輝いていた。 「どういう事なんだ?」 すると気付けば真っ白な謎の空間へと移動していた。 「神門創一さん──私は神様のアルテミスと申します」 'え?神様?マジで?' 「本来呼ばれるはずでは無かったですが、貴方は教室の半分近く体を入れていて巻き込まれてしまいました」 ⋯⋯え? つまり──てことは俺、そんなくだらない事で死んだのか?流石にキツくないか? 「そんな貴方に──私の星であるレイアースに転移させますね!」 ⋯⋯まじかよ。 これは巻き込まれてしまった高校17歳の男がのんびり(嘘)と過ごす話です。 語彙力や文章力が足りていない人が書いている作品の為優しい目で読んでいただけると有り難いです。 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

処理中です...