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第一章 疑念
第一話 断罪
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その家は住宅地の一角にあり、回りにはカメラにマイクに筆記具を持ち片腕には『報道』の腕章を着けている者達で埋め尽くされていた。
そして、その集団の前に一台のパトカーが止まると中年の刑事と制服姿の若い警察官が下りてくる。
「はい、すみません。通してくださいね。はい、すみませんね」
「いいから、どけって。どこの新聞社だ?」
少し弱気になりながらも丁寧に記者達をかき分ける若い警察官の後ろから横柄な態度で回りを睨み付けながら中年刑事が着いていく。
家の小さな門扉を開けると、記者達はそこから先は不法侵入として扱われかねないのか、門扉から内側には入ることはしなかった。
「いいか、そこで大人しくしておけよ。おい!」
「はい……」
中年刑事が記者達に釘を刺し若い警察官に対しては顎で指図をすると若い警察官は玄関横の呼び鈴を押す。
『ピンポ~ン』と家の中から音がすると同時に家の奥から誰かが歩いてくる足音が聞こえてくる。
玄関の内側に人の気配は感じるが、玄関扉を開ける気はないようで扉越しでの会話となる。
「佐藤さ~ん、ちょっといいですかぁ~」
『なんの用ですか?』
「いえね、ご近所の方から家の回りが五月蠅いと苦情が入りましてね」
『はぁ? それで私にどうしろと?』
家の前で騒いでいる記者連中をどうにかしろと言われて家の住人である『佐藤』は憤慨する。
『それなら、そこにいる人達に直接言えばいいじゃないですか! 俺が頼んで来てもらった訳じゃありませんから!』
「いや、だからね。そこはあなたが少しだけ家の外に……表に出て一言謝罪すれば、ここにいる皆さんも気が済むと思うんですよ。どうですか?」
『帰って下さい!』
「チッ……どけ!」
「あ、山下さん。乱暴はダメですよ」
「いいから、どけ!」
若い警察官は山下と呼んだ中年刑事と立っている位置を入れ替わる。
すると、山下は玄関扉を『ドンドンドン!』と激しく叩く。
「いいから、出てこいよ! お前の弟が殺人なんてもんをしやがったから、こんなことになったんだろうが! つべこべ言わずに出て来て頭を下げりゃぁいいんだよ! ぺっ」
山下はそこまで言うと玄関扉にツバを吐く。すると、『カチャ』と軽い金属音がしてから玄関扉が少しだけ開くがそこにはしっかりとチェーンが掛けられていた。
するとそれに気付いた記者連中が一斉にフラッシュを焚き玄関の中にいる『佐藤』をフレームに収めようとする。
だが、玄関扉の内側にいた佐藤は落ち着いた様子で「名刺」と一言だけ口にする。
「なんだ?」
「なんて言ってるんですか?」
「だから、二人の名刺を出せって言ってんだよ」
「「……」」
「出さないのなら、警察のフリをした不審者がいるって通報するぞ」
「チッ分かったよ。ほら、お前も出せ」
「あ、はい……これです」
玄関の少しだけ開いた隙間に二人が名刺を差し出すと、それはサッと手から抜き取られ玄関扉は『バン!』と閉められた後に『ガチャン』と鍵が閉められた音がした。
足音が遠ざかるのを玄関の前で聞いていた二人は一瞬ポカンとしていたが、山下が若い警察官に「どういうことなんだ?」と聞くが、若い警察官も分かるハズがなく「さあ?」としか返せない。
数分後に『カチャ』と音がして玄関扉が少しだけ開くと、そこから何かが印刷された
A4の紙二枚がスッと差し出される。
「なんだこりゃ……おい! どういうことだ!」
「どうしました山下さん……え、なんで」
二人が受け取った紙にはそれぞれの名前や年齢に住所に階級、賞罰などの他に個人的に知られたくない知られたらマズい情報が記載されていた。
山下の顔写真が載っている紙には山下の個人情報と共に家族構成に『黒い交際』『妻のホスト通い』『娘がイジメ加害者』などの世間に知られたくない情報が記載されていた。
そして若い警察官の小林の方には小林個人の情報の他に買春や援交の記録が記載されていた。
二人は直ぐにその紙を破こうとしたが、その紙片が少しでも残ればここにいる記者連中に集られると思いとどまり四つ折りにして懐にしまうと、山下のスマホが振動し着信を知らせる。
山下がなんだと画面を見るとそこには『非通知』の文字が表示されていた。
山下はイヤな予感がしたが、恐る恐るスワイプしてその電話に出る。
「はい……」
『佐藤です。見て貰えましたか?』
「あ、ああ……見たよ」
『そうですか。じゃあ、ソイツらをどうにかして下さいね。ガチャ……つぅーつぅー』
「おい! おい! ちっ切りやがった……小林、おい小林!」
「あ、山下さん。大丈夫ですよね。俺達大丈夫ですよね」
「いいから、コイツらをどうにかするぞ」
「え?」
「だから、コイツらをどうにかしないことには……分かるだろ!」
「あ、はい!」
門扉を開け、記者連中のリーダーらしき男に近寄ると「ここの仕切りはお前だろ」と短く言うと、その男は黙って頷く。
「よし、なら今日はここまでだ。解散させろ!」
「え? 何言ってるんですか?」
「いいから、こっちに苦情が入っているんだよ!」
「え~それだけで納得出来ませんよ。もしかしてさっき佐藤から何か情報をもらいましたね?」
「……いいから『ブッブー』……ちっ」
山下のスマホが振動し着信を知らせるので、画面を見るとさっきと同じ『非通知』の文字が表示されている。イヤだが、出るしかないので山下は嘆息してからスマホをスワイプし耳に当てる。
「はい……」
『ソイツに代われ』
「はい……ほら」
「え? 私ですか?」
「いいから、ご指名だ」
「はい、代わりました」
『佐々木さんですよね?』
「え?」
『違いますか? ○○新聞の佐々木和樹さんですよね』
「……そ、そうです。私に何か用ですか?」
『ええ、大ありです。先程、そちらの刑事さんに家の回りから排除する様に頼んだんですが了承して貰えないようなのでこうやって電話しました』
「はぁそれで?」
『いえね、「罪のない者だけが石を投げよ」ってのがありますよね。分かりますか?』
「あ~聞いたことはありますが、それが?」
『あなたは罪は犯していませんか?』
「まさか、私がそんなこと」
『では、ご家族の方はどうですか?』
「はい? どういうことですか?」
『あなたは罪を犯していないといいますが、あなたの娘さんはどうですか? 罪を犯していないですか?』
「え?」
『ではお聞きしますが、あなたの十七歳の娘さんが男性と宿泊施設に入り金品を受け取るのは罪ではないのですか?』
「な、なんのことだ! 私の家族をバカにするのか!」
『落ち着いてください。そんな気はありません。私は事実を述べているだけです』
「何が事実だ! それがバカにしていると『この画像をそこの若い警察官に見せて下さい』……あ?」
『いいから、見せて下さい』
佐々木がスマホから耳を離すとそこには制服姿の娘の写真が表示されていた。
「な、なんで娘の写真が……」
『いいから、見せるんだ!』
スマホから聞こえてきた声に不承不承ながらも若い警察官を呼び、スマホの画面を見せると一目で分かるくらいに若い警察官の顔色が変わるのを見ると佐々木は再びスマホを耳元へ寄せると電話の向こうを怒鳴りつける。
「まさか……おい! どういうことだ!」
『これで分かったでしょう。あなたの娘さんが売主で、そこの若い警察官が買主ですよ。どうです? これで信じて貰えましたか?』
佐々木はそれだけ聞くと、手に持っていたスマホを地面に叩き付ける。
『ガシャン!』と音がしてスマホが砕け散ると山下は佐々木の襟首を掴む。
「お前、人様のスマホに何してくれるんだよ!」
「五月蠅い! お前に俺の気持ちが分かるかぁ! お前! お前は俺の娘に何をしたんだ! 言え、言ってみろ!」
「あ、あの……」
小林は佐々木の豹変振りに驚くが、さっきの女子高生の父親であることまでは知らないので、今目の前で佐々木が言っている『娘』がどの娘を差すのかが分からずに狼狽するだけだった。
だが、二人の警官に対し、この取材現場を取り仕切っている男が記者達の前で言い争っているのだ。家に閉じこもっている加害者家族よりも面白そうだとカメラやレコーダーを構えるのは当然のことだろう。
そしてそんな記者連中の前であることすら忘れて佐々木は小林を問い詰める。
「分からないか、それとも分かってて言えないのか! なら、俺が言ってやる! お前が買った娘は俺の十七歳の娘だ!」
「あ、さっきの……」
小林が何かを言う前に佐々木は、小林の顔に拳を叩き付けていた。
いきなりの衝撃に小林はよろめき尻餅を着いてしまうと、佐々木はその小林の上に跨がり胸ぐらを掴むと上から思いっ切り拳を叩き付ける。『ゴスッゴボッ』と音だけがするが誰もが呆気にとられ、止めることすらしなかった。
やがて我に返った山下が佐々木を後ろから羽交い締めにして小林から離すが小林からは『フヒュ~フヒュ~』とした呼吸音しか聞こえないくらいにぐったりしている。
「おい、救急車! 誰か救急車だ!」
「あ、はい!」
山下が佐々木を羽交い締めにしたまま、回りにいる連中に救急車を呼ぶように頼むと、一人の記者が山下の側に落ちていた紙片を開く。
「山下さん。ここに書かれているのは事実ですか?」
「あん? あ! お前、それを返せ!」
「いや、ダメでしょ。刑事としてこれはどうなんでしょうか? 質問に答えてくれますよね?」
「くっ返せ!」
少し前は取材現場で雑談していた記者連中だけの騒がしさだったが、今は阿鼻叫喚といった感じだろうか。
佐藤は家の二階の窓からその様子を面白そうに眺めていた。
そして、その集団の前に一台のパトカーが止まると中年の刑事と制服姿の若い警察官が下りてくる。
「はい、すみません。通してくださいね。はい、すみませんね」
「いいから、どけって。どこの新聞社だ?」
少し弱気になりながらも丁寧に記者達をかき分ける若い警察官の後ろから横柄な態度で回りを睨み付けながら中年刑事が着いていく。
家の小さな門扉を開けると、記者達はそこから先は不法侵入として扱われかねないのか、門扉から内側には入ることはしなかった。
「いいか、そこで大人しくしておけよ。おい!」
「はい……」
中年刑事が記者達に釘を刺し若い警察官に対しては顎で指図をすると若い警察官は玄関横の呼び鈴を押す。
『ピンポ~ン』と家の中から音がすると同時に家の奥から誰かが歩いてくる足音が聞こえてくる。
玄関の内側に人の気配は感じるが、玄関扉を開ける気はないようで扉越しでの会話となる。
「佐藤さ~ん、ちょっといいですかぁ~」
『なんの用ですか?』
「いえね、ご近所の方から家の回りが五月蠅いと苦情が入りましてね」
『はぁ? それで私にどうしろと?』
家の前で騒いでいる記者連中をどうにかしろと言われて家の住人である『佐藤』は憤慨する。
『それなら、そこにいる人達に直接言えばいいじゃないですか! 俺が頼んで来てもらった訳じゃありませんから!』
「いや、だからね。そこはあなたが少しだけ家の外に……表に出て一言謝罪すれば、ここにいる皆さんも気が済むと思うんですよ。どうですか?」
『帰って下さい!』
「チッ……どけ!」
「あ、山下さん。乱暴はダメですよ」
「いいから、どけ!」
若い警察官は山下と呼んだ中年刑事と立っている位置を入れ替わる。
すると、山下は玄関扉を『ドンドンドン!』と激しく叩く。
「いいから、出てこいよ! お前の弟が殺人なんてもんをしやがったから、こんなことになったんだろうが! つべこべ言わずに出て来て頭を下げりゃぁいいんだよ! ぺっ」
山下はそこまで言うと玄関扉にツバを吐く。すると、『カチャ』と軽い金属音がしてから玄関扉が少しだけ開くがそこにはしっかりとチェーンが掛けられていた。
するとそれに気付いた記者連中が一斉にフラッシュを焚き玄関の中にいる『佐藤』をフレームに収めようとする。
だが、玄関扉の内側にいた佐藤は落ち着いた様子で「名刺」と一言だけ口にする。
「なんだ?」
「なんて言ってるんですか?」
「だから、二人の名刺を出せって言ってんだよ」
「「……」」
「出さないのなら、警察のフリをした不審者がいるって通報するぞ」
「チッ分かったよ。ほら、お前も出せ」
「あ、はい……これです」
玄関の少しだけ開いた隙間に二人が名刺を差し出すと、それはサッと手から抜き取られ玄関扉は『バン!』と閉められた後に『ガチャン』と鍵が閉められた音がした。
足音が遠ざかるのを玄関の前で聞いていた二人は一瞬ポカンとしていたが、山下が若い警察官に「どういうことなんだ?」と聞くが、若い警察官も分かるハズがなく「さあ?」としか返せない。
数分後に『カチャ』と音がして玄関扉が少しだけ開くと、そこから何かが印刷された
A4の紙二枚がスッと差し出される。
「なんだこりゃ……おい! どういうことだ!」
「どうしました山下さん……え、なんで」
二人が受け取った紙にはそれぞれの名前や年齢に住所に階級、賞罰などの他に個人的に知られたくない知られたらマズい情報が記載されていた。
山下の顔写真が載っている紙には山下の個人情報と共に家族構成に『黒い交際』『妻のホスト通い』『娘がイジメ加害者』などの世間に知られたくない情報が記載されていた。
そして若い警察官の小林の方には小林個人の情報の他に買春や援交の記録が記載されていた。
二人は直ぐにその紙を破こうとしたが、その紙片が少しでも残ればここにいる記者連中に集られると思いとどまり四つ折りにして懐にしまうと、山下のスマホが振動し着信を知らせる。
山下がなんだと画面を見るとそこには『非通知』の文字が表示されていた。
山下はイヤな予感がしたが、恐る恐るスワイプしてその電話に出る。
「はい……」
『佐藤です。見て貰えましたか?』
「あ、ああ……見たよ」
『そうですか。じゃあ、ソイツらをどうにかして下さいね。ガチャ……つぅーつぅー』
「おい! おい! ちっ切りやがった……小林、おい小林!」
「あ、山下さん。大丈夫ですよね。俺達大丈夫ですよね」
「いいから、コイツらをどうにかするぞ」
「え?」
「だから、コイツらをどうにかしないことには……分かるだろ!」
「あ、はい!」
門扉を開け、記者連中のリーダーらしき男に近寄ると「ここの仕切りはお前だろ」と短く言うと、その男は黙って頷く。
「よし、なら今日はここまでだ。解散させろ!」
「え? 何言ってるんですか?」
「いいから、こっちに苦情が入っているんだよ!」
「え~それだけで納得出来ませんよ。もしかしてさっき佐藤から何か情報をもらいましたね?」
「……いいから『ブッブー』……ちっ」
山下のスマホが振動し着信を知らせるので、画面を見るとさっきと同じ『非通知』の文字が表示されている。イヤだが、出るしかないので山下は嘆息してからスマホをスワイプし耳に当てる。
「はい……」
『ソイツに代われ』
「はい……ほら」
「え? 私ですか?」
「いいから、ご指名だ」
「はい、代わりました」
『佐々木さんですよね?』
「え?」
『違いますか? ○○新聞の佐々木和樹さんですよね』
「……そ、そうです。私に何か用ですか?」
『ええ、大ありです。先程、そちらの刑事さんに家の回りから排除する様に頼んだんですが了承して貰えないようなのでこうやって電話しました』
「はぁそれで?」
『いえね、「罪のない者だけが石を投げよ」ってのがありますよね。分かりますか?』
「あ~聞いたことはありますが、それが?」
『あなたは罪は犯していませんか?』
「まさか、私がそんなこと」
『では、ご家族の方はどうですか?』
「はい? どういうことですか?」
『あなたは罪を犯していないといいますが、あなたの娘さんはどうですか? 罪を犯していないですか?』
「え?」
『ではお聞きしますが、あなたの十七歳の娘さんが男性と宿泊施設に入り金品を受け取るのは罪ではないのですか?』
「な、なんのことだ! 私の家族をバカにするのか!」
『落ち着いてください。そんな気はありません。私は事実を述べているだけです』
「何が事実だ! それがバカにしていると『この画像をそこの若い警察官に見せて下さい』……あ?」
『いいから、見せて下さい』
佐々木がスマホから耳を離すとそこには制服姿の娘の写真が表示されていた。
「な、なんで娘の写真が……」
『いいから、見せるんだ!』
スマホから聞こえてきた声に不承不承ながらも若い警察官を呼び、スマホの画面を見せると一目で分かるくらいに若い警察官の顔色が変わるのを見ると佐々木は再びスマホを耳元へ寄せると電話の向こうを怒鳴りつける。
「まさか……おい! どういうことだ!」
『これで分かったでしょう。あなたの娘さんが売主で、そこの若い警察官が買主ですよ。どうです? これで信じて貰えましたか?』
佐々木はそれだけ聞くと、手に持っていたスマホを地面に叩き付ける。
『ガシャン!』と音がしてスマホが砕け散ると山下は佐々木の襟首を掴む。
「お前、人様のスマホに何してくれるんだよ!」
「五月蠅い! お前に俺の気持ちが分かるかぁ! お前! お前は俺の娘に何をしたんだ! 言え、言ってみろ!」
「あ、あの……」
小林は佐々木の豹変振りに驚くが、さっきの女子高生の父親であることまでは知らないので、今目の前で佐々木が言っている『娘』がどの娘を差すのかが分からずに狼狽するだけだった。
だが、二人の警官に対し、この取材現場を取り仕切っている男が記者達の前で言い争っているのだ。家に閉じこもっている加害者家族よりも面白そうだとカメラやレコーダーを構えるのは当然のことだろう。
そしてそんな記者連中の前であることすら忘れて佐々木は小林を問い詰める。
「分からないか、それとも分かってて言えないのか! なら、俺が言ってやる! お前が買った娘は俺の十七歳の娘だ!」
「あ、さっきの……」
小林が何かを言う前に佐々木は、小林の顔に拳を叩き付けていた。
いきなりの衝撃に小林はよろめき尻餅を着いてしまうと、佐々木はその小林の上に跨がり胸ぐらを掴むと上から思いっ切り拳を叩き付ける。『ゴスッゴボッ』と音だけがするが誰もが呆気にとられ、止めることすらしなかった。
やがて我に返った山下が佐々木を後ろから羽交い締めにして小林から離すが小林からは『フヒュ~フヒュ~』とした呼吸音しか聞こえないくらいにぐったりしている。
「おい、救急車! 誰か救急車だ!」
「あ、はい!」
山下が佐々木を羽交い締めにしたまま、回りにいる連中に救急車を呼ぶように頼むと、一人の記者が山下の側に落ちていた紙片を開く。
「山下さん。ここに書かれているのは事実ですか?」
「あん? あ! お前、それを返せ!」
「いや、ダメでしょ。刑事としてこれはどうなんでしょうか? 質問に答えてくれますよね?」
「くっ返せ!」
少し前は取材現場で雑談していた記者連中だけの騒がしさだったが、今は阿鼻叫喚といった感じだろうか。
佐藤は家の二階の窓からその様子を面白そうに眺めていた。
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