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第十九話 そう言うわけで

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 オリヴィアの記憶からこれまでの旅の行程を見せられたシンとフクが起き上がり、地面に寝ているオリヴィアを見下ろす。
「兄ちゃん、どうする?」
「どうするって……どうしよう」
『あら、絶対に殺るって言ってたのに?』
「いや、そう思っていたけどさ。これって絶対に本人は悪くないじゃん。悪いのは父母だろ?」
『まあ、そうね。でも、それであの娘達は納得するのかしらね?』
「あいつらにも見てもらうしかないか」
「僕もそれがいいと思う」
 オリヴィアの記憶をアリスに編集してもらったのを見て、オリヴィアを害する気持ちが萎えていたのを実感する。フクも俺と同意見らしい。後はアリスが言うように彼女達を納得させられるかどうかだ。

 気を取り直して、アンナ達の元へ。

「あら、シン。もう始末するの? その前に私達に復讐させてくれるのよね?」
 メイドの一人、カレンがそう言ってくる。
「ああ、そのことなんだけどね。ちょっと聞いてくれるかな?」
「なに?」
「まあ、その前に皆に見て欲しいんだけど」
「痛い?」
「いや、横になってくれるだけでいいから」
「また、横になるの?」
「ああ、それだけだから」
「ふ~ん。まあ、なにを考えているか分からないけど、いいわ。言う通りにしてあげる」
 カレンさんがぶつくさ言いながらも横になると、アンナさん達も、その場で横になる。
「じゃ、今から皆に見てもらうのは、あのお嬢さんから抜き取った記憶だ。まずは見てほしい。そして、その後で相談したいことがあるから」
「ふ~ん、相談ね。まあ、大体想像はつくけど……」
「まあまあ、カレン。シンもなにか考えがあってのことでしょう。ほら、さっさとやってよ」
「ああ、分かった。じゃあ始めるね『夢の世界トリップ・ワールド』発動!」
 アンナ達を柔らかい光が包み込むとアンナ達は静かに目を閉じ、穏やかな寝息が聞こえてくる。

「これで、納得してくれればいいんだけどね」
「兄ちゃん、大丈夫かな?」
「さあね。同情はしてくれるかもしれないけどね」

 その前にとオリヴィアを起こし、事情を聞くことにした。
「う~ん、今度はなに?」
「目は覚めたか?」
「誰? あ、あんたは!」
「はい、スト~ップ! 騒ぐのは禁止! 叫ぶのも当然、禁止! 約束出来るなら、食事も用意するし、自由も認める。でも、それが約束出来ないのなら、檻の中へ戻ってもらうけど?」
「……ったわよ」
「はい?」
「分かったって、言ったの!」
「叫ぶの?」
「はっ! ご、ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめ「もう、いいから」んな……いいの? もう、謝らなくてもいいの?」
「少なくても俺達には謝らなくてもいいから。まずは約束してくれるんだよね?」
「はい、約束します」
「なら、はい。これ、食べて」
 オリヴィアの目の前に食事を並べる。

「いいの? これ、食べていいの?」
「ああ、いいよ。誰も邪魔することはしないから、ゆっくり食べな」
 俺の言葉を聞き終わる前にお嬢様とは思えない、もの凄い勢いで目の前の食事に貪りつく。

「そういや、食事らしい食事なんて与えられていなかったみたいだし、こうなるのもしょうがないのか」
「兄ちゃん、いつもなら僕にそんな食べ方するな! って怒るのに……」
「フク、このは今まで、碌な食べ物を与えられてなかったのは見ただろう? 今だけは許してやれよ」
「兄ちゃん? アリス! 大変だ! 兄ちゃんが兄ちゃんじゃない!」
『もう、フクも落ち着く! シンがたまにしか優しいところを見せないから、フクがパニクってるじゃないの』
「それは俺の責任か?」
『あら、違うっていうの? それなら、普段ももう少し優しくしてやりなさいよ』
「分かったよ」

 ふと、オリヴィアを見ると目の前の食事をほぼ食べ尽くして、久々の満腹感に放心しているようだ。
「腹が膨れたのなら、話があるんだが、話はできるか?」
「ちょっと、待って。もう少しして……から……スゥスゥ……」
 満腹感からの睡魔には勝てなかったようで、そのまま倒れ込むように横になる。
「寝ちまったか……」
「また、僕にはすぐに横になるなって言うのに!」
「フク、お前ももう少しだけ、その嬢ちゃんに優しくしてやれ」
「え~」
「え~言わない!」

 フクが少し拗ねている。これってあれか? 下に兄弟が出来ると上の子が甘えられなくなって拗ねるっていうあれか?
『多分ね』
「そうか、なら」
 そういって、手元で土魔法でまずは台を作り8X8のマス目を刻む。その後は片面を白、もう片面を黒にした丸く平たい石を六十四個用意する。
 いつの間にか横で俺のを手元を覗き込んでいたフクが『これなに?』と興味深そうにしているが、本人は拗ねている状態なので、俺の顔と台の上を行ったり来たりしている。

「ほら、フク。アンナ達が起きてくるまで遊ぼうか」
「うん、遊ぶ! ねえ、これってどうやるの?」
「待て待て! 今、説明するから」
『ほう、シンよ。今からなにをするんだ?』
「なんだ、ユキも興味があるのか?」
『まあな、私達は遊びと言えば、狩の延長みたいなものだ。体を使って遊ぶのが基本だしな。体を使わず頭を使うのは興味がある。それで、どうやって遊ぶんだ?』
「じゃ、説明するぞ。最初は中央のマスに白黒白黒の四つを並べる」
「『それで?』」
「次に自分の石、この場合は色だな。白か黒を選ぶんだ」
「じゃあ、僕は黒!」
「そしたら、台の上に置いて」
「どこでもいいの?」
「いや、フクは黒だから。黒で白を挟めるところだな。最初だから、白い石の横ならどこでもいい」
「じゃ、ここ!」
「そしたら、挟んだ白い石をひっくり返すんだ」
「こう?」
 フクが白い石をひっくり返して、黒にする。
「そう、そして俺が白だから、黒を挟めるここにおく」
「あ~! ダメだよ、兄ちゃん! 僕の白が少なくなるじゃん!」
「ダメって、そういうゲームだから、こうやって互いに順番に石を置いて、相手の色をひっくり返して自分の色を多くするゲームだからな」
「分かった! じゃ、最初から」
『待て! フクよ、私とやろうじゃないか』
「え~ユキと?」
『シンが考えたゲームだろ? なら、シンが強いのは当然と思わんか? なら、初見同士でやるのが一番じゃないか?』
「それもそうだね。じゃ、やろう!」
『うむ、相手になろう!』
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