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第一章 ようこそ異世界へ

第四話 そういう理由で授けました

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 ラフィは頭の中で女神達が話していた『強くなって守って欲しい』という言葉がずっと気になっていた。そして、この言葉には女神達の希望が込められていた。

 では、何故そういうことになったのかを説明するために時間を少し遡る。

 それは、リルルを下級神へと降格し、リルルがいた空間を排除し中にいたリルルを強制退去させた時のことだった。

 ソニアはフィリアに命じられたリルルのいた空間を排除する前に中にいたリルルを強制退去させると、リルルはソニアの前で跪き、何かをずっと呟いていた。ソニアはなんとなく気になり、何を言っているのかと聞き取るためにリルルの口元に耳を近付け来る。

「これでいい……どうせ破滅するのなら、ほんの少し私がそれを早めても何も問題はないはずなのだから……ふふふ、私が悪い訳じゃない。アイツが! 素直に転生しなかったアイツが悪いんだ! そうだ、だからアイツごと破滅すればいい。どうせ、破滅する運命ならば、その時間を少しだけ進めてやればいいだけだ。後は勝手にアイツらが動き出す。フハハ……」
「リルル、あなた一体何をしたの!」
「……」

 ソニアはリルルが発した言葉の内容にゾクリと背中に冷たい物を感じ、直ぐにリルルの前にしゃがむと両肩を掴んでリルルと目線を合わせるが、リルルの視線は宙を泳いで定まっていない。そんなリルルの両肩を揺さぶりながら、ソニアは「何をしたの!」と質問を繰り返すが、聞かれているリルルは一向に気にする様子もなくだらしなく開いた口元から涎を垂らし「心配しなくてももうすぐ分かるから」と自身の肩を掴むソニアの手を払うとノソリと立ち上がり歩き出す。

 リルルに手を払われたソニアは一瞬何が起きたのか分からなかったが、直ぐに気を取り戻し近くにいた衛士にリルルの捕縛を命じると、命じられた衛士達は直ぐに先を歩くリルルを取り押さえる。

 ソニアはリルルの側まで行くとリルルの顔を見詰める。

「リルル、残念ですがあなたがあの『ザグレム』に対し何をしたのかを話してもらいます。なのであなたを一時的にですが、拘束させてもらいます。いいですね?」
「……」

 衛士に両側から腕を捕まれ、ぐったりとしている様子のリルルはソニアの問い掛けに何も答えることはなくただ、ニヤリと笑うだけだった。それを見たソニアは嘆息し「連れて行って下さい」と衛士に命じると二人の衛士は頷き、リルルを引き摺るように連れて行く。

「こうしてはいられない! 早くフィリア様に報告しなければ!」

 ソニアはフィリアに急いで報告すべく早足でフィリアの元へと急ぐ。

「フィリア様、至急ご報告したいことがあります!」
「どうしたのですか、ソニア。あなたにはリルルのことで頼んでいたはずですが」
「そのリルルのことでご報告したいことがあります。お聞き頂けますか」
「リルルのことで……」

 息を荒げてフィリアの元へと現れたソニアを見て、フィリアは一瞬イヤな予感が過るが平静を装いソニアと応対する。だが、ソニアの口から『リルルのことで』と言われ、イヤな予感が的中しないことを願うのだった。だが、ソニアの口から齎された内容はとてもではないが、女神として、あの世界を作った創世神としての存在意義を疑うには十分過ぎる内容だった。

「……はぁ、それでリルルはどうしたのですか?」
「はい。先ずは捕縛して拘束するのが先だと判断し、衛士に命じ直ぐに捕縛しました。今は懲罰房へと連行されているはずです」
「そうですか、ふぅ~では、会って真意を問わなければなりませんね」
「はい、お願いします」

 フィリアはソニアを共にリルルが捉えられている懲罰房の前に立つ。その扉越しに確認出来るのは部屋の片隅で扉の方を向かい膝を抱え、何やら呟いているリルルだった。

「あれは?」
「はい、空間から強制退去させた時から、あの調子でして……」
「何を言っているのか分かりますか?」
「はい。当初はあの転生者のせいだと言っていましたが、その後に『転生者ごと破滅すればいい』と繰り返していました」
「そうですか……」

 フィリアはソニアから話を聞き、リルルが『ザグレム』に対し何らかの悪意を込めたことには違いないということだけは分かった。

「ソニア、直ぐに『ザグレム』に対し何をされたのか調査して下さい。助けが必要であれば遠慮なく使って下さい」
「はい。でもお言葉ですが、リルルに直接聞いた方が早いのではないでしょうか?」
「……あの様なリルルに聞いてもまともな応対は期待出来ないでしょう。それに私や『ザグレム』、それにあの転生者に対し悪意を持っている限りは虚偽の報告をするかもしれません。そうやって報告された内容を信じて動く訳にはいかないでしょうから、一つずつ真偽を確認することになります。であれば、最初から期待することなく私達の手で調査した方が早いというものでしょう」
「はぁ……分かりました」

 ソニアは実際に動くのはあなたフィリアではなく自分達なんだがという言葉を呑み込むとフィリアに対し返答する。

「それと、もう一つ頼みがあります」
「はい、なんでしょうか」
「あの転生者に対し、あの方達が言うところの『チートスキル』を授けて欲しいのです」
「チートスキルですか?」
「ええ、そうですね。ソニアには『スキル創造』をサリアには『魔法創造』をお願いします」
「え? ホントにいいんですか? そういったスキルはヒャッハーする可能性がある曰く付きのスキルですよね」
「構いません。最高神様には私から許可を採りますので」
「そう言うことでしたら、了承しました。サリアと二人で対処いたします」
「お願いしますね」

 フィリアはそう言うとリルルがいる懲罰房から去って行く。ソニアはそれを見ながら、自分も一歩間違ったら、こうなったのだろうかと懲罰房の中のリルルを一瞥すると歩き出す。そして、懲罰房の中のリルルは二人の気配が遠ざかっていくのを感じながら「もう遅い……」と言ってニヤリと笑うのだった。
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