異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました

ももがぶ

文字の大きさ
上 下
116 / 131
第四章 ドンガ国

第二話 今度こそ出発!

しおりを挟む
「え? 否定された?」
『あ……間違えました。肯定します』
「なんでだよ!」

 メッセージが『否定します』と表示されたから、俺は俺が好きになった人と恋愛出来ると喜んでいたら、すぐにメッセージが修正されたのを見て一人憤慨する。

 そんなこんなで出発当日の朝になり、屋敷の前には目を赤く腫らしたエミリーさんとそれを慰めているメイド長のネリさんに「短い間でしたがお世話になりました」と礼を述べ、門を出ようとすればエミリーさんが「絶対に直ぐに追いつくから! だから、待っていると約束して!」と叫ぶ。

「ふふふ、諦めるのだな。いくらお前が追いつこうとも更にその先に行くだけだ」
「そんなぁ~コータ、ウソだと言ってくれ!」
「ふぅアオイもそんなこと言わないの。エミリーさんも先ずはお仕事を頑張ってください。じゃお世話になりました。行こうか」
「……ちっ、追いつけるなら追いついてみろ」
「世話になった」
「お姉ちゃん、も頑張るから……でも、が先にしちゃったらゴメンね」
「え? カリナ、何を言ってるの?」
「え~だって……ねぇ」
「くっ……やっぱり……」
「ダメですから」

 俺を諦めきれないエミリーさんにネリさんが抑え、アオイは煽るようなこを言い、ガイルさんはお礼を言いカリナも姉であるエミリーさんに心配無用と言った後に何やらエミリーさんを挑発する様に「先にしちゃったら」と言う。

 俺はその言葉を聞き、まさかカリナまでと思ったが『肯定します』とメッセージが流れたことで「なんでだよ!」と一人納得出来ないでいる。

 多分だがカリナは俺の知識を提供されたことで、自分の知らないことを知っている俺という生きた事典として側に置いておきたいのだと思う。だから、その為には姉であるエミリーさんよりも先に俺を籠絡しようと考えているのだろうと考えれば『肯定します』と表示される。
 しかもカリナはいつの間にか一人称を『俺』から『私』と代えていた。

「今更ながらだけど、俺の女運って悪いのかな」
『肯定します』
「やっぱりかぁ……まあ、そうだよね。女神からしてああなんだから……もう、どうでもよくなっちゃうな」
「コータ?」
「あ、ごめん。遅くなったけど行こうか。じゃ」
「「「またな」」」
『ワフ!』
「コータァ~行かないでぇ!」
「「見るんじゃありません」」
「……」

 改めて気を取り直して、ガイルさん達に一言謝り門を出ようとすれば、エミリーさんがその場に崩れ落ち俺に向かって手を伸ばすが、アオイとカリナの二人で「見るな」と顔を正面に向けられたまま、街の出口まで連行される。

「で、街を出たはいいが、どうするんだ?」
「もう、ちょっと人目に着かないところまで待っててよ」
「どうせ、バレるんだから関係ないと思うが?」
「そうね。ガイルさんも歩くのが辛そうだし」
『ワフ?』

 門を出たところでガイルさんにこれからどうするつもりなのかと聞かれる。俺としてはもう少し人目が着かないところでタロに大きくなってもらうつもりだったのだけど、アオイの「どうせ」という言葉にそれもそうかと思えば、カリナもガイルさんの歩幅を気遣ってなのかアオイに同意する。

「分かったよ。じゃ、タロ。お願いね」
『ワフ! 任せて、えい!』
「「「え? ウワッ!」」」

 俺のお願いにタロがその体を元の大きさに戻せば、周囲の通行人だけでなくカリナもその大きさに驚く。

「じゃ、乗るから寝そべってくれるかな」
『うん!』

 俺がタロの背中に乗り、一番前になるタロのうなじ部分に位置取れば、その俺の後ろにアオイが俺にくっ付くように跨がる。そして、その後ろにカリナが乗り、ガイルさんは最後尾になんとかよじ登れば「こりゃ、キツイな」と零す。

 俺は俺で後ろからアオイが覆い被さる様にくっ付いている物だから、俺の頭の上には柔らかい二つのモノが載せられている為、それを手で払いのけると「なんだ? 照れているのか?」とアオイが不思議そうに聞いてくるが「重いから」とだけ答える。

 そんな俺とアオイのやり取りに「負けた……」と呟いているカリナにガイルさんが気付き「ま、どうにもならんわな。気にするな」と慰めにもならない言葉を掛ければ「うるさい!」とカリナに怒鳴られる。

 俺はそんなやり取りを気にすること無くタロに対し「じゃ、行こうか」と声を掛けるとタロはスクッと立ち上がり『思いっ切り走ってもいい?』と聞いて来たので「お任せするよ」と言えば『分かった!』と言うなり一気に加速し街道をもの凄い速さで走り抜ける。

 俺は一気に加速したタロに少し驚くが、アオイが気を利かせてくれたのか、タロの上に乗っている俺達に風圧が影響しないように、皆が落ちることがないように見えない何かに保護されているのに気付く。なので、俺は頭を後ろに倒しアオイの顔を見るとアオイはニッと笑い返す。

 俺はたまに『いい女』を演出するアオイに対しありがとねとお礼を言うと、ガイルさんに「道案内、よろしくね」と声を掛けるが、ガイルさんはタロの背中に顔を伏せ前を見ていない。

 なので、しょうがないかと脳内マップを見ながら、ドンガ国の方向を確認すると、このまま街道を進むよりは森を突っ切った方が早いかもとタロに「森の上を通れるかな」と聞けば『もちろん!』と文字通り空を飛ぶように森の木々の上をもの凄い速さで駆けていく。

「もう、止めてエ~!」
「俺は何も知らない!」

 俺はタロの凄さに感心していたが、カリナは乗り物酔いなのかアオイの背中にしがみ付き、悲鳴の様なものを上げている。ガイルさんは相変わらずタロの背中に顔を押し付けている。

「こんなに楽しいのにね」
「ふふふ、そうだな。たまにはいいかも知れないな」
『楽しい!』
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

追放されましたがマイペースなハーフエルフは今日も美味しい物を作る。

翔千
ファンタジー
ハーフエルフのシェナは所属していたAランクの勇者パーティーで魔力が弱いからと言う理由で雑用係をさせられていた。だが、ある日「態度が大きい」「役に立たない」と言われ、パーティー脱退の書類にサインさせられる。所属ギルドに出向くと何故かギルドも脱退している事に。仕方なく、フリーでクエストを受けていると、森で負傷した大男と遭遇し、助けた。実は、シェナの母親、ルリコは、異世界からトリップしてきた異世界人。アニメ、ゲーム、漫画、そして美味しい物が大好きだったルリコは異世界にトリップして、エルフとの間に娘、シェナを産む。料理上手な母に料理を教えられて育ったシェナの異世界料理。 少し捻くれたハーフエルフが料理を作って色々な人達と厄介事に出会うお話です。ちょこちょこ書き進めていくつもりです。よろしくお願します。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ
ファンタジー
世界が退屈でしかなかった1人の少年〝稗月倖真〟──彼は生まれつきチート級の身体能力と力を持っていた。だが同時に生まれた現代世界ではその力を持て余す退屈な日々を送っていた。  そんなある日いつものように孤児院の自室で起床し「退屈だな」と、呟いたその瞬間、突如現れた〝光の渦〟に吸い込まれてしまう!  気づくと辺りは白く光る見た事の無い部屋に!?  するとそこに女神アルテナが現れて「取り敢えず異世界で魔王を倒してきてもらえませんか♪」と頼まれる。  だが、異世界に着くと前途多難なことばかり、思わず「おい、アルテナ、聞いてないぞ!」と、叫びたくなるような事態も発覚したり──  でも、何はともあれ、女神様に異世界召喚されることになり、生まれた世界では持て余したチート級の力を使い、異世界へと魔王を倒しに行く主人公の、異世界ファンタジー物語!!

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

処理中です...