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第四章 ドンガ国

第一話 やっと出発

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「ねえ、アレがそうなの?」
「ああ、そうだな」
「……着いたのか」
「なんだ、だらしないな」
「俺は繊細なの!」
「ほう、面白いことを言う」
「くっ……うぷ!」

 俺の質問にガイルさんが答え、カリナは少し具合が悪そうにしている。そしてそれをアオイが軽くあしらう。

 そんな俺達一行は今、小高い丘の上でガイルさんの故郷でもあるドワーフの国『ドンガ国』に入るための関所を眺めている。

「じゃあ、行こうか」
「待て!」

 丘の上で小休止した俺達は目の前の関所を目指して行こうとしたところで、ガイルさんが待ったを掛けてきた。俺はガイルさんにどうしたのかと問い掛ける。

「え? なに、ガイルさん。催したのなら、もう少しで着くからさ」
「そうじゃない!」
「もう、だったらなに?」
「このまま、行くつもりなのか?」
「このままもなにもここまで来たのに……まさか、行かないつもり?」
「いや、それはない。国に戻るのが俺の目的だからな」
「なら、問題ないでしょ。じゃあしっかり捕まって」
「だから、待てと言ってるだろ!」
「もう、なに?」

 俺は早く関所に行きたいのにガイルさんはさっきから、なにかと俺を引き留めるが、その引き留める理由をハッキリと言わない。そんなガイルさんにちょっとイラッとしながら、その理由を確認すればガイルさんは俺達の今の状況がマズいのだと言う。

「お前、今の俺達の状況を見て、なにも感じないのか?」
「ん? 特になにも感じないけど?」
「そうか、俺の聞き方が悪かったかもな」
「もう、ガイルさん。さっきからなんなの!」
「ハァ~分かった。いくら言っても分からない様だからハッキリと言わせてもらおう」
「だから、なに?」
「問題はコイツだ」
「え? どうしてさ?」

 そしてガイルさんは「俺が言いたいのはコレだ」とタロを指す。

「えっと、意味が分からないんだけど?」
「は? 分からないハズが無いだろ!」
「だって、ここまでなんの問題もなかったよ」
「そりゃ……」
「だから、このままでも問題ないでしょ」
「……いや、やっぱりダメだ」
「もう、どうしてさ」
「デカいからだよ」
「へ?」

 ~王都を出るまでの経緯あれこれ

 ガイルさんとカリナに俺の知識をインストールした結果、カリナの作った車は確かにスゴい物だが実用に耐えないということになった。俺とアオイの魔力によるゴリ押しも検討してみたが、駆動部分はなんとかなったとしても、それを支える部品がダメだといわれた。要は車軸やフレームその物が整備されていない街道を走れば、その振動に耐えられないとの結論に至ったのだ。

 ガイルさんだけがそう言うのならカリナも反論しただろうが、カリナ自身も俺の知識をインストールされた為にガイルさんのダメ出しを理解してしまった。

 ならば、どうやってドンガ国に行くのかとなったが、俺達にはタロがいる。だから、俺は心配することはないと言えば、ガイルさんとカリナはキョトンとしてしまう。

「ま、取り敢えず出発は……もう、今日は無理そうだから明日の朝ね。じゃ、そういうことで準備してね。で、ガイルさんはどうするの?」
「へ?」
「へ? じゃなくてね。ここはギルマスであるエミリーさんのお屋敷でしょ。だから、いくら俺達と顔見知りと言ってもガイルさんを勝手に泊めていいものかなって」
「へ? いやいやいや、そこはお前からも一言添えてだな」
「え~俺が?」
「お前以外に誰がいる!」
「ん~」
「そんなに悩むことか?」
「コータよ。このままガイルを野に放てば、コイツのことだ。また、酒に呑まれて出発が延期されることになるぞ」
「え! それは困るよ」
「……信用ねえな」
「あると思っている方が驚きだよ」
「……スマン」

 ガイルさんをどうするか迷っているとカリナが「あ、はい!」と手を挙げる。

「俺からもお姉ちゃんに頼むからいいんじゃない? 部屋も離せば大丈夫だと思うよ?」
「離すんだ……いや、泊めてくれるだけでも有り難い。すまないが、よろしく頼む」
「うん、任せて! でね、相談なんだけどね」
「おう、任せろ」

 ガイルさんの扱いに困っているとカリナからもエミリーさんにお願いして貰えることになりなんとか泊めてもらえそうだという話に落ち着いたところで、カリナからガイルさんに対し車のことで相談があると言いガイルさんも泊まるところが決まったことで安心したのか、カリナの相談に対し二人でああでもない、こうでもないと談義が始まる。

「で、結局タロになにを頼むつもりなんだ?」
「なにってただ単に大きくなってもらって、俺達を背中に乗せてドンガ国まで走ってもらうつもりだけど、お願い出来るかな。タロ」
『ワフ! いいよ。久々に思いっ切り走れるのが楽しみ!』
「それなら、タロでなくても俺でもいいだろ? 言っちゃなんだが、タロよりも大きいぞ」
「いやいやいや、ダメでしょ!」
「ん? どうしてだ? タロがよくてなんで俺がダメなんだ?」
「じゃあ。聞くけどさ」
「ふふふ、なんでも聞くがいい!」
「どこで元の大きさに戻るつもり?」
「どこって……あ!」
「分かった?」
「……スマン」
「分かってくれたのなら、いいけどさ。どうしてタロと張り合おうとしたの?」
「……からだ」
「え?」
「少しばかり悔しかったからだ!」
「え? どゆこと?」
「だって、コータはなにかとタロを頼りにするが、俺を頼ってくれることは少ないだろ!」
「えっと……なんかゴメン」
「軽っ!」

 そんなこんなで帰って来たエミリーさんに抱き着かれる前にガイルさんを泊める許可をカリナと一緒にお願いし、明日の朝には王都を出ることを話す。

「何故だ! コータはここで、この屋敷で私と一緒に玄孫を看取るまでいると約束したじゃないか!」
「そんな約束はしてない!」
「え、お兄さんなの?」
「おい、こら! そこの行き遅れ!」
「あ? 今、なんつった!」

 エミリーさんの暴走にカリナまでが乗っかるが、アオイはエミリーさんに言ってはいけない禁句を言い出すのを見て、ガイルさんは俺の肩をポンと叩くと「ま、頑張るんだな」と一言だけ告げた。

「俺には選択肢がないのかよ!」
『否定します』
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