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第三章 旅の始まり
第三十八話 これからの方針です
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エミリーとカリナの話は二人でどうにかしてもらうことにして、一晩すごした翌朝にカリナの馬車、と言うか車を検証することにした。
「それがカリナの作った馬車なのか?」
「そうよ。凄いでしょ!」
「すまんが、私には全く分からん。コータはどう見ているんだ?」
「ん~まあ、凄いっちゃ凄いよ」
「ほらぁ」
「色んな意味でね」
「へ?」
「だな」
エミリーの屋敷の中庭にカリナの作った車を出して、アオイと一緒に検証しているところに冒険者ギルドへ出勤前のエミリーに声を掛けられカリナの作った車に対し聞かれたので正直に凄いと答えた。確かに動力となるモーター代わりの魔道具を開発したのは凄いと認めればカリナの鼻が高くなる。だが、その為に莫大な魔力を必要とすることなども含めて「色んな意味で凄い」と言い直せばカリナの鼻は折れ、アオイも俺の意を汲み納得する。
「ま、コータがいいならいいけど、それで今日中には王都から出るのか?」
「それなんだけど……どうも、もう少し手を加えないとダメっぽい」
「ふふふ、そうか。なら、今日は早めに帰ってくることにしよう。では、カリナのことよろしく頼むぞ」
「もう、子供扱いしないでよ!」
「ふふふ、そう言っている内は子供だ。じゃあな」
「もう!」
エミリーは俺達に挨拶を済ませると用意された馬車に乗り込み冒険者ギルドへと向かう。
「ふぅ~やっと行った。で、コータは何が気になるの? って、え~なんでバラバラなの?」
「なんでって手を入れるのに一々外したりするのも面倒だからかな」
「カリナよ。このままじゃ走っても数十メートルを走ったら壊れるぞ」
「え、でも……」
「ちゃんと走らせたことはないんでしょ」
「うん、俺の保有魔力じゃ無理だった」
「だよね。まあ、それとは別に街の外を走るのにサスペンションがないのは無理だよ」
「へ? ナニソレ?」
「じゃあ、説明するから聞いてね」
「うん!」
アオイと二人でカリナにサスペンションとはなんぞやということを土魔法で作った模型を手に説明する。
「えっと、それって必要なものなの?」
「カリナは馬車に乗ったことはあるでしょ」
「そりゃあるよ」
「お尻は大丈夫だったの?」
「え? なんで、そこでお尻の話になるの? ハ! まさか!」
「いや、まさかとかいらないし。普通に馬車に乗っていたらお尻が痛くなるじゃない。ならないの?」
「なる……わね」
「でしょ。だから、ソレを軽減させる為に車全体の上下の揺れを抑える為の物。それが」
「「サスペンション!」」
「な、なるほど……でもさ、なんで揺れを抑えることがお尻の痛さが抑えられることになるの? 単純にクッションでもよくない?」
「「あ……」」
カリナに真っ当なことを言われ、俺もアオイも言葉に詰まるが、とにかく揺れを無くすことが大事だと振り切った。
「まあ、いいけど。で、結局の所、俺は何をすればいいのかな?」
「そうだね、えっと……じゃあ、コレを持ってて」
「持ってればいいの?」
「そう。ちゃんと持っててね」
「分かったわよ」
今はカリナの手を借りるまでもないので、その辺にあった部品をカリナに渡し持っていて貰うように頼み、その間に俺とアオイでサスペンションの代わりに板バネを作り、組み付ける。
ある程度、出来たところでカリナが「いつまで持ってればいいの?」と言われ、カリナの存在を思い出し忘れていた訳ではないということをどうにか隠しながらカリナから部品を受け取ると、その辺に放れば「あ!」とカリナが何かに気付いたみたいだけど、それを無視してカリナを車に乗せる。
「どうよ。これが板バネだよ」
「何が変わったのか分からないんだけど?」
「だよね。こればっかりは走らせてみないと分からないよね。じゃあ、次は駆動部分に手を着けるよ」
「ねえ、俺は何すればいいの?」
「そうだね。コレ持ってて」
板バネを装備した車にカリナを乗せたはいいが、停まった状態では板バネの効果が分かるハズもなくカリナにも分からないと言われてしまう。
ならば、実際に走らせるしかないが、その前にモーター部分に手を入れることにした。すると、そこでカリナにすることはないのかと聞かれたので、さっきと同じ様に目に付いた部品を拾いカリナに渡せば、カリナはそれを放り投げ「バカにしないで!」と怒る。
さすがに二回目はバレるかとカリナに謝り、これからの作業方針を決める。
「じゃあ、ここでは大きな改良はしないけど、なんとかドワーフの国まで行けばいいってこと?」
「うん。ここじゃ何かを作るにしても設備がないからね。だから、なんとか走れる状態にして、細かい調整はドワーフの国に行ってからってことにしたい」
「でも、それだとさ結局は動力部分に負担が掛かるんじゃないの? 作った自分が言うのもアレだけど……」
「まあね。でも、さっきも言った通りだ。ここでは部材の作成も微細な調整も出来ないからね。俺とアオイの魔力でゴリ押しで突っ走るしかないでしょ」
「魔力なら、任せてくれ」
カリナもこれからの大雑把な方針になんとか納得してくれたみたいで不承不承に頷く。
「ほら、分かったのなら、改良するぞ。カリナも説明よろしく。アオイも気が付いたところがあれば言って欲しい」
「は~い!」
「分かった」
「それがカリナの作った馬車なのか?」
「そうよ。凄いでしょ!」
「すまんが、私には全く分からん。コータはどう見ているんだ?」
「ん~まあ、凄いっちゃ凄いよ」
「ほらぁ」
「色んな意味でね」
「へ?」
「だな」
エミリーの屋敷の中庭にカリナの作った車を出して、アオイと一緒に検証しているところに冒険者ギルドへ出勤前のエミリーに声を掛けられカリナの作った車に対し聞かれたので正直に凄いと答えた。確かに動力となるモーター代わりの魔道具を開発したのは凄いと認めればカリナの鼻が高くなる。だが、その為に莫大な魔力を必要とすることなども含めて「色んな意味で凄い」と言い直せばカリナの鼻は折れ、アオイも俺の意を汲み納得する。
「ま、コータがいいならいいけど、それで今日中には王都から出るのか?」
「それなんだけど……どうも、もう少し手を加えないとダメっぽい」
「ふふふ、そうか。なら、今日は早めに帰ってくることにしよう。では、カリナのことよろしく頼むぞ」
「もう、子供扱いしないでよ!」
「ふふふ、そう言っている内は子供だ。じゃあな」
「もう!」
エミリーは俺達に挨拶を済ませると用意された馬車に乗り込み冒険者ギルドへと向かう。
「ふぅ~やっと行った。で、コータは何が気になるの? って、え~なんでバラバラなの?」
「なんでって手を入れるのに一々外したりするのも面倒だからかな」
「カリナよ。このままじゃ走っても数十メートルを走ったら壊れるぞ」
「え、でも……」
「ちゃんと走らせたことはないんでしょ」
「うん、俺の保有魔力じゃ無理だった」
「だよね。まあ、それとは別に街の外を走るのにサスペンションがないのは無理だよ」
「へ? ナニソレ?」
「じゃあ、説明するから聞いてね」
「うん!」
アオイと二人でカリナにサスペンションとはなんぞやということを土魔法で作った模型を手に説明する。
「えっと、それって必要なものなの?」
「カリナは馬車に乗ったことはあるでしょ」
「そりゃあるよ」
「お尻は大丈夫だったの?」
「え? なんで、そこでお尻の話になるの? ハ! まさか!」
「いや、まさかとかいらないし。普通に馬車に乗っていたらお尻が痛くなるじゃない。ならないの?」
「なる……わね」
「でしょ。だから、ソレを軽減させる為に車全体の上下の揺れを抑える為の物。それが」
「「サスペンション!」」
「な、なるほど……でもさ、なんで揺れを抑えることがお尻の痛さが抑えられることになるの? 単純にクッションでもよくない?」
「「あ……」」
カリナに真っ当なことを言われ、俺もアオイも言葉に詰まるが、とにかく揺れを無くすことが大事だと振り切った。
「まあ、いいけど。で、結局の所、俺は何をすればいいのかな?」
「そうだね、えっと……じゃあ、コレを持ってて」
「持ってればいいの?」
「そう。ちゃんと持っててね」
「分かったわよ」
今はカリナの手を借りるまでもないので、その辺にあった部品をカリナに渡し持っていて貰うように頼み、その間に俺とアオイでサスペンションの代わりに板バネを作り、組み付ける。
ある程度、出来たところでカリナが「いつまで持ってればいいの?」と言われ、カリナの存在を思い出し忘れていた訳ではないということをどうにか隠しながらカリナから部品を受け取ると、その辺に放れば「あ!」とカリナが何かに気付いたみたいだけど、それを無視してカリナを車に乗せる。
「どうよ。これが板バネだよ」
「何が変わったのか分からないんだけど?」
「だよね。こればっかりは走らせてみないと分からないよね。じゃあ、次は駆動部分に手を着けるよ」
「ねえ、俺は何すればいいの?」
「そうだね。コレ持ってて」
板バネを装備した車にカリナを乗せたはいいが、停まった状態では板バネの効果が分かるハズもなくカリナにも分からないと言われてしまう。
ならば、実際に走らせるしかないが、その前にモーター部分に手を入れることにした。すると、そこでカリナにすることはないのかと聞かれたので、さっきと同じ様に目に付いた部品を拾いカリナに渡せば、カリナはそれを放り投げ「バカにしないで!」と怒る。
さすがに二回目はバレるかとカリナに謝り、これからの作業方針を決める。
「じゃあ、ここでは大きな改良はしないけど、なんとかドワーフの国まで行けばいいってこと?」
「うん。ここじゃ何かを作るにしても設備がないからね。だから、なんとか走れる状態にして、細かい調整はドワーフの国に行ってからってことにしたい」
「でも、それだとさ結局は動力部分に負担が掛かるんじゃないの? 作った自分が言うのもアレだけど……」
「まあね。でも、さっきも言った通りだ。ここでは部材の作成も微細な調整も出来ないからね。俺とアオイの魔力でゴリ押しで突っ走るしかないでしょ」
「魔力なら、任せてくれ」
カリナもこれからの大雑把な方針になんとか納得してくれたみたいで不承不承に頷く。
「ほら、分かったのなら、改良するぞ。カリナも説明よろしく。アオイも気が付いたところがあれば言って欲しい」
「は~い!」
「分かった」
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