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第三章 旅の始まり
第三十三話 やっぱり、これもお約束
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話すタロに戸惑っていたカリナだったが、そんなことよりも先に済ませることがあると言えば、カリナがキョトンとする。
「おいおい、金を返すのが先だろ」
「え? でも、期限は「いいから」……はぁ」
カリナは返済期限が先だからというが、こういうのは期限より先に返すのがいいに決まっていると言い聞かせ、先にイヤなことから片付けることにする。
「あ、でも……これは、どうするの?」
「こうする」
「え?」
俺は車を魔法鞄に収納するとカリナがそれを見て驚く。
「今、何したの?」
「何って収納しただけだよ」
「ウソ!」
「ウソって見たでしょ。そんなことはいいから、早く行くよ」
「え、でも『早く!』……また、喋った」
カリナに付き合っていると話が進まないので倉庫の中のカリナの私物を全部魔法鞄に収納してから、倉庫の外に出る。
「ウソよ。アレだけの物が入る魔法鞄があるなんて……聞いたことないわよ」
「ほら、いいから。案内してくれないと」
「分かったわよ。でも、一つ聞いていいかな?」
「何?」
「なんで私のあの……くるま? を気に入ってくれたの?」
「なんだ、そんなことも分からないのか?」
「アオイは分かってるの?」
「ふん! そんなの決まっている!」
「「へぇ」」
カリナがまだ魔法鞄のことを引き摺っているが、そんなことよりもと金貸しの場所へと案内を頼むが、その前に何故、カリナの馬車というか車を気に入ってくれたのかと聞いて来た。
俺は歩きながら、その理由を説明しようとしたところで、横からアオイが偉そうに答える。
そんなアオイにならばと、その理由を話してもらう。
「馬がいらないからだ」
「「え?」」
「だから、馬がいらないからだろ? 違うのか?」
「ん~当たっているけど、遠すぎるかな」
「当たっているのなら、いいじゃないか」
「アオイ、俺がカリナを手に入れたいと思ったのは、ちょっと違うよ」
「え?」
俺の言葉にカリナが俺を凝視する。
「わ、私は覚悟は……したつもりよ! いつでも来なさい!」
「「は?」」
「だから、私を好きにしてもいいって言ってるのよ。恥ずかしいんだから、何度も言わせないで!」
「「いやいやいや」」
「コータが言うなら、分かるけどなんでアオイまで?」
「なんでってコータは大きいのが好きだからな。そんなのを好きにしていいと言われても扱いに困るだろ。な、コータ」
「そうなの?」
「あのね……二人とも違うからね」
「「え?」」
「はぁ~」
カリナが見当外れなことを言いだし、それをアオイが有り得ないからというところまでいいんだけど、その断り方も違うからと二人に対し、ちゃんと説明することにした。
「俺がカリナの作った車を気に入ったのもあるけど、一人でここまで仕上げたのも気に入ったから。あとは……」
「「あとは?」」
「普通、あれだけのモノを開発したなら、先見の明がある人なら手元に置きたいと思うんじゃないかな。でも、そうはせずに借金漬けにしたってのが気になるんだ」
「それはどういうこと?」
「だからさ、借金とかじゃなくカリナに資金提供して援助するなら分かるよ。でも、それをせずに借金漬けにしたところに悪意を感じるんだ」
「悪意……」
「そ、悪意」
「分からん。こんな女に価値があるとは思えない」
「それは人それぞれだから……としか言えないけどね」
「なるほど」
「そこ! 納得しないでよ!」
そんな馬鹿話をしている内にちょっと大きな店構えの前に立つ。
「ここ?」
「そう、ここよ。ここまで来てなんだけど、本当に大丈夫なの?」
「大丈夫、大丈夫。いいから、任せて」
「任せてって言うけど……本当に大丈夫なの?」
「まあ、見ててよ。じゃ、入るよ」
店の扉を開け、中に入るとそこには受付カウンターらしき物があり、その向こう側には女性が座っていて、和やかに笑っている。
「いらっしゃいませ! あら、僕どうしたの?」
「返しに来た。担当の人を呼んで」
「返しにって……あ、カリナ様のお連れでしたか。分かりました。では、こちらへどうぞ」
受付の女性はカウンター越しに店の奥へと案内し、応接室っぽいところへ通された。
一瞬、タロを訝しんで見ていたがタロが『ワフッ』と可愛らしく吠えてみせたのがよかったのか、女性もふふっと笑い一緒に通してくれた。
「では、こちらでお待ち下さい。今、担当の者を呼んで参りますので」
「はい」
女性が応接室から出てから数分して、和やかな顔をしながら、応接室に入ってきたのは痩せて神経質そうな如何にもな中年男性だった。短髪をキレイに七三に分け、綺麗な身形をし揉み手をしながらカリナに話しかける。
「これはこれは、カリナ様。返済期限はもう少し先だったと思いますが、今日はどの様なご用件でしょうか」
「ですから、返しに来ました。証文を出して下さい」
「え? まさか……本当に?」
「ですから、先程から言っています! 早く!」
「……こりゃ、参ったね」
「え?」
「あ~やっぱりね」
「これはお約束ってヤツだな」
カリナが借金を返済しに来たことが本気だと分かると担当者の態度が変貌しカリナは驚くが、俺はそうだろうなと驚くことはなくアオイはアオイでお約束にどこかウキウキしている。そして極めつけがいつもの『肯定します』と流れるメッセージだ。
「もしかして、上にもいるのかな?」
『肯定します』
「だよねぇ~」
「おいおい、金を返すのが先だろ」
「え? でも、期限は「いいから」……はぁ」
カリナは返済期限が先だからというが、こういうのは期限より先に返すのがいいに決まっていると言い聞かせ、先にイヤなことから片付けることにする。
「あ、でも……これは、どうするの?」
「こうする」
「え?」
俺は車を魔法鞄に収納するとカリナがそれを見て驚く。
「今、何したの?」
「何って収納しただけだよ」
「ウソ!」
「ウソって見たでしょ。そんなことはいいから、早く行くよ」
「え、でも『早く!』……また、喋った」
カリナに付き合っていると話が進まないので倉庫の中のカリナの私物を全部魔法鞄に収納してから、倉庫の外に出る。
「ウソよ。アレだけの物が入る魔法鞄があるなんて……聞いたことないわよ」
「ほら、いいから。案内してくれないと」
「分かったわよ。でも、一つ聞いていいかな?」
「何?」
「なんで私のあの……くるま? を気に入ってくれたの?」
「なんだ、そんなことも分からないのか?」
「アオイは分かってるの?」
「ふん! そんなの決まっている!」
「「へぇ」」
カリナがまだ魔法鞄のことを引き摺っているが、そんなことよりもと金貸しの場所へと案内を頼むが、その前に何故、カリナの馬車というか車を気に入ってくれたのかと聞いて来た。
俺は歩きながら、その理由を説明しようとしたところで、横からアオイが偉そうに答える。
そんなアオイにならばと、その理由を話してもらう。
「馬がいらないからだ」
「「え?」」
「だから、馬がいらないからだろ? 違うのか?」
「ん~当たっているけど、遠すぎるかな」
「当たっているのなら、いいじゃないか」
「アオイ、俺がカリナを手に入れたいと思ったのは、ちょっと違うよ」
「え?」
俺の言葉にカリナが俺を凝視する。
「わ、私は覚悟は……したつもりよ! いつでも来なさい!」
「「は?」」
「だから、私を好きにしてもいいって言ってるのよ。恥ずかしいんだから、何度も言わせないで!」
「「いやいやいや」」
「コータが言うなら、分かるけどなんでアオイまで?」
「なんでってコータは大きいのが好きだからな。そんなのを好きにしていいと言われても扱いに困るだろ。な、コータ」
「そうなの?」
「あのね……二人とも違うからね」
「「え?」」
「はぁ~」
カリナが見当外れなことを言いだし、それをアオイが有り得ないからというところまでいいんだけど、その断り方も違うからと二人に対し、ちゃんと説明することにした。
「俺がカリナの作った車を気に入ったのもあるけど、一人でここまで仕上げたのも気に入ったから。あとは……」
「「あとは?」」
「普通、あれだけのモノを開発したなら、先見の明がある人なら手元に置きたいと思うんじゃないかな。でも、そうはせずに借金漬けにしたってのが気になるんだ」
「それはどういうこと?」
「だからさ、借金とかじゃなくカリナに資金提供して援助するなら分かるよ。でも、それをせずに借金漬けにしたところに悪意を感じるんだ」
「悪意……」
「そ、悪意」
「分からん。こんな女に価値があるとは思えない」
「それは人それぞれだから……としか言えないけどね」
「なるほど」
「そこ! 納得しないでよ!」
そんな馬鹿話をしている内にちょっと大きな店構えの前に立つ。
「ここ?」
「そう、ここよ。ここまで来てなんだけど、本当に大丈夫なの?」
「大丈夫、大丈夫。いいから、任せて」
「任せてって言うけど……本当に大丈夫なの?」
「まあ、見ててよ。じゃ、入るよ」
店の扉を開け、中に入るとそこには受付カウンターらしき物があり、その向こう側には女性が座っていて、和やかに笑っている。
「いらっしゃいませ! あら、僕どうしたの?」
「返しに来た。担当の人を呼んで」
「返しにって……あ、カリナ様のお連れでしたか。分かりました。では、こちらへどうぞ」
受付の女性はカウンター越しに店の奥へと案内し、応接室っぽいところへ通された。
一瞬、タロを訝しんで見ていたがタロが『ワフッ』と可愛らしく吠えてみせたのがよかったのか、女性もふふっと笑い一緒に通してくれた。
「では、こちらでお待ち下さい。今、担当の者を呼んで参りますので」
「はい」
女性が応接室から出てから数分して、和やかな顔をしながら、応接室に入ってきたのは痩せて神経質そうな如何にもな中年男性だった。短髪をキレイに七三に分け、綺麗な身形をし揉み手をしながらカリナに話しかける。
「これはこれは、カリナ様。返済期限はもう少し先だったと思いますが、今日はどの様なご用件でしょうか」
「ですから、返しに来ました。証文を出して下さい」
「え? まさか……本当に?」
「ですから、先程から言っています! 早く!」
「……こりゃ、参ったね」
「え?」
「あ~やっぱりね」
「これはお約束ってヤツだな」
カリナが借金を返済しに来たことが本気だと分かると担当者の態度が変貌しカリナは驚くが、俺はそうだろうなと驚くことはなくアオイはアオイでお約束にどこかウキウキしている。そして極めつけがいつもの『肯定します』と流れるメッセージだ。
「もしかして、上にもいるのかな?」
『肯定します』
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