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第三章 旅の始まり

第二十二話 面倒ごとの臭い

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 ヴィクトリア王妃が呟いた内容も気になるが、まずはここまでの内容をテリオ達、王族に確認してもらう。

「取り敢えず、こんな感じだけど……」
「……」

 俺はそう言ってテリオの反応を見るが、まだ信じられないのだろう。目は大きく見開かれ横になっている王妃二人をジッと見詰めている。

「でも、母上達は何故ソフィアに対しそこまで執着するのだろうか」
「それ! 俺もそれは思った」

 ヘリオの呟きにマリオも同意する。
 そしてヘリオは更に自分の考えを口にする。

「そもそもソフィアが父上の元を離れたのだから、特に何もせずともいいハズだ」
「だよね。でも、母上達は……」
「その辺りはどうなのだ?」
「え? ソレを俺に聞くの?」
「……それもそうか」

 ヘリオとマリオは二人の王妃がどうしてそこまでソフィアに執着するのかと不思議に思ったようだけど、それを俺に聞いても分からないよ。

 俺の返事にヘリオはヴィクトリアを見るが、「多分、その人は知らないと思うよ」と言うと「何故そう思う」と聞いて来たので、さっきヴィクトリアが呟いたことを話す。

「ふむ、そうなるとヴィクトリア母様の方は知らず知らずのうちに計画に加担していた……と、言うことか」
「なら、もう一人の母上に聞かないと分からないけど……聞けそうにはないね」
「ああ、そうだな。アレはどうにか出来ないのか?」
「出来るけど?」
「なら、頼む」
「分かったよ。『解除ディスペル』」

 俺がジュディに対し『催眠ヒプノシス』を解除すると、それまで「痛い痛い!」とのたうち回っていたジュディが「痛……くない」とのたうち回るのを止める。

「静かになったね。じゃ、もう一回『催眠ヒプノシス』。そうだね、今度は……『嘘を吐こうとする度に切り傷が増える』」
「お前、えげつないな」
「だって、さっきのじゃ五月蠅いだけだし」

 俺が掛けた暗示に対しマイクがえげつないと言ってくるが、さっきの『痛みが増す』だけだとただただのたうち回るだけで何も話が進まないからね。

「じゃあ、質問の方はよろしく」
「ああ、分かった。では、母上……なぜ、あなた達はソフィアを亡き者にする必要があったのか教えて貰えるだろうか」
「な、何を言っているのですか。ヘリオ……私は何も……痛っ! え?」

 ヘリオの質問に対し何も知らないと答えようとしたジュディの頬に一筋の赤い線が入る。
 体の自由が奪われているジュディは何をされたのかは分からないが、頬に熱が入った様に熱いのは分かる。そして、横になりながらも顔を少し上げると、一筋の鮮血が頬を伝い絨毯の上に落ちてきた。

 それを見てジュディは自分の頬が傷付けられたことに気付く。

「え? どうして?」
「オバさん、さっきは単なる痛みだけだったけど、今度は実際に切り傷が入るからね。注意して喋らないと身体中が膾斬りされて傷が塞がらなくなるよ」
「ひっ……」
「じゃ、それを念頭に入れてもう一度、質問に答えてくれるかな」
「ああ、もう一度聞く。母上、あなた達は……いや、あなたは何故ソフィアを亡き者にする必要があったのか?」
「ぐ……」

 ヘリオに同じ質問をされたジュディはギュッと口を噤む。このまま口を噤み嘘を付かなければ傷付くことはない。ならば、口を閉ざしてしまえば嘘を言ったことにはならないだろうと。

「へ~考えたね。じゃあ、こうしようか。これからは瞬きで返事をしてね。『はい』は一回。『いいえ』なら二回。どう、これなら口を閉じたままでも答えられるでしょ。それに答えたくないのなら、瞬きをしないままでいればいいんだから」
「ぐぬぬ……」

 俺の提案にジュディは俺のことを睨み付けるが、話さないと決めたのなら別の方法を考えればいいだけの話だ。

「そういう訳だから。いい? 『はい』なら一回。『いいえ』なら二回。『沈黙』ならずっと閉じなきゃいいだけの話だからね。じゃ、もう一度お願い」
「ああ……」
「お前……」

 マイクが俺の提案にまた何か言いたそうだったが、このままじゃ何も話が進まないのだから、本来なら褒められるところだと思うんだけど、それを言ったらまた変な目で見られそうだから今は言わない。

「母上、もう一度問う。今度は正直に話して欲しい。ソフィアを亡き者にしようとしたのは母上の考えか?」
「……」

 ヘリオの言葉にジュディは一回だけ瞬きをするとヘリオを見詰める。

「何故……何故、そのようなことを……」
「私は……」

 ジュディは観念したのか、閉ざしていた口を開くと、これまでの感情を一気に吐露する。

「私はブリジットに対し様々な嫌がらせをしてきました。それは事実であると認めます。ですが、おかしいのです」
「おかしい?」
「ええ。私は確かにブリジットやソフィアに許されないことをしてきました。ですが、おかしいのです。私はブリジットに対して妬ましいとか羨ましいとかそういった感情は皆無でした。いえ、むしろその逆でヘリオやマリオを産んだことをヴィクトリアと一緒に喜んでいたのに……」
「あ、そうです! 確かに私とジュディ様はブリジットに対しては二人の王子を産んだことを喜んでいました。なのに……」

 二人の王妃の告白を聞いていたが何処となく違和感を感じた俺に対しアオイが「臭う」と言ってきた。

「臭う?」
「ああ、人とは違う臭いだ」
「タロ、そうなの?」
『うん、いるよ』
「あ~もう、なんでこうも面倒なことばっかり起きるのかな~」
「なら、放置するか?」
「ホントはそうしたいけど、もうここでもしがらみが出来ちゃったからね。もう、ホントに面倒なことばっかりだよ。全部、アイツロリ駄女神のせいだろ」
『肯定します』
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