異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました

ももがぶ

文字の大きさ
上 下
93 / 131
第三章 旅の始まり

第二十話 真打ち登場

しおりを挟む
 俺をジッと睨み付けているヘリオに対しマリオは興味津々といった感じで俺達をジロジロと観察している。

「で、君は何をしたいんだい?」
「面倒だから、揃ってから話す」
「揃って? もう、俺を含めて王族は揃っていると思うけど?」
「まだだ」
「ん? あ! そうか、そういうことか。なるほどね。マイクが面白いことになると言う訳だ」
「マリオ、一人で納得していないで私にも説明してくれ!」
「あ~ん~止めた! ヘリオ兄さん、マイクの置き土産を読んだでしょ」
「ん? アレがどうした?」
「ほら、よく見なよ。転がされている二人の王妃に手配書の子供……これってそういうことでしょ」
「……確かにな。だが、こういった現状を許すのは違うと思うが」
「いいからいいから、だからマイクがいるんだと思えばいいよ」
「だが「もう、いいから黙って見てようよ」……」

 ヘリオがようやく黙ったのを確認したマリオが俺に話しかける。

「君……名前は?」
「コータ」
「ん、コータが用のある連中が揃えば話すって言うからさ。それを待とうよ」
「ああ、分かった」

 ヘリオがどうにか落ち着いたところでやっと静かになった謁見の間に大きな声が響く。

「兄上、お呼びと聞いたが……ん? これは一体どういうことだ! 誰か、何があったのか説明しろ!」
「ジャミール!」
「兄上! ご無事でしたか」
「いいから、こちらへ来るのだ!」
「……」

 存在感タップリに謁見の間へと飛び込んできたのは王弟である『ジャミール公爵』その人だった。全ての黒幕であろう王弟が現れたことで役者が全て揃ったことを確認した俺はマイクさんに頼んで謁見の間の扉を閉じてもらう。

 ジャミール公爵が国王であるテリオの前、俺の隣に来たことを確認した俺は嘆息してからテリオの顔をジッと見る。

 そして「あんたがソフィアの父親か」とだけ言うとヘリオが「貴様! この方を国王と知っての狼藉か!」と激昂するが、俺はこの国の国民ではないから関係ない。

 俺はヘリオを無視する形でテリオに再度問い掛ける。

「おい、俺は聞いてんだ。答えろよ!」
「……ふむ」

 テリオは俺をしっかりと見据えると一言だけ「そうじゃ」と答える。

「そうか。なら、どうしていつまでも、そんな高い位置で俺を見下げているんだ」
「貴様! 一度ならず二度、三度と「よい」……ですが」
「よいと言っておる」
「は……」

 俺の言葉に飽きもせずヘリオは額に血管を浮き上がらせながら俺に食ってかかるが、それをテリオが制する。それを見たその隣に立つマリオはニヤニヤとしっぱなしだ。

 テリオは俺が言ったことを噛み砕き呑み込んだ後に俺に対しその理由を尋ねる。

「余にそこまで言うからには何か理由があるのであろう。言ってみるがよい」
「ハァ? あんた、何も聞いてないのか?」
「何をだ?」
「ハァ~いいか? あんたの娘であるソフィアがキンバリー領に向かったのは知っているか?」
「ああ、悲しいことだが母親を求める余りに行ってしまった」
「なら、その道中で襲撃されたのは?」
「なんだと!」

 姫さんがキンバリー領に行く途中で魔物の集団に襲撃されたことを話すとテリオは思わず玉座から立ち上がり、俺の側にいるジャミール公爵は「ちっ」と舌打ちする。

 俺はテリオのその様子を見てふと、もしかして何も聞かされていないのだろうかと思うが、話を続ける。

「そのキンバリー領に向かう途中で魔物に襲撃されたところを助けたのが俺だ。そして、キンバリー領からクレイヴ領に向かうまでにワルダネ領への通行を阻害されたりしたのをなんとかクレイヴ領に無事に届けたのも俺だ。あんた本当に何も聞いてないのか?」
「……ソフィアが襲撃だと!」

 テリオは立ち上がったまま、両拳を握りしめると「それは確かか!」と俺に聞いてくるので、俺はテリオに向かいズバリとそのものを言う。

「それはそこに転がっているオバさんと弟さんに聞いた方が早いと思うよ」
「ジャミールよ、どういうことだ!」
「……さあ、いきなりそんなことを言われても私には何がなんだか分かりませぬ」
「……」

 テリオに真偽を確認された俺は、王妃二人と王弟に聞けばと素っ気なく答えれば、テリオは弟に対し問い掛ける。そして王弟はそれをスッと受け流す。

「ふ~ん、知らないと……ホントにそれでいいの?」
「小僧、私を誰だと思っている! 私に対してもそうだが、先程から国王である兄上にも対し無礼であろう!」
「もう、そういうのはいいから。それに俺はこの国の国民じゃないから関係ないじゃん」
「ぐっ……だが、私達はこの国の最上級の位置にいるものだぞ。それなりに謙るへりくだるのが当たり前だろうが! これだから教育されていないガキは……」
「ふ~ん、そう……最上級だからって何してもいいとはならないと思うけど? なら、おじさんの上にいるそこのおじさんから叱ってもらえばいいのかな?」
「な、こ、小僧! どこまで私を舐めれば「ジャミール!」……兄上。ですが」
「よいと言っておる」
「ぐぬぬ」

 俺が弟にそれでいいのかと確認すると、自分の立場を利用して俺を黙らせようとしてくるが、俺には関係ない話だとそれを撥ね除ければ、我慢出来ないのか弟が拳を握りしめたところで、テリオから制される。

「あんたは知らないって言うけど、こっちのオバさん達はどうだろうね。ねえ、マイクさん。俺はどうしてこの手配書をばら撒かれることになったのかな。話してもらってもいい?」
「その前に……」
「なに?」
「私の身の安全を保証して欲しい。私は元親衛隊隊長とは言え、このことで罪を追及されたのでは適わない」
「でも、それは国王であるオジサン次第じゃないかな。どうなの?」
「構わん」
「だって、よかったね」
「ああ、助かる。では……」

 マイクさんは手配書の件で自分が罰せられないように約束して欲しいと言うが、それは俺の責任の範疇ではないのでテリオにどうなのと確認するとマイクさんの身の安全は保証されることになった。

 それを聞いたマイクさんはゆっくりと話し始める。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

追放されましたがマイペースなハーフエルフは今日も美味しい物を作る。

翔千
ファンタジー
ハーフエルフのシェナは所属していたAランクの勇者パーティーで魔力が弱いからと言う理由で雑用係をさせられていた。だが、ある日「態度が大きい」「役に立たない」と言われ、パーティー脱退の書類にサインさせられる。所属ギルドに出向くと何故かギルドも脱退している事に。仕方なく、フリーでクエストを受けていると、森で負傷した大男と遭遇し、助けた。実は、シェナの母親、ルリコは、異世界からトリップしてきた異世界人。アニメ、ゲーム、漫画、そして美味しい物が大好きだったルリコは異世界にトリップして、エルフとの間に娘、シェナを産む。料理上手な母に料理を教えられて育ったシェナの異世界料理。 少し捻くれたハーフエルフが料理を作って色々な人達と厄介事に出会うお話です。ちょこちょこ書き進めていくつもりです。よろしくお願します。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~

りーさん
ファンタジー
 ある日、異世界に転生したルイ。  前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。  そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。 「家族といたいからほっといてよ!」 ※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

処理中です...