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第三章 旅の始まり
第十九話 押し通る
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「何を巫山戯たことを!」
「衛兵はどうした!」
謁見の間に入ろうとしたが、扉の前に立つ衛士に槍で阻まれ入らせて貰えない。だから、俺はその槍をグッと押し下げ、無視して通ろうとするが衛士もさせるものかと更に力を込めてくる。
「どうしても通してもらえないの?」
「当たり前だ!」
「マイク様、あなたがいながらどうしてこんな子供を!」
「いいから、通してくれよ。な、頼むよ」
「マイク様……ご自分の立場を分かっているのですか?」
「分かっているさ。もう、元親衛隊隊長だからな」
「ぐっ……ですが」
「もう、いいよ。『強制睡眠』」
「「な……スゥスゥ……」」
二人の衛士を眠らせると扉に手を掛けて、謁見の間へと入る。
謁見の間は、天井が高くその天井には何やら絵が描かれており、王が座る為の玉座までは五十メートルほどだろうか。その間には天井までの柱がそびえており、荘厳な感じを演出している。そして、俺は玉座まで続く赤い絨毯の上を何も気にすることなく歩いていると玉座の方から「無礼であろう!」と声が聞こえる。
俺はその声を無視して更に玉座へと近付き、国王の顔が見える位置まで近付いた所で、「頭が高い」とまた声を掛けられるが、そんなの知ったことではないと姫さんの父親であろう国王『テリオ・フォン・トガツ』は面倒臭そうに俺を一瞥するとテリオの横で憤慨しているおじさんを手で制し「何用じゃ」と言う。
そして、アオイが担いでいる二人の王妃を少し乱暴に絨毯の上に下ろすとテリオの眉がピクリと動く。
俺はその様子を見て「おや?」と思う。この二人は一応王妃と呼ばれる身分で、言うなれば国王であるテリオの妻になるのだが、そのテリオは一瞥するだけで、捕縛されている理由にも興味がないとばかりに玉座の肘掛けに頬杖をつきながら俺に言う。
「そいつらがどうかしたのか?」
「陛下! 私を自由にするように言って下さいまし!」
「陛下! そいつを早く捉えて死罪にして下さい!」
「こう、言っているけど?」
「お前がしたのだろ。何も理由もなく捕縛した訳ではあるまい」
「ふ~ん、単なるお飾りって訳でもなさそうだね」
「貴様、先程から!」
「よい」
「ですが「よいと言っておる」……はい」
「で、何用じゃ」
二人の王妃は体の自由を奪われたままの状態で、絨毯の上で横にさせられたまま、夫であるテリオに対し自分達を助けるようにと懇願するが、テリオはその言葉に耳を貸す様子も見えない。
やはり俺の予想通りにもう二人の王妃には何も興味はないようで、狙っていた通りに自爆した結果だろうと思っているのかもしれない。
『肯定します』
視界の隅にいつもの様に流れるメッセージを横目に俺はテリオに対し「もう少しで役者がそろうんだけど、その前に一つ頼みたいことがある」と言う。
「頼み? それはなんだ?」
テリオは俺の頼みに興味を持ったのか、少しだけ身を乗り出し聞いて来たので、「あんたの弟をここに呼び出して欲しい」と言う。
「弟……ジャミールをか?」
「ああ、そうだ」
「理由を聞いても?」
「それは、そこのオバさん二人がよく知っている」
「ふむ……宰相、ジャミール公爵をここへ」
「は、はい。ですが、よろしいのですか?」
「いいから、呼ぶのだ!」
「は、はい。直ちに!」
テリオの横に立っていたおじさんは宰相と呼ばれていたが、コイツももしかしたら一枚噛んでいるのかもしれないな。
『肯定します』
宰相が謁見の間から出て行くと同時に二人の青年? 少年が謁見の間に入って来た。
「マイク、呼んでいるのは……これは何事だ! マイク! 説明しろ!」
「へ~ホントだ。なんか面白いことが起きているみたいだね」
「マリオ、そんなことを言っている場合か! マイク!」
「……ヘリオ様。まずはテリオ国王の側に。理由は行けば分かりますので」
「くっ……マリオ、行くぞ」
「は~い」
謁見の間に入る前に倒れている衛士が目に入り、奥の玉座の前には子供である俺と見た目オオカミなタロ、それにアオイが立っていて、その足下には二人の王妃が体の自由を奪われた状態で転がされているのを見たであろう、ヘリオは激昂するがマリオは楽しいことになると予想する。
そして、ヘリオは元親衛隊隊長のマイクに気付くと説明を求めるが、マイクは俺の側に行けば分かるとだけに留める。
マイクの言葉にヘリオはまだ何か言いたそうだったが、マイクがこれ以上は話す様子がないと思ったのか、弟であるマリオを呼び、玉座の前へと向かう。
ヘリオは国王である父の前で平然と立っている俺を不思議そうに見ると俺に確認する。
「お前が、この騒ぎの首謀者か!」
「へ~まだ子供じゃん。あれ? ヘリオ兄さん、この子って……」
「ん? どうした?」
「ほら、手配書の!」
「ん? 確かに見た目は手配書の通りだが、それがどうしてここにいる? それに何故、王妃を捕縛しているのだ?」
「まあ、それはもう一人が来てから話すよ」
「貴様!」
「ヘリオ兄さん、落ち着いて」
「マリオ、お前はよく落ち着いていられるな! この惨状を見てなんとも思わないのか!」
「だからこそ、落ち着きなよ」
「マリオ!」
「ヘリオ兄さん、兄さんの言う通りこの子供がここまで来た。来られた事実を見るんだ。例えマイクがいたとしてもここまで来るのは並大抵じゃ無理でしょ。それにマイクが何もしないのもそこら辺に理由があるんだと思うよ」
「だが……」
ヘリオがまだ納得いかない様子に対し、弟であるマリオは冷静に状況を分析しているように感じた。
これからの交渉はマリオを介して行った方が早いかもしれないな。
『肯定します』
「衛兵はどうした!」
謁見の間に入ろうとしたが、扉の前に立つ衛士に槍で阻まれ入らせて貰えない。だから、俺はその槍をグッと押し下げ、無視して通ろうとするが衛士もさせるものかと更に力を込めてくる。
「どうしても通してもらえないの?」
「当たり前だ!」
「マイク様、あなたがいながらどうしてこんな子供を!」
「いいから、通してくれよ。な、頼むよ」
「マイク様……ご自分の立場を分かっているのですか?」
「分かっているさ。もう、元親衛隊隊長だからな」
「ぐっ……ですが」
「もう、いいよ。『強制睡眠』」
「「な……スゥスゥ……」」
二人の衛士を眠らせると扉に手を掛けて、謁見の間へと入る。
謁見の間は、天井が高くその天井には何やら絵が描かれており、王が座る為の玉座までは五十メートルほどだろうか。その間には天井までの柱がそびえており、荘厳な感じを演出している。そして、俺は玉座まで続く赤い絨毯の上を何も気にすることなく歩いていると玉座の方から「無礼であろう!」と声が聞こえる。
俺はその声を無視して更に玉座へと近付き、国王の顔が見える位置まで近付いた所で、「頭が高い」とまた声を掛けられるが、そんなの知ったことではないと姫さんの父親であろう国王『テリオ・フォン・トガツ』は面倒臭そうに俺を一瞥するとテリオの横で憤慨しているおじさんを手で制し「何用じゃ」と言う。
そして、アオイが担いでいる二人の王妃を少し乱暴に絨毯の上に下ろすとテリオの眉がピクリと動く。
俺はその様子を見て「おや?」と思う。この二人は一応王妃と呼ばれる身分で、言うなれば国王であるテリオの妻になるのだが、そのテリオは一瞥するだけで、捕縛されている理由にも興味がないとばかりに玉座の肘掛けに頬杖をつきながら俺に言う。
「そいつらがどうかしたのか?」
「陛下! 私を自由にするように言って下さいまし!」
「陛下! そいつを早く捉えて死罪にして下さい!」
「こう、言っているけど?」
「お前がしたのだろ。何も理由もなく捕縛した訳ではあるまい」
「ふ~ん、単なるお飾りって訳でもなさそうだね」
「貴様、先程から!」
「よい」
「ですが「よいと言っておる」……はい」
「で、何用じゃ」
二人の王妃は体の自由を奪われたままの状態で、絨毯の上で横にさせられたまま、夫であるテリオに対し自分達を助けるようにと懇願するが、テリオはその言葉に耳を貸す様子も見えない。
やはり俺の予想通りにもう二人の王妃には何も興味はないようで、狙っていた通りに自爆した結果だろうと思っているのかもしれない。
『肯定します』
視界の隅にいつもの様に流れるメッセージを横目に俺はテリオに対し「もう少しで役者がそろうんだけど、その前に一つ頼みたいことがある」と言う。
「頼み? それはなんだ?」
テリオは俺の頼みに興味を持ったのか、少しだけ身を乗り出し聞いて来たので、「あんたの弟をここに呼び出して欲しい」と言う。
「弟……ジャミールをか?」
「ああ、そうだ」
「理由を聞いても?」
「それは、そこのオバさん二人がよく知っている」
「ふむ……宰相、ジャミール公爵をここへ」
「は、はい。ですが、よろしいのですか?」
「いいから、呼ぶのだ!」
「は、はい。直ちに!」
テリオの横に立っていたおじさんは宰相と呼ばれていたが、コイツももしかしたら一枚噛んでいるのかもしれないな。
『肯定します』
宰相が謁見の間から出て行くと同時に二人の青年? 少年が謁見の間に入って来た。
「マイク、呼んでいるのは……これは何事だ! マイク! 説明しろ!」
「へ~ホントだ。なんか面白いことが起きているみたいだね」
「マリオ、そんなことを言っている場合か! マイク!」
「……ヘリオ様。まずはテリオ国王の側に。理由は行けば分かりますので」
「くっ……マリオ、行くぞ」
「は~い」
謁見の間に入る前に倒れている衛士が目に入り、奥の玉座の前には子供である俺と見た目オオカミなタロ、それにアオイが立っていて、その足下には二人の王妃が体の自由を奪われた状態で転がされているのを見たであろう、ヘリオは激昂するがマリオは楽しいことになると予想する。
そして、ヘリオは元親衛隊隊長のマイクに気付くと説明を求めるが、マイクは俺の側に行けば分かるとだけに留める。
マイクの言葉にヘリオはまだ何か言いたそうだったが、マイクがこれ以上は話す様子がないと思ったのか、弟であるマリオを呼び、玉座の前へと向かう。
ヘリオは国王である父の前で平然と立っている俺を不思議そうに見ると俺に確認する。
「お前が、この騒ぎの首謀者か!」
「へ~まだ子供じゃん。あれ? ヘリオ兄さん、この子って……」
「ん? どうした?」
「ほら、手配書の!」
「ん? 確かに見た目は手配書の通りだが、それがどうしてここにいる? それに何故、王妃を捕縛しているのだ?」
「まあ、それはもう一人が来てから話すよ」
「貴様!」
「ヘリオ兄さん、落ち着いて」
「マリオ、お前はよく落ち着いていられるな! この惨状を見てなんとも思わないのか!」
「だからこそ、落ち着きなよ」
「マリオ!」
「ヘリオ兄さん、兄さんの言う通りこの子供がここまで来た。来られた事実を見るんだ。例えマイクがいたとしてもここまで来るのは並大抵じゃ無理でしょ。それにマイクが何もしないのもそこら辺に理由があるんだと思うよ」
「だが……」
ヘリオがまだ納得いかない様子に対し、弟であるマリオは冷静に状況を分析しているように感じた。
これからの交渉はマリオを介して行った方が早いかもしれないな。
『肯定します』
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