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第三章 旅の始まり
第三話 やっぱりなのか
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朝になり、ベッドの上で身を起こすと、隣のベッドにはタロがヘソテンで寝ているのが見えた。なら、アオイはと他のベッドを見たけど他の二つのベッドは誰も寝ていなかった。
「え?」と左手を着くと「むにゅ」とした感触がした。
「あ、既視感……」
「あ、う~ん……」
そう、俺の左側には何故だかアオイが寝ていた。俺は左手の感触を惜しみながら、そのままアオイの肩を揺すって起こす。
「起きて、アオイ! 起きてってば!」
「うん、なんだ。もう朝か」
「もう朝かじゃなくて、なんで俺のベッドで寝ているのさ。ベッドはちゃんとあったでしょ」
「いや、そうなんだがな。最初は俺もあっちのベッドで寝ていたんだけど。なんていうか、この辺に隙間が空いているような気がしてな。それで……」
「俺のベッドに潜り込んだって訳?」
「そ、そうだ。すまない」
「もう、いいよ。ほら、起きて。ガイルさんはどうしたのか知ってる?」
「さあな、帰って来た様子はなかったぞ」
「あ~もしかして……」
イヤな予感はしたが、今はタロを起こして下に行って確認してみるしかない。
「タロ、ご飯だよ」
『ご飯! どこに?』
「起きたら、ベッドから下りて」
『うん、おはよ』
それから身支度を済ませて、部屋の中に忘れ物がないか確認してから一階へと下りると、やはりというか案の定というかお約束というか、ガイルさんとリックさんが酒瓶が一杯並んでいるテーブルを挟んで突っ伏している。
俺はガイルさんに近付き、軽く揺すってみる。
「ガイルさん、朝だよ。ガイルさん……」
「う、う~ん、揺らさないでくれ~」
「もう、どうするのさ」
「もう少し、もう少ししたら、起きるから、もう少しこのままで……ぐぉ~」
「寝ちゃったよ」
リックさんも起きようがないので、とりあえず放置で朝食を済ませると、先に面倒ごとを済ませてしまおうと王都の冒険者ギルドへ向かう。
「ここがそうだよね」
「そうみたいだな。むさい男達が集まっているしな」
『ワフゥ~』
宿の人に冒険者ギルドの場所を教えて貰い、それっぽい建物の前で『剣と盾』の看板からも、ここが冒険者ギルドに違いないだろうと確信して中へと入る。
重厚そうな扉を開け、中に入ると中にいた人達の視線が俺達に集中するのが分かる。王都の冒険者ギルドなのに人が入ってくるのがそんなに珍しいのだろうかと訝しく思いながらもアオイとタロも一緒に中へと入る。
ジロジロと見られながら、受付のカウンターに進むと一つだけ誰も並んでいないカウンターの前に行き、その向こう側に座る受付のお姉さんに「おはようございます」と話しかける。
「おい、アイツ……」
「止めなくていいのかよ」
「とばっちりはゴメンだ」
なんだか不穏な声が聞こえてきたが、俺は直ぐにでもこんなところから出たいので、並んでいないのならラッキーくらいに思っていたのだけど、まさかフラグなの?
『肯定します』
もう、話しかけてしまったのだから、しょうがないと受付のお姉さんに話しかける。
「すみません。キンバリー領のギルドマスターからこちらのギルドマスターにと手紙を預かっているんですが、ギルドマスターにお会いできますか?」
「……あ、すみません。ギルドマスターにですね。少々お待ち下さい」
受付のお姉さんは立ち上がるとカウンター奥の方へと小走りで向かい、ある部屋の扉を開き何やら話をしているのが伺える。
俺がその様子を黙って窺っていると、俺の元に一人のいかにもな優男が寄って来た。
「おい、スージーは俺の専属だぞ。他の列に並べ」
「え? そうなの? でも、頼んじゃったし」
「は? そんなの関係あるか! いいから、他の列に並べよ!」
「でも……」
「は? 聞いているのか? Aランクの俺様が言っているんだ! いいから、どけろよ!」
「あ!」
「なんだ! あ、スージー……ん、こほん。あ~スージー、今日の依頼なん「お待たせしました」だが……あ」
優男が何か言っていたが、受付のお姉さんはそれを無視するように俺に話しかける。
「ギルドマスターがお会いになるそうなので、こちらへどうぞ」
「あの、手紙をお渡しするだけでいいのですが」
「すみません。ギルドマスターがどうしてもというので……お願いします」
「……分かりました。アオイとタロは「ご一緒にどうぞ」……はい」
お姉さん……スージーさんの案内でカウンターの奥に通されると、カウンターの前にはスージーさんに無視され項垂れている優男だけが残った。
「お連れしました」
『入って』
部屋の前でスージーさんが扉の向こうに声を掛けると、返事がありスージーさんが扉を開けると、そこには長身で痩せ型、銀色の長いサラサラとした髪を手櫛でかき上げながらこちらを見ている女性が立っていた。
その女性はニコリと笑うと「キンバリーからだって」と言い、俺達にソファに座るように促し、スージーさんにはお茶を頼むと自らもソファに座る。
「初めまして。私が王都の冒険者ギルド、それとこのトガツ王国の冒険者ギルドを統轄するギルドマスターのエミリーだ。よろしく頼む」
「あ、はい。俺はコータ、それにアオイ、で、タロです」
ギルドマスターに簡単に俺達の紹介を済ませると、俺はバッグの中から預かったギルマスの紹介状を取り出すと、テーブルの上に出す。
「キンバリー領のギルドマスター、ダリウスさんから預かって来ました」
「ふむ、ダリウスか。久しいな、元気だろうか」
「ああ、カミさんとケンカしていたぞ」
「アオイ!」
「ん? どうした、内緒だったか?」
「いや、いいけど……」
「ふふふ、いい。分かった。ありがとう、相変わらずのようだな。では、読ませて貰おう」
エミリーさんは俺が渡した紹介状に目を落とすと同時くらいにスージーさんがカップを載せたトレイを手に部屋に入って来ると俺達の前に「どうぞ」とカップを置いていく。
「ありがとうございます」
「すまないな」
スージーさんは軽く頭を下げて部屋を出て行くと、エミリーさんは紹介状から顔を上げる。
「時間はあるな?」
「はい?」
「時間はあるよな?」
「え、いや「あるよな?」……はい」
「ん? コータ、直ぐに出るんだろ」
「あ、そうなのか?」
「い、いや……その……」
「どこに泊まってた?」
「……それは、そこのリックさんの宿で」
「そうか、分かった。使いをやろう。だから、宿を心配する必要はないぞ」
「いや、俺が心配しているのはそうじゃなくて……」
「手配書のことか」
「そう、その手配の……って、知っていたんですか?」
「ああ。だから、その辺の話も全部話してもらうまでは帰さないからな。ふふふ、久しぶりだな。こんな楽しい気持ちになるのは、ははは」
「楽しいのはアンタだけでしょ」
『肯定します』
「え?」と左手を着くと「むにゅ」とした感触がした。
「あ、既視感……」
「あ、う~ん……」
そう、俺の左側には何故だかアオイが寝ていた。俺は左手の感触を惜しみながら、そのままアオイの肩を揺すって起こす。
「起きて、アオイ! 起きてってば!」
「うん、なんだ。もう朝か」
「もう朝かじゃなくて、なんで俺のベッドで寝ているのさ。ベッドはちゃんとあったでしょ」
「いや、そうなんだがな。最初は俺もあっちのベッドで寝ていたんだけど。なんていうか、この辺に隙間が空いているような気がしてな。それで……」
「俺のベッドに潜り込んだって訳?」
「そ、そうだ。すまない」
「もう、いいよ。ほら、起きて。ガイルさんはどうしたのか知ってる?」
「さあな、帰って来た様子はなかったぞ」
「あ~もしかして……」
イヤな予感はしたが、今はタロを起こして下に行って確認してみるしかない。
「タロ、ご飯だよ」
『ご飯! どこに?』
「起きたら、ベッドから下りて」
『うん、おはよ』
それから身支度を済ませて、部屋の中に忘れ物がないか確認してから一階へと下りると、やはりというか案の定というかお約束というか、ガイルさんとリックさんが酒瓶が一杯並んでいるテーブルを挟んで突っ伏している。
俺はガイルさんに近付き、軽く揺すってみる。
「ガイルさん、朝だよ。ガイルさん……」
「う、う~ん、揺らさないでくれ~」
「もう、どうするのさ」
「もう少し、もう少ししたら、起きるから、もう少しこのままで……ぐぉ~」
「寝ちゃったよ」
リックさんも起きようがないので、とりあえず放置で朝食を済ませると、先に面倒ごとを済ませてしまおうと王都の冒険者ギルドへ向かう。
「ここがそうだよね」
「そうみたいだな。むさい男達が集まっているしな」
『ワフゥ~』
宿の人に冒険者ギルドの場所を教えて貰い、それっぽい建物の前で『剣と盾』の看板からも、ここが冒険者ギルドに違いないだろうと確信して中へと入る。
重厚そうな扉を開け、中に入ると中にいた人達の視線が俺達に集中するのが分かる。王都の冒険者ギルドなのに人が入ってくるのがそんなに珍しいのだろうかと訝しく思いながらもアオイとタロも一緒に中へと入る。
ジロジロと見られながら、受付のカウンターに進むと一つだけ誰も並んでいないカウンターの前に行き、その向こう側に座る受付のお姉さんに「おはようございます」と話しかける。
「おい、アイツ……」
「止めなくていいのかよ」
「とばっちりはゴメンだ」
なんだか不穏な声が聞こえてきたが、俺は直ぐにでもこんなところから出たいので、並んでいないのならラッキーくらいに思っていたのだけど、まさかフラグなの?
『肯定します』
もう、話しかけてしまったのだから、しょうがないと受付のお姉さんに話しかける。
「すみません。キンバリー領のギルドマスターからこちらのギルドマスターにと手紙を預かっているんですが、ギルドマスターにお会いできますか?」
「……あ、すみません。ギルドマスターにですね。少々お待ち下さい」
受付のお姉さんは立ち上がるとカウンター奥の方へと小走りで向かい、ある部屋の扉を開き何やら話をしているのが伺える。
俺がその様子を黙って窺っていると、俺の元に一人のいかにもな優男が寄って来た。
「おい、スージーは俺の専属だぞ。他の列に並べ」
「え? そうなの? でも、頼んじゃったし」
「は? そんなの関係あるか! いいから、他の列に並べよ!」
「でも……」
「は? 聞いているのか? Aランクの俺様が言っているんだ! いいから、どけろよ!」
「あ!」
「なんだ! あ、スージー……ん、こほん。あ~スージー、今日の依頼なん「お待たせしました」だが……あ」
優男が何か言っていたが、受付のお姉さんはそれを無視するように俺に話しかける。
「ギルドマスターがお会いになるそうなので、こちらへどうぞ」
「あの、手紙をお渡しするだけでいいのですが」
「すみません。ギルドマスターがどうしてもというので……お願いします」
「……分かりました。アオイとタロは「ご一緒にどうぞ」……はい」
お姉さん……スージーさんの案内でカウンターの奥に通されると、カウンターの前にはスージーさんに無視され項垂れている優男だけが残った。
「お連れしました」
『入って』
部屋の前でスージーさんが扉の向こうに声を掛けると、返事がありスージーさんが扉を開けると、そこには長身で痩せ型、銀色の長いサラサラとした髪を手櫛でかき上げながらこちらを見ている女性が立っていた。
その女性はニコリと笑うと「キンバリーからだって」と言い、俺達にソファに座るように促し、スージーさんにはお茶を頼むと自らもソファに座る。
「初めまして。私が王都の冒険者ギルド、それとこのトガツ王国の冒険者ギルドを統轄するギルドマスターのエミリーだ。よろしく頼む」
「あ、はい。俺はコータ、それにアオイ、で、タロです」
ギルドマスターに簡単に俺達の紹介を済ませると、俺はバッグの中から預かったギルマスの紹介状を取り出すと、テーブルの上に出す。
「キンバリー領のギルドマスター、ダリウスさんから預かって来ました」
「ふむ、ダリウスか。久しいな、元気だろうか」
「ああ、カミさんとケンカしていたぞ」
「アオイ!」
「ん? どうした、内緒だったか?」
「いや、いいけど……」
「ふふふ、いい。分かった。ありがとう、相変わらずのようだな。では、読ませて貰おう」
エミリーさんは俺が渡した紹介状に目を落とすと同時くらいにスージーさんがカップを載せたトレイを手に部屋に入って来ると俺達の前に「どうぞ」とカップを置いていく。
「ありがとうございます」
「すまないな」
スージーさんは軽く頭を下げて部屋を出て行くと、エミリーさんは紹介状から顔を上げる。
「時間はあるな?」
「はい?」
「時間はあるよな?」
「え、いや「あるよな?」……はい」
「ん? コータ、直ぐに出るんだろ」
「あ、そうなのか?」
「い、いや……その……」
「どこに泊まってた?」
「……それは、そこのリックさんの宿で」
「そうか、分かった。使いをやろう。だから、宿を心配する必要はないぞ」
「いや、俺が心配しているのはそうじゃなくて……」
「手配書のことか」
「そう、その手配の……って、知っていたんですか?」
「ああ。だから、その辺の話も全部話してもらうまでは帰さないからな。ふふふ、久しぶりだな。こんな楽しい気持ちになるのは、ははは」
「楽しいのはアンタだけでしょ」
『肯定します』
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