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第二章 動き出す何か
第三十五話 やっと出発!
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「なるほどな……まあ、話は分かった」
ガイルさんが俺達に着いて来ることになった太刀とその鍛え方が今のままじゃ到達出来ないことを俺が言ってしまったが為に旅の道中でその話を聞きながらドワーフの国『ドンガ国』に行き、そこでじっくり時間を掛けて教える予定になってしまった。
「しかし、コータよ。そこまで元の世界の情報を流して大丈夫なのか?」
「あ……」
「ん? 元の世界? おい、ダリウス、どういうことだ!」
「ダリウス? コータ君もちょっと詳しく聞かせて欲しいかな?」
「ギルマスのバカ!」
「俺のせいかよ! だいたいお前が「ダリウス!」……はい」
それからタップリ時間を掛けて俺とタロがどうしてこの世界に来て、どうやってこの町に来たのか、アオイが海龍神であることまでを話した。
「そうか、なるほどな。なら、この太刀を鍛えた奴もそうなのか?」
「それは分からないよ。元の世界と同じ様に日々の研鑽の結果かも知れないし」
『肯定します』
「まあ、いい。俺はそれでもお前から教えて欲しい。な、この通りだ」
「もう、ガイルさん。それはもう十分分かっているから。もう、ギルマスのせいでおかしくなったじゃない」
「それは悪かった」
俺に頭を下げてくるガイルさんを止め、ギルマスにチクリと刺すとギルマスも頭を下げてくる。
とにかくこれでここでの用事は全部済ませたのでギルマスとノエルさんにお礼を言ってから部屋を出ようとするが、まだ何か聞きたいことか言いたいことでもあるのか引き留めようとするが、ノエルさんがギルマスに「タロとアオイがダリウス持ちで食事中です」と耳元で言うとギルマスは「それは早く行かないとだな」と急に態度が急変した。
食事中のアオイと名残惜しそうに皿を舐めているタロをなんとか立たせて冒険者ギルドの外に出るとノエルさんとギルマスが「元気でね」と見送ってくれた。
冒険者ギルドを出てから街門を抜けようとしたところで、見覚えのある顔の衛士が目に入る。
「ハンスさん、お世話になりました」
「お、そうか。もう町から離れるんだな。結局王都まで行くことになったんだってな」
「うん、もうイヤになっちゃうよ」
「まあ、そう言うな。ダリウスもお前を気遣ってのことなんだから」
「それは分かるんだけどね」
「まあ、イヤになったらいつでも戻って来い! その時はノエルの料理でもご馳走するからよ」
「戻る?」
「そうだ。ここはお前が初めて冒険者になった町だろ」
「そうか、そうだよね。うん、じゃあ行って来ます!」
「ああ、行って来い!」
ハンスさんに手を振って街門を抜けると、川の船着き場を目指す。ギルマス達との話が長引いてしまったけど、今日中に王都につけるだろうか。
前にキュリに聞いた話だと、そんなに難しいコースはないから飛ばせば直ぐだと言っていたが、大丈夫かな。
暫く歩いて船着き場に着くとキュリが大きく手を振る。
「遅れてゴメン」
「いいさ。暫く離れるんだろうから、積もる話もあるだろうと思っていたからな」
「ま、まあそんなところだけど……今からでも大丈夫?」
「ああ、いいぞ。さあ、乗ってくれ。今日はこの前とは違うぞ」
「この前?」
キュリはアオイを乗せた時のことを言っているんだろうけど、大丈夫だよね。
俺達は船に乗り込むとキュリに「いいよ~」と言えばキュリが頷き、仲間の三人と一緒に船をゆっくりと押し出し舳先を下りに向けてから「行くぞ!」と声を掛けると同時に四人で一気に進める。
「おっと、これはしっかり捕まってないと落ちちゃいそう。キュリもこの間のことがあるからムキになっているんだろうね」
「この前? コータは何を言ってるんだ?」
俺が船の縁に捕まっているのにアオイは涼しい顔で腕を組んで座っている。
そして、それを悔しそうに見ているキュリの顔が目に入る。よほど悔しかったのか、キュリ達の気合いを入れた声が響く。
「まだまだぁ!」
「まあ、早く着くならいいか」
「ホントにまだまだだな」
「だから、そういうことは言わないの!」
忘れていたけどガイルさんは青い顔をして、しっかりと船の縁を掴んでいた。
※※※※※
これで第二章を終わります。
ありがとうございました。
ガイルさんが俺達に着いて来ることになった太刀とその鍛え方が今のままじゃ到達出来ないことを俺が言ってしまったが為に旅の道中でその話を聞きながらドワーフの国『ドンガ国』に行き、そこでじっくり時間を掛けて教える予定になってしまった。
「しかし、コータよ。そこまで元の世界の情報を流して大丈夫なのか?」
「あ……」
「ん? 元の世界? おい、ダリウス、どういうことだ!」
「ダリウス? コータ君もちょっと詳しく聞かせて欲しいかな?」
「ギルマスのバカ!」
「俺のせいかよ! だいたいお前が「ダリウス!」……はい」
それからタップリ時間を掛けて俺とタロがどうしてこの世界に来て、どうやってこの町に来たのか、アオイが海龍神であることまでを話した。
「そうか、なるほどな。なら、この太刀を鍛えた奴もそうなのか?」
「それは分からないよ。元の世界と同じ様に日々の研鑽の結果かも知れないし」
『肯定します』
「まあ、いい。俺はそれでもお前から教えて欲しい。な、この通りだ」
「もう、ガイルさん。それはもう十分分かっているから。もう、ギルマスのせいでおかしくなったじゃない」
「それは悪かった」
俺に頭を下げてくるガイルさんを止め、ギルマスにチクリと刺すとギルマスも頭を下げてくる。
とにかくこれでここでの用事は全部済ませたのでギルマスとノエルさんにお礼を言ってから部屋を出ようとするが、まだ何か聞きたいことか言いたいことでもあるのか引き留めようとするが、ノエルさんがギルマスに「タロとアオイがダリウス持ちで食事中です」と耳元で言うとギルマスは「それは早く行かないとだな」と急に態度が急変した。
食事中のアオイと名残惜しそうに皿を舐めているタロをなんとか立たせて冒険者ギルドの外に出るとノエルさんとギルマスが「元気でね」と見送ってくれた。
冒険者ギルドを出てから街門を抜けようとしたところで、見覚えのある顔の衛士が目に入る。
「ハンスさん、お世話になりました」
「お、そうか。もう町から離れるんだな。結局王都まで行くことになったんだってな」
「うん、もうイヤになっちゃうよ」
「まあ、そう言うな。ダリウスもお前を気遣ってのことなんだから」
「それは分かるんだけどね」
「まあ、イヤになったらいつでも戻って来い! その時はノエルの料理でもご馳走するからよ」
「戻る?」
「そうだ。ここはお前が初めて冒険者になった町だろ」
「そうか、そうだよね。うん、じゃあ行って来ます!」
「ああ、行って来い!」
ハンスさんに手を振って街門を抜けると、川の船着き場を目指す。ギルマス達との話が長引いてしまったけど、今日中に王都につけるだろうか。
前にキュリに聞いた話だと、そんなに難しいコースはないから飛ばせば直ぐだと言っていたが、大丈夫かな。
暫く歩いて船着き場に着くとキュリが大きく手を振る。
「遅れてゴメン」
「いいさ。暫く離れるんだろうから、積もる話もあるだろうと思っていたからな」
「ま、まあそんなところだけど……今からでも大丈夫?」
「ああ、いいぞ。さあ、乗ってくれ。今日はこの前とは違うぞ」
「この前?」
キュリはアオイを乗せた時のことを言っているんだろうけど、大丈夫だよね。
俺達は船に乗り込むとキュリに「いいよ~」と言えばキュリが頷き、仲間の三人と一緒に船をゆっくりと押し出し舳先を下りに向けてから「行くぞ!」と声を掛けると同時に四人で一気に進める。
「おっと、これはしっかり捕まってないと落ちちゃいそう。キュリもこの間のことがあるからムキになっているんだろうね」
「この前? コータは何を言ってるんだ?」
俺が船の縁に捕まっているのにアオイは涼しい顔で腕を組んで座っている。
そして、それを悔しそうに見ているキュリの顔が目に入る。よほど悔しかったのか、キュリ達の気合いを入れた声が響く。
「まだまだぁ!」
「まあ、早く着くならいいか」
「ホントにまだまだだな」
「だから、そういうことは言わないの!」
忘れていたけどガイルさんは青い顔をして、しっかりと船の縁を掴んでいた。
※※※※※
これで第二章を終わります。
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