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第二章 動き出す何か
第二十六話 殴れなかった
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「逃げやがったな……」
『ファゥ~どうしたの、コータ?』
「殴ってやるつもりだったのに逃げられたんだ」
『あ~』
いつもなら、俺を好き勝手に呼び出すクセに昨夜は結局現れなかった。俺が幼女でも殴るって宣言を聞かれて逃げたのかも知れないな。
『肯定します』
俺の思いにメッセージが流れたのを見て、納得する。何か他に手を考えるかと体を起こすと、左手に『むにゅ』っとした感触が伝わる。
寝惚けた頭を覚醒させながらも左手の柔らかい感触が堪らなく心地よく何度も『むにゅむにゅ』と、その感触を楽しんでいると「あん」と艶めかしい声が聞こえた。
「え?」
「コータ、朝からなんだ」
「え?」
「どうした?」
聞こえてきた声の主はアオイだった。そうか、あれはアオイの……って、そうじゃない。なんでアオイがここにいるんだよ。
「え? なんでここに?」
「なんでとはなんだ。俺も一緒の部屋に泊まることになっただろ」
「いや、そうだけど、そうじゃないよね」
「ん? コータは何を言っているんだ?」
「いや、だからさ。一緒の部屋には泊まることにはなったけど、一緒のベッドで寝るとは言ってないよね」
「ふむ、そうだったか」
「いや、だからなんで俺のベッドに寝ているの?」
「それはタロが寝ていたからだな」
「え? タロ?」
『うん、コータの寝相が悪いから隣に移ったよ』
タロを抱き枕にして眠っていたと思ったら、タロは俺の寝相の悪さに耐えきれず、隣のベッドに移ったという。
「そういうことみたいだな。俺が部屋に戻ったらベッドがタロに占領されていたから、コータの隣に寝ただけだぞ。まあ、朝起きるまでは何もしてないし、されなかったんだがな。そんなによかったか。ん?」
アオイが上半身を起こし、俺に向かって自分で胸を持ち上げて俺を挑発してくる。
「まあ、それな……って、何を言わせるの! あ~もう、女神は出てこないし、アオイのを触っちゃうし最悪だ!」
「ホントにそう思っているのか?」
「……ごめんなさい」
最悪だと言ってしまったが、触ったのは事実だし、その感触の良さから何度か握り返したのも事実だったので、アオイに謝罪する。
「まあ、今度からは触る前に一言言ってくれ。いきなり触られるのは慣れていないからな」
「いや、ないから。もうしないからね」
「そうか。まあ、それならそれでいいが……そうか。残念だな」
「もう、いいから。タロも起きて! 朝ご飯に行くよ」
『うん!』
身支度を済ませてから、朝食を取るために一階の食堂へと下りると、そこには倒れているオジサン達で足の踏み場もないくらいだし、異様に酒臭かった。
「うわぁ~どういうことなんだ、これは?」
「あ~俺のせいなのかな?」
「どういうこと?」
アオイに話を聞いたところ、アオイにお酒を勧めるが、一向に酔いそうになかったので、ならばとオジサン一人一人がサシ飲み対決を仕掛けてきたそうだ。それをアオイが一人ずつ丁寧に対応した結果、こうなったということらしい。
「いや、それは分かったけどさ。俺の朝ご飯はどうなるの?」
「あ~ゴメンねぇ~すぐに片付けるから、ちょっと待っててね。ほれ、いつまでも寝ているんじゃないよ! さっさと起きるんだよ! ほら、仕事の時間だよ!」
俺達が朝ご飯の心配をしているとエプロンを身に着けたニャルさんが寄ってきて、転がっているオジサン達を文字通りたたき起こしている。
「ほら、いつまでも寝ていないの! さっさと起きる!」
「……う、うぅぅぅ~ヒデぇ目にあった……うっぷ」
「はいはい、ここでぶちまけるのは止めてよ。クリーニング代を請求するよ」
「……うぷっ、分かったよ。分かったから、押すなよ。出ちまうだろ」
「ほらほら、そういうのはいいから。他のお仲間連中も起こして、さっさと出てちょうだい」
「くっ……俺達はお得意さんだろ?」
「いいから、お得意さんなら宿に迷惑を掛けないようにしなよ。ほらほら!」
「ちっ……ん? あぁ~お前はゆうべの!」
「もう、他のお客様をナンパしないの。そういうのは夜にして」
「あ~もう、分かったよ。ほら、お前らもいい加減起きろ! ほら、ギルドに行くぞ」
「「「は~い……」」」
ニャルさんに起こされたオジサンは他のお仲間らしきオジサン達を起こして回り、十分後にはテーブルを確保することが出来た。
テーブルで待っているとニャルさんがパンとスープにベーコンらしきものを焼いた物が載せられた皿を一つのトレイに載せた朝食セットを俺と青いの前に置き、タロ用のデッカい肉をタロの前に置く。
「ふふふ、アオイちゃんのお陰で昨夜は結構、儲かったからね。ちょっとだけサービスだよ」
「ありがとうございます」
まあ、普段の朝食セットを知らないので、どこがどうサービスなのかは分からないが、アオイに対するお礼なので文句は言わない。
朝食を済ませてから冒険者ギルドに向かうとノエルさんが対応してくれる。
「おはよう、コータ君。タロ様もおはようございます。さっそくだけど解体場にいいかな」
「おはようございます。いいですよ」
『ワフゥ!』
「あと、アオイちゃんは昨日買ったのはちゃんと着けてないみたいだから、後で着けようね」
「いや、俺はこ「着けようね?」……あ、ああ。分かった。頼む」
『ファゥ~どうしたの、コータ?』
「殴ってやるつもりだったのに逃げられたんだ」
『あ~』
いつもなら、俺を好き勝手に呼び出すクセに昨夜は結局現れなかった。俺が幼女でも殴るって宣言を聞かれて逃げたのかも知れないな。
『肯定します』
俺の思いにメッセージが流れたのを見て、納得する。何か他に手を考えるかと体を起こすと、左手に『むにゅ』っとした感触が伝わる。
寝惚けた頭を覚醒させながらも左手の柔らかい感触が堪らなく心地よく何度も『むにゅむにゅ』と、その感触を楽しんでいると「あん」と艶めかしい声が聞こえた。
「え?」
「コータ、朝からなんだ」
「え?」
「どうした?」
聞こえてきた声の主はアオイだった。そうか、あれはアオイの……って、そうじゃない。なんでアオイがここにいるんだよ。
「え? なんでここに?」
「なんでとはなんだ。俺も一緒の部屋に泊まることになっただろ」
「いや、そうだけど、そうじゃないよね」
「ん? コータは何を言っているんだ?」
「いや、だからさ。一緒の部屋には泊まることにはなったけど、一緒のベッドで寝るとは言ってないよね」
「ふむ、そうだったか」
「いや、だからなんで俺のベッドに寝ているの?」
「それはタロが寝ていたからだな」
「え? タロ?」
『うん、コータの寝相が悪いから隣に移ったよ』
タロを抱き枕にして眠っていたと思ったら、タロは俺の寝相の悪さに耐えきれず、隣のベッドに移ったという。
「そういうことみたいだな。俺が部屋に戻ったらベッドがタロに占領されていたから、コータの隣に寝ただけだぞ。まあ、朝起きるまでは何もしてないし、されなかったんだがな。そんなによかったか。ん?」
アオイが上半身を起こし、俺に向かって自分で胸を持ち上げて俺を挑発してくる。
「まあ、それな……って、何を言わせるの! あ~もう、女神は出てこないし、アオイのを触っちゃうし最悪だ!」
「ホントにそう思っているのか?」
「……ごめんなさい」
最悪だと言ってしまったが、触ったのは事実だし、その感触の良さから何度か握り返したのも事実だったので、アオイに謝罪する。
「まあ、今度からは触る前に一言言ってくれ。いきなり触られるのは慣れていないからな」
「いや、ないから。もうしないからね」
「そうか。まあ、それならそれでいいが……そうか。残念だな」
「もう、いいから。タロも起きて! 朝ご飯に行くよ」
『うん!』
身支度を済ませてから、朝食を取るために一階の食堂へと下りると、そこには倒れているオジサン達で足の踏み場もないくらいだし、異様に酒臭かった。
「うわぁ~どういうことなんだ、これは?」
「あ~俺のせいなのかな?」
「どういうこと?」
アオイに話を聞いたところ、アオイにお酒を勧めるが、一向に酔いそうになかったので、ならばとオジサン一人一人がサシ飲み対決を仕掛けてきたそうだ。それをアオイが一人ずつ丁寧に対応した結果、こうなったということらしい。
「いや、それは分かったけどさ。俺の朝ご飯はどうなるの?」
「あ~ゴメンねぇ~すぐに片付けるから、ちょっと待っててね。ほれ、いつまでも寝ているんじゃないよ! さっさと起きるんだよ! ほら、仕事の時間だよ!」
俺達が朝ご飯の心配をしているとエプロンを身に着けたニャルさんが寄ってきて、転がっているオジサン達を文字通りたたき起こしている。
「ほら、いつまでも寝ていないの! さっさと起きる!」
「……う、うぅぅぅ~ヒデぇ目にあった……うっぷ」
「はいはい、ここでぶちまけるのは止めてよ。クリーニング代を請求するよ」
「……うぷっ、分かったよ。分かったから、押すなよ。出ちまうだろ」
「ほらほら、そういうのはいいから。他のお仲間連中も起こして、さっさと出てちょうだい」
「くっ……俺達はお得意さんだろ?」
「いいから、お得意さんなら宿に迷惑を掛けないようにしなよ。ほらほら!」
「ちっ……ん? あぁ~お前はゆうべの!」
「もう、他のお客様をナンパしないの。そういうのは夜にして」
「あ~もう、分かったよ。ほら、お前らもいい加減起きろ! ほら、ギルドに行くぞ」
「「「は~い……」」」
ニャルさんに起こされたオジサンは他のお仲間らしきオジサン達を起こして回り、十分後にはテーブルを確保することが出来た。
テーブルで待っているとニャルさんがパンとスープにベーコンらしきものを焼いた物が載せられた皿を一つのトレイに載せた朝食セットを俺と青いの前に置き、タロ用のデッカい肉をタロの前に置く。
「ふふふ、アオイちゃんのお陰で昨夜は結構、儲かったからね。ちょっとだけサービスだよ」
「ありがとうございます」
まあ、普段の朝食セットを知らないので、どこがどうサービスなのかは分からないが、アオイに対するお礼なので文句は言わない。
朝食を済ませてから冒険者ギルドに向かうとノエルさんが対応してくれる。
「おはよう、コータ君。タロ様もおはようございます。さっそくだけど解体場にいいかな」
「おはようございます。いいですよ」
『ワフゥ!』
「あと、アオイちゃんは昨日買ったのはちゃんと着けてないみたいだから、後で着けようね」
「いや、俺はこ「着けようね?」……あ、ああ。分かった。頼む」
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