異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました

ももがぶ

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第二章 動き出す何か

第二十三話 可愛いとダメ

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「だがな、少し言い辛いんだが王都に行って欲しいんだ」
「え? 王都に?」
「ああ、これから色んな場所の冒険者ギルドに寄って貰うのに俺からの紹介状だけじゃ弱いだろ。だからな、この国の冒険者ギルドの統轄に会って欲しいんだよ。な、頼むよ」
「……どうしても?」
「ああ、どうしてもだ。絶対にお前の為になるからよ」

 折角、王都行きをパス出来ると思ったのに、俺の今後の行動の為にも王都に行って欲しいとギルマスが言い出した。

「俺に危険はないよね?」
「お前に? 誰が何を出来るってんだよ。出来るヤツがいるなら、俺が会いたいくらいだ」
「え~そんな~」
「言っておくが、褒めてないからな」
「それでもホントにないんだよね。面倒なこととか勘弁だよ」
「それは俺の責任か?」
「違うの?」
「違うだろ。大体なタロにアオイにってあんなに目立つ存在を連れて歩いているだけで、ちょっかい掛けられるに決まっているだろ。少なくともタロだけは普通のオオカミレベルの大きさになって貰わないと貴族に目を付けられるぞ」
「だってさタロ。小さくなれない?」
『小さく? 小さくってどれくらい?』
「俺が抱っこ出来るくらいかな」
『分かった。やってみるよ。えい! どうかな?』
「うわっ……」

 タロが俺のお願いにやってみるからと言った後に『ポフン』と音がしたと思ったら、豆柴サイズのタロがそこにいた。

「おぉ~可愛いな。タロ!」
「それはそれで、欲しがるヤツがいそうだな。もう少し大きい方がいいぞ」
「え~可愛いのに」
「可愛いからダメなんだろ」
「しょうがないか~タロ、もう少しだけ大きくなって」
『分かった、えい!』

 そこには大型犬並のサイズになったタロがいた。

 さっきまでの可愛いタロも捨てがたいけど、これはこれでありだな。大きいタロもモフりがいがあるけど、この大きさはアリだな。

「タロ、しばらくはその大きさでお願いね」
『いいよ』

「ただいま~あれ、タロ様?」
「戻ったぞ。タロなのか?」

 すり寄ってきたタロをモフっていたら、ノエルさんとアオイが両手に荷物を抱えて部屋に入って来た。

 ノエルさんは小さくなったタロを見て驚いてはいたが、すぐに慣れたようで今はずっとタロの頭を抱えて「いいわ~」とモフり続けている。

 そして俺は部屋に置かれたアオイの買い物袋を見て驚く。

「アオイ、随分買ったね。お金は足りたの?」
「あ~足りなかったから、後でコータが払いに来るからって言っておいたぞ」
「え?」
「あ~ゴメンね、コータ君。私の分も買ったら……結構、掛かっちゃって。ゴメンね。もし、よかったら私の買ったの見る?」
「い、いや。いいです。遠慮します!」
「ちぇ、ノリが悪いな~」
「なら、俺のを見るか?」
「いや、その流れでなんでアオイのを見ることになるの。いいから、アオイも出さなくていいから、しまって! 早く!」
「そうか。なら、後にしよう」
「……」

 ギルマスがうるさいと俺達を窘めたところで、ノエルさんが言う。

「ねえ、どうしてタロ様が小さくなったの? いや、今でも大きいし、私もこれくらいがベストだと思うけど。ねえ、どうして?」
「あ~コイツには王都に行ってもらうことになった。それで目立たないように小さくなってもらったんだ。大きいままだとどこかのバカ貴族がちょっかい出して来るに違いないからな」
「あ~そういうことね。ただでさえアオイちゃんが横にいて目立つのにね」
「俺がどう関係するんだ?」
「ふふふ、分からないの?」
「さあ?」
「あら、さっき言い寄ってきた男がいたじゃない?」
「ん? ああ、いたな」
「えぇアオイがナンパされたの?」
「そうよ。これだけの見てくれだもの。私だって放っておかないわよ。ねえ、そうダリウスもそう思うでしょ?」
「……まあな」
「へぇ~ギルマスがねぇ」
「コータ、どういうことだ?」

 ギルマスがアオイの容姿を認める発言をしたことでアオイが興味を示したので、俺も正直に話す。するとアオイがギルマスの方を見てニヤリと笑い「揉むか?」と聞くがギルマスは顔を赤くして否定する。

「とにかくだ。コータは王都の冒険者ギルドで統轄に会ってもらう」
「そう。コータ君はそれでいいの?」
「まあ、しょうがないかなとは思っているけど」
「じゃあ、その後は?」
「その後?」
「だから、王都に行った後のことよ。どこに行くかは決めているの?」
「あ~まだ決めてないけど?」
「そう、なら私の故郷はどうかな?」
「はい?」

 俺の王都行きは覆らないけど、その後にどこに行くかが未定だと言うと、ノエルさんは自身の故郷に行くことを勧めてきた。

「ノエルさんの故郷か」
「そう。『ガウル獣王国』よ。ついでに言えば、この国の隣だからね。王都からだと内陸になるけどね。どうよ」
「うん、いいかも。でも、タロは大丈夫かな。ノエルさんもタロを敬っているし。神様扱いされて国の外に出られなくなるとかないよね」
「……」
「ノエルさん?」
「た、多分、大丈夫じゃないかな。ね、タロ様」
『ワフ!』
「ほら、タロ様も喜んでくれているみたいよ」

 ノエルさんの誤魔化しようから、絶対に神様扱いされるのは間違いないよね。
『肯定します』

 あ~やっぱり。
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