異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました

ももがぶ

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第一章 旅立ち

第二十話 それってどういうことなの?

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 雑談と言う名の現状報告も終わり部屋に戻る。それにしても息子さん達とは話しどころか紹介もしてもらえなかったな。しかも何故だかずっと睨まれていたような気もするけど、気のせいじゃないよな。
『肯定します』
 しかし、なんで睨まれたんだろうか。やっぱり姫さんに友達だと言われたせいだろうか。でも、貴族で領主の嫡男なら結婚しているだろうし婚約者もいると思うんだけどな。
『肯定します』
 やっぱりね。でも一夫多妻もOKなこの国なら王女様相手にワンチャン狙っているんだろうか? それも色々と間違っているような気もするんだけどね。

「今日は色々あったし寝ようかな。っと、その前に歯を磨きたいんだけど……どうやってやるんだろ? タロは……知らないよね」
『うん、知らないよ。でもボクも歯磨きして欲しい』
「ああ、そうか。そういやしばらくしてなかったね」

 前世ではヒマを見つけては老犬タロの口腔ケアをしていたが、最近はデスマーチを理由にしていなかったことを思い出す。

「いやいやいや、思い出よりも今は俺の歯磨きだよ。どうすればいいと思う?」
『魔法で出来るんじゃないの?』
「それもそうか。じゃあ何が使えるかな。先ずは口の中に水流を起こすのは絶対だよね。でも、それだけじゃ足りない気がする。あ! そうだよ。粒だよ粒……細かい粒にすればスッキリするんじゃないかな」

 なんとか構想も出来たので自分の口の中で試してみる。

「え~と先ずは水流だよね……ゴボゴボ」
『大丈夫?』
ひゃいひょうぶだいじょうぶ

 自分の口の中に水球を発生させ、それをグルグル回して撹拌させる。だけど、これだけじゃすっきり感が足りない気がするので、前世の記憶から引っ張りだして空気を細かくすることに集中して撹拌させると「ん?」となる。

 部屋の中に設置されている洗面台に向かい口の中の水分を吐き出すと今まで感じたことのない爽快感を味わう。

「なんとなくだけど出来た気がする。よし、タロ」
『歯磨きなの?』
「そうだよ。ちょっとだけくすぐったいかもしれないけど我慢してね」
『いいよ~』
「よし、じゃあいくよ」
『うん!』

 タロの口に手を当てると水が漏れないように手で塞ぎ、さっき俺が試したモノ『口腔洗浄マウス・ウォッシュ』をタロの口の中で発動させる。

『ふご……ふが……』
「はい、ちょっと我慢ね~はい、終わり」
『ぶはっ! くすぐったいよ!』
「タロ……何か言うことない?」
『え? うわぁどうしたのコータ、ずぶ濡れじゃないの』
「……」

 思わずずぶ濡れになったが、そう言えばとある魔法を思い出す。もちろん俺にも使えるはずだよねと考えれば『肯定します』といつもの返事が流れたので、迷わず試してみる。

「『クリーン』……おぉ綺麗になった様な気がする。でも、濡れたままだから乾かすか『ドライ』」
『ねえ、寝ないの?』
「誰のせいだと……まあいいよ。寝るか」
『うん、ボクさっきから眠たいんだ』

 ベッドに横になるとタロも一緒にベッドに上がってくる。

「お前もベッドで寝るの?」
『うん、そのつもりだけど、ダメ?』
「いや、いいけど……お前、寝相悪かったよな?」
『え? そうなの。でも、それって前世の話でしょ。今回は大丈夫だと思うよ』
「……」

 タロは寝相は前世のことだから大丈夫だと言う。まあ、こういうのはフラグだよなと思うが今は眠いので気にせず寝ることにする。

「おやすみ」
『おやすみなさい』

 ベッド横のランプを消し目を閉じる。閉じると同時にす~っと眠りの世界に誘われる。

『……タ、コータ、ちょっと起きてよ、コータ!』
「ふぇ……誰? ってか今何時だよ」
『いいから、起きて』
「ん~もう誰だよ」
『あ~やっと起きた!』
「え? あれ? 俺はベッドで寝てたハズじゃ……」
『あ~心配しないで。今はコータの精神だけ呼び出しただけだから。あなたの体は今もベッドの上よ』
「へ? どういうことなの?」
『え~と初めましてでいいよね。私の名はイーシュ。分かるよね?』
「あ! 残念女神!」
『あんたね~』

 寝たと思ったら誰かに呼ばれ目を覚ませば、寝ていたはずのベッドの上ではなく見たこともない真っ白な空間で、そこには幼女が立っていた。そしてその幼女はイーシュと名乗った。

 俺の記憶が間違ってなければ、イーシュはこの世界の守護神的な存在だったハズだがイースと名乗る女神に取って代わられてしまった残念女神だ。

『だから、残念と違うし』
「でも、そんな格好で違うと言われてもね~」
『だってしょうがないじゃない!』

 見た目幼女のイーシュと名乗る女神が言うには、この世界の女神に対する信仰心が薄れてしまったことで幼女化してしまったらしい。本人曰く本当の姿はこんなちんちくりんじゃなくボンキュッボンな体型だと言うがこんな見た目からは想像出来ない。

『だから、あなたを喚んだんじゃない!』
「え? そうなの? 俺はタロに頼まれたからって聞いているんだけど?」
『最初はね。でもさ、よく考えたらあんた達の国って流行っているんでしょ?』
「流行っているって何が?」
『何がって異世界転生よ。あなたもタロもトラックに撥ねられたんだから、もうこれは異世界転生させるしかないでしょ! って思ったのよ。幸い、地球の女神は予定外のことだったけど一人ぐらいいいわよってことで了解も得られたしね。あっちの女神曰く「今更異世界転生なんて珍しくもないし」って言ってたわよ。なんだか大変ね』
「……」
『どうしたの?』
「いや、ちょっとショックかなと」
『そう? じゃあ話を続けるわね。と言う訳で異世界転生が当たり前の世界から来た人なら、こっちの世界に慣れるのも早いに違いないし魔法も難なく使えるハズだから、それなら私の為に頑張ってもらってもいいよねって思ったの。ね、いい考えでしょ』
「……」
『なに? だから頑張ってあなたに色々と特典を付けてあげたじゃない』
「特典?」
『そうよ。あなたの質問に答えてくれるでしょ』
「あ~あれって特典だったんだ」
『そうよ。随分と便利に使っているじゃない。やっぱり順応性が高いわよね。もう四,五人来ないかしら』
「……で?」
『え?』
「だから、態々起こして呼び出したってことは何か話があるんじゃないの?」
『え……分かる?』
「分かるよ。だから、早くしてよ。俺、凄く眠いんだけど」
『もう、せっかちだね。あのね、魔法を教えていたでしょ』
「あ~見てたんだ。それが何?」
『もう、見てたわよ。だって私の使徒だもの。あれね、広めて欲しいの。積極的にね』
「え? ちょ、ちょっと待って! なんて言った? それって俺のことなの? ねえ?」
『あ、時間みたい。じゃあ、また何かあったら呼ぶわね。いい夢みろよ!』
「え~待ってって! 答えろよ! おいって!」
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