15 / 130
第一章 旅立ち
第十五話 やっぱりお風呂だよ
しおりを挟む
姫さんとクリフさんが部屋から出て行ってしばらくするとメイドさんが「お風呂はいかがなさいますか」と聞いて来たので「もちろん」と答え、下着セットを手にタロと一緒に浴場へと案内してもらう。
「こちらになります」と案内してくれたメイドさんにお礼を言って浴室手前の脱衣場らしきところで用意されている籠に持ってきた下着セットを入れ、着ている服に手を掛けようとしたところで、メイドさんが部屋に残っていることに気付く。いや、それどころかメイドさんまで服に手を掛けているんだけど、どういうことなのかな。
「あの、すみません。着替えるので……」
「あ、どうぞお気になさらずに」
「ああ、そうですか……って、違うんです! 恥ずかしいので一人にして欲しいんです!」
「え? 一人で入られるのですか?」
「ええ、そのつもりですけど、何か?」
「いえ、一人で入られる方はそうそういないので……」
「は?」
メイドさんの話を聞き『うらやまけしからん』と思ったが、なんとか自分の理性に頑張って貰い泣く泣くメイドさんに退室してもらう。
メイドさんが退室したのを確認したら、タロに見張ってもらい誰もいないことを確認すると素早く着ている服を全部脱いでから浴室の扉を開ける。
そこは湯気がもうもうとしており、どこかの温泉地を思わせる景色だったがお湯がたっぷりな浴槽から手桶でお湯を掬うと掛け湯をしてから浴槽へと身を沈める。
思わず「ハァ~」と声が出るのは元日本人としてはしょうがないことだ。
浴槽で温まってから、脱衣所で見張ってくれていたタロを浴室へと入ってもらい、タロの体に手桶でお湯を掛ける。
「タロ、俺はもう疲れたよ」
『え~まだ頭しか濡れてないよ』
「そうは言ってもな~ん? 待てよ、そうだよ。何マジメに手桶でタロの体を濡らそうとしているんだよ」
タロを洗おうと手桶で浴槽からお湯を掬っては掛けていたが十回もこなさないうちに疲れてしまった。だって十二歳だもの。
しかし、ここで魔法が使えることを思い出す。今なら思いっ切りやれるんじゃないかと。
『肯定します』
なんか知らんけどお許しも出たみたいなので、まずはやってみる。
タロに向かって右腕をかざし『水流放出』と唱えると結構な勢いで水が出て来た。
『コータ、ちょっと待って! 冷たいから!』
「あ、ごめん……ちょっと待ってね」
単に水だけなら、そりゃ冷たいよねと考える。なら、何が出来るかと。
「え~と、水が冷たいのなら温水を出せればいいんだよね。お湯か……お湯ってなんて言えばいいんだっけ……温かいなら『ホット』か。まあ、ものは試しってことで『温水噴出』」
『あ~温かい。コータ、気持ちいいよ』
タロが気持ち良さそうにしているので、熱すぎず冷たすぎずってことなんだろう。なんにせよ上手くいったようでよかったよ。でも、ここからタロを洗うんだよな、俺しかいないんだよなと考えてしまう。
「いや、無理でしょ」
『え? なにか言った?』
「タロ、自分で洗える?」
『ん~無理!』
「そうだよな~」
さてせっかく全身をくまなく濡らすことが出来たタロだけど、このまま俺一人で洗うのは無理だ。ならば、さっきのメイドさんに頼もうかと思うが、それは愚策だろう。一人二人増えたところでタロの体の大きさはカバー出来ない。
「タロ、我慢してくれよ」
『え? なに? 何が始まるの?』
タロは俺が何をしようとしているのか全く見当が付かないようだが、面白いことをしてくれそうだとは感じているみたいだ。
ならば、その期待に応えてあげようじゃないかと、タロに向かって右手をかざすと『水球』を唱え、左手では『火球(小)』を唱えると二つの魔法が重なりタロを包む。
タロは水球が火球でほどよい温度になったのか、気持ち良さそうにしているが俺が考えているのはこれで終わりじゃない。
ここからの追加で『撹拌』を唱えるとほどよく温まった水球の中でタロが前後左右に撹拌されている。俺はその中にそっと浴室に用意されていた石鹸を放り込むとすぐに泡立ちタロが見えなくなった。
そのまま、五分ほど撹拌させたところで、魔法を解除するとタロが俺をジッと睨んでいる。
『コータ、ヒドいよ! 死ぬかと思ったよ!』
「でも、死ななかったよね」
『そうだけど、言うことがあるでしょ!』
「うん、綺麗になったね」
『そうだね、コータのおかげだね。ありがと……って、そうじゃないでしょ!』
「ゴメンよ。でも、今日はゴブリンにオークと戦ったし汚れがヒドかったししょうがないよ」
『……』
タロに言い訳めいたことを言ってみたが、許してくれそうにはないなと感じた。
機嫌を直すには時間が掛かりそうだと思ったので、まずは自分を洗うのが先だと思い、洗い場に座り頭を洗った後は、もちろん体も隅々まで綺麗に洗う。特に未使用な部分も丁寧に洗うのは忘れない。
体を洗った後はタロと一緒に湯舟で温まり百まで数えてから湯舟から出る。
「ハァ~気持ちいい。ね、タロ」
『……』
残念ながらタロは不機嫌なままだが、俺が丁寧にブローして毛並みがふわふわになると途端に機嫌がよくなった。
「ラクショー」と思ったことはタロには内緒だ。
「こちらになります」と案内してくれたメイドさんにお礼を言って浴室手前の脱衣場らしきところで用意されている籠に持ってきた下着セットを入れ、着ている服に手を掛けようとしたところで、メイドさんが部屋に残っていることに気付く。いや、それどころかメイドさんまで服に手を掛けているんだけど、どういうことなのかな。
「あの、すみません。着替えるので……」
「あ、どうぞお気になさらずに」
「ああ、そうですか……って、違うんです! 恥ずかしいので一人にして欲しいんです!」
「え? 一人で入られるのですか?」
「ええ、そのつもりですけど、何か?」
「いえ、一人で入られる方はそうそういないので……」
「は?」
メイドさんの話を聞き『うらやまけしからん』と思ったが、なんとか自分の理性に頑張って貰い泣く泣くメイドさんに退室してもらう。
メイドさんが退室したのを確認したら、タロに見張ってもらい誰もいないことを確認すると素早く着ている服を全部脱いでから浴室の扉を開ける。
そこは湯気がもうもうとしており、どこかの温泉地を思わせる景色だったがお湯がたっぷりな浴槽から手桶でお湯を掬うと掛け湯をしてから浴槽へと身を沈める。
思わず「ハァ~」と声が出るのは元日本人としてはしょうがないことだ。
浴槽で温まってから、脱衣所で見張ってくれていたタロを浴室へと入ってもらい、タロの体に手桶でお湯を掛ける。
「タロ、俺はもう疲れたよ」
『え~まだ頭しか濡れてないよ』
「そうは言ってもな~ん? 待てよ、そうだよ。何マジメに手桶でタロの体を濡らそうとしているんだよ」
タロを洗おうと手桶で浴槽からお湯を掬っては掛けていたが十回もこなさないうちに疲れてしまった。だって十二歳だもの。
しかし、ここで魔法が使えることを思い出す。今なら思いっ切りやれるんじゃないかと。
『肯定します』
なんか知らんけどお許しも出たみたいなので、まずはやってみる。
タロに向かって右腕をかざし『水流放出』と唱えると結構な勢いで水が出て来た。
『コータ、ちょっと待って! 冷たいから!』
「あ、ごめん……ちょっと待ってね」
単に水だけなら、そりゃ冷たいよねと考える。なら、何が出来るかと。
「え~と、水が冷たいのなら温水を出せればいいんだよね。お湯か……お湯ってなんて言えばいいんだっけ……温かいなら『ホット』か。まあ、ものは試しってことで『温水噴出』」
『あ~温かい。コータ、気持ちいいよ』
タロが気持ち良さそうにしているので、熱すぎず冷たすぎずってことなんだろう。なんにせよ上手くいったようでよかったよ。でも、ここからタロを洗うんだよな、俺しかいないんだよなと考えてしまう。
「いや、無理でしょ」
『え? なにか言った?』
「タロ、自分で洗える?」
『ん~無理!』
「そうだよな~」
さてせっかく全身をくまなく濡らすことが出来たタロだけど、このまま俺一人で洗うのは無理だ。ならば、さっきのメイドさんに頼もうかと思うが、それは愚策だろう。一人二人増えたところでタロの体の大きさはカバー出来ない。
「タロ、我慢してくれよ」
『え? なに? 何が始まるの?』
タロは俺が何をしようとしているのか全く見当が付かないようだが、面白いことをしてくれそうだとは感じているみたいだ。
ならば、その期待に応えてあげようじゃないかと、タロに向かって右手をかざすと『水球』を唱え、左手では『火球(小)』を唱えると二つの魔法が重なりタロを包む。
タロは水球が火球でほどよい温度になったのか、気持ち良さそうにしているが俺が考えているのはこれで終わりじゃない。
ここからの追加で『撹拌』を唱えるとほどよく温まった水球の中でタロが前後左右に撹拌されている。俺はその中にそっと浴室に用意されていた石鹸を放り込むとすぐに泡立ちタロが見えなくなった。
そのまま、五分ほど撹拌させたところで、魔法を解除するとタロが俺をジッと睨んでいる。
『コータ、ヒドいよ! 死ぬかと思ったよ!』
「でも、死ななかったよね」
『そうだけど、言うことがあるでしょ!』
「うん、綺麗になったね」
『そうだね、コータのおかげだね。ありがと……って、そうじゃないでしょ!』
「ゴメンよ。でも、今日はゴブリンにオークと戦ったし汚れがヒドかったししょうがないよ」
『……』
タロに言い訳めいたことを言ってみたが、許してくれそうにはないなと感じた。
機嫌を直すには時間が掛かりそうだと思ったので、まずは自分を洗うのが先だと思い、洗い場に座り頭を洗った後は、もちろん体も隅々まで綺麗に洗う。特に未使用な部分も丁寧に洗うのは忘れない。
体を洗った後はタロと一緒に湯舟で温まり百まで数えてから湯舟から出る。
「ハァ~気持ちいい。ね、タロ」
『……』
残念ながらタロは不機嫌なままだが、俺が丁寧にブローして毛並みがふわふわになると途端に機嫌がよくなった。
「ラクショー」と思ったことはタロには内緒だ。
128
お気に入りに追加
1,287
あなたにおすすめの小説

前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。

追放されましたがマイペースなハーフエルフは今日も美味しい物を作る。
翔千
ファンタジー
ハーフエルフのシェナは所属していたAランクの勇者パーティーで魔力が弱いからと言う理由で雑用係をさせられていた。だが、ある日「態度が大きい」「役に立たない」と言われ、パーティー脱退の書類にサインさせられる。所属ギルドに出向くと何故かギルドも脱退している事に。仕方なく、フリーでクエストを受けていると、森で負傷した大男と遭遇し、助けた。実は、シェナの母親、ルリコは、異世界からトリップしてきた異世界人。アニメ、ゲーム、漫画、そして美味しい物が大好きだったルリコは異世界にトリップして、エルフとの間に娘、シェナを産む。料理上手な母に料理を教えられて育ったシェナの異世界料理。
少し捻くれたハーフエルフが料理を作って色々な人達と厄介事に出会うお話です。ちょこちょこ書き進めていくつもりです。よろしくお願します。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ
翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL
十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。
高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。
そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。
要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。
曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。
その額なんと、50億円。
あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。
だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。
だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

異世界で生きていく。
モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。
素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。
魔法と調合スキルを使って成長していく。
小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。
旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。
3/8申し訳ありません。
章の編集をしました。
異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。
みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・

不登校が久しぶりに登校したらクラス転移に巻き込まれました。
ちょす氏
ファンタジー
あ~めんどくせぇ〜⋯⋯⋯⋯。
不登校生徒である神門創一17歳。高校生である彼だが、ずっと学校へ行くことは決してなかった。
しかし今日、彼は鞄を肩に引っ掛けて今──長い廊下の一つの扉である教室の扉の前に立っている。
「はぁ⋯⋯ん?」
溜息を吐きながら扉を開けたその先は、何やら黄金色に輝いていた。
「どういう事なんだ?」
すると気付けば真っ白な謎の空間へと移動していた。
「神門創一さん──私は神様のアルテミスと申します」
'え?神様?マジで?'
「本来呼ばれるはずでは無かったですが、貴方は教室の半分近く体を入れていて巻き込まれてしまいました」
⋯⋯え?
つまり──てことは俺、そんなくだらない事で死んだのか?流石にキツくないか?
「そんな貴方に──私の星であるレイアースに転移させますね!」
⋯⋯まじかよ。
これは巻き込まれてしまった高校17歳の男がのんびり(嘘)と過ごす話です。
語彙力や文章力が足りていない人が書いている作品の為優しい目で読んでいただけると有り難いです。
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる