異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました

ももがぶ

文字の大きさ
5 / 131
第一章 旅立ち

第五話 着きました

しおりを挟む
 馬車の中で姫さんと俺はどうにか打ち解けてキャッキャウフフとはしゃいでいたが、隊長はそんな俺達を見ながら歯ぎしりをしていた。

「着きましたよ」
「ふぅ~やっと着いたのね。降りましょコータ」
「ああ……えっと隊長さん?」
「私に構うな!」

 馬車の扉をクリフさんが開けると姫さんの前に隊長が先に降り、続けて俺が降りる。そして最後にクリフさんがエスコートして姫さんが降りてきた。

 クリフさんの説明によると、ここはこの町の領主の館だそうで、今日はこの館に宿泊予定らしい。

 馬車を降りた屋敷の入口にはこの屋敷の主人である貴族のオジサンとそのご家族らしい人達とメイドさん達使用人がずらりと並んでいた。

「ご苦労様です」
「これはこれはソフィア様。お久しぶりでございます」
「ウェルター様、今日はお世話になります」
「ふはは。この様な狭い屋敷ですがいくらでもご自由にお使い下さいませ」

 馬車から降りた姫さんは、館の主人であるオジサンに綺麗なカーテシーで挨拶をするとオジサンも満更でもなさそうに鷹揚に挨拶を返す。

 後ろに控えるご家族の皆さんも姫さんに対し恭しくお辞儀しているが、俺に気付くと不思議そうな顔になる。それに俺の横にはデッカいタロが座っているのだから尚更だろう。

 オジサンも俺とタロに気付きクリフさんと目を合わせると、クリフさんが俺達のことをオジサンに紹介する。

「こちらの方々はコータ様にタロ様です。こちらに至る道中に魔物の群れに襲われた我々を助けて頂きました。故あって今はソフィア様にご同道願っています。従いまして客人として扱っていただければと思います」
「ウェルター様、お願いします」
「そ、そんなソフィア様まで。お顔をお上げ下さい。ソフィア様の恩人となれば王家の恩人とも言えるでしょう。であれば、我々家族一同も精一杯お持て成しさせて頂きますので」
「はい、ありがとうございます」
「「「……」」」

 クリフさんから俺達のことが説明され、姫さんからも俺達のことをよろしくと言われたオジサン達はそういうことであればという感じで俺達を受け入れてくれるようだ。

 ともあれ、道中お疲れ様でしたということで館の中へ案内されると、俺とタロも一部屋用意するということなのでメイドのお姉さんに案内してもらう。

「こちらのお部屋をお使い下さい。では、何かあれば卓上のベルを鳴らして頂ければお伺いいたしますので」
「はい、ありがとうございます」
『ありがとうね』
「……え? は、はい。では」

 メイドのお姉さんがお辞儀をしながら部屋のドアを閉じたのを確認してからタロに話しかける。

「あのさ、タロ。言いにくいんだけどね」
『うん、なに?』
「俺達以外の人達がいる場所では喋らない方がいいと思うんだ」
『え~どうしてさ。コータと話したいのに!』
「あ~俺もそうだけどさ。普通は話さないみたいだよ。さっきもメイドさんが驚いていただろ?」
『う~ん、そうかもだけど……どうしてもダメ?』
「そうだな。当分は窮屈かもしれないけど我慢して欲しいかな」
『……うん、分かったよ。ボク我慢するよ』

 俺はベッドに腰掛けながらタロの頭を撫でているとドアの隙間が少しだけ開いているのに気付く。

「うん? さっきちゃんと閉めていったハズなのにおかしいな」

 そう思いながらドアに近付くと、その隙間からこちらの様子をジッと見ている視線に気付く。

 その視線の低さから、ここの館の子供だろうと予想しドアを開くと予想通りにこちらをジッと見ていた子供と目が合う。

「えっと「わんわん」……もしかしてタロに会いたいのかな?」
「わんわん、ここなの?」
「困ったな。これじゃ話が出来ないよ。あ、そうだ!」

 俺はメイドさんに言われたことを思い出し、卓上のベルを押すことにした。

「タロ、ベルを鳴らすんだ!」
『は~い! いいよ』
「あ、わんわん!」
「あ……」

 つい、近くにいたタロにベルを鳴らすようにお願いしたら、タロが俺の頼みに返事をしながら『チ~ン』とベルを鳴らす。

「わんわん、しゃべれるの?」
『わふ……』

 子供からの純粋な眼差しに嘘が付けずに困ったタロが俺をジッと見る。
 どうしようかと俺も困っていた所にメイドさんが小走りにやって来てドアの陰から「どうしましたか?」と聞かれたので、中にいる子供を指してどうしたものかと困っていることを伝えるとメイドさんは「申し訳ありません」と俺に断り部屋の中へと入るなりタロにもたれ掛かっている子供を抱きかかえて俺にお辞儀をして部屋から出ようとするが、「わんわん、わんわ~ん!」と泣きながらタロを呼び続ける。

 そんな様子に俺もメイドさんも困ってしまうが、当のタロはと言えば『俺に任せろ』とでも言いたげに胸を張っているようにも見える。なので俺からメイドさんに「もしよければ」と子供とタロを遊ばせてはどうかと提案してみる。

「あの、ご迷惑ではありませんか?」
「いえ、実際に私もこの館の中で暇を持て余していますから、構いませんよ」
「そうなんですね。では、お願いしてもよろしいですか」
「はい、どうぞ。タロも喜びますので」

 子供を抱えたメイドさんが俺に用意された部屋へと入ってくると「わんわ~ん!」と抱かれたままの子供がタロに向かって思いっ切り両腕を伸ばしてくる。

 タロも自分の顔が子供の手に届く位置にまで子供に近寄ると、その手をペロッとなめる。

「きゃっきゃっ、わんわん!」
「タロ様ですよ。アリス様」
「たろ?」
「ええ、タロ様ですよ」
「たろ、たろ!」
『ワフ!』
「きゃ~たろ!」

 子供はメイドさんからタロの名前を教えてもらうと嬉しそうにそのなを連呼する。タロも名前を呼ばれた嬉しさからか返事をするとまた、子供が喜ぶというループに入ったようだ。

「たろ、たろ!」
『ワフ!』

「コータ、遊びに来たわよ……え? もう奥さんに子供がいるの?」
「「『はい?』」」
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

処理中です...