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第一章 旅立ち
第三話 何も聞いてないです
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『えっと、どうかしたのかな?』
「さあ? 俺にはさっぱり。でも用がないのなら行こうか」
『うん!』
タロが喋ったせいなのか姫さん達は口を開けたまま固まってしまったようなので俺達はそれならとこの場を去ろうとしたところでやっと再起動した執事さんが再び「お待ち下さい」と言うので立ち止まり振り返ると執事さんは綺麗なお辞儀をしていた。
「申し訳ありません。コータ様のお連れのタロ様が声を発したことに驚きのあまり戸惑ってしまいました」
「えっと、こちらこそごめんなさい。じゃあ」
「ですから、お待ち下さい」
執事さんにフリーズしたことを謝罪されたが面倒なので適当に返し、その場から離れようとしたが、今度は執事さんに右腕を掴まれた。
「えっと……」
「私は言いましたよね。このままタダで返すことは出来ませんと」
「は、はい……」
執事さんの圧力に負け、大人しく話を聞く体勢になる俺とタロを前に執事さんが話し出す。
「言いたいこと、聞きたいことは多々ありますが……」
「『はい』」
「コレはなんでしょうか?」
執事さんが言うコレとはタロが咥えて引き摺ってきた人だった物体だ。先程の石礫の犠牲者と言えるだろう。何気なく初めての殺人となったが、実感がない。大丈夫なのか俺?。
「えっと、多分ですけど先程の実行犯だと思いますよ」
「先程のと言うと……まさか、此奴らが魔物を使って姫様を襲撃させたと言うことですか!」
「ええ、そうだと思います。そいつらは、あそこの少し高くなっている丘の上でこちらの様子を窺っていたみたいですよ」
「そうなんですね。しかし、此奴らの服装はどこかで見た覚えがありますね。サーシャ、ちょっとこちらへ」
「なんでしょうかクリフ殿」
「此奴らの服装に見覚えがありませんか?」
「……ん? いや、まさかそんなハズは……」
執事さんに呼ばれた隊長が所々ずるむけになった三人の格好を確認する。俺も少しだけ見たがアニメやラノベのイラストでよく見る如何にも『魔道士です』って感じの揃いの服装だった。
そして、その格好に見当が付いたのか執事さんと隊長の顔色が変わる。
っていうかさっきから執事さんが俺の腕を掴んだままなんだが段々と力が込められて痛いんですけど、いい加減離してくれないかなと小さく『エヘン』と咳払いをすると、やっと気付いてくれた執事さんが「申し訳ありません」と俺の手を離してくれた。
「じゃあ、俺は「いえ、もう無理です」……え?」
「お礼もしていないのは散々言っていますが、此奴らを捕まえたことのお礼も追加でしないといけません。そしてついでに言えば、此奴らを見たことを他所で話されるのも困るのです」
「え~」
執事さんに断り、もうお礼なんかいいから、この場から離れようとしたところでまた執事さんに捕獲されてしまう。しかも何やら大事に首を突っ込んだようで見られたからにはしょうがないですねと俺を見る執事さんの目が怖くなる。
「クリフ、コータ殿が怖がっていますよ」
「はっ失礼しました」
執事さんは姫さんに謝ってはいるが俺の腕を離すことはないようだ。もう、どうにでもして欲しいと思っていると護衛騎士の方々が出発の準備が出来ましたと報告してきた。
「そうですか。分かりました。では、姫様も馬車の方へ。コータ殿も一緒に行きますよ」
「え? 俺が? なんで? どうして?」
「ふふふ、子供一人こんなところに置いていけないでしょう。それにまだお礼を述べただけですからね。どうぞ」
「姫様、なりません!」
「サーシャ!」
「ぐぬぬ!」
姫さんが俺を馬車の中へと勧めてくれたのが隊長は気に入らないようで姫さんに忠告するが、それを執事さんに止められ口籠もる。
馬車の中へ入ろうとしたところで、亡くなった騎士達の遺体をどうするのかと気になっていたが、布にくるんで途中の町で埋葬すると聞いた。
「あれ? ラノベと言えばアイテムボックスやインベントリに魔法鞄とかあるんじゃないの」
『肯定します』
「俺も使えたりするのかな」
『肯定します』
「使えるんだ。じゃあ、えっと収納……え?」
「「「え?」」」
目の前にあった襲撃犯と思わしき三人の遺体に向けて『収納』と呟いたら、消えてしまったことに焦ってしまう。同じ様に見ていた姫さん達は単純に驚いていたようだけど。
「えっと、ちょっと待って! え~と取り出せばいいんだよね」
さっきのご遺体を思い浮かべて箱の中から取り出すようにイメージしてみると、かざした右手から。地面にさっきのご遺体が並ぶ。
「あ! 使えた!」
「コータ様、今のは?」
「あ、えっとアイテムボックス……なのかな?」
「「「え~!」」」
姫さん達に取り敢えずは『アイテムボックス』が使えるみたいだからと、この三人のご遺体と騎士達のご遺体の運搬を申し出ると姫さんだけでなく隊長からも少しだけ感謝される。
全てのご遺体を収納し改めて馬車へと乗り込む。馬車の中には隊長と姫さんと俺の三人で、執事さんは御者席に座る。配置としては進行方向に向かって姫さんが座り、その姫さんの対面に隊長が座り俺はその隣に座らせられていた。まあ、姫さんに何かしようとしたら何がなんでもとめるぞという風に俺をずっと睨んでいるのは勘弁して欲しいが、せめて兜だけでも脱いでくれたらいいのにと思っている。
そんな風に思っていると好奇心が我慢出来なかったのか姫さんからあれやこれやと質問攻めに遭う。どうしてあんなところにいたのか、タロはなんなのか、魔法は使えるのかなどなどだ。
姫さんからの質問に対し俺が考えた設定はこうだった。
祖父と一緒に山中で暮らしていた。
タロはその時に山の中で拾った子犬だ。
魔法も少しだけ祖父に教えてもらった。
その祖父が亡くなったのでタロと一緒に山を下りて来たところで、姫さん達の馬車に遭遇した。
俺も質問されてばかりではなく姫さん達ご一行がどこに向かっているのかを確認すると、どうも姫さんの母親が実家の領で療養中とのことでそこへ向かっているらしい。
それはいいのだが、どうして襲われたのか心当たりはないのかと言えば、姫さんは無口になり隊長は『空気を読め』とでも言いたげに俺を睨む。
なし崩し的に巻き込まれた俺はどうするのが正解なのかと窓の外に目をやれば、そこには楽しそうに駆けているタロの姿があった。
「さあ? 俺にはさっぱり。でも用がないのなら行こうか」
『うん!』
タロが喋ったせいなのか姫さん達は口を開けたまま固まってしまったようなので俺達はそれならとこの場を去ろうとしたところでやっと再起動した執事さんが再び「お待ち下さい」と言うので立ち止まり振り返ると執事さんは綺麗なお辞儀をしていた。
「申し訳ありません。コータ様のお連れのタロ様が声を発したことに驚きのあまり戸惑ってしまいました」
「えっと、こちらこそごめんなさい。じゃあ」
「ですから、お待ち下さい」
執事さんにフリーズしたことを謝罪されたが面倒なので適当に返し、その場から離れようとしたが、今度は執事さんに右腕を掴まれた。
「えっと……」
「私は言いましたよね。このままタダで返すことは出来ませんと」
「は、はい……」
執事さんの圧力に負け、大人しく話を聞く体勢になる俺とタロを前に執事さんが話し出す。
「言いたいこと、聞きたいことは多々ありますが……」
「『はい』」
「コレはなんでしょうか?」
執事さんが言うコレとはタロが咥えて引き摺ってきた人だった物体だ。先程の石礫の犠牲者と言えるだろう。何気なく初めての殺人となったが、実感がない。大丈夫なのか俺?。
「えっと、多分ですけど先程の実行犯だと思いますよ」
「先程のと言うと……まさか、此奴らが魔物を使って姫様を襲撃させたと言うことですか!」
「ええ、そうだと思います。そいつらは、あそこの少し高くなっている丘の上でこちらの様子を窺っていたみたいですよ」
「そうなんですね。しかし、此奴らの服装はどこかで見た覚えがありますね。サーシャ、ちょっとこちらへ」
「なんでしょうかクリフ殿」
「此奴らの服装に見覚えがありませんか?」
「……ん? いや、まさかそんなハズは……」
執事さんに呼ばれた隊長が所々ずるむけになった三人の格好を確認する。俺も少しだけ見たがアニメやラノベのイラストでよく見る如何にも『魔道士です』って感じの揃いの服装だった。
そして、その格好に見当が付いたのか執事さんと隊長の顔色が変わる。
っていうかさっきから執事さんが俺の腕を掴んだままなんだが段々と力が込められて痛いんですけど、いい加減離してくれないかなと小さく『エヘン』と咳払いをすると、やっと気付いてくれた執事さんが「申し訳ありません」と俺の手を離してくれた。
「じゃあ、俺は「いえ、もう無理です」……え?」
「お礼もしていないのは散々言っていますが、此奴らを捕まえたことのお礼も追加でしないといけません。そしてついでに言えば、此奴らを見たことを他所で話されるのも困るのです」
「え~」
執事さんに断り、もうお礼なんかいいから、この場から離れようとしたところでまた執事さんに捕獲されてしまう。しかも何やら大事に首を突っ込んだようで見られたからにはしょうがないですねと俺を見る執事さんの目が怖くなる。
「クリフ、コータ殿が怖がっていますよ」
「はっ失礼しました」
執事さんは姫さんに謝ってはいるが俺の腕を離すことはないようだ。もう、どうにでもして欲しいと思っていると護衛騎士の方々が出発の準備が出来ましたと報告してきた。
「そうですか。分かりました。では、姫様も馬車の方へ。コータ殿も一緒に行きますよ」
「え? 俺が? なんで? どうして?」
「ふふふ、子供一人こんなところに置いていけないでしょう。それにまだお礼を述べただけですからね。どうぞ」
「姫様、なりません!」
「サーシャ!」
「ぐぬぬ!」
姫さんが俺を馬車の中へと勧めてくれたのが隊長は気に入らないようで姫さんに忠告するが、それを執事さんに止められ口籠もる。
馬車の中へ入ろうとしたところで、亡くなった騎士達の遺体をどうするのかと気になっていたが、布にくるんで途中の町で埋葬すると聞いた。
「あれ? ラノベと言えばアイテムボックスやインベントリに魔法鞄とかあるんじゃないの」
『肯定します』
「俺も使えたりするのかな」
『肯定します』
「使えるんだ。じゃあ、えっと収納……え?」
「「「え?」」」
目の前にあった襲撃犯と思わしき三人の遺体に向けて『収納』と呟いたら、消えてしまったことに焦ってしまう。同じ様に見ていた姫さん達は単純に驚いていたようだけど。
「えっと、ちょっと待って! え~と取り出せばいいんだよね」
さっきのご遺体を思い浮かべて箱の中から取り出すようにイメージしてみると、かざした右手から。地面にさっきのご遺体が並ぶ。
「あ! 使えた!」
「コータ様、今のは?」
「あ、えっとアイテムボックス……なのかな?」
「「「え~!」」」
姫さん達に取り敢えずは『アイテムボックス』が使えるみたいだからと、この三人のご遺体と騎士達のご遺体の運搬を申し出ると姫さんだけでなく隊長からも少しだけ感謝される。
全てのご遺体を収納し改めて馬車へと乗り込む。馬車の中には隊長と姫さんと俺の三人で、執事さんは御者席に座る。配置としては進行方向に向かって姫さんが座り、その姫さんの対面に隊長が座り俺はその隣に座らせられていた。まあ、姫さんに何かしようとしたら何がなんでもとめるぞという風に俺をずっと睨んでいるのは勘弁して欲しいが、せめて兜だけでも脱いでくれたらいいのにと思っている。
そんな風に思っていると好奇心が我慢出来なかったのか姫さんからあれやこれやと質問攻めに遭う。どうしてあんなところにいたのか、タロはなんなのか、魔法は使えるのかなどなどだ。
姫さんからの質問に対し俺が考えた設定はこうだった。
祖父と一緒に山中で暮らしていた。
タロはその時に山の中で拾った子犬だ。
魔法も少しだけ祖父に教えてもらった。
その祖父が亡くなったのでタロと一緒に山を下りて来たところで、姫さん達の馬車に遭遇した。
俺も質問されてばかりではなく姫さん達ご一行がどこに向かっているのかを確認すると、どうも姫さんの母親が実家の領で療養中とのことでそこへ向かっているらしい。
それはいいのだが、どうして襲われたのか心当たりはないのかと言えば、姫さんは無口になり隊長は『空気を読め』とでも言いたげに俺を睨む。
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