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第二章 これからの生き方を求めて

第3話 ご馳走も食べ飽きるから

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「ねえ、マリア。言いにくいんだけどそんなことよりも……」
「ん? って言った?」
「え?」
「あ! うそうそ、今のはなし! で、何?」

 さっき落ち着いて攻めていくと決めたばかりのマリアに対し、ナキが『そんなこと』と言うものだからマリアの胸の中に一瞬だけどす黒い何かが生じるが「これがダメなんだ」と気を取り直してナキに確認する。

 だが、ナキは何故か恥ずかしそうにこちらをチラチラ見てはいるが、なかなか本題を切り出さない。そして、そんな態度のナキに「もしかして、この流れって……あるのかも? きゃっ」とか声に出さないようにマリアもナキの言葉を待っていると、やがて意を決した様にナキが口を開く。

「うん、やっぱりちゃんと言わないとダメだよね。マリア」
「キタァ!」
「え?」
「あ、なんでもないの。で、何?」
「あのね……」
「へ?」

 ナキがマリアに対し重かった口をやっと開いたと思ったら、それはマリアが予想していたこととは遠くかけ離れたものではあったが、ちょっとずらして考えれば「これって私を意識しているってことよね」と前向きに考えられないことでもないと持ち直す。

「でも、男の子としてはそういうのは無い方がいいんじゃないの?」
「いや、そんなことはないから! 絶対に!」
「そうなの?」
「そう、そういうのを喜ぶのは一瞬だけだから。大体、いつも全裸でいたら、それはもう日常でしょ。だから、その辺の草を見ているのと変わらないから」
「……そうなんだ」
「だからさ、箱の中には衣類や下着もあったでしょ。だから、その貫頭衣から着替えて欲しいんだけど」
「ん~でもね~もう、これに慣れちゃうと楽なんだよね~」
「……垂れるよ」
「はい?」

 ナキがマリアに言いたいこと。それはいろいろと防御力が紙レベルの貫頭衣からちゃんとした衣服と下着を身に着けて欲しいと言うことだった。

 何故かと言えば、マリアが屈んだり、しゃがんだりする度に見えてはいけないところがナキの目に入ることとなり、視線が落ち着かないのだ。普通に考えれば男の子としては「ごちそうさまです」と言いたくなるシチュエーションなんだろうが、こうも毎回毎回だとゲップも出て来ると言うもので有難みもなくなる。

 だけど、そこは男の子という悲しい生き物のさがの為、見えると見てしまうのだから、視線が落ち着かなくなるのだ。

 それともう一つ大事なこととして、ナキがマリアに言ったのは「垂れる」の一言だった。

 だが、言われたマリアも「垂れる」とだけ言われても、そもそも何がのかが不明なのだ。だから、マリアは当然ながらナキに対し「何が垂れるのか」と聞き返す。

「ねえ、ちょっと前で腕をこう組んでくれるかな」
「こう?」

 ナキはマリアに対し両腕を体の前で組むようにお願いするとマリアもこれに何が意味があるのかと思いつつもナキに言われた通りに体の前で腕を組んで見せる。

「それで、これがなんなの?」
「……今、マリアの胸は……その……」
「あら?」
「……」

 ナキが頼んだことなのに、そのナキの顔が赤くなりマリアから顔を逸らしている。マリアはそんなナキの様子にちょっとだけおかしくもあり揶揄うように「これがどうしたの?」とワザとナキの顔の前で腕を組んだままの状態で近付ける。

「……言うから! ちゃんと言うから、ちょっと離れて!」
「ちぇ。で、何?」
「あのね、今はマリアの腕の上に……その……胸が乗っかっているでしょ」
「あ~うん、そうね。で、それがどうしたの?」
「だからね、垂れると……今度は腕が上になるんだよ」
「え? どゆこと?」
「だからね……」

 ナキは地面にしゃがむと今のマリアの胸と垂れた場合のマリアの胸を図解で説明しようと地面に書き込んだ後に「ね?」と顔を上げれば、ナキの正面で同じ様にマリアがしゃがんでいるものだから、慌てて目を逸らす。

 だが、当のマリアはそんなナキの態度を気にすることもなく「これ、本当なの?」とナキを問い詰める様にナキの両肩を持ってガクガクとナキを揺さぶる。

「マ、マリア……気持ち悪い……うぷっ……」
「あ、ごめんなさい。でも、これって本当なの?」
「うん、このまま『楽だから』と下着を着けないままでいると間違いなくこうなるよ」
「……」

 マリアはナキに嘘やまやかしではないと言うと、マリアはナキの顔をジッと見てから「ナキはどっちが好みなの?」と聞くが、ナキとしては「もちろん」と答えることでマリアは愕然とする。

「でも、中にはそういうのが好きな人もいるから。大丈夫だよ」
「ナキはそうじゃないんでしょ?」
「ん~どちらかと言えばそうかな」
「分かった! じゃあ、止める!」
「えっ!」

 マリアはそう言うが早いか、その場で貫頭衣を脱ぎナキの前で全裸になると「出して!」と言う。

 だが、急にそんなことを言われ、目を瞑ったままのナキはマリアに「何を?」と聞くのが精一杯だった。だが、マリアはそんなことはお構いなしにしゃがんだままのナキの両肩を掴むと「アレよ! 早く出して!」と言うだけだった。

「だから、アレと言われても……ああ、アレね」
「早く!」
「分かったから、ちょっと離れて!」
「あ、ごめんなさい」

 ナキはマリアが自分から離れたのを雰囲気で感じ取ると、マリアに背を向けて鞄から衣服が詰まった箱を取り出し地面に置くと、また目を瞑り「ここに置いたから」とマリアに告げる。

「ありがとう。もう、別に見てもいいのに」
「いいから、早く着てよ!」
「ちぇっ。でも、どれを着ればいいのかな? ねえ、ナキの好みは?」
「裸じゃない格好!」
「もう!」

 ナキはマリアが服を着るまでは目を開けるものかと両手で顔を隠したままでマリアにそう答えれば、マリアも揶揄いすぎたかなと反省しながら箱の中から衣服を選ぶのだった。
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