ドワーフだっていいじゃない! というか僕には願ったりだ

ももがぶ

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第一章 はじめまして

第1話 痛いです

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「あ痛ッ! 何すんだよ父ちゃん!」
「何じゃねぇ。さっさと済ませろ。何をダラダラしてやがる!」
「そうは言ってもよぉ……あ、ぐ……」
「ん? どうした?」
「あ、頭が……痛い……」
「ありゃ、そんなに強く殴ったつもりはなかったんだがな……」
「痛い! 痛い! 頭が割れる!」
「お、おい! 大丈夫か!」
「あんた、サンに何をしたんだい! サン、大丈夫かい?」
「母ちゃん……」
「サン? サン! しっかりして! あんた、何してんの! サンを運ぶんだよ!」
「あ、おう、分かった!」

 まだ小さな男の子が父親に殴られた頭を抱え「痛い」と言いながら地面に寝転がっているのを見た母親は子供を慌てて抱きかかえると父親に息子をベッドに運ぶように指示すると、父親は慌てて息子であるサンを母親から預かり家の中へと急ぐ。

 父親は息子をベッドに静かに寝かせると「何、ボサッとしてんだい! 医者だろ、医者!」と父親を急かす。

「お、おう、分かった。医者だな。すぐ呼んで来る!」
「急ぎなよ!」
「お、おう」

 父親は急いで家を出ると一目散に医者の家を目指す。

「まったく、コレだから……まだ、こんな小さいのに……」

 母親はベッドの上で苦しそうにしているまだ小さな息子を心配そうに見ている。

「連れて来たぞ。さ、先生診てくれ!」
「ハァハァ……待て、水ぐらい飲ませろ。ここまで走って来たんだぞ……ハァハァ……」
「ちっ分かったよ。ちと待ってろ!」
「ゴメンよ、先生。私が急がせたばかりに」
「いいよ。いつものことだ。で、今度はどうした?」
「あの人がいつもより強く頭を殴ったみたいでね。それで、『痛い!』って頭を抱えていたんでね。急いで先生に来てもらったって訳さ。で、どうなの?」
「まあ、待て。ふむ……確かに痛そうに苦しんでいるが、こりゃどうも頭を殴られたのが原因には見えないが……」
「なら、どうしてこんなに痛がっているんだい! アンタ、ヤブだね」
「おいおい、ヤブはないだろ。ヤブは……とりあえず、今は様子見だな。ほれ見なさい。今は、症状も落ち着いたようだぞ」
「え?」

 母親がベッドの上の息子サンを見ると確かに医者が言うようにさっきまでうなされていたというのに今は『スゥスゥ』と軽い寝息を立てている。

「な、だから今夜は頭のたんこぶを冷やして様子を見るんだね。じゃあ、私はこれで」
「先生、水……なんだもう帰るのか。サンは……もしかして……」
「アンタ!」
「いや、だって先生がもう帰るって言うから……俺はてっきり……」
『ガツン!』
「痛ッ!」
「まったくアンタはいつもいつも! どうして、すぐにそうやって手が出るんだい!」
「「……」」

 父親も医者も『おまゆう』と言いたげに母親の顔を見るが、母親は腰に両手を当てたまま父親を睨み付ける。

「ほれ、二人とも寝ている子供の前で止めなさい」
「「はい……」」
「じゃ、私はこれで失礼するよ。何かあったら呼んでくれ」
「はい。ありがとうございました」
「ああ。だが、いくら息子と言っても相手は子供なんだから。その辺はちゃんと手加減してやりなさい」
「はい、すみません」

 医者は父親にそう言って注意すると「お大事に」と言って家を出る。

「まったくアンタは……」
「分かった。分かったから、そうやって直ぐ殴るなよ」
「はぁ? 何言ってんだい。殴ったのはアンタじゃないか!」
「いや、だから俺が言ってんのは『ガツン!』……だから痛いって」
「さっきからアンタは言い訳ばっかりして!」
「だから「何よ!」……いや、いい」

 父親はこれ以上言っても自分が被害にあうばかりだなと口を閉じることにした。

「で、どうして殴ったりしたんだい?」
「ああ、それがな。俺はサンに水汲みを頼んだんだけどよ。コイツが重いからイヤだってごねるから、ついガツンと『ガツン!』……痛ッ!」
「ったく、どうしてアンタはそうやって直ぐに手が出るんだろうね」
「えぇ~……」

 父親が頭を摩りながら母親を責めるように見ているが、母親の方は気にはしてないようだ。

「だいたい、この子はまだ五歳になったばかりだよ。それなのに水汲みなんて……はぁ~」
「悪かったよ……」

 母親は何が悪いかを理解していない父親を見て嘆息するが、今は息子の方が大事だとベッドの上で寝ている息子の顔を見る。

「ホントに大丈夫なのかしら」
「大丈夫だって言われたんだろ」
「そうだけどさ……」
「先生が言うように今は様子を見るしかないだろ」
「アンタは自分の息子が心配じゃないのかい?」
「いや、そりゃ心配だけどよぉ~見ているしかないだろ」
「そうだね。じゃ、アンタはサンを見てな」
「いや……俺だってまだ仕事が……」
「あ? 誰のせいでこうなったと?」
「……はい。すみません」
「じゃ、何かあったら知らせるんだよ」
「……」
「返事!」
「はい、分かりました!」
「ふん!」

 ドスドスと床板を踏み抜く勢いで部屋から出る母親を見ながら「母は強しと言うが強過ぎだろ」と呟く。

「う、う~ん……」
「お、気が付いたか。まったくよぉそんなに強く小突いてないだろ」

 母親の足音で目が覚めたのか、サンがゆっくりと目を開けると父親を見るなり「おじさんは誰?」と言う。

「は?」
「ここはどこなの?」
「へ?」
「僕はどうしたの?」
「僕?」
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