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第三章 運動会なんだよ
第六話 思っていたのと違うのよ
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「クソッ!」
「なんだ! あ、お前は!」
ナダルが不機嫌そうに土を蹴っていると、そこを通りかかったケビンに土が掛かり、それがナダルだと気付いたケビンがナダルを睨み付ける。
「なんだよ! 狙ってやった訳じゃないかなら。そこにいたお前が悪い!」
「んだと!」
「よせ。ケビン」
「テッド……でも」
「いいから、止めとけ」
「……分かったよ」
ケビンは納得いかなかったが、運動会の途中だったと思い出したのかテッドの言葉に素直に従う。
「ふん!」
「アイツ……」
「いいから、放っておけ」
その場から去っているケビンとテッドの二人をナダルは面白く無さそうに見ていた。
「テッドはアイツを知っているの?」
「知らん。さっき知った程度だ」
「そうなんだ。でも、アイツはなんでアビーにあそこまでするんだろう」
「それなら、さっきメアリー達が集まってキャーキャー言ってたぞ」
「え? どゆこと?」
「さあな。俺に聞かれてもわからん。メアリーに聞けばいいだろ」
「メアリーに?」
「ああ、そうだ。どうした? 何かあるのか?」
「いや、あるのかって言われればあるんだろうけど……」
「どうした? 相談ならのるぞ」
「いや、いい」
「そうか」
そのメアリー達はと言えば、テッドが言っていたように皆で集まりキャーキャーと盛り上がっていたが、当の本人のアビーはその輪の中に入れなかったりする。
「アビー」
「あ、ケビン。テッドも」
「盛り上がっているな」
「うん、そうなんだけどね……」
アビーが尻下がりに沈みこむ様子を見て、テッドは「あ~」となんとなく納得してしまう。
「なんだ仲間に入れないのなら「止めとけ」テッド」
「いいから、俺の経験からいいことはないから止めとけ」
「でも、アビーが可哀想だろ」
「僕? 僕は平気だよ」
「なんでだよ。お前を仲間外れにしているんだろ?」
「ん~ちょっと違うかな」
「「違う?」」
「うん、なんか僕のことで盛り上がっているみたいだからね」
「そうか」
「分からない。なんでそれで平気なんだ?」
「「……」」
一人何を言っているのか分からないという感じでケビン一人が憤慨しているが、当の本人のアビーとテッドが何も言わないのなら自分が出るのもおかしいかなと思いなんとなく納得するしかなかった。
「あ、アビー、それにケビンも! テッドもいたんだ」
「もういいの?」
「俺はついでか」
「話は終わったの?」
アビーの話で盛り上がっていたメアリー達がアビーやケビンに気付き、声を掛ける。
「ね、アビー」
「なに?」
「あの子のことどう思うの?」
「あの子?」
「ほら、さっきの……アビーのことを思いっ切り意識していたでしょ?」
「ん?」
「もう、分からないの?」
「え?」
メアリーの言葉にアビーだけではなくケビンもテッドも何を言っているのだろうという顔になり、聞いているメアリーが「ふぅ~」と短く嘆息すると「いい?」と言いながらアビー達に説明を始める。
「ほら、よく思い出してね。さっきアビーに突っかかって来た男の子がいたでしょ。覚えているわよね」
「「「あ~」」」
「で、どうなの?」
「「「どうなの?」」」
「え?」
メアリーの言葉にアビー達もやっとメアリーが言っている子が誰なのかを理解したが、理解したところでメアリーが何を言いたいのかまでは理解していなかった。だから、メアリーに「どうなの」と聞かれたところで、何を言いたいのかを理解していないアビーはポカンとするしかなかった。
「だから、その子のことをどう思っているのかってことよ」
「え?」
「ムカつくヤツだな」
「そうだな」
「もう、ケビン達には聞いてないでしょ!」
「「ごめん」」
メアリーに改めて聞かれたところで、アビーにはまだ分かっていないから、答えに困っていると横のケビン達が思いを口にしたところでメアリーに聞いてないからと怒られてしまう。
だけど、アビーはやっぱり分からなかった。だけどと前世での院内学級でも似たようなことがあったような気がすると思い出す。
確かあの時も仲良くなった男の子と話をしていたら、急に他の女の子が間に入ってきてアビーのことをドンと押され何が起きたのか分からなかったが、慌てた看護師に起こされ院内学級から連れ出されたので何が起きてどう収まったのかが分からないままだったのだ。だけどそれを今、起きていることに対しカチッと音がするくらいに当てはめることが出来たので、アビーはなんとなく今の状況を理解出来たのでメアリーに向かって「うん」と頷く。
するとそれを見たメアリーはやっとアビーが理解してくれたのかと改めて聞いてくる。
「それでどうなの?」
「えっと、それをどうして僕に聞くの?」
「「「え?」」」
アビーの反応にメアリーを始めとした女子達が今度はアビーの答えを理解するのに苦しむ。
「アビー、どうしたの?」
「え? だって、さっきの子は僕が他の子と仲良くしているのが面白くなくて僕に突っかかって来たんでしょ?」
「ん~合っているような微妙に違っているような。アビーはどうしてそう思ったの?」
「だって、その子は僕が邪魔だと思ったんでしょ?」
「「「え~!」」」
アビーの答えに「どうして?」とその場にいた女子達が頭を抱え込んでしまった。
「テッド、これってどういうことなの?」
「俺が分かると思うか?」
「それもそうだね」
「納得されるのもイヤだな」
ケビンとテッドの会話を隣で聞いていたアビーもメアリー達の様子が分からず不思議そうに見ているだけだった。
「なんだ! あ、お前は!」
ナダルが不機嫌そうに土を蹴っていると、そこを通りかかったケビンに土が掛かり、それがナダルだと気付いたケビンがナダルを睨み付ける。
「なんだよ! 狙ってやった訳じゃないかなら。そこにいたお前が悪い!」
「んだと!」
「よせ。ケビン」
「テッド……でも」
「いいから、止めとけ」
「……分かったよ」
ケビンは納得いかなかったが、運動会の途中だったと思い出したのかテッドの言葉に素直に従う。
「ふん!」
「アイツ……」
「いいから、放っておけ」
その場から去っているケビンとテッドの二人をナダルは面白く無さそうに見ていた。
「テッドはアイツを知っているの?」
「知らん。さっき知った程度だ」
「そうなんだ。でも、アイツはなんでアビーにあそこまでするんだろう」
「それなら、さっきメアリー達が集まってキャーキャー言ってたぞ」
「え? どゆこと?」
「さあな。俺に聞かれてもわからん。メアリーに聞けばいいだろ」
「メアリーに?」
「ああ、そうだ。どうした? 何かあるのか?」
「いや、あるのかって言われればあるんだろうけど……」
「どうした? 相談ならのるぞ」
「いや、いい」
「そうか」
そのメアリー達はと言えば、テッドが言っていたように皆で集まりキャーキャーと盛り上がっていたが、当の本人のアビーはその輪の中に入れなかったりする。
「アビー」
「あ、ケビン。テッドも」
「盛り上がっているな」
「うん、そうなんだけどね……」
アビーが尻下がりに沈みこむ様子を見て、テッドは「あ~」となんとなく納得してしまう。
「なんだ仲間に入れないのなら「止めとけ」テッド」
「いいから、俺の経験からいいことはないから止めとけ」
「でも、アビーが可哀想だろ」
「僕? 僕は平気だよ」
「なんでだよ。お前を仲間外れにしているんだろ?」
「ん~ちょっと違うかな」
「「違う?」」
「うん、なんか僕のことで盛り上がっているみたいだからね」
「そうか」
「分からない。なんでそれで平気なんだ?」
「「……」」
一人何を言っているのか分からないという感じでケビン一人が憤慨しているが、当の本人のアビーとテッドが何も言わないのなら自分が出るのもおかしいかなと思いなんとなく納得するしかなかった。
「あ、アビー、それにケビンも! テッドもいたんだ」
「もういいの?」
「俺はついでか」
「話は終わったの?」
アビーの話で盛り上がっていたメアリー達がアビーやケビンに気付き、声を掛ける。
「ね、アビー」
「なに?」
「あの子のことどう思うの?」
「あの子?」
「ほら、さっきの……アビーのことを思いっ切り意識していたでしょ?」
「ん?」
「もう、分からないの?」
「え?」
メアリーの言葉にアビーだけではなくケビンもテッドも何を言っているのだろうという顔になり、聞いているメアリーが「ふぅ~」と短く嘆息すると「いい?」と言いながらアビー達に説明を始める。
「ほら、よく思い出してね。さっきアビーに突っかかって来た男の子がいたでしょ。覚えているわよね」
「「「あ~」」」
「で、どうなの?」
「「「どうなの?」」」
「え?」
メアリーの言葉にアビー達もやっとメアリーが言っている子が誰なのかを理解したが、理解したところでメアリーが何を言いたいのかまでは理解していなかった。だから、メアリーに「どうなの」と聞かれたところで、何を言いたいのかを理解していないアビーはポカンとするしかなかった。
「だから、その子のことをどう思っているのかってことよ」
「え?」
「ムカつくヤツだな」
「そうだな」
「もう、ケビン達には聞いてないでしょ!」
「「ごめん」」
メアリーに改めて聞かれたところで、アビーにはまだ分かっていないから、答えに困っていると横のケビン達が思いを口にしたところでメアリーに聞いてないからと怒られてしまう。
だけど、アビーはやっぱり分からなかった。だけどと前世での院内学級でも似たようなことがあったような気がすると思い出す。
確かあの時も仲良くなった男の子と話をしていたら、急に他の女の子が間に入ってきてアビーのことをドンと押され何が起きたのか分からなかったが、慌てた看護師に起こされ院内学級から連れ出されたので何が起きてどう収まったのかが分からないままだったのだ。だけどそれを今、起きていることに対しカチッと音がするくらいに当てはめることが出来たので、アビーはなんとなく今の状況を理解出来たのでメアリーに向かって「うん」と頷く。
するとそれを見たメアリーはやっとアビーが理解してくれたのかと改めて聞いてくる。
「それでどうなの?」
「えっと、それをどうして僕に聞くの?」
「「「え?」」」
アビーの反応にメアリーを始めとした女子達が今度はアビーの答えを理解するのに苦しむ。
「アビー、どうしたの?」
「え? だって、さっきの子は僕が他の子と仲良くしているのが面白くなくて僕に突っかかって来たんでしょ?」
「ん~合っているような微妙に違っているような。アビーはどうしてそう思ったの?」
「だって、その子は僕が邪魔だと思ったんでしょ?」
「「「え~!」」」
アビーの答えに「どうして?」とその場にいた女子達が頭を抱え込んでしまった。
「テッド、これってどういうことなの?」
「俺が分かると思うか?」
「それもそうだね」
「納得されるのもイヤだな」
ケビンとテッドの会話を隣で聞いていたアビーもメアリー達の様子が分からず不思議そうに見ているだけだった。
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