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第二章 大家族になりました

第二十一話 家族では入れなかったのよ

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アビーが家に向かうと学校へ行く時にはあった行列が消えていた。
「あれ? 行列がなくなっている……どうしたんだろう?」

不思議に思いながらもアビーが家の近くまで来ると、今度はほかほかとした感じの人達とすれ違う。

「ん? もしかして、お風呂に入れたのかな。でも、そんな早く出来るのかな?」
『ふふふ、アビー。私達のこと忘れてない?』
『そうよ。私達がいるのよ』
『そうなの。だから、ちょっとだけ手伝ったのよ』
『アレをちょっとだけと言うのか?』
『『『パティはいいから!』』』
『……おいらは止めたんだからな!』
ポポ達の話にアビーは少しだけ不安を覚える。
「まさかね……」

家が見えてくると、建設中の祖父母の家とは別に大きな建物が見える。
「うわぁ~本当に出来たんだ……凄い……」
「どうじゃ、アビー。なかなかのもんだろ」
「凄すぎて声も出ないか?」
「凄いよ! ドン爺! コー爺!」
「ふふふ、これもアビーのお陰だよ」
「そうだな。アビーが地面を掘れと言った時はどうなるかと思ったがな」
「それは、ワシも思ったが……不思議なことに掘った地面に流し込んだセメントは今日中には乾かないと思っていたんだがな」
「そう、日当たりが余程よかったのか、昼前には乾ききったんだ」
「へ、へぇ~」

祖父達の話を聞いて、ポポ達が何をしたのかを察したアビーだが、それを祖父達には正直に話すことは出来なかった。

「まあ、それでな。予定より早く浴槽の方が終わったんでな」
「後は、カーペン達と風呂に入りたい連中を手伝わせて、仕切りと囲いを作ったら、脱衣場を作って終わりだ。屋根は後だな」
「へ~それで、すれ違う人がほかほかした感じだったんだ」
「ああ。皆、気持ちよさそうだったぞ」
「そうだな。だが、これがずっと続くと思うとな……」
「それもそうだな。いっそのこと商売にした方がいいのかもしれんな」
「え~そんなことしたら、怒られない?」
「「う~ん……」」

アビーの言った「怒られる」に祖父達も唸ってしまう。
「それなんだよな~」
「そうだな。商売にするとなると、色々気を使うしもめるだろうな……」
「じゃあさ、他の人達と一緒にすればいいんじゃない?」
「「ん?」」
「だからね、僕達だけで温泉を管理しようとするから問題なんでしょ?」
「まあ……」
「そういうことになるかな」
「じゃあさ、カーペンさんとかお風呂に入りたい人達で掃除とかすればいいんじゃないのかな?」

アビーは地方によくあった共同浴場の仕組みを祖父達に話す。

「なるほどな」
「それなら、俺達の負担もないし、やっかみもないかもな」
「カーペン達と話してみるか」
「それがいいな」

祖父達がその場で話し込んでしまったので、アビーはそっと離れ家に入る。

「ただいま!」
「「「お帰り!」」」
「なんか凄いことになってたね!」
「見た?」
「うん! 外側だけだけどね」
「そうかい。まあ、ゴードンもやるもんだね」
「うちのコーディもなかなかだろ?」
「はいはい、お母さん達のお惚気はそこまで! アビー、手を洗ってきなさい」
「は~い」
「もう少し言わせてくれてもいいだろう」
「そうだよ。滅多に褒めることなんてないのにさ」
「はいはい。じゃあ、お父さん達が帰って来たら褒めてあげて下さい」
「「そりゃ、出来ないよ」」
「え?」
「だって……ねえ?」
「そうだよ。無理無理!」
母達の言葉にジュディは不思議に思ってしまう。

「どうして? さっきまで褒めてたように本人に言ってあげればいいじゃない」
「だから、ソレが無理なの!」
「そうそう、今更無理だよ」
「ナニヨソレ……」

母達のツンデレ振りにジュディが呆れていると玄関が開かれ、ゴードン達が入ってくる。
「「ただいま」」
「ほら、帰って来たわよ」

「い、いいから。さっきのはナイショね」
「いいわね」
ジュディに言い含めるように言うものだから、ゴードン達も不思議に思ってしまう。
「なんの話だ?」
「内緒話か? 長いこと夫婦なのにな」
「あなた達には関係ない話だから」
「そうよ。だから、気にしないの。いい? 気にしちゃダメよ」
「「……分かったよ」」

その後、マークが帰って来て夕食となり、アビーが学校での出来事を話す。
「あのね、メアリー達もお風呂に入りたいって言ってきたの」
「もう、子供達にまで知られているのかい?」
「ほら、そのメアリーのお父さんはお店を開いているから」
「ああ、父さん達の」
「そうよ。だから、そういった噂にも敏感なんでしょう」
「でも、入れるの?」
「「それは心配ない!」」
マークの疑問に対し祖父達が答える。

「へ~じゃあ、俺も入れるのかな」
「ああ、入れるぞ。だが、ワシ達と一緒だな」
「そうだな」
「え?」
「まだ、男湯と女湯しかないからな。家族風呂はまだ出来ていない」
「お楽しみは先だな」
「そ、そんなお楽しみだなんて……なあ」
「そ、そうよ。私達は家族で入れればいいなって思っただけだし……」
「楽しみだね。お父さん!」
マークはそう言うが、見た目でもガッカリしているのが丸わかりだ。でも、アビーに楽しみと言われなんとか持ち直す。

「そうだな」
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