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第一章 転生先は……どこ?
第十二話 魔術と魔法は違うのよ
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長老からいろんな話を聞くことが出来たアビーが次に疑問を持ったのは、誰がそんなことをしているのかということだ。
「でもさ、長老。なんで、そこまで精霊に執着するの? 魔法が扱えなくても魔術が使えるなら、十分なんじゃないの?」
『アビーもそう思うか?』
「うん。どうしてなの?」
『その為にはまず、魔術について教えておこう。いいか、魔術というのはな……』
「うわぁ……面倒だね」
アビーが長老から教えられたのは簡単な魔法と魔術の違いだ。
魔法はその場で術者が詠唱することで発動するが、魔術の場合は魔法陣を使いたい魔術によって個別に用意するなどの前準備が必要になるというのが、大きな違いだということだった。
「違いは分かったけど、じゃあ誰がそんなことをしているの?」
『それはな、『精霊教』だ』
「精霊教?」
『そうじゃよ。精霊教の連中は魔眼を使っては精霊を魔石に封じ、それを冒険者に売っているんじゃ』
「冒険者?」
『なんじゃ。質問ばかりじゃな。冒険者ってのはな、魔物を討伐することを生業とする連中じゃ』
「魔物?」
『今度は魔物か……まあ、ここいらは大精霊の力もあって、滅多に見られないがな』
「へ~そうなんだ。偉いんだね、大精霊って……まあ、フィーネは分かるけど、ディーネとかはそうは見えないよね」
『悪かったわね……見えなくて』
アビーが正直にそんな感想を言うと、横から声を掛けられる。その声がした方を見ると、ウンディーネが池からじっとこちらを見ていた。
「ディーネ! 聞いてた……の?」
『ええ、聞いてたわよ。しっかりとね』
「ごめんね。僕、あんまり嘘が付けなくて」
『そうね。正直なのね……って、謝ってないよね? それ!』
『ウンディーネ様。アビーはまだ五歳なんですから、その辺で……』
『もう、長老まで。分かったわよ。でもね、アビー。長老が言うように魔法は人のいる前で使ったら、ダメよ』
「うん、分かったよ」
『じゃあ、今日は何を練習するの?』
『今日はワシの番だ。な、アビー』
「ノム爺!」
『『え~』』
『順番じゃ!』
『『ちぇっ』』
どうやら、アビーに魔法を教えるのは予め順番を長老と大精霊を入れて五人での当番制としていた。今日はノム爺こと、『土の大精霊』の番だと言って譲らない。
『前は土魔法での初歩じゃったな。今日は、少し進めてみようかの』
「うん。いいよ、何するの?」
『先ずは基本の復習じゃな。球を作ってみろ』
「球ね……うんと、こんな感じ?」
アビーはノム爺の言うように土魔法で直径五センチメートルほどの土で出来た球を浮かせる。
『問題ないな。じゃあ、次はその土球を固めて岩にしてみろ』
「え? どうやって? 土は土じゃないの?」
『そうじゃな。それは間違いじゃない。なら、岩はどうやって出来ている?』
「岩は……石が大きくなったもの?」
『アビー、石は育たないから』
ウンディーネに優しく諭されアビーは混乱してしまう。
「え~分からないよ。なら、答えは?」
『答えはこうじゃ』
ノム爺はアビーと同じ様に土球を作って見せる。
「それじゃ、土だよ?」
『まあ、焦るな。ほれ!』
そう言うとノム爺が作った土球はギュッと一センチメートルほどに小さくなり、固くなる。それをノム爺はアビーに渡す。
「これ……土じゃない?」
『そうじゃ、それが答えだ』
「ん? よく分からない」
『ふぅ~いいか、アビー。土に大きな力を加えて固めたのが、岩になる。それが小さければ石だな』
「へ~」
『分かったなら、やってみろ』
「分かったよ。やってみる!」
アビーはそういうと自分が作った土球を操作する。
だが、アビーがどう頑張っても土球は小さくならない。それどころか、圧力を均等に掛けることが出来ずに表面がでこぼこになるばかりで、終いには癇癪をおこしてしまう。
「もう、上手くいかない!」
『アビー、焦らないの。ほら、こうやって空気の層を周りに作って均等に圧力を掛ければいいのよ。ほら、焦らずにやってみなさい』
「シルフィー、ありがとう。やってみる!」
『ちっ! 余計なことを……もう少しでワシを頼ってきたところなのに』
アビーはシルフィーのアドバイス通りに土球自体を操るのではなく、その周りに空気の層を作り、じわりじわりと均等に圧力を掛けていく。
すると、さっきは上手く出来なかったが、今度は表面はなめらかなまま、土球が段々と小さくなり、最終的には直径一センチメートルほどの石粒になる。
「出来た! 出来たよ、ノム爺!」
『た、確かに出来たようじゃが、土魔法だけで作ってないからな。合格点はやれない』
「非道いよ、ノム爺!」
『そうよね。さ、あんな偏屈爺は放っといて、私が教えてあげるわ』
『邪魔するな! 今日はまだワシの番だ。アビー、次じゃ』
「分かったよ、ノム爺」
『むぅ~』
『最近、アビーと遊んでなくない?』
『そうかもね』
『でもさ、もう私達がお教えられるレベルじゃないから、しょうがなくない?』
『『確かに……』』
その日はノム爺から教えられることをどんどんと吸収するだけ吸収し、最後には小屋レベルの家まで作れるようになっていた。
『ノム爺、アビーってさ、色々と規格外なんだけど、大丈夫なの?』
『ディーネも気付いたか』
『うん、私達もここが心地いいからって集まってるものね。それももしかしたら、アビーに関係するのかな』
『さあ、そこまでは分からんが、何かあるとしたら、まだ先じゃろ』
「でもさ、長老。なんで、そこまで精霊に執着するの? 魔法が扱えなくても魔術が使えるなら、十分なんじゃないの?」
『アビーもそう思うか?』
「うん。どうしてなの?」
『その為にはまず、魔術について教えておこう。いいか、魔術というのはな……』
「うわぁ……面倒だね」
アビーが長老から教えられたのは簡単な魔法と魔術の違いだ。
魔法はその場で術者が詠唱することで発動するが、魔術の場合は魔法陣を使いたい魔術によって個別に用意するなどの前準備が必要になるというのが、大きな違いだということだった。
「違いは分かったけど、じゃあ誰がそんなことをしているの?」
『それはな、『精霊教』だ』
「精霊教?」
『そうじゃよ。精霊教の連中は魔眼を使っては精霊を魔石に封じ、それを冒険者に売っているんじゃ』
「冒険者?」
『なんじゃ。質問ばかりじゃな。冒険者ってのはな、魔物を討伐することを生業とする連中じゃ』
「魔物?」
『今度は魔物か……まあ、ここいらは大精霊の力もあって、滅多に見られないがな』
「へ~そうなんだ。偉いんだね、大精霊って……まあ、フィーネは分かるけど、ディーネとかはそうは見えないよね」
『悪かったわね……見えなくて』
アビーが正直にそんな感想を言うと、横から声を掛けられる。その声がした方を見ると、ウンディーネが池からじっとこちらを見ていた。
「ディーネ! 聞いてた……の?」
『ええ、聞いてたわよ。しっかりとね』
「ごめんね。僕、あんまり嘘が付けなくて」
『そうね。正直なのね……って、謝ってないよね? それ!』
『ウンディーネ様。アビーはまだ五歳なんですから、その辺で……』
『もう、長老まで。分かったわよ。でもね、アビー。長老が言うように魔法は人のいる前で使ったら、ダメよ』
「うん、分かったよ」
『じゃあ、今日は何を練習するの?』
『今日はワシの番だ。な、アビー』
「ノム爺!」
『『え~』』
『順番じゃ!』
『『ちぇっ』』
どうやら、アビーに魔法を教えるのは予め順番を長老と大精霊を入れて五人での当番制としていた。今日はノム爺こと、『土の大精霊』の番だと言って譲らない。
『前は土魔法での初歩じゃったな。今日は、少し進めてみようかの』
「うん。いいよ、何するの?」
『先ずは基本の復習じゃな。球を作ってみろ』
「球ね……うんと、こんな感じ?」
アビーはノム爺の言うように土魔法で直径五センチメートルほどの土で出来た球を浮かせる。
『問題ないな。じゃあ、次はその土球を固めて岩にしてみろ』
「え? どうやって? 土は土じゃないの?」
『そうじゃな。それは間違いじゃない。なら、岩はどうやって出来ている?』
「岩は……石が大きくなったもの?」
『アビー、石は育たないから』
ウンディーネに優しく諭されアビーは混乱してしまう。
「え~分からないよ。なら、答えは?」
『答えはこうじゃ』
ノム爺はアビーと同じ様に土球を作って見せる。
「それじゃ、土だよ?」
『まあ、焦るな。ほれ!』
そう言うとノム爺が作った土球はギュッと一センチメートルほどに小さくなり、固くなる。それをノム爺はアビーに渡す。
「これ……土じゃない?」
『そうじゃ、それが答えだ』
「ん? よく分からない」
『ふぅ~いいか、アビー。土に大きな力を加えて固めたのが、岩になる。それが小さければ石だな』
「へ~」
『分かったなら、やってみろ』
「分かったよ。やってみる!」
アビーはそういうと自分が作った土球を操作する。
だが、アビーがどう頑張っても土球は小さくならない。それどころか、圧力を均等に掛けることが出来ずに表面がでこぼこになるばかりで、終いには癇癪をおこしてしまう。
「もう、上手くいかない!」
『アビー、焦らないの。ほら、こうやって空気の層を周りに作って均等に圧力を掛ければいいのよ。ほら、焦らずにやってみなさい』
「シルフィー、ありがとう。やってみる!」
『ちっ! 余計なことを……もう少しでワシを頼ってきたところなのに』
アビーはシルフィーのアドバイス通りに土球自体を操るのではなく、その周りに空気の層を作り、じわりじわりと均等に圧力を掛けていく。
すると、さっきは上手く出来なかったが、今度は表面はなめらかなまま、土球が段々と小さくなり、最終的には直径一センチメートルほどの石粒になる。
「出来た! 出来たよ、ノム爺!」
『た、確かに出来たようじゃが、土魔法だけで作ってないからな。合格点はやれない』
「非道いよ、ノム爺!」
『そうよね。さ、あんな偏屈爺は放っといて、私が教えてあげるわ』
『邪魔するな! 今日はまだワシの番だ。アビー、次じゃ』
「分かったよ、ノム爺」
『むぅ~』
『最近、アビーと遊んでなくない?』
『そうかもね』
『でもさ、もう私達がお教えられるレベルじゃないから、しょうがなくない?』
『『確かに……』』
その日はノム爺から教えられることをどんどんと吸収するだけ吸収し、最後には小屋レベルの家まで作れるようになっていた。
『ノム爺、アビーってさ、色々と規格外なんだけど、大丈夫なの?』
『ディーネも気付いたか』
『うん、私達もここが心地いいからって集まってるものね。それももしかしたら、アビーに関係するのかな』
『さあ、そこまでは分からんが、何かあるとしたら、まだ先じゃろ』
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