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第一章 少女からの依頼
第2話 心当たりがあるなら
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少年達は警察官達により近くの病院へと搬送され、診断と治療を受ける。
「マズいね、これは……」
「なんだよ! 早く、外せよ! あんた、医者だろ!」
「ああ、医者だ。医者だからいうが、これはもうダメだよ」
「ダメ? ダメってどういうことだよ!」
「だから、そのままの意味だよ。もう少し早かったらなんとかなったかもしれないけど……もう、切るしかないね」
「切る……おい! 今、切るって言ったか?」
「そう。切断するから。君、外科に連絡してもらえるかな。この調子なら、他の子も同じだと思うから、連続して行うことになるってことも伝えてもらえるかな」
「分かりました」
医師に頼まれ、看護師が内線電話でどこかへ連絡するのを確認した医師は昌也に向き直ると「そっちは接着剤の剥離剤さえ用意出来ればすぐだから、安心していいよ」と言えば、昌也は「出来るか!」と医師に向かって大声で怒鳴りつける。
「怒鳴りたくなる気持ちは分からないでもないけど、ここまでされることを君はしたんでしょ。なら「それでも納得出来ねぇ!」……そう。まあ、私には関係ないことだけどね。じゃ、これで診察は終わりだ。後は、念の為にレントゲンと血液検査くらいはしておこうか」
「分かりました。手配しますね」
「うん、お願い」
医師の言葉に看護師がカルテに何やら書き込むと車椅子に乗せられたままの昌也はそのまま、診察室から出るとレントゲンを撮る為に廊下を進んでいく。
「クソッ! なんで俺がこんな目に合わなければいけないんだ!」
外科手術が終わり、病室へと戻ってきた昌也は独りごちる。そして、今はガーゼや包帯で巻かれている股間に手をやり「本当に無くなったんだ」と、あるべきものがない感触に思わず涙する。
警察に保護されてから一週間程度が経過したところで、最初に保護してくれた警察官が昌也の前に現れた。
「聞いたよ。取っちゃったんだってね。まあ、男としては同情するけど「ふざけんな!」……っと。おいおい、警官に当たるなよ」
「あんたらはここで何してんだよ! 俺をこんな目に合わせたヤツをさっさと捕まえてこいよ!」
「まあ、それもそうだね。じゃあ、犯人のことを教えて。ん? どうしたのかな。ほら、犯人のことを教えてよ。捕まえて欲しいんでしょ」
「……えよ!」
「え?」
「だから、分かんねえって言ってんだよ!」
「えぇ! こんな目に合わされたのに?」
「だから、そういうのを調べるのがあんたらの仕事だろうが!」
「そうなんだよね。でもさ、何も分からない状態じゃ、捜査なんて進められないんだ。それは分かってくれるよね。しかも君達は東京都の人だし、ここは埼玉なんだよ」
「だから、ソレがどうした!」
「ん~なんて言えばいいのかな」
警察官はベッドの上で興奮した様子の昌也を冷ややかに見ながら、説明する。
まず、警察としては今回の少年達に関しては傷害事件として扱うこと、そしてその捜査にたいしてはあまり人員が割かれないことを説明した。
「はぁ? 傷害だと!」
「そ、傷害」
「あんたは俺がされたことを見ても傷害事件だと! そう言うのか!」
「他に何かあるの?」
「……」
「ね、ないでしょ。傷害事件としてしか扱えないんだよ。これでもし、君達の誰かが殺されていたのなら、殺人事件として警視庁との合同捜査なんてのもあったかもしれないけど、全裸にされ縛り着けられてアソコに突っ込まれてからの放置でしょ。ヒトによってはご褒美だろうけどね」
「何がご褒美だ!」
「おっと、私に怒ってもしょうがないでしょ。それよりも早く捕まえて欲しいのなら、君達に怨みを抱いている人を教えて貰わないと」
「……」
「ん? もしかしていないのかな?」
「……」
「答えないか。じゃあ、『栗田 菜摘』さんって子は覚えているのかな?」
「な……なんでその名前が!」
「うん、当たりみたいだね。じゃあ、そっちの方で調べてみるよ」
「ちょ、ちょっと待てよ!」
「何かな? 他の子にも話を聞きに行かないといけないんだけど?」
「その名前をどこで知った!」
「あ~気になる? 気になるよね。自分達がこんな目に合わされた原因かもしれないものね」
「うるさい! いいから、教えろ! なんでそいつの名前が出て来るんだよ!」
「分かったよ。ほら、これ」
警察官は自分のブリーフケースから新聞を取り出すと昌也の前に広げる。
昌也はその新聞がなんなのかは分からなかったが、とりあえずいつもの様にテレビ欄の方から新聞を捲ると、そこには『ある少女の遺書』と記述があり、その遺書を写した写真が掲載されていた。
そして、その遺書には『同級生の少年に乱暴された』と書かれていた。遺書には何故自分が乱暴されたのかも書かれていた。その内容はとある少女の反感を買ったことで、その少女の取り巻きの少年に乱暴されたとあり、後半部分には名前が列記されていたであろう箇所が黒く塗り潰されていた。
「こ、これがなんだって言うんだよ!」
「ん? 分からない? ほら、ここのところ、黒く塗り潰されているでしょ」
「ああ、これじゃ名前なんて分からないだろうな」
「あ~よぉく見てみな。一文字だけ塗られずに露出しているでしょ」
「ああ、確かにな。だけど、一文字だけだろ?」
「はぁ、それね。大手の新聞四社に掲載されているんだけどさ、微妙に一文字ずつ露出している箇所が違うんだよ。私が言っていることは分かる?」
「は? 待てよ、じゃあ……」
「うん、露出された箇所を見れば、君の名前が出て来たよ。旧姓『田中 昌也』君」
「は?」
昌也に対し警察官が心当たりがないかと聞いて来た少女の名前は確かに覚えている。そしてそれは遺書に書かれている内容に対し「ウソだろ」とは思うが、ここで警察官の前で顔に出す訳にはいかないと思ったが、その警察官は遺書に昌也の名前が記載され、それが新聞の紙面に掲載されていると言うのだ。そして、警察官が昌也に対し『旧姓』と言ったのも気になった。
「……未成年だ」
「はぁ?」
「俺は未成年だ! なのに新聞に名前が出るってどういうことだよ!」
「載ってないでしょ」
「載っているじゃないか! さっき、あんたがそう言ったじゃないか!」
「だから、落ち着きなさい」
「これが落ち着いていられるか! 俺は菜摘を強姦したって書かれているじゃないか!」
「だから、名前の一部が露出しているだけでしょ」
「……」
「分かってもらえましたか」
「そんな屁理屈が通るのかよ!」
「さあ? 私はそっちの法律には明るくないのでね。それで、ここに書かれているのは事実なんですか?」
「……」
昌也は警察官の問い掛けに黙り込む。その様子から警察官も当たりを確信する。そして、昌也に対し「親告罪だから」と説明してから子細を確認しようとする。
「いいかい。基本、暴行、強姦は親告罪と言って、被害者からの訴えがない限りは捜査されることはない。ただ、君達が三人で暴行した場合は、親告罪ではなくなる。ここまではいいかな?」
「……ああ」
「それでね、ここだけの話だけど……君達三人が彼女を強姦したという証拠もなければ、被害者である彼女も亡くなっていることから、君達を罪に問うのは難しいとしか言えない」
警察官の説明に昌也は少し安堵した表情を見せる。だが、警察官はそんな昌也に追い討ちを掛けるように話を進める。
「仮にだ。仮にだけど、君達が彼女の自殺の原因となる彼女に対し強姦したとしてだ。君達にこれだけの傷を負わせる人に心当たりはないのかな」
「知らねえよ。親とかじゃないのかよ!」
「まあ、普通は親を疑いたくなるよね。でもね、彼女の親は今は洋上だ。つまりは船で豪遊中で日本にはいないんだ」
「は?」
警察官は栗田菜摘の親は船で旅行中だと言われ、容疑者としては難しいと答えた。昌也は兄弟とか肉親が他にいるんじゃないのかと警察官に問えば、菜摘に兄弟はなく一人っ子であることと、親も親戚付き合いが希薄であることを話す。
「なら、俺には分からねえよ」
「そう……なら、捜査は長引くかもね。それまで元気でいてよ木村昌也君」
「それ!」
「ん? どうした、木村君」
「違う! 俺は田中だ! 田中昌也!」
「あぁ~間違ってないですよ。君の名は『木村 昌也』君です。ほら、これを見て下さい」
「なんだこれ?」
「君の戸籍抄本です。担当弁護士ってのが持って来ましたよ」
「へ?」
昌也が渡された戸籍抄本に目を落とせば、確かにそこには『木村 昌也』と書かれていた。
「なんで……なんで、俺が……」
「それは私に聞かれても分かりませんが、後で説明があると思いますから。じゃあ、私はこれで。あ、ソレは返してもらいますね」
「あ……」
警察官は昌也から戸籍抄本を返してもらうとブリーフケースにしまってから「ではお大事に」と、病室から出て行く。
「マズいね、これは……」
「なんだよ! 早く、外せよ! あんた、医者だろ!」
「ああ、医者だ。医者だからいうが、これはもうダメだよ」
「ダメ? ダメってどういうことだよ!」
「だから、そのままの意味だよ。もう少し早かったらなんとかなったかもしれないけど……もう、切るしかないね」
「切る……おい! 今、切るって言ったか?」
「そう。切断するから。君、外科に連絡してもらえるかな。この調子なら、他の子も同じだと思うから、連続して行うことになるってことも伝えてもらえるかな」
「分かりました」
医師に頼まれ、看護師が内線電話でどこかへ連絡するのを確認した医師は昌也に向き直ると「そっちは接着剤の剥離剤さえ用意出来ればすぐだから、安心していいよ」と言えば、昌也は「出来るか!」と医師に向かって大声で怒鳴りつける。
「怒鳴りたくなる気持ちは分からないでもないけど、ここまでされることを君はしたんでしょ。なら「それでも納得出来ねぇ!」……そう。まあ、私には関係ないことだけどね。じゃ、これで診察は終わりだ。後は、念の為にレントゲンと血液検査くらいはしておこうか」
「分かりました。手配しますね」
「うん、お願い」
医師の言葉に看護師がカルテに何やら書き込むと車椅子に乗せられたままの昌也はそのまま、診察室から出るとレントゲンを撮る為に廊下を進んでいく。
「クソッ! なんで俺がこんな目に合わなければいけないんだ!」
外科手術が終わり、病室へと戻ってきた昌也は独りごちる。そして、今はガーゼや包帯で巻かれている股間に手をやり「本当に無くなったんだ」と、あるべきものがない感触に思わず涙する。
警察に保護されてから一週間程度が経過したところで、最初に保護してくれた警察官が昌也の前に現れた。
「聞いたよ。取っちゃったんだってね。まあ、男としては同情するけど「ふざけんな!」……っと。おいおい、警官に当たるなよ」
「あんたらはここで何してんだよ! 俺をこんな目に合わせたヤツをさっさと捕まえてこいよ!」
「まあ、それもそうだね。じゃあ、犯人のことを教えて。ん? どうしたのかな。ほら、犯人のことを教えてよ。捕まえて欲しいんでしょ」
「……えよ!」
「え?」
「だから、分かんねえって言ってんだよ!」
「えぇ! こんな目に合わされたのに?」
「だから、そういうのを調べるのがあんたらの仕事だろうが!」
「そうなんだよね。でもさ、何も分からない状態じゃ、捜査なんて進められないんだ。それは分かってくれるよね。しかも君達は東京都の人だし、ここは埼玉なんだよ」
「だから、ソレがどうした!」
「ん~なんて言えばいいのかな」
警察官はベッドの上で興奮した様子の昌也を冷ややかに見ながら、説明する。
まず、警察としては今回の少年達に関しては傷害事件として扱うこと、そしてその捜査にたいしてはあまり人員が割かれないことを説明した。
「はぁ? 傷害だと!」
「そ、傷害」
「あんたは俺がされたことを見ても傷害事件だと! そう言うのか!」
「他に何かあるの?」
「……」
「ね、ないでしょ。傷害事件としてしか扱えないんだよ。これでもし、君達の誰かが殺されていたのなら、殺人事件として警視庁との合同捜査なんてのもあったかもしれないけど、全裸にされ縛り着けられてアソコに突っ込まれてからの放置でしょ。ヒトによってはご褒美だろうけどね」
「何がご褒美だ!」
「おっと、私に怒ってもしょうがないでしょ。それよりも早く捕まえて欲しいのなら、君達に怨みを抱いている人を教えて貰わないと」
「……」
「ん? もしかしていないのかな?」
「……」
「答えないか。じゃあ、『栗田 菜摘』さんって子は覚えているのかな?」
「な……なんでその名前が!」
「うん、当たりみたいだね。じゃあ、そっちの方で調べてみるよ」
「ちょ、ちょっと待てよ!」
「何かな? 他の子にも話を聞きに行かないといけないんだけど?」
「その名前をどこで知った!」
「あ~気になる? 気になるよね。自分達がこんな目に合わされた原因かもしれないものね」
「うるさい! いいから、教えろ! なんでそいつの名前が出て来るんだよ!」
「分かったよ。ほら、これ」
警察官は自分のブリーフケースから新聞を取り出すと昌也の前に広げる。
昌也はその新聞がなんなのかは分からなかったが、とりあえずいつもの様にテレビ欄の方から新聞を捲ると、そこには『ある少女の遺書』と記述があり、その遺書を写した写真が掲載されていた。
そして、その遺書には『同級生の少年に乱暴された』と書かれていた。遺書には何故自分が乱暴されたのかも書かれていた。その内容はとある少女の反感を買ったことで、その少女の取り巻きの少年に乱暴されたとあり、後半部分には名前が列記されていたであろう箇所が黒く塗り潰されていた。
「こ、これがなんだって言うんだよ!」
「ん? 分からない? ほら、ここのところ、黒く塗り潰されているでしょ」
「ああ、これじゃ名前なんて分からないだろうな」
「あ~よぉく見てみな。一文字だけ塗られずに露出しているでしょ」
「ああ、確かにな。だけど、一文字だけだろ?」
「はぁ、それね。大手の新聞四社に掲載されているんだけどさ、微妙に一文字ずつ露出している箇所が違うんだよ。私が言っていることは分かる?」
「は? 待てよ、じゃあ……」
「うん、露出された箇所を見れば、君の名前が出て来たよ。旧姓『田中 昌也』君」
「は?」
昌也に対し警察官が心当たりがないかと聞いて来た少女の名前は確かに覚えている。そしてそれは遺書に書かれている内容に対し「ウソだろ」とは思うが、ここで警察官の前で顔に出す訳にはいかないと思ったが、その警察官は遺書に昌也の名前が記載され、それが新聞の紙面に掲載されていると言うのだ。そして、警察官が昌也に対し『旧姓』と言ったのも気になった。
「……未成年だ」
「はぁ?」
「俺は未成年だ! なのに新聞に名前が出るってどういうことだよ!」
「載ってないでしょ」
「載っているじゃないか! さっき、あんたがそう言ったじゃないか!」
「だから、落ち着きなさい」
「これが落ち着いていられるか! 俺は菜摘を強姦したって書かれているじゃないか!」
「だから、名前の一部が露出しているだけでしょ」
「……」
「分かってもらえましたか」
「そんな屁理屈が通るのかよ!」
「さあ? 私はそっちの法律には明るくないのでね。それで、ここに書かれているのは事実なんですか?」
「……」
昌也は警察官の問い掛けに黙り込む。その様子から警察官も当たりを確信する。そして、昌也に対し「親告罪だから」と説明してから子細を確認しようとする。
「いいかい。基本、暴行、強姦は親告罪と言って、被害者からの訴えがない限りは捜査されることはない。ただ、君達が三人で暴行した場合は、親告罪ではなくなる。ここまではいいかな?」
「……ああ」
「それでね、ここだけの話だけど……君達三人が彼女を強姦したという証拠もなければ、被害者である彼女も亡くなっていることから、君達を罪に問うのは難しいとしか言えない」
警察官の説明に昌也は少し安堵した表情を見せる。だが、警察官はそんな昌也に追い討ちを掛けるように話を進める。
「仮にだ。仮にだけど、君達が彼女の自殺の原因となる彼女に対し強姦したとしてだ。君達にこれだけの傷を負わせる人に心当たりはないのかな」
「知らねえよ。親とかじゃないのかよ!」
「まあ、普通は親を疑いたくなるよね。でもね、彼女の親は今は洋上だ。つまりは船で豪遊中で日本にはいないんだ」
「は?」
警察官は栗田菜摘の親は船で旅行中だと言われ、容疑者としては難しいと答えた。昌也は兄弟とか肉親が他にいるんじゃないのかと警察官に問えば、菜摘に兄弟はなく一人っ子であることと、親も親戚付き合いが希薄であることを話す。
「なら、俺には分からねえよ」
「そう……なら、捜査は長引くかもね。それまで元気でいてよ木村昌也君」
「それ!」
「ん? どうした、木村君」
「違う! 俺は田中だ! 田中昌也!」
「あぁ~間違ってないですよ。君の名は『木村 昌也』君です。ほら、これを見て下さい」
「なんだこれ?」
「君の戸籍抄本です。担当弁護士ってのが持って来ましたよ」
「へ?」
昌也が渡された戸籍抄本に目を落とせば、確かにそこには『木村 昌也』と書かれていた。
「なんで……なんで、俺が……」
「それは私に聞かれても分かりませんが、後で説明があると思いますから。じゃあ、私はこれで。あ、ソレは返してもらいますね」
「あ……」
警察官は昌也から戸籍抄本を返してもらうとブリーフケースにしまってから「ではお大事に」と、病室から出て行く。
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