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第一章
マーレ・ロバルト
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マーレは、俺も入隊試験の参加者であると聞くやいなや、闘技場までの同行を快く引き受けてくれた。
いやぁ~助かった、これで試験に遅れずにすむ!!優しい人に出会えて本当に幸運だった。
改めて彼に感謝をしないとな。
俺はチラッと横に並ぶマーレを見つめた。
緑色の綺麗な髪色だ。瞳も黄色みかかった緑色であり、陽の光に輝いている。
(有色者ということは、マーレも貴族なのか?)
有色が示すものは、髪の色。マーレのような緑や赤といった珍しい色の髪を有色といい、これらは大国の王族や貴族の血筋によく出る特徴の一つ。
俺のような紺色や黒、茶色などの色は一般色であり、要は平民の特徴という訳だ。
俺の視線に気づいたマーレが、少し苦笑いをしながら頭をかいた。
「あー⋯この髪を見て気づいているとは思うけど、僕は一応貴族の次男坊なんだ。ロバルトっていう名前に聞き覚えはない?」
申し訳ない。
俺は貴族やら王族やらの事情に疎いのだ。
マルコじいちゃんから色々と教わった気がするが⋯⋯うん、覚えてないな。
そんな俺の様子を見てマーレは少し可笑しそうに笑った。
「その、知識不足でさ。なんかごめん」
「いいよいいよ、むしろその方が僕としては気楽で嬉しい。ロバルト家は三大公爵家の一つではあるんだけど、今じゃ名ばかりの貴族だからさ」
マーレいわくーー
ロバルト家は、建国時からこの国を支えてきた三大公爵家の一つである。
代々国王直属の魔道士として宮廷に仕えてきたが、その力は徐々に衰えていき、強い魔力を受け継いだ後継者が生まれなくなったという。
よって、ロバルト家は宮廷魔道士としての資格を剥奪。しかし、これまでの功績と国への忠誠心を尊重され、階級はそのまま引き継いでいるのだとか。
しかし、力のない公爵家など恐るに足りず。
周りの貴族からは没落貴族としてバカにされ、見下されているらしい。
なるほど、そんな複雑な事情があったとは知らなかった。
いやでも待てよ?ロバルト家には強い魔力を持った後継者がいないって話だよな?
けど、マーレがあの三人に放った波動は間違いなく高濃度な魔力だった。
「俺の気のせいだったら謝るが、マーレお前、その力⋯⋯」
俺の言葉にビクッと肩を震わせるマーレ。
ああ、どうやらあれは俺の気のせいではないらしい。
「はははっ、ルイスは凄いね。近くにいたあの3人ですら気づかなかったのに」
マーレは少し開き直った様子で俺を見た。
ん?なんだか嫌な予感がするようなーー
「うん、僕はロバルト家で数十年ぶりに生まれた魔力持ちなんだ。自分で言うのもなんだけど、結構その力が強くて。でもね、この事は他の貴族や王族方には秘密なんだよ」
⋯⋯はい!?
貴族だけじゃなくて王族にも秘密だって!!?
下手すれば、謀反で捕らえられてもおかしくは無い内容だ。
「え、えーっと、そんな大事なこと、俺に話しても良かったのか?」
「うーん、本当はダメなんだけど、ルイスにはもう気づかれちゃったし。それに、不思議と君に話しても大丈夫な気がして」
大丈夫じゃねーよ!!
急に大きなお荷物を背負わされた気分だ!
これは、ただの通りすがりの田舎者にする話では無い。
くそぉ、マーレには悪いが、あまり深入りするようなこと聞くんじゃなかったぜ。
「それに、月影軍に入ればそんなこと関係なくなるしね」
「そ、そうなのか?」
「うん!むしろ月影軍に入った方が、自由に僕の力を発揮出来るんだ。王宮に囚われることなくね」
マーレいわくーー
月影軍は、半独立した組織。
例え王であっても、過度な介入は許されない。
万が一マーレの力が明るみになったとしても、彼がその力を使って月影軍で貢献出来れば、王宮からのロバルト家に対する悪い影響はほぼないとされる。
ただ、これはあくまでも軍に入れたらの話だが。
「かなり危ない橋を渡ってるんだな、お前」
「へへ、まぁそうかもね」
こうやって笑ってはいるが、本人が一番分かっているのだろう。
マーレやロバルト家にどんな事情があるのか分からないが、彼は本気で月影軍を目指している。それに横槍を入れるようなことはするつもりは無い。
「あ、見えてきたよルイス!あれが試験会場でもある第一闘技場だよ!」
マーレの言葉に、俺は自然と視線を前に移した。
絵や写真で何度か目にした、闘技場。しかし、その大きさと迫力は実物を見ないと実感できなかっただろう。
「普段は一般の人も出入りしているんだけど、今回は特別。入隊試験のために月影軍が貸切にしたんだ」
「この建物を貸切だって!?」
さすが、国も認める月影軍。やることなすこと規模がちがいますわ。
しかし、驚いている暇などない。
ここに入れば、本格的に月影軍入隊試験が俺を待ち受けている。
そして、ずっと会いたかったあの人もあの中に⋯⋯。
7年前の火事からようやく、ここまで来た。
シスター、そしてみんな⋯⋯どうか俺を見守っていてくれ。
待ちに待った瞬間まで、あとほんの少しーーー
いやぁ~助かった、これで試験に遅れずにすむ!!優しい人に出会えて本当に幸運だった。
改めて彼に感謝をしないとな。
俺はチラッと横に並ぶマーレを見つめた。
緑色の綺麗な髪色だ。瞳も黄色みかかった緑色であり、陽の光に輝いている。
(有色者ということは、マーレも貴族なのか?)
有色が示すものは、髪の色。マーレのような緑や赤といった珍しい色の髪を有色といい、これらは大国の王族や貴族の血筋によく出る特徴の一つ。
俺のような紺色や黒、茶色などの色は一般色であり、要は平民の特徴という訳だ。
俺の視線に気づいたマーレが、少し苦笑いをしながら頭をかいた。
「あー⋯この髪を見て気づいているとは思うけど、僕は一応貴族の次男坊なんだ。ロバルトっていう名前に聞き覚えはない?」
申し訳ない。
俺は貴族やら王族やらの事情に疎いのだ。
マルコじいちゃんから色々と教わった気がするが⋯⋯うん、覚えてないな。
そんな俺の様子を見てマーレは少し可笑しそうに笑った。
「その、知識不足でさ。なんかごめん」
「いいよいいよ、むしろその方が僕としては気楽で嬉しい。ロバルト家は三大公爵家の一つではあるんだけど、今じゃ名ばかりの貴族だからさ」
マーレいわくーー
ロバルト家は、建国時からこの国を支えてきた三大公爵家の一つである。
代々国王直属の魔道士として宮廷に仕えてきたが、その力は徐々に衰えていき、強い魔力を受け継いだ後継者が生まれなくなったという。
よって、ロバルト家は宮廷魔道士としての資格を剥奪。しかし、これまでの功績と国への忠誠心を尊重され、階級はそのまま引き継いでいるのだとか。
しかし、力のない公爵家など恐るに足りず。
周りの貴族からは没落貴族としてバカにされ、見下されているらしい。
なるほど、そんな複雑な事情があったとは知らなかった。
いやでも待てよ?ロバルト家には強い魔力を持った後継者がいないって話だよな?
けど、マーレがあの三人に放った波動は間違いなく高濃度な魔力だった。
「俺の気のせいだったら謝るが、マーレお前、その力⋯⋯」
俺の言葉にビクッと肩を震わせるマーレ。
ああ、どうやらあれは俺の気のせいではないらしい。
「はははっ、ルイスは凄いね。近くにいたあの3人ですら気づかなかったのに」
マーレは少し開き直った様子で俺を見た。
ん?なんだか嫌な予感がするようなーー
「うん、僕はロバルト家で数十年ぶりに生まれた魔力持ちなんだ。自分で言うのもなんだけど、結構その力が強くて。でもね、この事は他の貴族や王族方には秘密なんだよ」
⋯⋯はい!?
貴族だけじゃなくて王族にも秘密だって!!?
下手すれば、謀反で捕らえられてもおかしくは無い内容だ。
「え、えーっと、そんな大事なこと、俺に話しても良かったのか?」
「うーん、本当はダメなんだけど、ルイスにはもう気づかれちゃったし。それに、不思議と君に話しても大丈夫な気がして」
大丈夫じゃねーよ!!
急に大きなお荷物を背負わされた気分だ!
これは、ただの通りすがりの田舎者にする話では無い。
くそぉ、マーレには悪いが、あまり深入りするようなこと聞くんじゃなかったぜ。
「それに、月影軍に入ればそんなこと関係なくなるしね」
「そ、そうなのか?」
「うん!むしろ月影軍に入った方が、自由に僕の力を発揮出来るんだ。王宮に囚われることなくね」
マーレいわくーー
月影軍は、半独立した組織。
例え王であっても、過度な介入は許されない。
万が一マーレの力が明るみになったとしても、彼がその力を使って月影軍で貢献出来れば、王宮からのロバルト家に対する悪い影響はほぼないとされる。
ただ、これはあくまでも軍に入れたらの話だが。
「かなり危ない橋を渡ってるんだな、お前」
「へへ、まぁそうかもね」
こうやって笑ってはいるが、本人が一番分かっているのだろう。
マーレやロバルト家にどんな事情があるのか分からないが、彼は本気で月影軍を目指している。それに横槍を入れるようなことはするつもりは無い。
「あ、見えてきたよルイス!あれが試験会場でもある第一闘技場だよ!」
マーレの言葉に、俺は自然と視線を前に移した。
絵や写真で何度か目にした、闘技場。しかし、その大きさと迫力は実物を見ないと実感できなかっただろう。
「普段は一般の人も出入りしているんだけど、今回は特別。入隊試験のために月影軍が貸切にしたんだ」
「この建物を貸切だって!?」
さすが、国も認める月影軍。やることなすこと規模がちがいますわ。
しかし、驚いている暇などない。
ここに入れば、本格的に月影軍入隊試験が俺を待ち受けている。
そして、ずっと会いたかったあの人もあの中に⋯⋯。
7年前の火事からようやく、ここまで来た。
シスター、そしてみんな⋯⋯どうか俺を見守っていてくれ。
待ちに待った瞬間まで、あとほんの少しーーー
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