上 下
200 / 334
第4章 お姫様達と黒の宮廷魔術師と、そいつらが使役したモノ達。 第2部 復讐の邪神vs フェイクROUND1

第15話 下界戦その3 脱出作戦とその見通しの悪さ。

しおりを挟む
 ドーン!
 爆発する、マトの外街の新築の聖堂。
 [チームカザート]を乗っ取った王女達は、自分の神像とも言えるものをぶっ壊して、逃走する。

 聖女フェルミは、せっかくの昇進のネタを逃すか!と、追いかける。街の衛兵達も追いかけた。

 しかし、元聖女統括のフェルべーは違った。
 まぁ中身は黒き魔導師カンターレなので、奴らに関わるのは嫌だったから、わざと魔力を回復させて逃げるように細工をしたのだが。

 逃げる王女G達は、有ることを考えついたのだった。

王女G(フェイク分体)
「ねぇ?あの元聖女統括とか言われていた聖女と、その妹を乗っ取れば楽にドワーフ王国に行けるのでは?
 ついでに、その地位を使えばカザトの側近も油断しない?」

 いい考えだと、これまでの部下天使達の聖女フェルべーがカザトにやらかした事の報告を全く聞いていなかった事が、まるわかりな同意をする王女達。


 しかし、フェルべーの中にいる黒き魔導師カンターレの本体は焦った。見たくもない他人の記憶とその性癖を模倣してまで、完全にフェルべーになりきっていたのに、王女達(フェイク分体)に関わりたくないのが、本音であった。
 仕方ない。カンターレは、ここで正当防衛の名目でぶっ殺す事にした。
 

 ゾクリと背筋がこわばったのは、王女達(フェイク分体)。
 なぜかわからないが、過去に体験した恐怖の記憶が警報を鳴らす。
 王女達は、その場から逃げることにしたのだが、衛兵達に追いかけられて逃亡する事になったのだが、もう冒険者を装おう必要も無いので、オーラと氣を練り風に乗って[舞空の功]の術でベイントス公国の国境を通過して、ドワーフ王国方面に空から侵入した。


 その10時間後のことである。

 意識不明の重体の冒険者パーティーが、国境の街に担ぎ込まれた。
  冒険者ギルドのタグから判明したのは、
○カザート(男)
○ドワイライト(男の娘)
○エルジー(女)
○エルブー(女)
○バーベル(男の娘)
○フーベル(男の娘)
の6人である。
行方不明で、悪霊か邪神に身体を乗っ取られたと疑われていた[チームカザート]のメンツであった。

救護員
「ダメです。全員生命力がほぼ有りません。回復ポーションを強制的に飲ませても、元々の生命力が無いので回復しません。」

司祭
「生命力が、枯渇?まさか吸血鬼か?すぐに聖水と、噛まれた跡を探しなさい!」  

 しかし、噛まれた痕は見つからない。
司祭
「カザト様の降らした雨で聖水はものすごくあります。発熱も出てきたので、彼らを聖水につけましょう。」

 聖水の風呂桶にそのまま浸けられた[チームカザート]達の口から黒いものがでてきて、聖水と反応してジュワ~と、音をたてる。
 司祭の判断で、聖水を徹底的に飲ませた結果、心臓の音が少し強くなった。これを回復の契機と見た司祭は、ヒールをかけることした。 
 しかし、百戦錬磨の救護所の聖女達15人が、一斉にヒールをかけるがやっと心臓の鼓動が常時の半分に戻った程度であった。

 そこに凶報が来た。新生ガス王国の教会からの、通達だと乗り移っていたのは、邪神フェイクの分体だろうということ。
 急いで、付近の村とかに行方不明者がいないか確認されたがいなかった。


 ドワーフ王国 国境付近の森

王女G(フェイク分体)
「クソ、なんて貧弱な身体なのよ!」

王女H(フェイク分体)
「お、おえ~。おえ~。」

王女I(フェイク分体)
「まさか、この世界の人間って全員気功法とかオーラ法とか使わないの?
 まさか、たったあんな短い距離を跳んだだけで、げ!ゲホゲホ!」

王女J(フェイク分体)
「軟弱、貧弱じゃない!身体の生命力空っぽになってしまって、森に墜落なんてみっともない!」

王女K(フェイク分体)
「で?他の5人は今はやっと寝たけど、どうするのよ? 付近の村から適当に誰かに乗り移ってグランド王国のエルフ達の避難場所らしい、精霊の館(城)に行って、エルフ達を依り代にする?」

 会議の結果、キスカとトスカに警戒されている可能性があるために、エルフの女性を襲って乗っ取る事にしたらしい。
 まだ、エルフ達の首に従順の首輪がかかっていると思っているみたいだ。

 すぐに、寝ている王女達を起こそうとしたとき、それは起こった。

 ザーーーーーーー。
 聖水の雨が降り出した。
 最近ドワーフ王国では、3日雨が降るって、1日晴れるサイクルなのだが、何十年も雨が降っていなかったので、大地にすぐに雨は吸い込まれてしまう。だから、土砂崩れとかの危険はなかったが問題は、その雨が聖水であり、しかも超高濃度だったのだ。

 ジュワ~!

 ギャーーーーーー!
 王女Iの悲鳴が響く。
 聖水に反応して、霊体が一部溶けたのだ。

 彼女達は、生前の快楽の為の人殺しや、戦争を起こしたなどの大罪と穢れが、すでに悪魔の領域に達しており、聖水の雨の中の移動はできなくなっていた。

王女H(フェイク分体)
「どういう事よ!今の私達は霊体だから硫酸で溶けるはずは無いのよ!なぜ火傷するのよ!どこまで汚染されているのよ!」

 ある意味、自分達は聖なる者だと思っているので、発想が勇者ゴン太と同じく酸性雨だと判断する王女達。

 彼女たちは、雨の中森の中の小屋に籠もるしかなかった。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

とあるオタが勇者召喚に巻き込まれた件~イレギュラーバグチートスキルで異世界漫遊~

剣伎 竜星
ファンタジー
仕事の修羅場を乗り越えて、徹夜明けもなんのその、年2回ある有○の戦場を駆けた夏。長期休暇を取得し、自宅に引きこもって戦利品を堪能すべく、帰宅の途上で食材を購入して後はただ帰るだけだった。しかし、学生4人組とすれ違ったと思ったら、俺はスマホの電波が届かない中世ヨーロッパと思しき建築物の複雑な幾何学模様の上にいた。学生4人組とともに。やってきた召喚者と思しき王女様達の魔族侵略の話を聞いて、俺は察した。これあかん系異世界勇者召喚だと。しかも、どうやら肝心の勇者は学生4人組みの方で俺は巻き込まれた一般人らしい。【鑑定】や【空間収納】といった鉄板スキルを保有して、とんでもないバグと思えるチートスキルいるが、違うらしい。そして、安定の「元の世界に帰る方法」は不明→絶望的な難易度。勇者系の称号がないとわかると王女達は掌返しをして俺を奴隷扱いするのは必至。1人を除いて学生共も俺を馬鹿にしだしたので俺は迷惑料を(強制的に)もらって早々に国を脱出し、この異世界をチートスキルを駆使して漫遊することにした。※10話前後までスタート地点の王城での話になります。

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio
ファンタジー
 特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。  神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。 そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。 日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。    神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?  他サイトでも投稿しております。

処理中です...