4 / 40
第一章 1.アーカム技術
第4話 アーカロイド
しおりを挟む
ピンポーン。
私は玄関のチャイムを鳴らした。いつもならすぐに中で足音が近づいてくるが、そんな気配はなさそうだ。 もう一度鳴らしてみたが、結果は同じ。家の中には誰もいない、という雰囲気がする。
タイミングが合わず、すれ違ったかな?けれど、先ほど――三輪さんから15分ほど前に連絡をもらってから返事をしてすぐにこちらへ向かったのでその間に出かけてしまうはずはない。
もしかしたら……と私は裏庭の方に向かう。 勝手に中に入ってしまうのは申し訳ないが、呼ばれているので致し方ない。裏庭にも作業小屋のようなものがあるのは以前訪れたときから知っている。
玄関から横に伸びる小道を通ると、それはあった。 その作業小屋には特に扉というものはなく、すだれが常にかかっている。私は、すだれを避けるように中に入っていった。
「こんにちは。三輪さ~ん、来ましたよ!……って―― おおぅ、それが噂のものですか?」
「やぁ、詩絵ちゃん。いらっしゃい。来てくれてありがとね。うん、これが例のものだよ」
やぁ、と手を振り返してきた三輪さんは少し髪がボサボサで疲れ切ったような顔をしていた。
「どこかお疲れのようですね。……お疲れさまです。研究のほうも大変なんですか?」
「心配ありがとう。原因はこれさ。例のものに少し手こずっていてね」
三輪さんが手を指し示した先――私の目の前には肌色のマネキン人形があった。それは人の丈くらいあるダンボールから出されたばかりのようで、まだ包装紙にくるまれていた。確か、さきほど三輪さんから届いたメッセージには機械の試験運転をしてほしい、と書いてあったが……。それはどこに? それに三輪さんからは予備の服も一着用意するよう言われている。これでは――。
「ん?それ、マネキンですよね。そのマネキンでファッションショーでもやるんですか?」
「いやいや、これが連絡した例の機械さ! やっぱり僕と同じ感想を持つんだね。たしかにそう見えなくもないが実はとんでもなくすごいものなんだ」
三輪さんは大ぶりに手を動かし否定した。私のいった率直な感想にとてもおどろいていた。予備の服と目の前にあるマネキンではファッションショーをやる以外に思いつかない。これが機械だとしてもまだ信じられない。当の三輪さんもこの機械を初めてみたときは私と同じようにマネキンと思ったようだし。どこからどう見ても服屋さんでみかけるマネキンにしか見えない。近づいてよく見てみると、肌がきめ細かい。肌触りも人の肌と同じ感触だ。これはいったい……。すると、三輪さんは口を開き私の疑問に答えた。
「これは私の師匠、旭川博士が発明したものだ。彼はとある技術の開発に成功したらしい。僕もまだ実際に動かしていないからよく分かっていないが、ドローン技術の応用、人の意思で動かすドローンのような人型ロボットだ。正式名称をUnmanned Humanoid Remote Control Machine(無人人型遠隔機械)――略してUHRCoM (アーカム)だ」
「あ、アーカム!?その前の英語の部分はなんて言ったんですか? あん、まんど?もう一度お願いします……!!」
「アンマンド・ヒューマノイド・リモート・コントロール・マシーン。日本語で言うと中には入らず無人で、外から動かせる人型遠隔機械だ。この英語は覚えなくていいよ」
呪文のような英語をペラペラと言ったように思ったが、2回目でゆっくりと聞くことができ、区切って意味を繋げていけばとりあえずは理解できた。
三輪さんに博士からのメールを見せてもらい(前文長すぎ)、おおまかな説明を聞いた。未だ信じられない話だが今は一見、ただのリアルなマネキンに見えるが、これに接続すれば使用者と全く同じ姿になるという。もし博士からのメールに書いてあった内容が――この技術が本当なら三輪さんが言うようにこの世にはない未知の技術。使い方次第では世界を揺るがしかねない。
私は今、そんなすごい体験に立ち会っているんだな……実感わかないけど。
百聞は一見にしかず。詳しいことは実際に動かして確かめよう。そのために今日私は呼ばれたのだから。
私は玄関のチャイムを鳴らした。いつもならすぐに中で足音が近づいてくるが、そんな気配はなさそうだ。 もう一度鳴らしてみたが、結果は同じ。家の中には誰もいない、という雰囲気がする。
タイミングが合わず、すれ違ったかな?けれど、先ほど――三輪さんから15分ほど前に連絡をもらってから返事をしてすぐにこちらへ向かったのでその間に出かけてしまうはずはない。
もしかしたら……と私は裏庭の方に向かう。 勝手に中に入ってしまうのは申し訳ないが、呼ばれているので致し方ない。裏庭にも作業小屋のようなものがあるのは以前訪れたときから知っている。
玄関から横に伸びる小道を通ると、それはあった。 その作業小屋には特に扉というものはなく、すだれが常にかかっている。私は、すだれを避けるように中に入っていった。
「こんにちは。三輪さ~ん、来ましたよ!……って―― おおぅ、それが噂のものですか?」
「やぁ、詩絵ちゃん。いらっしゃい。来てくれてありがとね。うん、これが例のものだよ」
やぁ、と手を振り返してきた三輪さんは少し髪がボサボサで疲れ切ったような顔をしていた。
「どこかお疲れのようですね。……お疲れさまです。研究のほうも大変なんですか?」
「心配ありがとう。原因はこれさ。例のものに少し手こずっていてね」
三輪さんが手を指し示した先――私の目の前には肌色のマネキン人形があった。それは人の丈くらいあるダンボールから出されたばかりのようで、まだ包装紙にくるまれていた。確か、さきほど三輪さんから届いたメッセージには機械の試験運転をしてほしい、と書いてあったが……。それはどこに? それに三輪さんからは予備の服も一着用意するよう言われている。これでは――。
「ん?それ、マネキンですよね。そのマネキンでファッションショーでもやるんですか?」
「いやいや、これが連絡した例の機械さ! やっぱり僕と同じ感想を持つんだね。たしかにそう見えなくもないが実はとんでもなくすごいものなんだ」
三輪さんは大ぶりに手を動かし否定した。私のいった率直な感想にとてもおどろいていた。予備の服と目の前にあるマネキンではファッションショーをやる以外に思いつかない。これが機械だとしてもまだ信じられない。当の三輪さんもこの機械を初めてみたときは私と同じようにマネキンと思ったようだし。どこからどう見ても服屋さんでみかけるマネキンにしか見えない。近づいてよく見てみると、肌がきめ細かい。肌触りも人の肌と同じ感触だ。これはいったい……。すると、三輪さんは口を開き私の疑問に答えた。
「これは私の師匠、旭川博士が発明したものだ。彼はとある技術の開発に成功したらしい。僕もまだ実際に動かしていないからよく分かっていないが、ドローン技術の応用、人の意思で動かすドローンのような人型ロボットだ。正式名称をUnmanned Humanoid Remote Control Machine(無人人型遠隔機械)――略してUHRCoM (アーカム)だ」
「あ、アーカム!?その前の英語の部分はなんて言ったんですか? あん、まんど?もう一度お願いします……!!」
「アンマンド・ヒューマノイド・リモート・コントロール・マシーン。日本語で言うと中には入らず無人で、外から動かせる人型遠隔機械だ。この英語は覚えなくていいよ」
呪文のような英語をペラペラと言ったように思ったが、2回目でゆっくりと聞くことができ、区切って意味を繋げていけばとりあえずは理解できた。
三輪さんに博士からのメールを見せてもらい(前文長すぎ)、おおまかな説明を聞いた。未だ信じられない話だが今は一見、ただのリアルなマネキンに見えるが、これに接続すれば使用者と全く同じ姿になるという。もし博士からのメールに書いてあった内容が――この技術が本当なら三輪さんが言うようにこの世にはない未知の技術。使い方次第では世界を揺るがしかねない。
私は今、そんなすごい体験に立ち会っているんだな……実感わかないけど。
百聞は一見にしかず。詳しいことは実際に動かして確かめよう。そのために今日私は呼ばれたのだから。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
終末の機械娘と猫たちと(完結)
ジャン・幸田
SF
文明が崩壊して何年経過したかわからない・・・
人の姿は消えて久しいが、海辺に人影があった。その人影は釣りをして、魚を釣っては猫にご飯としてあげている。そんな毎日を過ごしていた。
その人影は何故こうしているの? 何を待っているの? なぜ文明が崩壊してしまったのか?
機械生命体ニャオに何が起きたというのだろう?
ニャオの無限にループしているような日常が終わる時、何かが起きる?
*この作品では会話の描写である鍵括弧は敢えてしていません。どちらかといえば実験的作品です。登場人物はそれなりに出ます。
*「なろう」様にも投稿していますが、話の順番は異なります。
転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて
ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記
大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。
それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。
生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、
まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。
しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。
無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。
これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?
依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、
いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。
誰かこの悪循環、何とかして!
まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて
『世界統合に伴う大型アップデートのお知らせ』
葉月+(まいかぜ)
SF
「ゲームだと思って遊んでいたらリアルな異世界だった(人によってはSAN値チェック案件)」×「現実世界にダンジョンがこんにちは!」な、よくあるはなし。
※ゲームの周年イベントで「サプラーイズ!今日からリアルでもゲームのスキルが使えるしダンジョンからモンスターも湧くよ!たのしんでね!」とぶちかますような運営がいる近未来。ゲームの中にしかいなかった恋人を現実にサモン/召喚できるようになってしまった廃ゲーマーの「日常もの」。
※物語の舞台はナノマシンと外付けデバイスを併用する可逆的な(やめようと思えばやめられる)電脳化が実用化され、それなりに普及もしていて、サスティナブルなウォーが遠隔操作型の戦闘人形で行われているくらいの近未来。母なる惑星から宇宙への脱出など夢のまた夢で、人類は地球の資源を食い尽くしながらこのままゆるやかに滅んでいくのだろうなと、多くの人々が薄々気付いていながら知らない振りをしているような時代。
※主人公はひきこもり廃ゲーマーですが、あっという間に社会復帰します。ゲームで培った廃人ステがリアルに反映されたので。
※カクヨム、ノベルピアでも読めます。
※聖句の引用元は基本的に『Wikisource( https://ja.wikisource.org/w/index.php?title=%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8&oldid=191390 )』です。
その日、世界の壁は打ち砕かれて。
めくるめく幻想が現実のものとなり、鬱屈としたリアルはゲームのルールに塗り潰された。
アルケミア・オンライン
メビウス
SF
※現在不定期更新中。多忙なため期間が大きく開く可能性あり。
『錬金術を携えて強敵に挑め!』
ゲーム好きの少年、芦名昴は、幸運にも最新VRMMORPGの「アルケミア・オンライン」事前登録の抽選に当選する。常識外れとも言えるキャラクタービルドでプレイする最中、彼は1人の刀使いと出会う。
宝石に秘められた謎、仮想世界を取り巻くヒトとAIの関係、そして密かに動き出す陰謀。メガヒットゲーム作品が映し出す『世界の真実』とは────?
これは、AIに愛され仮想世界に選ばれた1人の少年と、ヒトになろうとしたAIとの、運命の戦いを描いた物語。
胡桃の中の蜃気楼
萩尾雅縁
経済・企業
義務と規律に縛られ生きて来た英国貴族嫡男ヘンリーと、日本人留学生・飛鳥。全寮制パブリックスクールで出会ったこの類まれなる才能を持つ二人の出逢いが、徐々に世界を揺り動かしていく。青年企業家としての道を歩み始めるヘンリーの熾烈な戦いが今、始まる。
異世界日本軍と手を組んでアメリカ相手に奇跡の勝利❕
naosi
歴史・時代
大日本帝国海軍のほぼすべての戦力を出撃させ、挑んだレイテ沖海戦、それは日本最後の空母機動部隊を囮にアメリカ軍の輸送部隊を攻撃するというものだった。この海戦で主力艦艇のほぼすべてを失った。これにより、日本軍首脳部は本土決戦へと移っていく。日本艦隊を敗北させたアメリカ軍は本土攻撃の中継地点の為に硫黄島を攻略を開始した。しかし、アメリカ海兵隊が上陸を始めた時、支援と輸送船を護衛していたアメリカ第五艦隊が攻撃を受けった。それをしたのは、アメリカ軍が沈めたはずの艦艇ばかりの日本の連合艦隊だった。
この作品は個人的に日本がアメリカ軍に負けなかったらどうなっていたか、はたまた、別の世界から来た日本が敗北寸前の日本を救うと言う架空の戦記です。
禁煙所
夜美神威
SF
「禁煙所」
ここはとある独裁国家
愛煙家の大統領の政策で
公共施設での喫煙
電車・バス内での喫煙
歩きたばこまで認められている
嫌煙家達はいたる所にある
「禁煙所」でクリーンな空気を吸う
夜美神威 ナンバリングタイトル第6弾
私たちの試作機は最弱です
ミュート
SF
幼い頃から米軍で人型機動兵器【アーマード・ユニット】のパイロットとして活躍していた
主人公・城坂織姫は、とある作戦の最中にフレンドリーファイアで味方を殺めてしまう。
その恐怖が身を蝕み、引き金を引けなくなってしまった織姫は、
自身の姉・城坂聖奈が理事長を務める日本のAD総合学園へと編入する。
AD総合学園のパイロット科に所属する生徒会長・秋沢楠。
整備士の卵であるパートナー・明宮哨。
学園の治安を守る部隊の隊長を務める神崎紗彩子。
皆との触れ合いで心の傷を癒していた織姫。
後に彼は、これからの【戦争】という物を作り変え、
彼が【幸せに戦う事の出来る兵器】――最弱の試作機と出会う事となる。
※この作品は現在「ノベルアップ+」様、「小説家になろう!」様にも
同様の内容で掲載しており、現在は完結しております。
こちらのアルファポリス様掲載分は、一日五話更新しておりますので
続きが気になる場合はそちらでお読み頂けます。
※感想などももしお時間があれば、よろしくお願いします。
一つ一つ噛み締めて読ませて頂いております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる