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転生勇者と魔剣編
第六十八話 与えられし剣(8)
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「な、なんだ!?」
気が付けば、地面が真っ黒に染まっていた。夜中だから、というわけではない。光に照らされている箇所も、まるで光そのものが存在しないかの如く闇色に染まっているのだ。
そして、その真っ黒な地面から、黒い靄が次々と湧き出していく。
「んな……!?」
誰もが、息を呑む。
先ほどまで散々見た、あの悪魔の鎧の使い手、裏切り者の偽勇者が吐き出していた黒い靄が、足元から湧き出せば当然であろう。
だが、彼らへ悪魔が起こした恐怖は、そんな生ぬるいものではなかった。
「こ、これは……!?」
地面から這い出てきたのは、黒い靄だけではなかった。
黒い靄が形になり、一つの影を形成していく。
それは、まるで人のような形……いや、人そのものだった。
人の姿、胸当てや剣を手にした骸骨たちが、地面から這い出てきたのだ。
「あ、アンデッド!?」
誰かが、我が目を疑いつつもそう叫ぶ。
アンデッドとは魔物の一種で、死んだ人間や魔物の骨、肉体の一部が邪気に触れた場合、その肉体を媒体として形成される魔物である。人間が元の場合、身に着けた装飾品なども一緒に取り込んで魔物と化すので、まるで死者が生き返ったようだが、あくまで死体を元にしているだけであり、故人の意識や自我など存在しない。
つまり、単に他の魔物と同じく人間を襲って喰うだけの怪物ということだ。
「馬鹿な……何故こんなところにアンデッドが……」
その言葉を呟いたのかは誰だか分からないが、聞いた者全てが同意する謎であったろう。
アンデッドが死者の肉体と邪気さえあれば出来るとはいえ、そんな大量の邪気など普通は存在しない。自然界にはダンジョンと呼ばれる、邪気が溜まりやすいスポットがあるものの、それ以外ではまず発生しない。ましてや、ここは王都の目の前だ。
しかも、現れたアンデッドは一匹や二匹ではない。わらわらと、目に見える限り地面から生えてきている。こんな尋常でない数のアンデッドなど、ダンジョンでもお目にかかれまい。もはや異常現象を通り越して怪奇現象だった。
誰もが、次々と魔物が生まれる様に言葉を失っていた。
たった一人、恐らくこの場で唯一現状を把握できているであろう、枢機卿長を除けば。
「あの馬鹿ども……とんでもない量の邪気をばら撒きやがって……!」
枢機卿長が、歯ぎしりまでして怒りと憎しみを露わにしている。馬鹿どもが、恐らくレッドとアレンの事だろうということは、何となく見当はついた。
――チャンス、かな。
レッドはアンデッドが湧き出してきた現状を好都合と捉えた。
この惨状、何が起きているかは知らないが、とにかく目くらましには丁度いいと思った。目の前で魔物が大量発生などしてしまえば、こちらに追っ手など出す余裕はあるまい。この機会を逃すわけにはいかないと決心する。
問題は、自分自身がアンデッドから逃れられるほどの余裕があるかということだが、とレッドは魔剣を杖にしながら、生まれたての小鹿のような足取りでその場を去ろうとした。
が、そこでまた、誰も予想だにしなかったことが起きる。
「……! え?」
地面が、黒く澱んだ地面が、また盛り上がった。それ自体は、今さっきから続いている現象ではある。
問題は、その大きさだった。
「う、うわっ!」
レッドの体が、持ち上げられる。正確には、地面から何かが生えてきて、それに押し上げられる形で乗っかってしまったのだ。
「な、なんだこ、りゃ……」
何が起きたか分からなかったが、すぐに自分が何の背に乗っているかを気付き、言葉を失う。
忘れもしない。つい先ほどまで、この背の上で戦っていたのだから。
色は黒々としているものの、凹凸のある肌の起伏と感触、そしてこの地面を見下ろした景色も、よく覚えていた。
「んな……ベヒモス!?」
レッドは驚愕する。
先ほどアレンが消し飛ばしたはずのベヒモスが、地面から湧いて出てきたのだ。
しかし、すぐにこいつはベヒモスではないと悟る。
「こいつは……!?」
よく見ると、肌の色が黒くなっていることの他に、変化していることが多い。
まず、大きさがだいぶ小さくなっている。一回りか二回り以上は縮んだかもしれない。あの巨体なベヒモスから、見下ろすものたちとの距離が短くなっていた。
それ以外にも頭部が一部変形していたり、体のいたるところに肉が無く、骨が剥き出しになっている。何より、たたでさえ臭かったベヒモスの体臭に腐敗臭が混じって、より悪化していた。
要するにこのベヒモスは、邪気によって肉体の一部から再生されたベヒモスアンデッドなのだ。恐らく残った肉片があまりに少なすぎて、完全再生には至らなかったのだろう。
ベヒモスの背から下を覗くと、どうやらパニック状態らしかった。無理もない、こんな伝説の化け物がアンデッドとして蘇ればパニックにもなる。少し同情も抱いてしまうが、これでより逃げられやすくなったと安堵する。
もっとも、この背からどうやって脱出するかという問題があるのだが、とレッドは頭を抱える。
「――うん?」
ふと気が付くと、たまたま右手首に付けていたスケイプの腕輪が、紫色に輝いていた。
「これは……使役(テイム)の光……」
まさか、ベヒモスへの使役が効いたままなのだろうか? と思ったが、すぐにそんなわけないと思い直す。このベヒモスは単なる肉片からできた偽物であるし、第一そうであったとしてもテイマーのスケイプが居ない今、反応するはずも無い。
ならこの光は何なのか? としばらくツンツンとしていると、
突然、空から大きな翼がはためく音がした。
一瞬、アレンが戻ってきたのかと思ったレッドは剣を握るが、振り返った時自分の目を疑った。
「な……」
そこにいたのは、白き鎧を纏ったアレンでも他の魔術師でもなく、
鷹の上半身とライオンの下半身を持つ、翼をはためかせた魔物だったのだ。
「グリフォン……!?」
レッドは信じられなかった。グリフォンが、こんな場所にいるなんて。
しかも、レッドにはそのグリフォンに見覚えがあった。
「こいつ……スケイプのグリフォンじゃ……」
間違いなかった。あの日スケイプが自慢気に見せてきた、彼が使役(テイム)したグリフォンである。
しかし、だからこそ意味が分からなかった。スケイプのグリフォンが、どうしてこんな場所にいるのか。
そして、どうして自分の前に滞空したまま、まるで乗れというようにじっと待っているのか。
通常テイマーが使役させた魔物は、そのテイマー自身の言うことしか聞かない。
唯一、テイマーが使用した魔道具を介せば他人の言う事にも従うが、それはあくまでテイマーが許可した人間に限る、というのが授業で教わった内容だった。
レッドは、勿論スケイプにそんな許可を貰った覚えなど無かった。
それに、その魔道具を介しての使役には、魔道具に血などでその人物の情報を登録する必要があるとも教わった。しかし、レッドにはそのようなことをした記憶は皆目ない、はずだったのだが。
「……あっ!!」
そこでレッドは思い出した。
昨日の昼間、いきなり訪れたスケイプに殴られ、鼻血を出したことがあった。
そしてその時、右手首に付けられた腕輪に、確かに血が流れていたのだ。
「あいつ……まさか最初から……」
スケイプは最後、「逃げろ」とレッドに告げて事切れた。
そして、この腕輪を手渡した。
もしかしたら、この腕輪でグリフォンを呼び、その背に乗って逃げろと言いたかったのかもしれない。
スケイプが、今までの茶番劇を事前に伝えられていたとは思えない。であるなら、もっと別のリアクションを取っていたはずだ。
しかし――何かしら、きな臭さを感じていたのだろう。
そのため、もし自分がやられた時、レッドが逃げられるように初めから手を打っていたのだ。
「――お気遣い痛み入るよ、スケイプ」
なんて、かつての友に感謝しつつ、グリフォンに乗り上げた。
「さあ――行くぞ、グリフォン」
こちらの声に応じて、甲高いいななきを上げて、グリフォンは応える。
「んで……何処へ逃げるか」
これがまた問題だった。
この騒ぎであるから、すぐに追っ手が来ることは無いのは確実だ。
だが、この騒ぎもすぐ収まるだろう。あのベヒモスアンデッドは生きていたベヒモスより強くは無いだろうから、遠からず退治される。
そうなれば、国中を漁ってでも追いかけてくるに違いない。いや国中どころか、五か国にも通達を出して探させるだろう。見つかるのは時間の問題だ。
グリフォンの飛行距離にも限度があるし、テイマーでない人間が魔道具を介しての使役は、せいぜい二、三日しか持たないはずだ。その間で逃げ切るのは難しい。
何より、レッドも今日の戦いだけで相当なダメージを負ってしまったので、すぐにでも休みたかった。こうしている瞬間にも気を失いそうなのに、呑気に長々と飛んでいられないだろうと判断した。
「――よし、決めた」
その全てを考慮して、レッドはどこに逃げるかの決断を下した。
「行くぞグリフォン。向かう場所は決まった」
そう伝えるように魔道具に念じると、グリフォンを方向転換して目的地へ指差した。
「目指すは――王都、ティマイオ」
その命に従い、グリフォンは王都へ向け雄々しく飛んでいった。
***
その日未明、夜明けも近いという時のことである。
王都ティマイオの東門が、グリフォンに乗った謎の侵入者によって破壊された。
侵入者はそれだけで済まさず、王城や神殿など王都の一部施設を破壊し、その後すぐに西門も破壊し、グリフォンに乗っていずこかへと飛び去ったと目撃した者たちは話した。
王都ティマイオが正体不明の賊に侵入され、暴れ放題暴れられて最後逃げられるという大事件であった。
しかし、そのような些事は、王都の目の前に巨大な魔物たちが出現したというはるかに大事件にかき消されてしまったのだったが。
気が付けば、地面が真っ黒に染まっていた。夜中だから、というわけではない。光に照らされている箇所も、まるで光そのものが存在しないかの如く闇色に染まっているのだ。
そして、その真っ黒な地面から、黒い靄が次々と湧き出していく。
「んな……!?」
誰もが、息を呑む。
先ほどまで散々見た、あの悪魔の鎧の使い手、裏切り者の偽勇者が吐き出していた黒い靄が、足元から湧き出せば当然であろう。
だが、彼らへ悪魔が起こした恐怖は、そんな生ぬるいものではなかった。
「こ、これは……!?」
地面から這い出てきたのは、黒い靄だけではなかった。
黒い靄が形になり、一つの影を形成していく。
それは、まるで人のような形……いや、人そのものだった。
人の姿、胸当てや剣を手にした骸骨たちが、地面から這い出てきたのだ。
「あ、アンデッド!?」
誰かが、我が目を疑いつつもそう叫ぶ。
アンデッドとは魔物の一種で、死んだ人間や魔物の骨、肉体の一部が邪気に触れた場合、その肉体を媒体として形成される魔物である。人間が元の場合、身に着けた装飾品なども一緒に取り込んで魔物と化すので、まるで死者が生き返ったようだが、あくまで死体を元にしているだけであり、故人の意識や自我など存在しない。
つまり、単に他の魔物と同じく人間を襲って喰うだけの怪物ということだ。
「馬鹿な……何故こんなところにアンデッドが……」
その言葉を呟いたのかは誰だか分からないが、聞いた者全てが同意する謎であったろう。
アンデッドが死者の肉体と邪気さえあれば出来るとはいえ、そんな大量の邪気など普通は存在しない。自然界にはダンジョンと呼ばれる、邪気が溜まりやすいスポットがあるものの、それ以外ではまず発生しない。ましてや、ここは王都の目の前だ。
しかも、現れたアンデッドは一匹や二匹ではない。わらわらと、目に見える限り地面から生えてきている。こんな尋常でない数のアンデッドなど、ダンジョンでもお目にかかれまい。もはや異常現象を通り越して怪奇現象だった。
誰もが、次々と魔物が生まれる様に言葉を失っていた。
たった一人、恐らくこの場で唯一現状を把握できているであろう、枢機卿長を除けば。
「あの馬鹿ども……とんでもない量の邪気をばら撒きやがって……!」
枢機卿長が、歯ぎしりまでして怒りと憎しみを露わにしている。馬鹿どもが、恐らくレッドとアレンの事だろうということは、何となく見当はついた。
――チャンス、かな。
レッドはアンデッドが湧き出してきた現状を好都合と捉えた。
この惨状、何が起きているかは知らないが、とにかく目くらましには丁度いいと思った。目の前で魔物が大量発生などしてしまえば、こちらに追っ手など出す余裕はあるまい。この機会を逃すわけにはいかないと決心する。
問題は、自分自身がアンデッドから逃れられるほどの余裕があるかということだが、とレッドは魔剣を杖にしながら、生まれたての小鹿のような足取りでその場を去ろうとした。
が、そこでまた、誰も予想だにしなかったことが起きる。
「……! え?」
地面が、黒く澱んだ地面が、また盛り上がった。それ自体は、今さっきから続いている現象ではある。
問題は、その大きさだった。
「う、うわっ!」
レッドの体が、持ち上げられる。正確には、地面から何かが生えてきて、それに押し上げられる形で乗っかってしまったのだ。
「な、なんだこ、りゃ……」
何が起きたか分からなかったが、すぐに自分が何の背に乗っているかを気付き、言葉を失う。
忘れもしない。つい先ほどまで、この背の上で戦っていたのだから。
色は黒々としているものの、凹凸のある肌の起伏と感触、そしてこの地面を見下ろした景色も、よく覚えていた。
「んな……ベヒモス!?」
レッドは驚愕する。
先ほどアレンが消し飛ばしたはずのベヒモスが、地面から湧いて出てきたのだ。
しかし、すぐにこいつはベヒモスではないと悟る。
「こいつは……!?」
よく見ると、肌の色が黒くなっていることの他に、変化していることが多い。
まず、大きさがだいぶ小さくなっている。一回りか二回り以上は縮んだかもしれない。あの巨体なベヒモスから、見下ろすものたちとの距離が短くなっていた。
それ以外にも頭部が一部変形していたり、体のいたるところに肉が無く、骨が剥き出しになっている。何より、たたでさえ臭かったベヒモスの体臭に腐敗臭が混じって、より悪化していた。
要するにこのベヒモスは、邪気によって肉体の一部から再生されたベヒモスアンデッドなのだ。恐らく残った肉片があまりに少なすぎて、完全再生には至らなかったのだろう。
ベヒモスの背から下を覗くと、どうやらパニック状態らしかった。無理もない、こんな伝説の化け物がアンデッドとして蘇ればパニックにもなる。少し同情も抱いてしまうが、これでより逃げられやすくなったと安堵する。
もっとも、この背からどうやって脱出するかという問題があるのだが、とレッドは頭を抱える。
「――うん?」
ふと気が付くと、たまたま右手首に付けていたスケイプの腕輪が、紫色に輝いていた。
「これは……使役(テイム)の光……」
まさか、ベヒモスへの使役が効いたままなのだろうか? と思ったが、すぐにそんなわけないと思い直す。このベヒモスは単なる肉片からできた偽物であるし、第一そうであったとしてもテイマーのスケイプが居ない今、反応するはずも無い。
ならこの光は何なのか? としばらくツンツンとしていると、
突然、空から大きな翼がはためく音がした。
一瞬、アレンが戻ってきたのかと思ったレッドは剣を握るが、振り返った時自分の目を疑った。
「な……」
そこにいたのは、白き鎧を纏ったアレンでも他の魔術師でもなく、
鷹の上半身とライオンの下半身を持つ、翼をはためかせた魔物だったのだ。
「グリフォン……!?」
レッドは信じられなかった。グリフォンが、こんな場所にいるなんて。
しかも、レッドにはそのグリフォンに見覚えがあった。
「こいつ……スケイプのグリフォンじゃ……」
間違いなかった。あの日スケイプが自慢気に見せてきた、彼が使役(テイム)したグリフォンである。
しかし、だからこそ意味が分からなかった。スケイプのグリフォンが、どうしてこんな場所にいるのか。
そして、どうして自分の前に滞空したまま、まるで乗れというようにじっと待っているのか。
通常テイマーが使役させた魔物は、そのテイマー自身の言うことしか聞かない。
唯一、テイマーが使用した魔道具を介せば他人の言う事にも従うが、それはあくまでテイマーが許可した人間に限る、というのが授業で教わった内容だった。
レッドは、勿論スケイプにそんな許可を貰った覚えなど無かった。
それに、その魔道具を介しての使役には、魔道具に血などでその人物の情報を登録する必要があるとも教わった。しかし、レッドにはそのようなことをした記憶は皆目ない、はずだったのだが。
「……あっ!!」
そこでレッドは思い出した。
昨日の昼間、いきなり訪れたスケイプに殴られ、鼻血を出したことがあった。
そしてその時、右手首に付けられた腕輪に、確かに血が流れていたのだ。
「あいつ……まさか最初から……」
スケイプは最後、「逃げろ」とレッドに告げて事切れた。
そして、この腕輪を手渡した。
もしかしたら、この腕輪でグリフォンを呼び、その背に乗って逃げろと言いたかったのかもしれない。
スケイプが、今までの茶番劇を事前に伝えられていたとは思えない。であるなら、もっと別のリアクションを取っていたはずだ。
しかし――何かしら、きな臭さを感じていたのだろう。
そのため、もし自分がやられた時、レッドが逃げられるように初めから手を打っていたのだ。
「――お気遣い痛み入るよ、スケイプ」
なんて、かつての友に感謝しつつ、グリフォンに乗り上げた。
「さあ――行くぞ、グリフォン」
こちらの声に応じて、甲高いいななきを上げて、グリフォンは応える。
「んで……何処へ逃げるか」
これがまた問題だった。
この騒ぎであるから、すぐに追っ手が来ることは無いのは確実だ。
だが、この騒ぎもすぐ収まるだろう。あのベヒモスアンデッドは生きていたベヒモスより強くは無いだろうから、遠からず退治される。
そうなれば、国中を漁ってでも追いかけてくるに違いない。いや国中どころか、五か国にも通達を出して探させるだろう。見つかるのは時間の問題だ。
グリフォンの飛行距離にも限度があるし、テイマーでない人間が魔道具を介しての使役は、せいぜい二、三日しか持たないはずだ。その間で逃げ切るのは難しい。
何より、レッドも今日の戦いだけで相当なダメージを負ってしまったので、すぐにでも休みたかった。こうしている瞬間にも気を失いそうなのに、呑気に長々と飛んでいられないだろうと判断した。
「――よし、決めた」
その全てを考慮して、レッドはどこに逃げるかの決断を下した。
「行くぞグリフォン。向かう場所は決まった」
そう伝えるように魔道具に念じると、グリフォンを方向転換して目的地へ指差した。
「目指すは――王都、ティマイオ」
その命に従い、グリフォンは王都へ向け雄々しく飛んでいった。
***
その日未明、夜明けも近いという時のことである。
王都ティマイオの東門が、グリフォンに乗った謎の侵入者によって破壊された。
侵入者はそれだけで済まさず、王城や神殿など王都の一部施設を破壊し、その後すぐに西門も破壊し、グリフォンに乗っていずこかへと飛び去ったと目撃した者たちは話した。
王都ティマイオが正体不明の賊に侵入され、暴れ放題暴れられて最後逃げられるという大事件であった。
しかし、そのような些事は、王都の目の前に巨大な魔物たちが出現したというはるかに大事件にかき消されてしまったのだったが。
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