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第二王子シャルル

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 王太子が正体不明の美女にぞっこんだ、という噂は瞬く間に王宮内に広まった。
 ジルベールはいかなるときも「アンドロイド」を傍に置き、かたときも離さないと。

 テーラ国の王……ジルベールの父親は、王の間にもう一人の息子、第二王子シャルルを呼んだ。

「私に話があるそうだな、シャルルよ。申してみよ」

 王は王座にふんぞり返り、突き出た腹をさすりながら、まだ少年と言える第二王子を見下ろした。王妃との子ではなく、側室との間にもうけた子供だった。
 国王に発言を促され、シャルルは母親譲りの綺麗な顔を引き締めた。
 
「恐れながら申し上げます。父上、最近の兄上は、おかしくはないでしょうか」

「おかしい、とは?」

 国王は赤ら顔でげっぷをした。もう昼だというのに、昨日たらふく飲んだ酒がまだ抜けていない。シャルルは自分の話をちゃんと聞いているのか不安になったが、めげずに続けた。

「正式に婚約者だったジュリア伯爵令嬢と、突然、婚約破棄したと思ったら、得体の知れない女性と四六時中くっついて、公務をおろそかにしています。彼女は一体誰なんですか?」

「あー、アン……アンドロメダ? ちがうな、アンド、なんとかと確か言っていたな。ジルベールはジュリア嬢ではなく、そのアンドなんとかを王妃にするそうだ」

「ちょ、父上、するそうだ、って、何を呑気な。伯爵家になんて説明するのですか。それに、名前もよく分からない女性が未来の王妃陛下だなんて」

 シャルルはいい加減な国王に、たまらずツッコミを入れた。

「伯爵家なんて……ヒック、どうとでもなる。それに国は男の力で、ウエップ、回るものだ。世継ぎさえ生んでくれれば相手の女など、オエップ、どうでもいい」

「……父上、この近代化社会に、そんなことを言っては、国民やまわりの国が納得するかどうか」

 世の中は魔法の力で近代化し、民主主義、男女平等の世界に移行しているというのに、このテーラ国は今だ絶対王政、男性優位の方針だった。
 それで国民が納得していればいいが、王の気分次第で国の決まりがころころ変わり、振り回される国民の不満は高まる一方だった。

「はー、なんだか気持ち悪い。飲みすぎたなあ。というわけで話は終わりだ。シャルル、下がっていいぞ」

 国王はしっしっと、息子を追い払う仕草をした。
 国王にそう言われては下がるほかない。この国は国王が絶対なのだ。

「この国はどうなってしまうのか……」

 シャルルは父親が話にならないので、ジルベール……兄と直接、話し合うしかないと思った。
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