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おまけ 66話のその後2
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「何ぼんやりしているんだ、フェリクス殿! 僕一人にやらせる気か? フェリクス殿も思い人に愛を叫ぶんだ!」
ミランが真っ赤な顔でふらふらしながら叫んだ。
ああ、危なっかしいなあ……。
「ミラン殿下、そんなに端の方に行かないで、落ちてしまいますよ」
「えっ? うわああ、た、高い! 忘れてた!」
「屋上ですからね」
高さは十五メートルほど。フェンスが設けられているが、うっかり下を覗き込んだ高所恐怖症のミランは、後ずさってよろめいた。フェリクスは慌てて背中から受け止める。そんな状態でもミランは思い出したように「マルガレーテ!」と叫んでいた。
「さあ、フェリクス殿も、愛を叫ぶんだ! これは友人としての頼みだぞ!」
「え? ええっと……」
「フェリクス殿の思う人は誰なんだ? 魔法師団の団員? 絶対誰にも言わないから、僕だけにこっそり教えてよ」
両脇をフェリクスに支えられながら、ミランはへらりと笑った。そんなだらしのない顔でもなんとかなってるのは、もともとの顔がいいからだろうか。
「そ、それは秘密ですよ」
ここでミラン殿下の名を叫んだら、どうなるだろうか。ミラン殿下は……きっと、あっけにとられるに違いない。困るに違いない。ミラン殿下はマルガレーテ嬢を今でも思っているのに。
つい最近まで男だと思っていた女に告白されても、迷惑に違いない。
今はまだ、この気持ちは、胸に秘めておくんだ。
「ヒントだけでも、ダメ? 王宮内の人?」
フェリクスの決意をよそに、この酔っぱらいは追及を緩めない。
「勘弁してもらえないでしょうか、ミラン殿下」
「まさか、リステアード兄上!?」
「……っち、違います! ぜーったいに、違います!!」
どうしてそうなるの!? よりによってあのキザ王太子なんて!
フェリクスは心の中で大変失礼な言葉を吐いた。リステアードには魔法師団としてとても世話になっているが、フェリクスは彼に対して特別な感情を抱いたことは一度もなかった。
「リステアード兄上は、モテたからなあ……」
なのに、ミランは一人納得して、遠い目をしている。嫌だ。リステアード王太子だと勘違いされるのは、なんか、とっても嫌だ。
「……もっと私にとって身近な人ですよ。これ以上は、聞かないで下さい。私も、一応、れ、レディーですから」
君のどこがレディー!? と笑われるかも、とフェリクスは思ったが、ミランは支えるフェリクスの腕から、ゆっくりと立ち上がると、フェリクスに向き直った。顔は酔っぱらいのそれだが、馬鹿にしたような顔ではなく、いつもの邪気のない表情だった。
「そうだったね、失礼した。じゃあ、フェリシア殿、二人で『軍歌・エルドゥ王国と共に』を歌おう! 一緒に練習した、あのときのように! さんはいっ」
「え……? あ、は、はい!」
大声で恥ずかしげもなく歌いだすミランに、フェリクスも慌てて続いた。
さんさんと輝く太陽に向かって、散々歌った軍歌を歌う。
今、フェリシアって言った……?
フェリクスは自分の心臓の鼓動に負けまいと、声を張り上げた。
ミランが真っ赤な顔でふらふらしながら叫んだ。
ああ、危なっかしいなあ……。
「ミラン殿下、そんなに端の方に行かないで、落ちてしまいますよ」
「えっ? うわああ、た、高い! 忘れてた!」
「屋上ですからね」
高さは十五メートルほど。フェンスが設けられているが、うっかり下を覗き込んだ高所恐怖症のミランは、後ずさってよろめいた。フェリクスは慌てて背中から受け止める。そんな状態でもミランは思い出したように「マルガレーテ!」と叫んでいた。
「さあ、フェリクス殿も、愛を叫ぶんだ! これは友人としての頼みだぞ!」
「え? ええっと……」
「フェリクス殿の思う人は誰なんだ? 魔法師団の団員? 絶対誰にも言わないから、僕だけにこっそり教えてよ」
両脇をフェリクスに支えられながら、ミランはへらりと笑った。そんなだらしのない顔でもなんとかなってるのは、もともとの顔がいいからだろうか。
「そ、それは秘密ですよ」
ここでミラン殿下の名を叫んだら、どうなるだろうか。ミラン殿下は……きっと、あっけにとられるに違いない。困るに違いない。ミラン殿下はマルガレーテ嬢を今でも思っているのに。
つい最近まで男だと思っていた女に告白されても、迷惑に違いない。
今はまだ、この気持ちは、胸に秘めておくんだ。
「ヒントだけでも、ダメ? 王宮内の人?」
フェリクスの決意をよそに、この酔っぱらいは追及を緩めない。
「勘弁してもらえないでしょうか、ミラン殿下」
「まさか、リステアード兄上!?」
「……っち、違います! ぜーったいに、違います!!」
どうしてそうなるの!? よりによってあのキザ王太子なんて!
フェリクスは心の中で大変失礼な言葉を吐いた。リステアードには魔法師団としてとても世話になっているが、フェリクスは彼に対して特別な感情を抱いたことは一度もなかった。
「リステアード兄上は、モテたからなあ……」
なのに、ミランは一人納得して、遠い目をしている。嫌だ。リステアード王太子だと勘違いされるのは、なんか、とっても嫌だ。
「……もっと私にとって身近な人ですよ。これ以上は、聞かないで下さい。私も、一応、れ、レディーですから」
君のどこがレディー!? と笑われるかも、とフェリクスは思ったが、ミランは支えるフェリクスの腕から、ゆっくりと立ち上がると、フェリクスに向き直った。顔は酔っぱらいのそれだが、馬鹿にしたような顔ではなく、いつもの邪気のない表情だった。
「そうだったね、失礼した。じゃあ、フェリシア殿、二人で『軍歌・エルドゥ王国と共に』を歌おう! 一緒に練習した、あのときのように! さんはいっ」
「え……? あ、は、はい!」
大声で恥ずかしげもなく歌いだすミランに、フェリクスも慌てて続いた。
さんさんと輝く太陽に向かって、散々歌った軍歌を歌う。
今、フェリシアって言った……?
フェリクスは自分の心臓の鼓動に負けまいと、声を張り上げた。
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