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おまけ 66話のその後

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「よし、今日の魔法の訓練はここまでだ。昼からのゲリラパフォーマンスの準備を、各自してくれ。夕方、魔法師団通信のインタビューがある者は、忘れないように」

 フェリクスは訓練場に散らばる団員たちに向かって、声を張り上げた。
 早朝の魔法師団による魔法の訓練は、自由参加ではあるが、毎日そこそこの団員が代わる代わる顔を出すようになっていた。フェリクスが一人でさみしく自主練をしていたころと比べると、大きな進歩だ。 

「お疲れっす、団長。団長、なんだか声が枯れてませんか?」

 首を傾げる団員に、フェリクスはぎくりとした。

「のど飴、要ります?」

「うん。貰うよ。ありがとう」

 色々と気が利く少年団員からのど飴を貰いながら、フェリクスは昨日のことを思い出していた。

 あれだけ大声で叫べば、声も枯れるよなあ……。

 昨日の昼、フェリクスとミランは、魔法師団パートナー(?)の結成を祝して乾杯した。ミランはすぐに酔いが回り、強引にフェリクスを「秘密の場所」へ引っ張っていった。秘密の場所、とは王宮の外れにある建物の屋上のことで、今では人がほとんど立ち入らないので、大声を出しても大丈夫な場所なのである。
 結局、そこでミランはマルガレーテへの別れの言葉を叫び、フェリクスは「軍歌・エルドゥ王国と共に」を熱唱する羽目になった。

「……昨日の昼、王宮の外れの方から、恐ろしい雄たけびみたいな声が聞こえたって、専らの噂なんすよ、団長、なんのことだか知りません?」

 少年団員が、真剣な顔をして、フェリクスに問うた。「もしかしたら、野生の魔物が住みついてたりするのかもしれませんよ、王宮は広いし」

「いや……ちょっと、分からないな……。だけど、王宮内に野生の魔物がいるってことは、ないんじゃないか」

 フェリクスは引きつった笑いで誤魔化した。恐ろしい雄たけび……それは、きっと自分の歌声だろうと確信した。


 昨日の昼――。

 フェリクスはミランに腕を引かれながら、王宮の外れにある建物の、屋上へ上がった。
 ここは小さな庭園となっていて、ささやかな木々や草花が静かに並んでいる。以前、日が落ちてからここへ来たときとは違って、今は空高くから注ぐ太陽の光が、その葉っぱにきらきらと反射していた。
 誰かが手入れしたり、水やりをしてくれているはずだとフェリクスは思うのだが、不思議とここにはいつも人気ひとけがない。
 今現在、エルドゥ王国は少し寒い時期にあたる。けれど、太陽が出ているせいか、上着を纏わなくても平気なぐらいの気温だった。
 ミランはフェリクスの腕を離さないまま「王家秘蔵の酒」片手に、空に向かって「マルガレーテ! さよならー!」と叫びだした。
 もっと気温が低くても、今のミランは酒が体にまわって、寒さを感じないだろう。
 フェリクスはミランがうっかり「王家秘蔵の酒」を取り落として、怪我をしたりしたら大変だと、ハラハラしていた。 
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