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占いの行方 2
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「失礼しました、マダム」
「なんだい、あのはしばみ色の目をした坊主のことでも考えていたのかい? また会ったね、青い目のお嬢さん」
老女はフェリシアに抱きとめられながら、しわに埋もれた細い目をばちっとウインクした。
その言葉にフェリシアは驚いた。
「私のことを覚えているんですね。それに、あのときも男装していたのに、私が女だと分かるんですか」
「あんたはどう見たって女じゃないか。女にしか見えんよ」
「え」
フェリシアは慌てた。女にしか見えない? そんな馬鹿な……自分で言うのもなんだけど、そんな馬鹿な。男装は完璧なはずなのに。
老女はにやりとした。
「私には何もかもお見通しなんだよ、占いだって、当たっていただろう?」
「貴方は未来を見る魔法が使えるんですか? 失礼ながら、貴方から魔力は感じ取れませんが」
「お嬢ちゃん、世の中に存在する不思議な力は魔力による魔法だけじゃないのさ。覚えときな」
「は、はい」
ついに「お嬢ちゃん」になってしまった。私はもう21歳なのに。
というか、このおばあさん、本当に怪我しているのだろうか。すごく元気なんだけど。
フェリシアが訝しんだとき、
「ああ、こんなところにいた。おばあちゃん、勝手に王宮内を歩き回ってはダメですよ。貴方は今保護されているんですからね……って、きゃああああ、フェ、フェリクス様!?」
女性兵士が小走りにこちらに駆け寄って来た。
老女を支えるフェリシアを見た途端、飛び上がって喜び、顔を赤らめる。フェリクス・ブライトナーのファンのようだ。
王宮に勤めているのにフェリシアが女性だと知らないのか、それとも知っててファンなのか、定かではない。
「ふん、何が保護だ。か弱い年寄りを、部屋に見張り付きで閉じ込めておって」
フェリシアを前に舞い上がっていた女性兵士は、老女の言葉にはっと我に返った。
「し、仕方ないんですよ、おばあちゃん。貴方は営業許可なしに国の敷地で占い業をやっていて、営業をやめるよう指示されたにもかかわらず、暴れて逃げようとしたから、警察機関に捕らえられたんです。今のご自分の立場、分かってます?」
「仕事を奪われたら、明日から私はどうすりゃいんだい」
「だから、それを決めるために王宮で保護したんですよ。さあ、戻りましょう」
「少しぐらい、王宮内を見て回ったっていいじゃないか。けちくさいねえ。こんな機会、滅多にないんだからさ」
「だめですよ、逃げられたら困ります」
「逃げやしないよ、ずーっとあんなせまっ苦しい部屋でじーっとしてられるかってんだ」
「だめですってば」
「麗しいレディ、おばあ様もこう言っていることだし、彼女のことは、このフェリクスに任せてもらえないかな? 私が王宮内を案内するよ」
フェリシアは老女を連れて行こうとする女性兵士を優しく制した。
「フェ、フェリクス様がそう言うなら……仕方ないですね」
女性兵士はあっさり発言を変えた。
「ありがとう。必ずおばあ様を部屋に送り届けるよ」
「フェリクス様、握手して下さる?」
「よろこんで。勝手な頼みですまない」
「いいんです、フェリクス様」
女性兵士がスキップしながら去って行くと、老女がフェリシアに言った。
「あんた、女が女にあんなことやっててむなしくならないかい」
「これが私の仕事ですから……さあ、行きましょうか、マダム」
老女の手を取るフェリシア。老女はよっこいしょ、と立ち上がった。もちろん、老女は怪我なんてしていないのである。
――フェリシアは老女をエスコートしながら王宮内を回った。
「ありがとうよ、親切なお嬢さん。お礼に、あんたの将来の相手を占ってあげよう」
そう言って、老女は懐から水晶玉を取り出した。
「なんだい、あのはしばみ色の目をした坊主のことでも考えていたのかい? また会ったね、青い目のお嬢さん」
老女はフェリシアに抱きとめられながら、しわに埋もれた細い目をばちっとウインクした。
その言葉にフェリシアは驚いた。
「私のことを覚えているんですね。それに、あのときも男装していたのに、私が女だと分かるんですか」
「あんたはどう見たって女じゃないか。女にしか見えんよ」
「え」
フェリシアは慌てた。女にしか見えない? そんな馬鹿な……自分で言うのもなんだけど、そんな馬鹿な。男装は完璧なはずなのに。
老女はにやりとした。
「私には何もかもお見通しなんだよ、占いだって、当たっていただろう?」
「貴方は未来を見る魔法が使えるんですか? 失礼ながら、貴方から魔力は感じ取れませんが」
「お嬢ちゃん、世の中に存在する不思議な力は魔力による魔法だけじゃないのさ。覚えときな」
「は、はい」
ついに「お嬢ちゃん」になってしまった。私はもう21歳なのに。
というか、このおばあさん、本当に怪我しているのだろうか。すごく元気なんだけど。
フェリシアが訝しんだとき、
「ああ、こんなところにいた。おばあちゃん、勝手に王宮内を歩き回ってはダメですよ。貴方は今保護されているんですからね……って、きゃああああ、フェ、フェリクス様!?」
女性兵士が小走りにこちらに駆け寄って来た。
老女を支えるフェリシアを見た途端、飛び上がって喜び、顔を赤らめる。フェリクス・ブライトナーのファンのようだ。
王宮に勤めているのにフェリシアが女性だと知らないのか、それとも知っててファンなのか、定かではない。
「ふん、何が保護だ。か弱い年寄りを、部屋に見張り付きで閉じ込めておって」
フェリシアを前に舞い上がっていた女性兵士は、老女の言葉にはっと我に返った。
「し、仕方ないんですよ、おばあちゃん。貴方は営業許可なしに国の敷地で占い業をやっていて、営業をやめるよう指示されたにもかかわらず、暴れて逃げようとしたから、警察機関に捕らえられたんです。今のご自分の立場、分かってます?」
「仕事を奪われたら、明日から私はどうすりゃいんだい」
「だから、それを決めるために王宮で保護したんですよ。さあ、戻りましょう」
「少しぐらい、王宮内を見て回ったっていいじゃないか。けちくさいねえ。こんな機会、滅多にないんだからさ」
「だめですよ、逃げられたら困ります」
「逃げやしないよ、ずーっとあんなせまっ苦しい部屋でじーっとしてられるかってんだ」
「だめですってば」
「麗しいレディ、おばあ様もこう言っていることだし、彼女のことは、このフェリクスに任せてもらえないかな? 私が王宮内を案内するよ」
フェリシアは老女を連れて行こうとする女性兵士を優しく制した。
「フェ、フェリクス様がそう言うなら……仕方ないですね」
女性兵士はあっさり発言を変えた。
「ありがとう。必ずおばあ様を部屋に送り届けるよ」
「フェリクス様、握手して下さる?」
「よろこんで。勝手な頼みですまない」
「いいんです、フェリクス様」
女性兵士がスキップしながら去って行くと、老女がフェリシアに言った。
「あんた、女が女にあんなことやっててむなしくならないかい」
「これが私の仕事ですから……さあ、行きましょうか、マダム」
老女の手を取るフェリシア。老女はよっこいしょ、と立ち上がった。もちろん、老女は怪我なんてしていないのである。
――フェリシアは老女をエスコートしながら王宮内を回った。
「ありがとうよ、親切なお嬢さん。お礼に、あんたの将来の相手を占ってあげよう」
そう言って、老女は懐から水晶玉を取り出した。
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