(完結)怪異な生首は人間を道連れに成仏したいけれど上手くいかない

土砂降りと生首

　俺は生首。その名の通り、頭だけの存在だ。普通の人間だったら生きているわけがない。
　そんなわけで、俺は幽霊とか、怪異って存在なわけだ。
　成仏できずに、あの世へ行けずに、この世をさ迷っている、怪異。

　俺だってそろそろ成仏してもいいかな、と思っていなくもないんだ。けど一人でお行儀よく、誰にも知られず成仏っていうのもしゃくなんだよな。
　怪異っていうのは恐ろしくて、危険な存在じゃないといけない気がする。
　そんな気がする。
　だから誰かを道連れに、俺は成仏するんだ。


　ザアアアアアアアア。

「きゃー、突然降ってきた」

「濡れちゃうよ」

「早く家に帰ろう」

　ふふふ。
　突然の大雨に慌てふためく人間ども。
　生首の俺に驚いて、水たまりで滑って転んでお陀仏するがいい。

「すごい雨だ」

「前が見えない、雨宿りできる場所を探さないと」

「うわー、やばいよ、この雨……うわっ、なんか踏んだ」

　なんかじゃない、生首だ。俺だよ俺。いてっ。いてて、踏むなって、下見ろよ、生首がいるだろ、驚けよ。驚いて転べよ、ぎゃあああああ、ブーツに踏まれた！
　だめだ、みんな早く土砂降りから逃れたくて必死すぎて俺なんか見ちゃいない。
　踏まれまくりだ。

　とりあえず、車道に避難……

　車「ブロロロロロ……」

　ぐしゃ。


　終。