ツンな猫君の恋愛事情

結城れい

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14 電話

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 お風呂上りにリビングでのんびりとくつろいでいたところで、迅のスマホが鳴った。ANIMALの着信音だ。どうせ朋也からだろ、と画面を確認しながら電話に出ようとした迅は、文字通りその場で飛び上がる。

――樹からだ

 焦って辺りを見渡した迅は、姿勢を正して座り直す。もちろん1人暮らしの迅の部屋には誰もいない。気を引き締め、暴れ狂う心臓を何とか抑えながら迅は通話ボタンを押した。

『――あ、もしもし。迅くん、今大丈夫ー?』

 大丈夫だ、と答えようと口を開いたが、そこから声は出なかった。

『あれ? 聞こえてる?』

 のんびりとした樹の声が耳から入り、脳に直接届く。迅は一度深呼吸をした後、耳からスマホを少し離しながらもう一度口を開いた。

『――ああ』
『あ、良かった! 今日はびっくりしたね!』
『ああ』
『明日、良かったら一緒にお昼食べない?』

 樹からの嬉しい申し出に迅は嬉しくなりながらも、声が震えないように小さく返事をする。

『ああ』
『ふふっ、じゃあ、お弁当持って今日のベンチに集合ね』
『分かった』
『夜に電話ごめんね。メッセージでもいいかなって思ったんだけど、恋人と電話するの憧れてたんだー』
『いや、俺も――大丈夫だ』
『うん? じゃあ、明日ね。おやすみなさい』
『ああ』

 樹が通話を切った後も、迅はスマホを耳の辺りに持っていった姿勢のまましばらく固まっていた。いつもくつろいでいるリビングで通話をしたせいで、まるで樹がこの場所にいるような錯覚におちいる。いつか、本当に樹を部屋に呼ぶことがあるかもしれない。そう考えた迅は急いでパソコンを立ち上げて、インテリアを調べ始めた。『モテる大人のインテリア! これで恋人もあなたにメロメロに……!?』とまとめられているサイトがあったので、そこに掲載されていたものを次々とカートへ入れていった。


******


「え、荷物多くない? 何、その袋?」
「まあな」

 今日の授業は2限からだったため、迅はデパートに寄って買い物をした後、急いで大学へと向かった。時間ギリギリになってしまったが、満足いく買い物ができた。昼休憩が楽しみだ、と思いながら迅は朋也の隣へと腰を降ろす。

「朋也……昼は、い、樹と食べるから」
「ああ、はいはい。恋人君ね」
「そうだ。弁当もちゃんと買ってきた」
「え、その荷物ってもしかして弁当?」
「ああ。デパートで買ってきたんだ。彼が喜んでくれればいいんだが――」


 講義が終わった後、迅は足早に講義室を去った。昼休憩の時間は限られている。せめて樹よりも先にベンチへ座っていようと、迅は荷物を持ち小走りで向かう。
 混んできている中央ひろばを通り過ぎ、昨日進んだ小道を進む。たどり着いた先には、まだ樹の姿は見当たらない。迅は昨日座っていたベンチへと腰を降ろし、樹を待った。
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