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12 大学
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「やっと昼か! 購買行こうぜ」
「ああ」
2限目の講義が終わり、朋也の言葉に返事をしながら椅子から立とうとしたところで前に誰かがやってくる気配がした。迅はそちらに視線を向ける。
「迅くん! ねぇねぇ、聞いたんだけどぉ、朱里と別れたんだって? 最近でた新作のバックで欲しいのがあるのよ。買ってくれたら、麗華が付き合ってあげてもいいわよ」
露出度の高い服で、胸の谷間を強調させながら近づいてきたのは獅子獣人の女だった。一瞥した迅は顔ごと視線をそらしながら、そっけなく返す。
「――いや、恋人はいる」
「は? 誰よ?」
「……内緒だ」
迅からの返答に納得できずに眉をつり上げ言い募ってくる麗華に、迅は麗華のいる方とは逆側から席を立ち、急いで講義室から出た。
「いやー、怖いね。流石メスライオンだわ」
迅の後ろを歩いてついていきながら、朋也は肩をすくめた。そのまま後ろを振り返り、麗華が追って来ていないことを確認する。
「どうして彼女たちはいつも服が小さいんだ」
「…………そうだね」
首を傾げながら疑問を口にする迅に、朋也は適当に返事しながら購買へと向かった。
昼休憩ということもあり流石に購買は混んでいたが、2人は弁当を購入すると次の講義がある教室まで向かう。昼休憩後の3限目の講義が入っている場合は、その講義室で昼食を食べて予習をしているとあっという間に昼休憩は終わってしまう。
「次は『経営戦略論』だから、A棟の3階か」
「ああ」
食堂や購買、カフェテリアのある中央ひろばから、A棟のある方角へ向かおうとしていた迅は途中で足を止めた。視界の端にこの場にいるはずのない人が映ったからだ。
「――えっ」
「迅、どうした?」
隣を歩いていた朋也が話しかけてくるが、綺麗な二度見をした迅は返事を返さずにその人物を見つめた。
「え、何? 誰かいるの?」
迅の視線を先を確認した朋也は、目を見開いた。
「――え、あの子だよね。へぇー同じ大学だったんだ」
「……ああ、知らなかった」
「え、そうなの?」
友達と中央ひろばの端で話している樹がいる。話が終わったのか、友達と分かれて手を振りながら樹は中央ひろばの奥へと歩いていく。
迅は急いで追いかけた。朋也の慌てた声が後ろから聞こえたが、無視して走る。樹の歩くスピードは遅く、すぐに追いついたが、迅は話しかけることができずに、一定の距離を保ったまま後ろをついていった。
樹は食堂の横の細い道を抜けて、食堂の裏の方へ向かって歩いていく。こちら側へ行くのが初めての迅は、辺りを見回しながらも樹を見失わないように注意しながらついていった。
「ああ」
2限目の講義が終わり、朋也の言葉に返事をしながら椅子から立とうとしたところで前に誰かがやってくる気配がした。迅はそちらに視線を向ける。
「迅くん! ねぇねぇ、聞いたんだけどぉ、朱里と別れたんだって? 最近でた新作のバックで欲しいのがあるのよ。買ってくれたら、麗華が付き合ってあげてもいいわよ」
露出度の高い服で、胸の谷間を強調させながら近づいてきたのは獅子獣人の女だった。一瞥した迅は顔ごと視線をそらしながら、そっけなく返す。
「――いや、恋人はいる」
「は? 誰よ?」
「……内緒だ」
迅からの返答に納得できずに眉をつり上げ言い募ってくる麗華に、迅は麗華のいる方とは逆側から席を立ち、急いで講義室から出た。
「いやー、怖いね。流石メスライオンだわ」
迅の後ろを歩いてついていきながら、朋也は肩をすくめた。そのまま後ろを振り返り、麗華が追って来ていないことを確認する。
「どうして彼女たちはいつも服が小さいんだ」
「…………そうだね」
首を傾げながら疑問を口にする迅に、朋也は適当に返事しながら購買へと向かった。
昼休憩ということもあり流石に購買は混んでいたが、2人は弁当を購入すると次の講義がある教室まで向かう。昼休憩後の3限目の講義が入っている場合は、その講義室で昼食を食べて予習をしているとあっという間に昼休憩は終わってしまう。
「次は『経営戦略論』だから、A棟の3階か」
「ああ」
食堂や購買、カフェテリアのある中央ひろばから、A棟のある方角へ向かおうとしていた迅は途中で足を止めた。視界の端にこの場にいるはずのない人が映ったからだ。
「――えっ」
「迅、どうした?」
隣を歩いていた朋也が話しかけてくるが、綺麗な二度見をした迅は返事を返さずにその人物を見つめた。
「え、何? 誰かいるの?」
迅の視線を先を確認した朋也は、目を見開いた。
「――え、あの子だよね。へぇー同じ大学だったんだ」
「……ああ、知らなかった」
「え、そうなの?」
友達と中央ひろばの端で話している樹がいる。話が終わったのか、友達と分かれて手を振りながら樹は中央ひろばの奥へと歩いていく。
迅は急いで追いかけた。朋也の慌てた声が後ろから聞こえたが、無視して走る。樹の歩くスピードは遅く、すぐに追いついたが、迅は話しかけることができずに、一定の距離を保ったまま後ろをついていった。
樹は食堂の横の細い道を抜けて、食堂の裏の方へ向かって歩いていく。こちら側へ行くのが初めての迅は、辺りを見回しながらも樹を見失わないように注意しながらついていった。
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