ツンな猫君の恋愛事情

結城れい

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09 質問

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「そういえば、僕、迅さんのこと全然知らないなって思ったんですけど、色々聞いても大丈夫ですか?」

 樹は迅と付き合っているが、迅のことはほとんど知らない。知っていることは名前くらいだ。迅が樹の問いに頷いたので、樹は笑顔で返す。

「じゃあ、お互いにひとつずつ質問してきませんか?」
「――俺もか」
「え、嫌ですか?」
「あ、いや――じゃない」
「ふふっ、じゃあ僕からしますね」

 忙しなく動く迅の耳を見ながら、樹は最初の質問を始めた。

「うーんと、じゃあ、迅さんの種族は何ですか?」
雲豹うんぴょうだ」
「うんぴょー?」

 初めて聞く種族に、樹は目をまたたかせた。

「ああ、ねこ……いや、ひょうみたいな種族だ」
「豹さんですか。なるほど」

 迅の背後で左右に揺れている太く長い尻尾には、斑点はんてん模様はないが、似たような黒いリング状のしま模様がついているし、耳の先は丸みを帯びている。
 樹は、迅の耳と尻尾を確認しながら、うんうんと頷いた。

「い……お前の種族は?」
「僕は、ウォンバットです!」
「うぉん……?」
「見た目じゃあんまり分かんないかもしれないです。ちっちゃな尻尾は服に隠れているし、耳もちっちゃいんです。ほら」

 樹は黒髪をかき分け、隠れかけている小さな両耳をピコピコと動かして見せた。

「かわ――」「お待たせしました」

 迅が何かを言いかけた時、丁度店員がピザとパスタを持って来たため、樹は迅の言葉を聞き取ることはできなかった。

「わあ、おいしそう!」
「――そうだな」

 樹は早速マルゲリータを1ピース手に取り、口へと運ぶ。

「ん! おいしい!」

 やはりトマトとモッツァレラチーズとバジルの相性は抜群で、耳の部分もフワフワもちもちでとても美味しい。空腹だった樹は1ピースをぺろりと食べてしまった。きのこクリームパスタにも手を伸ばし、一緒に持ってきてもらった取り皿に取り分けていく。迅の分も取り分けて皿を差し出した樹は、早速フォークにたっぷりのパスタを巻きつけて口へと運ぶ。濃厚なクリームパスタに、旨味がギュッとつまったきのこがとても合う。樹は口いっぱいに美味しいパスタを入れて、味わった。

「――その、パスタが好きなのか?」
「むぐっ」

 迅が話しかけてきたため、樹は慌ててパスタを飲み込んだ後に「はい!」と返事を返した。

「でも、やっぱりあの『sakaba』のナポリタンが1番おいしいと思います」
「――そ、そうか」

 店員に聞かれてしまわないように、樹は迅に顔を近づけて、声を落としながらそうささやいた。
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