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08 イタリアン
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「――とっても良かったですね」
「ああ」
映画はとても満足するものだった。子ネズミのチュー助が初めてのおつかいに行くが、途中で買い物メモをなくしてしまったため、買うものが分からなくなってしまったり、道に迷ったりしながらも、無事に買い物を済ませて家まで帰るというストーリーであったが、樹は最後の帰宅シーンで、目頭が熱くなってしまった。
最初は迅が隣に座っていたため緊張していたが、映画が始まってすぐに夢中になってしまい、途中からは集中して見ることができた。
「飯行くぞ」
「はい」
ポップコーンは2人で分け合って食べたが、もうお昼時ということもあり、お腹が空いている。
映画館を出て、大通りを進む迅の後を早足で追いかけていると、突然迅が立ち止まったため、急に止まることができずに、樹は迅の背中にぶつかってしまった。
「――わっ、すみません。どうしたんですか?」
「…………」
返事を返さずに固まってしまっている迅を不思議に思った樹は、迅の隣に立ち、迅の目線の先を追った。
『急に申し訳ありません、本日はお休みします』
おしゃれなイタリアンらしきお店の扉には、手書きでそう書かれた紙が貼られていた。どうやら迅はこのお店でお昼を食べようとしていたようだが、残念ながら臨時休業のようだ。
「ここのお店、今日はお休みみたいですね。残念ですが、別のお店に行きましょうか」
「……」
樹は迅に提案してみるが、なぜか迅は固まったままだ。そんなにこのお店が良かったのだろうかと疑問に思い、戸惑いながらも、樹はバックからスマホを取り出した。
もしかしたら迅はイタリアンが好きで、その口になっていたかもしれないので、近くのイタリアンのお店を調べてみる。今回行こうとしていたお店は、飲食サイトの検索でも一番トップに出てきた。どうやら値段はそれなりだが、とても美味しくて有名な店だったようだ。樹はスマホをスクロールしていき、上から順番に見て行った。
「うーん。こことかどうですか? この近くにあるイタリアンらしいんですけど……」
「……ああ」
調べたお店の画面を見せながら迅へと提案すると、迅が頷いたため、今度は樹を先頭に道を進んでいく。マップで確認しながらゆっくりと道を進んでいくと、ようやくその店へとたどり着いた。
「あ、ここです!」
赤い外観のこぢんまりとしたお店だ。外には黒板タイプのA型看板が設置されており、メインメニューであるピザの絵がチョークで描かれている。
店内に入ると、2人席に案内されたため、樹は腰を降ろした。後ろからついてきていた迅も、向かい側へと座る。
「ここのお店、ピザを押しているみたいですねー」
「……調べてもらって悪かったな」
「え、全然いいですよ。行く予定だったお店、お休みで残念でしたねー。よく行くお気に入りの所だったんですか?」
「――いや、あ、違う。そうだ」
「ん? あっちはまた今度行きましょう」
「ああ、そうだな」
お腹が空いていた樹が早速メニューを広げると、そこには美味しそうなピザの写真がたくさん載っていた。次のページには、美味しそうなパスタの写真がたくさん載っている。どちらも食べたくなってしまった樹は、迅へと目線を向けた。向かい側で真剣にメニューを見ている迅へ話しかける。
「迅さんは、料理を分けっこできる人ですか?」
「――あ、ああ」
「じゃあ、ピザとパスタ両方頼んで分けっこしませんか? どっちも美味しそうに見えちゃって――」
「ああ、大丈夫だ」
暫くメニューとにらめっこした樹は、迅と話し合い、写真の横に大きくおすすめと書かれていたマルゲリータときのこクリームパスタを注文した。
「ああ」
映画はとても満足するものだった。子ネズミのチュー助が初めてのおつかいに行くが、途中で買い物メモをなくしてしまったため、買うものが分からなくなってしまったり、道に迷ったりしながらも、無事に買い物を済ませて家まで帰るというストーリーであったが、樹は最後の帰宅シーンで、目頭が熱くなってしまった。
最初は迅が隣に座っていたため緊張していたが、映画が始まってすぐに夢中になってしまい、途中からは集中して見ることができた。
「飯行くぞ」
「はい」
ポップコーンは2人で分け合って食べたが、もうお昼時ということもあり、お腹が空いている。
映画館を出て、大通りを進む迅の後を早足で追いかけていると、突然迅が立ち止まったため、急に止まることができずに、樹は迅の背中にぶつかってしまった。
「――わっ、すみません。どうしたんですか?」
「…………」
返事を返さずに固まってしまっている迅を不思議に思った樹は、迅の隣に立ち、迅の目線の先を追った。
『急に申し訳ありません、本日はお休みします』
おしゃれなイタリアンらしきお店の扉には、手書きでそう書かれた紙が貼られていた。どうやら迅はこのお店でお昼を食べようとしていたようだが、残念ながら臨時休業のようだ。
「ここのお店、今日はお休みみたいですね。残念ですが、別のお店に行きましょうか」
「……」
樹は迅に提案してみるが、なぜか迅は固まったままだ。そんなにこのお店が良かったのだろうかと疑問に思い、戸惑いながらも、樹はバックからスマホを取り出した。
もしかしたら迅はイタリアンが好きで、その口になっていたかもしれないので、近くのイタリアンのお店を調べてみる。今回行こうとしていたお店は、飲食サイトの検索でも一番トップに出てきた。どうやら値段はそれなりだが、とても美味しくて有名な店だったようだ。樹はスマホをスクロールしていき、上から順番に見て行った。
「うーん。こことかどうですか? この近くにあるイタリアンらしいんですけど……」
「……ああ」
調べたお店の画面を見せながら迅へと提案すると、迅が頷いたため、今度は樹を先頭に道を進んでいく。マップで確認しながらゆっくりと道を進んでいくと、ようやくその店へとたどり着いた。
「あ、ここです!」
赤い外観のこぢんまりとしたお店だ。外には黒板タイプのA型看板が設置されており、メインメニューであるピザの絵がチョークで描かれている。
店内に入ると、2人席に案内されたため、樹は腰を降ろした。後ろからついてきていた迅も、向かい側へと座る。
「ここのお店、ピザを押しているみたいですねー」
「……調べてもらって悪かったな」
「え、全然いいですよ。行く予定だったお店、お休みで残念でしたねー。よく行くお気に入りの所だったんですか?」
「――いや、あ、違う。そうだ」
「ん? あっちはまた今度行きましょう」
「ああ、そうだな」
お腹が空いていた樹が早速メニューを広げると、そこには美味しそうなピザの写真がたくさん載っていた。次のページには、美味しそうなパスタの写真がたくさん載っている。どちらも食べたくなってしまった樹は、迅へと目線を向けた。向かい側で真剣にメニューを見ている迅へ話しかける。
「迅さんは、料理を分けっこできる人ですか?」
「――あ、ああ」
「じゃあ、ピザとパスタ両方頼んで分けっこしませんか? どっちも美味しそうに見えちゃって――」
「ああ、大丈夫だ」
暫くメニューとにらめっこした樹は、迅と話し合い、写真の横に大きくおすすめと書かれていたマルゲリータときのこクリームパスタを注文した。
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