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07 映画デート
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デート当日。
樹は、待ち合わせ時間の10分ほど前に猫山駅へと到着した。スマホで時間を確認し、安心しながら改札を出たところで、樹は足を止める。
――改札近くの柱の前に、すでに迅がいる
1度こちらを向いた迅と目が合った気がしたが、樹には気がつかなかったようで、迅は手元のスマホへと目線を落としてしまう。
樹は驚きながらも、バックの紐を片手で掴みながら慌てて迅の元へと駆け寄った。
「おはようございます! すみません、お待たせしました」
「――いや、俺も今着いた。行こう」
樹をジッと見つめた後、迅はスマホをポケットにしまい歩き出したので、樹も後ろをついていく。
「今日はどこに行くんですか?」
「――映画を見よう」
「映画ですか! いいですね」
猫山駅から徒歩10分ほどの距離に、大きめの映画館がある。歩いている方角からして、その映画館へと向かっているのだろう。定番の映画デートにワクワクしながら、樹は迅の後ろをついていく。迅は歩くのが早いようで、樹は置いていかれないようにいつもより足を早く動かした。
「……何か見たいものはあるか?」
「――え、えっと」
見たい映画があるが、デートで見るものかと言われると違う気がする。樹は少しの間悩んでいたが、正直に言ってみることにした。
「……あの、ネズミの出てくる映画があるんですけど……それが気になってて」
「――『ネズミ君の大冒険』か?」
「は、はい! それです! どうですか?」
「ああ、俺も見たいと思ってた。次が10時半からの上映だからそれを見よう」
「はい!」
ネズミ君の大冒険。その映画は、子ネズミのチュー助が初めてのおつかいに向かうという内容のアニメ映画で、予告をネットで見た時から見に行こうと決めていた。ネズミ君シリーズは何作か上映されており、前作の『ネズミ君の秘密基地』からはまった樹は、過去の分も配信サイトで全て見ている。映画デートの場合は恋愛ものなんかを見たほうがいいのかもしれないが、今上映されているもので樹が知っているものはこれしかなかった。
迅からも『見たいと思っていた』と言ってもらえたが、きっと社交辞令だろう。迅のような人が進んで見る映画とは思えない。ただ、迅はなぜか『ネズミ君は大冒険』の上映時間を知っていた。スマホで確認するそぶりもなく、普通に時間を言って見せたのだ。もしかしたら、迅はとても頭の良い人なのかもしれない。少し見ただけで、全てを記憶できる種族がいると噂に聞いたことがある。もしかしたら迅もその種族で、今日映画に行こうと思いネットで調べた際に、全ての上映時間を覚えてしまっているのだろうか――
そう思考を着地させた樹はウンウンと頷きながら、前をいく迅を尊敬のまなざしで見つめた。
映画館に到着すると、迅は素早くパネルで席を取り、支払いまで済ませる。
「あ、僕の分を払います」
樹は慌ててカバンから財布を取り出したが、「いや、大丈夫だ」と返されてしまった。それならドリンクを、と思い館内にある売店へ目線を移すと、それに気がついた迅が先に売店のカウンターへ向かってしまったので、樹は慌てて後を追う。
「何を飲む?」
「あ、ここは僕が――」
「大丈夫だ。何がいい?」
「えっと、お、オレンジジュースを」
ドリンクを待つ間、美味しそうなポップコーンのポスターが貼ってあったのでそれを見ていると、なんと迅はポップコーンまで頼み、樹へと渡してきた。
「え、あ、ありがとうございます」
樹の片手にはオレンジジュース、もう片方の手にはポップコーンが収まり、財布を開くことができなかった。樹はただ財布をもったまま、迅の周りをうろちょろしただけだ。
「もう入れるから、いこう」
「は、はい」
樹は、待ち合わせ時間の10分ほど前に猫山駅へと到着した。スマホで時間を確認し、安心しながら改札を出たところで、樹は足を止める。
――改札近くの柱の前に、すでに迅がいる
1度こちらを向いた迅と目が合った気がしたが、樹には気がつかなかったようで、迅は手元のスマホへと目線を落としてしまう。
樹は驚きながらも、バックの紐を片手で掴みながら慌てて迅の元へと駆け寄った。
「おはようございます! すみません、お待たせしました」
「――いや、俺も今着いた。行こう」
樹をジッと見つめた後、迅はスマホをポケットにしまい歩き出したので、樹も後ろをついていく。
「今日はどこに行くんですか?」
「――映画を見よう」
「映画ですか! いいですね」
猫山駅から徒歩10分ほどの距離に、大きめの映画館がある。歩いている方角からして、その映画館へと向かっているのだろう。定番の映画デートにワクワクしながら、樹は迅の後ろをついていく。迅は歩くのが早いようで、樹は置いていかれないようにいつもより足を早く動かした。
「……何か見たいものはあるか?」
「――え、えっと」
見たい映画があるが、デートで見るものかと言われると違う気がする。樹は少しの間悩んでいたが、正直に言ってみることにした。
「……あの、ネズミの出てくる映画があるんですけど……それが気になってて」
「――『ネズミ君の大冒険』か?」
「は、はい! それです! どうですか?」
「ああ、俺も見たいと思ってた。次が10時半からの上映だからそれを見よう」
「はい!」
ネズミ君の大冒険。その映画は、子ネズミのチュー助が初めてのおつかいに向かうという内容のアニメ映画で、予告をネットで見た時から見に行こうと決めていた。ネズミ君シリーズは何作か上映されており、前作の『ネズミ君の秘密基地』からはまった樹は、過去の分も配信サイトで全て見ている。映画デートの場合は恋愛ものなんかを見たほうがいいのかもしれないが、今上映されているもので樹が知っているものはこれしかなかった。
迅からも『見たいと思っていた』と言ってもらえたが、きっと社交辞令だろう。迅のような人が進んで見る映画とは思えない。ただ、迅はなぜか『ネズミ君は大冒険』の上映時間を知っていた。スマホで確認するそぶりもなく、普通に時間を言って見せたのだ。もしかしたら、迅はとても頭の良い人なのかもしれない。少し見ただけで、全てを記憶できる種族がいると噂に聞いたことがある。もしかしたら迅もその種族で、今日映画に行こうと思いネットで調べた際に、全ての上映時間を覚えてしまっているのだろうか――
そう思考を着地させた樹はウンウンと頷きながら、前をいく迅を尊敬のまなざしで見つめた。
映画館に到着すると、迅は素早くパネルで席を取り、支払いまで済ませる。
「あ、僕の分を払います」
樹は慌ててカバンから財布を取り出したが、「いや、大丈夫だ」と返されてしまった。それならドリンクを、と思い館内にある売店へ目線を移すと、それに気がついた迅が先に売店のカウンターへ向かってしまったので、樹は慌てて後を追う。
「何を飲む?」
「あ、ここは僕が――」
「大丈夫だ。何がいい?」
「えっと、お、オレンジジュースを」
ドリンクを待つ間、美味しそうなポップコーンのポスターが貼ってあったのでそれを見ていると、なんと迅はポップコーンまで頼み、樹へと渡してきた。
「え、あ、ありがとうございます」
樹の片手にはオレンジジュース、もう片方の手にはポップコーンが収まり、財布を開くことができなかった。樹はただ財布をもったまま、迅の周りをうろちょろしただけだ。
「もう入れるから、いこう」
「は、はい」
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