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21 噛み跡
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心地よい疲労感を感じながら、香月は目を覚ました。
寝る前のことを思い出し、喜びが全身を駆け巡る。待ち望んだ発情期が来て、とうとう彼の番になれたのだ。
発情期の最中のことは、あまり覚えていなかった。ただ何かを必死で集めて、安心する場所を作り上げていたことは記憶にある。その場所にいたら、彼が迎えに来てくれた。そして、性行為をしながら、項を噛んでもらったのだ。
片手をそっと首の後ろに持っていくと、ガーゼのようなものが貼ってあるのが分かる。噛まれた場所を見たかったので、洗面所に行こうと香月がベッドを降りた瞬間――
「――ぅあ」
香月はその場にドタッと崩れ落ちた。腰から先にまったく力が入らなかったのだ。それに、声がかすれて全然でない。
「香月!」
驚愕して固まっている香月のもとに、慌ててドアを開けた彼が駆け寄ってきた。
「大丈夫?」
「……だいじょうぶ」
「声がかすれてる。あんまり話さないほうがいいかも。ごめんね、昨日は無理をさせたね。もうしばらく寝ておきなさい」
「……でも、うなじをみたくて」
「項?」
「うん。かんでもらったところ……」
彼は「うーん」と少し考えた後、香月をシーツごと抱き上げた。急に持ち上げられた香月は驚き、慌てて彼の首に手を回す。
「洗面所の鏡のところに連れて行ってあげる」
そう言うと彼は香月を抱いたまま、歩いて洗面所へ向かった。
「強く噛みすぎちゃって、まだ傷口が塞がってないから、少しだけね」
香月の背中を洗面所の鏡に向けた彼は、手鏡を渡してきた。渡された手鏡を、洗面所の鏡を通して項を見ることのできる角度に調整する。彼が香月の後ろ髪をよけて、貼ってあったガーゼをそっとはがした。
血のにじんだ項が露わになる。香月は鏡越しにそこをじっと見つめた。
しっかりと噛んでもらい、消えることはないと思えるほどの深い噛み跡が残っている。
香月はホッと一息ついた。噛み跡を確認したことで、昨日の出来事を改めて実感できたのだ。
「ありがとう」
しばらく眺めて満足した香月は、彼にお礼を言った。彼は「うん」と返し、慎重にガーゼを貼りなおしてくれる。
その後、彼は香月を抱き上げたままリビングまで歩いて行き、ソファに優しくおろすと近くにあったブランケットをシーツの上からかけてくれる。
「喉にいい、蜂蜜ドリンク作ってくるから、ちょっと待っててね」
キッチンへ向かっていく彼の後姿を見つめながら、香月は幸せに浸る。
――彼と番になれたなんて、夢みたいだ
寝る前のことを思い出し、喜びが全身を駆け巡る。待ち望んだ発情期が来て、とうとう彼の番になれたのだ。
発情期の最中のことは、あまり覚えていなかった。ただ何かを必死で集めて、安心する場所を作り上げていたことは記憶にある。その場所にいたら、彼が迎えに来てくれた。そして、性行為をしながら、項を噛んでもらったのだ。
片手をそっと首の後ろに持っていくと、ガーゼのようなものが貼ってあるのが分かる。噛まれた場所を見たかったので、洗面所に行こうと香月がベッドを降りた瞬間――
「――ぅあ」
香月はその場にドタッと崩れ落ちた。腰から先にまったく力が入らなかったのだ。それに、声がかすれて全然でない。
「香月!」
驚愕して固まっている香月のもとに、慌ててドアを開けた彼が駆け寄ってきた。
「大丈夫?」
「……だいじょうぶ」
「声がかすれてる。あんまり話さないほうがいいかも。ごめんね、昨日は無理をさせたね。もうしばらく寝ておきなさい」
「……でも、うなじをみたくて」
「項?」
「うん。かんでもらったところ……」
彼は「うーん」と少し考えた後、香月をシーツごと抱き上げた。急に持ち上げられた香月は驚き、慌てて彼の首に手を回す。
「洗面所の鏡のところに連れて行ってあげる」
そう言うと彼は香月を抱いたまま、歩いて洗面所へ向かった。
「強く噛みすぎちゃって、まだ傷口が塞がってないから、少しだけね」
香月の背中を洗面所の鏡に向けた彼は、手鏡を渡してきた。渡された手鏡を、洗面所の鏡を通して項を見ることのできる角度に調整する。彼が香月の後ろ髪をよけて、貼ってあったガーゼをそっとはがした。
血のにじんだ項が露わになる。香月は鏡越しにそこをじっと見つめた。
しっかりと噛んでもらい、消えることはないと思えるほどの深い噛み跡が残っている。
香月はホッと一息ついた。噛み跡を確認したことで、昨日の出来事を改めて実感できたのだ。
「ありがとう」
しばらく眺めて満足した香月は、彼にお礼を言った。彼は「うん」と返し、慎重にガーゼを貼りなおしてくれる。
その後、彼は香月を抱き上げたままリビングまで歩いて行き、ソファに優しくおろすと近くにあったブランケットをシーツの上からかけてくれる。
「喉にいい、蜂蜜ドリンク作ってくるから、ちょっと待っててね」
キッチンへ向かっていく彼の後姿を見つめながら、香月は幸せに浸る。
――彼と番になれたなんて、夢みたいだ
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