【完結】あなたともう一度会えるまで

結城れい

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18 幸せな空間

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 その日は突然来た。

 彼が急遽、出張に行かなくてはいけなくなったのだ。それも、2泊3日。2人が再会してからこれほどの期間離れることは初めてだったので、香月を心配しながらも彼は仕方なく旅立っていった。
 香月は「大丈夫だよ」と言いながら、そこまで彼に思われていることに気恥ずかしくなった。

 1日目は特に問題なく過ぎた。いつものように、勉強をして家事をした後、夜には彼と通話で少し話してそのまま眠りについたのだ。1人で眠るベッドはいつもより広く感じて、寂しかった。
 2日目は、朝から少し熱っぽかった。少し体温が高いような気がしたが、吐き気がしたりだるい感じもなかったため、香月はいつもと同じように過ごす。少しだけ、部屋に残る彼の匂いが気になった。夜には、1日目と同じように彼と通話をする。「明日の夕方ごろに帰るよ」と言われて少しホッとしながら、1人で寂しくベッドで寝たはずだった――



 香月は熱さと不快感に目を覚ました。

「うっ……なに……」

 カーテンの外はまだ暗く、朝になっていないことがわかる。熱さにフラフラになりながら、体を起こした香月は驚愕した。お尻の辺りが濡れていることに気づいたからだ。

「え……なんで」

 夜の仕事の際に、「オメガは性的刺激を与えれば後ろが濡れるため、準備が楽だ」とよく言われていた。今は特に何かした訳でもないのに濡れている。混乱しながらも、着替えなければと思った香月はベッドから立ち上がった。
 脱衣所に向かおうとして寝室を出た香月は、何かに導かれるように脱衣所とは反対の方へ進む。
 熱さに侵された頭ではうまく考えることもできずに、そのまま歩いていった。たどり着いた先の部屋に入り、更に奥へと進んでいく。その先にあった扉を開くと求めていたものがあった。

「……いい匂い」

 彼の服を手に取れるだけ取って、寝室へと戻る。何度か繰り返し、ベッドの上に服がたくさん集まった。違う匂いのするものをその中に入れたくなかった香月は、その場で体をまとっている服すべてを脱ぎ捨てて、服の山へ潜り込んでいった。
 大好きな彼の匂いに包まれる。
 なんて幸せな空間なんだろう。ずっとここにいたい。
 前後左右すべての方向から大好きな匂いに包まれて、香月はそのまま眠りについた。


 しばらくそのまま眠っていたが、体がうずいて香月はまた目を覚ました。

「……んんっ、はぁ」

 我慢できなくなり、腰を揺らす。素肌に彼の服が擦れて、香月はすぐに吐精した。
 一度出したことで少し冷静になった脳が、異変を訴えてくる。体がおかしい。じっくり考える間もなく、体がまたうずいてきてどうしようもなくなる。
 今まで自慰をしたことがなかった香月は、どうしていいか分からず、うずいているお尻に指を入れる。濡れそぼったそこは入ってきた指を締め付け、その刺激でまた吐精した。

 2回出しても全然納まらなく、ペニスはまたゆるく立ち上がる。

「ううっ……僕の体、変」

 初めてのことに香月は混乱した。どうにかして体を鎮めたいが、鎮め方が分からない。制御できない体に、涙があふれそうだった。

「どうしよう……」

 混乱していた香月の頭に彼が思い浮かぶ。「何かあったらすぐに連絡して」と言ってくれた言葉を思い出し、連絡しようと服の山から起き上がる。
 そこで大変なことに気づいた。香月は服を着ておらず、ベッドには彼の服がこれでもかと集められているのだ。こんな場所に彼が来てしまったら、変な奴だと思われてしまう。焦った香月は彼の服を数着掴み、脱衣所まで持っていこうとした。洗濯して元の場所に戻しておこうと思ったのだ。
 服を掴み上げた瞬間、服に残っている彼の匂いを強く感じる。たまらずに、そのまま持っていた服に顔をうずめる。そのまま深く息を吸うと鼻の奥まで匂いが届き、まるで血液のように匂いが体中を巡っていくようだ。

 こんな大切な物を洗濯なんてできない。隠さないと。
 隠す場所を探して寝室内をウロウロと歩き回り、ちょうどいいところを発見した。一生懸命大切な物をそこに運ぶ。すべてを運び込み満足した香月は、自分もその場所に入りこんで扉を閉めた。
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