【完結】あなたともう一度会えるまで

結城れい

文字の大きさ
上 下
15 / 22

15 病院と薬

しおりを挟む
 青木の運転する車に乗って、香月たちは病院までやってきた。
 連れてきてもらった病院は想像していたよりもとても小さく、一軒家のようだった。
 香月たちが到着したことに気づいたのか、中から白衣を着た優しそうな年配の男性が出てきた。

阿部あべ先生。こちらがお話していた香月です」
「初めまして。香月です。よろしくお願いします」
「はい、こんにちは。中へどうぞ」

 挨拶をした後、診察室に案内される。
 外観だけでなく内側も病院という感じはなく、普通の部屋に机とベットが置かれているような診察室だったため、あまり緊張することもなく2人で先生の向かい側の椅子に座った。
 そのまま、香月は先生から口を開けられたり、手首を触られたりと診察をされた。その後、注射で血を抜かれたり尿を取ったりと詳しい検査まで行った。最後に身長や体重まで測って、ようやく終わったが、終わるころには香月はヘトヘトになっていた。

「うーん。体重も軽すぎるし、軽い栄養失調だね。貧血とかもあったんじゃないかな?」
「……貧血ですか?分からないです……」
「そうかそうか。これからはご飯を1日3食しっかり食べるようにね」
「はい」

 もしかしたら、これまで疲労でフラフラしていると思っていたのは、実は貧血だったのかもしれないと思ったが、睡眠不足など他にもいくつかの要因が思い当たり、実際はどれが原因だったのか分からなかった。

「昨日もらった香月君が使用していたという薬だけど、かなり粗悪なものだね。ずっと飲んでいたんだよね?」

 そう言って先生が見せてきたのは、父親から貰っていた発情期を抑える薬だった。
 自分が毎日飲んでいた薬がなぜ先生のもとにあるのか香月は不思議に思ったが、隣で一緒に話を聞いている彼は特に驚いた様子もなかったので、きっと彼が調べてくれるように頼んでくれたんだろうと納得した。

「はい。15歳の時からです」
「……発情期は今まできたことはないのかな?」
「1回もありません」
「うーん。そうか……」

 香月が質問に答えた後、先生は険しい表情になった。

「香月君の体内にあるオメガホルモンのバランスが、薬で無理やり抑えられていたから、おかしくなってしまっているんだよ。薬を止めたら、自然に発情期が来てくれればいいんだけど……」
「発情期ですか?」
「うん。発情期は悪いことじゃないからね。アルファの彼もいるから大丈夫だと思うけど……とりあえず、香月君はこの薬は今後絶対に飲まないこと、何か体に異変があったら、すぐに彼か、言いにくかったら私でもいいから相談すること。分かったかな」
「はい。分かりました」

 毎日飲んでいた薬がそんなに悪いものだったと知って、香月は辛くなった。あの父親が良い薬を渡してくれるはずがなかったのだ。
 入院する必要はないけど、しっかりご飯を食べて睡眠をとるように、と先生に言われ2人は病院を後にした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

花いちもんめ

月夜野レオン
BL
樹は小さい頃から涼が好きだった。でも涼は、花いちもんめでは真っ先に指名される人気者で、自分は最後まで指名されない不人気者。 ある事件から対人恐怖症になってしまい、遠くから涼をそっと見つめるだけの日々。 大学生になりバイトを始めたカフェで夏樹はアルファの男にしつこく付きまとわれる。 涼がアメリカに婚約者と渡ると聞き、絶望しているところに男が大学にまで押しかけてくる。 「孕めないオメガでいいですか?」に続く、オメガバース第二弾です。

僕はあなたに捨てられる日が来ることを知っていながらそれでもあなたに恋してた

いちみやりょう
BL
▲ オメガバース の設定をお借りしている & おそらく勝手に付け足したかもしれない設定もあるかも 設定書くの難しすぎたのでオメガバース知ってる方は1話目は流し読み推奨です▲ 捨てられたΩの末路は悲惨だ。 Ωはαに捨てられないように必死に生きなきゃいけない。 僕が結婚する相手には好きな人がいる。僕のことが気に食わない彼を、それでも僕は愛してる。 いつか捨てられるその日が来るまでは、そばに居てもいいですか。

当たり前の幸せ

ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。 初投稿なので色々矛盾などご容赦を。 ゆっくり更新します。 すみません名前変えました。

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

青少年病棟

BL
性に関する診察・治療を行う病院。 小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。 ※性的描写あり。 ※患者・医師ともに全員男性です。 ※主人公の患者は中学一年生設定。 ※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。

婚約破棄?しませんよ、そんなもの

おしゃべりマドレーヌ
BL
王太子の卒業パーティーで、王太子・フェリクスと婚約をしていた、侯爵家のアンリは突然「婚約を破棄する」と言い渡される。どうやら真実の愛を見つけたらしいが、それにアンリは「しませんよ、そんなもの」と返す。 アンリと婚約破棄をしないほうが良い理由は山ほどある。 けれどアンリは段々と、そんなメリット・デメリットを考えるよりも、フェリクスが幸せになるほうが良いと考えるようになり…… 「………………それなら、こうしましょう。私が、第一王妃になって仕事をこなします。彼女には、第二王妃になって頂いて、貴方は彼女と暮らすのです」 それでフェリクスが幸せになるなら、それが良い。 <嚙み痕で愛を語るシリーズというシリーズで書いていきます/これはスピンオフのような話です>

既成事実さえあれば大丈夫

ふじの
BL
名家出身のオメガであるサミュエルは、第三王子に婚約を一方的に破棄された。名家とはいえ貧乏な家のためにも新しく誰かと番う必要がある。だがサミュエルは行き遅れなので、もはや選んでいる立場ではない。そうだ、既成事実さえあればどこかに嫁げるだろう。そう考えたサミュエルは、ヒート誘発薬を持って夜会に乗り込んだ。そこで出会った美丈夫のアルファ、ハリムと意気投合したが───。

処理中です...